114 / 230
サンタさん、学生になる
114 西地区の闇(10)
◇◇ 王太子 ◇◇
アロー公爵家から、サンタさんとアレス君が警備隊に保護されたと知らせを受け、安堵して夕食後のお茶を飲んでいたら、サンタさんの母親ルクナが手紙を持ってきた。
ルクナから二重誘拐という事件の真相を聞き、私も王太子妃ライラも王子エルドラも、あまりの内容に言葉を失った。
全身血濡れの姿を見た時は倒れそうになったというルクナの言葉に、妻であるライラは軽い貧血を起こした程だ。
エルドラは今すぐにでも2人に会いたいとごねたけど、警備上の問題で却下した。
そして、どれどれと軽い気持ちで渡された手紙を読み始めた私は、【大賢者】の名で書かれた手紙の内容に血の気が引いた。
●●● 王太子様・アロー公爵家ホロル様 ●●●
国や王太子やアロー公爵家や軍の力不足により、西地区の再開発地域は放置された。
そのせいで、大賢者であるサンタナリアとアンタレスが、二度も攫われ殺されそうになった。
しかも軍を率いて対峙しておきながら全く役に立たず、私やアレス君の救出を優先するのではなく、再開発地域の撲滅に利用しようと画策した。
大賢者の命など、エイバル王国の王族や公爵にとって、政治的価値や利益の方が重要であり、ゴミ同然の扱いであると理解した。
よって私はアロー公爵家の男爵位を叩き返し、アレス君と共にエイバル王国の民であることを拒否する。
去る前に、皆さんができなかった再開発地域の殲滅を、大賢者と弟子が行うことにした。
汚い貴族が仕事を依頼し、極悪人共をのさばらせ、何人もの民が搾取され殺されても、国は鉄槌を下さなかった。
よって、民に代わって大賢者と弟子が、今宵鉄槌を下す。
もしも今回の失態を反省し、私やアレス君や被害を受けた民に、真摯に謝罪する気があれば、今宵の鉄槌から逃げようとする【闇烏】を一網打尽にし、王都の治安維持に務めるならば、この国を去ることを再考するかもしれない。
今宵の働きを、しかとこの目で確かめさせていただく。 大賢者サンタナリア
「な、な、なんだこれは―!」と、私は思わず叫んでしまった。
手紙を読んだ直後は、子供のサンタさんが魔法で何かする気なんだろうくらいに軽く考えていたが、警備隊本部から今回の事件の報告が来て、古代遺跡に続く林の中から、完膚なきまでにボロボロにされた【闇烏】のメンバーが見付かったと聞き、妙な胸騒ぎがした。
もしかしたらと思い、直ぐにアロー公爵家に使いを送った。
主犯が自領の子爵であったため、今後のことを話し合っていたホロル殿が偶然事件の説明に来たので、私はサンタさんの手紙を直ぐに見せた。
2人でどうしたものかと思案していると、ガリア教会の教会長が青い顔をして面会を求めた。
【今宵、西地区の再開発地域が火の海となるが、一般人が巻き込まれないよう細心の注意は払う。
しかし、もしも一般人がケガをしたら、教会で介抱してあげて欲しい。
ガリア教会は、大賢者(名前や正体は伏せて)が極悪組織【闇烏】に鉄槌を下したと、明日教会で発表してください】
「これが、つい先程教会に届きました。この筆跡は間違いなく大賢者様のものです。大賢者様は本日、教会内で【闇烏】に攫われました。
教会の保護対象である大賢者様と、アンタレス様を害した者は教会の敵です。
本当に再開発地域で火の手が上がれば、教会は直ぐに緊急事態を知らせる鐘を鳴らさねばなりません」
教会長は、【闇烏】の者がケガをしても、教会は助けないと断言した。
そして本部からの通達文の中に、【大賢者様の上級魔法は、町くらい簡単に滅ぼすことができる魔法だった。決して逆鱗に触れることがないようお守りしろ】と、厳重注意事項が書いてあったことを教えてくれた。
そこから猛ダッシュで軍と警備隊と王宮魔術師団を、集められるだけ集めて西地区へと向かった。
……決して逆鱗に触れるな・・・なんということだ! 私はサンタさんを天才だとは認めていたが、災害級の人物だと認識していなかった。
……今日の我々の行動が、政治的判断を含んでいたと気付かれている。町を滅ぼす・・・火の海・・・それが本当なら、この国から出してはいけない。
◇◇ 光猫のシリス ◇◇
今日はとても気分がいい。
