三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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王立能力学園・工学部発明学科編

137 サンタさん、講師の仕事をする(2)

 私が行う講義を受講するには、2回の講義で1人金貨1枚(10万エーン)が必要だ。
 3回目以降の講義を受講するには、痛くないよう布で作った玉を頭上で回す試験に合格しなければならない。
 だからこそ、私は受講要項に受講資格をきちんと記入しておいた。

「あら、受講要項を読んでいない者が混じっているようね。
 残念だわ。アナタが所属する組織は、たった今、全員受講資格を失った。
 そうですよね王太子様、学園長?」

 実は王太子も学園長も私の講義を受講するため、南エリアの魔術師用大演習場に、身分を隠し最後尾に紛れ込んでいた。
 まあ軽い変装だから分かる人には見破られる程度だけど、気を使って平服で参加している。折角だから登場していただこう。

 こんなこともあろうかと、私はちゃんと学園長に仕事を振っていた。
 受講要項をババーンと大きく書いた移動式黒板を、しっかり演習場に用意していたので、学園長に読み上げて貰うのだ。
 そして王太子には、違反者や失格者を排除していただくことになっている。
 不真面目な人や真摯に魔法を学ぶ気がない者に、魔法を教えたくないからね。

 ……まあ、その見返りとして、3センチの魔核に魔力充填できれば使える、最近新しく開発した空間拡張バッグを、商業連合が発売する前に売ると約束した。収納量は1メートル四方と小型だ。

「学園長のエンタリウスだ。
 諸君らは、当然今回の講義を受けるにあたり、受講要項を読んでいると思うが、忘れる不心得者が居る可能性を憂慮し、黒板に書いておいた。
 今から読み上げる。よく聞いて、参加資格が無いにも関わらず参加してしまった者が居たら、今なら罪に問わないから名乗り出よ」 

 ① 講師が誰であっても、難癖を付けたり侮辱したりしない。
 ② 受講者を、5センチのカラ魔核に充填できる者に限定する。
 ③ 受講資格なしと講師が判断した場合、その者が所属する組織は以後の参加を認めない。
 ④ 違反者、失格者、失格組織が再度受講するには、受講要項を厳守するという契約魔術書を提出し、謝罪料として金貨5枚を支払うものとする。
 また、失格者・辞退者の受講料は返金されない。
 ⑤ 3センチの魔核充填しかできない者や、初回の試験に合格できなかった者は、追加の受講料を支払い、魔術師学部の教授が行う初級魔法講座を受講することができる。

【以上の受講要項は、王太子殿下および王立能力学園学園長によって正式に承認されている】 

 黒板に書かれた受講要項を大きな声で読み上げた学園長は、先程私に喧嘩を売った者を軽く睨む。

「王太子のユーフラスだ。
 今回の魔法講座は、国策として国王と王立能力学園が、魔法の第一人者であるサンタさんに指導を願って始められたものだ。
 国策である講義に、受講資格のない者や不心得者など居ないと思うが・・・もしも、もしも、よく読んでいなかったと思う者が居たら、今直ぐに名乗り出て辞退すれば罰することはない」

 ……ほうほう、罰することはないって言っちゃうんだ王太子様。

 ……まあいいけど。失格者や辞退者が払った受講料は、講師料にプラスして私に支払われるから、初日だけで金貨数枚は確実そうだもんね。

 学園長と王太子の登場で戸惑っていた受講者たちは、2人の話を聞いてどんどん顔色が悪くなっていく。
 この国に5センチのカラ魔核に充填できる者が、こんなに居るはずないもんね。
 青い顔をしている者たちの前に、私は学園中からかき集めた5センチクラスのカラ魔核を取り出して、にっこりと微笑んだ。

 受講資格があるかないかは、全員の目の前で公平公正に判断されるべきだから、しっかり35個は用意しておいた。
 工学部や鑑定士学部の教授に、5センチクラスのカラ魔核を用意してくれたら、タダで魔力充填された魔核にしてあげるよと言ったら、大喜びで用意してくれた。

 充填された魔核を受け取るために、グラウンドの隅で教授や准教授がニコニコしながら待ってる。
 年間予算が大幅に削減できると喜んだ鑑定士学部のメーナイ部長教授が、要らないと断ったのに、工学部よりちょっと濃い目のアメジストが嵌め込まれた講師バッジをくれた。

 ……意味が分からない。


「さあ、自信のある者から名と所属を受講者名簿に記入し充填してくれ。
 怖気付いた・・・いや、要項をよく読んでいなかった者は、辞退者名簿に名と所属を記入し帰っていいぞ。今なら、厳罰に処されることはない」

 口調は穏やかだけど、目が全然笑っていない王太子が、今度は厳罰という言葉を使って最後通告をする。
 
 すると、おずおずと7人の者が辞退者名簿が置かれたテーブルの方に移動を始める。
 その間にも、魔術師協会の者が順調に魔核充填を開始し、合格した者が受講者名簿に記入していく。

「も、申し訳ありません。3センチの魔核充填ならできるので、魔術師学部の教授が行う初級魔法講座の方に変更させてくれ。いえ、変更させていただきたい」

「なるほど。では、こちらの魔術師学部初級魔法講座名簿に名と所属をご記入ください。当日受講料の支払いをお願いします」

 魔術師学部のヒョーイ主任教授は軽蔑した視線を向けながら、魔術師学部が用意しておいた3センチのカラ魔核を差し出し黒く笑った。
 同じように3センチの魔核ならと名乗り出た8人の内1人は、3センチの魔核にも充填できなかった。

「学園長、失格者が出ました!」と、ヒョーイ教授の容赦ない声が上がる。

「まさか軍の者ですか? おや、君は先程、講師を侮辱した者だな。
 王太子様、失格者の所属する軍は、全員が受講資格を失うことになりますが問題ないですよね?」