久し振りにご主人様にお会いできた。そして、私は役に立つことができて褒めて貰えた。
私は人の言葉は話せないが、人の言葉を理解できる。
光猫の中でも私は、【神の使い】と呼ばれる変異種で、必ずお仕えするご主人様に出会い、大きな役目を果たすだろうと親から聞かされてきた。
ブラックウルフに襲撃された時、微かに聴こえた声に引き寄せられ、私は突然開いた穴の中に飛び込んだ。
するとそこには、光り輝くオーラを放つ幼女が居て、私は直ぐに自分のご主人様はこの方なのだと分かった。
そこからの日々は楽しくて、アレスもホッパー商会の皆も、最速踏破者の仲間も含め私を可愛がってくれた。
ガリア教会にご主人さまが旅立たれた時は寂しかったが、必ず迎えに来てくださると信じて待っていた。
そして今日、私はご主人様に再会し、久し振りに命令され嬉しくて嬉しくて、張り切って悪人を討伐した。
そして今夜、悪の組織を根絶やしにするため、ご主人様は出立される。
当然私もお供し、ご主人様とアレスを守る。
城壁の上に立たれたご主人様は、出会った頃よりも強い七色のオーラに包まれていて眩しい程だ。
「さあ、始めるわよシリス。移動する時はよろしくね」
「ガウ」
「目標、最奥の古い木造建築。行け、炎の弾丸」
ご主人様がそう唱えると、拳大の青白い炎の玉が、建物に向かって飛んでいく。
着弾した炎は、古い建物を破壊しながら燃え始める。
火事を知らせる警鐘が何度も叩かれ、魔法練習場に響いていく。
「火事だー!」「早く火を消せ―!」と叫びながら、各建物の中からバラバラと悪人たちが出てきて、用意してあった大きな水桶から水を汲んでいく。
見張り塔のレンガの建物からも悪人たちが飛び出したのを確認し、アレスはエアーアタックを使って城壁から練習場入り口に着地する。
「砕け散れ、そして崩壊せよ!」
建物の陰に移動したアレスの魔法が発動し、ドガーンと派手な音を立て建物が倒壊していく。
アロー公爵家から、サンタさんとアレス君が警備隊に保護されたと知らせを受け、安堵して夕食後のお茶を飲んでいたら、サンタさんの母親ルクナが手紙を持ってきた。
ルクナから二重誘拐という事件の真相を聞き、私も王太子妃ライラも王子エルドラも、あまりの内容に言葉を失った。
全身血濡れの姿を見た時は倒れそうになったというルクナの言葉に、妻であるライラは軽い貧血を起こした程だ。
エルドラは今すぐにでも2人に会いたいとごねたけど、警備上の問題で却下した。
そして、どれどれと軽い気持ちで渡された手紙を読み始めた私は、【大賢者】の名で書かれた手紙の内容に血の気が引いた。
●●● 王太子様・アロー公爵家ホロル様 ●●●
国や王太子やアロー公爵家や軍の力不足により、西地区の再開発地域は放置された。
そのせいで、大賢者であるサンタナリアとアンタレスが、二度も攫われ殺されそうになった。
しかも軍を率いて対峙しておきながら全く役に立たず、私やアレス君の救出を優先するのではなく、再開発地域の撲滅に利用しようと画策した。
大賢者の命など、エイバル王国の王族や公爵にとって、政治的価値や利益の方が重要であり、ゴミ同然の扱いであると理解した。
よって私はアロー公爵家の男爵位を叩き返し、アレス君と共にエイバル王国の民であることを拒否する。
去る前に、皆さんができなかった再開発地域の殲滅を、大賢者と弟子が行うことにした。
汚い貴族が仕事を依頼し、極悪人共をのさばらせ、何人もの民が搾取され殺されても、国は鉄槌を下さなかった。
よって、民に代わって大賢者と弟子が、今宵鉄槌を下す。
もしも今回の失態を反省し、私やアレス君や被害を受けた民に、真摯に謝罪する気があれば、今宵の鉄槌から逃げようとする【闇烏】を一網打尽にし、王都の治安維持に務めるならば、この国を去ることを再考するかもしれない。
今宵の働きを、しかとこの目で確かめさせていただく。 大賢者サンタナリア
「な、な、なんだこれは―!」と、私は思わず叫んでしまった。
手紙を読んだ直後は、子供のサンタさんが魔法で何かする気なんだろうくらいに軽く考えていたが、警備隊本部から今回の事件の報告が来て、古代遺跡に続く林の中から、完膚なきまでにボロボロにされた【闇烏】のメンバーが見付かったと聞き、妙な胸騒ぎがした。
もしかしたらと思い、直ぐにアロー公爵家に使いを送った。
主犯が自領の子爵であったため、今後のことを話し合っていたホロル殿が偶然事件の説明に来たので、私はサンタさんの手紙を直ぐに見せた。
2人でどうしたものかと思案していると、ガリア教会の教会長が青い顔をして面会を求めた。
【今宵、西地区の再開発地域が火の海となるが、一般人が巻き込まれないよう細心の注意は払う。
しかし、もしも一般人がケガをしたら、教会で介抱してあげて欲しい。
ガリア教会は、大賢者(名前や正体は伏せて)が極悪組織【闇烏】に鉄槌を下したと、明日教会で発表してください】
「これが、つい先程教会に届きました。この筆跡は間違いなく大賢者様のものです。大賢者様は本日、教会内で【闇烏】に攫われました。
教会の保護対象である大賢者様と、アンタレス様を害した者は教会の敵です。
本当に再開発地域で火の手が上がれば、教会は直ぐに緊急事態を知らせる鐘を鳴らさねばなりません」
教会長は、【闇烏】の者がケガをしても、教会は助けないと断言した。
そして本部からの通達文の中に、【大賢者様の上級魔法は、町くらい簡単に滅ぼすことができる魔法だった。決して逆鱗に触れることがないようお守りしろ】と、厳重注意事項が書いてあったことを教えてくれた。
そこから猛ダッシュで軍と警備隊と王宮魔術師団を、集められるだけ集めて西地区へと向かった。
……決して逆鱗に触れるな・・・なんということだ! 私はサンタさんを天才だとは認めていたが、災害級の人物だと認識していなかった。
……今日の我々の行動が、政治的判断を含んでいたと気付かれている。町を滅ぼす・・・火の海・・・それが本当なら、この国から出してはいけない。
◇◇ 光猫のシリス ◇◇
今日はとても気分がいい。
久し振りにご主人様にお会いできた。そして、私は役に立つことができて褒めて貰えた。
私は人の言葉は話せないが、人の言葉を理解できる。
光猫の中でも私は、【神の使い】と呼ばれる変異種で、必ずお仕えするご主人様に出会い、大きな役目を果たすだろうと親から聞かされてきた。
ブラックウルフに襲撃された時、微かに聴こえた声に引き寄せられ、私は突然開いた穴の中に飛び込んだ。
するとそこには、光り輝くオーラを放つ幼女が居て、私は直ぐに自分のご主人様はこの方なのだと分かった。
そこからの日々は楽しくて、アレスもホッパー商会の皆も、最速踏破者の仲間も含め私を可愛がってくれた。
ガリア教会にご主人さまが旅立たれた時は寂しかったが、必ず迎えに来てくださると信じて待っていた。
そして今日、私はご主人様に再会し、久し振りに命令され嬉しくて嬉しくて、張り切って悪人を討伐した。
そして今夜、悪の組織を根絶やしにするため、ご主人様は出立される。
当然私もお供し、ご主人様とアレスを守る。
城壁の上に立たれたご主人様は、出会った頃よりも強い七色のオーラに包まれていて眩しい程だ。
「さあ、始めるわよシリス。移動する時はよろしくね」
「ガウ」
「目標、最奥の古い木造建築。行け、炎の弾丸」
ご主人様がそう唱えると、拳大の青白い炎の玉が、建物に向かって飛んでいく。
着弾した炎は、古い建物を破壊しながら燃え始める。
火事を知らせる警鐘が何度も叩かれ、魔法練習場に響いていく。
「火事だー!」「早く火を消せ―!」と叫びながら、各建物の中からバラバラと悪人たちが出てきて、用意してあった大きな水桶から水を汲んでいく。
見張り塔のレンガの建物からも悪人たちが飛び出したのを確認し、アレスはエアーアタックを使って城壁から練習場入り口に着地する。
「砕け散れ、そして崩壊せよ!」
建物の陰に移動したアレスの魔法が発動し、ドガーンと派手な音を立て建物が倒壊していく。
あなたにおすすめの小説
スラム街の幼女、魔導書を拾う。
海夏世もみじ
ファンタジー
スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。
それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。
これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。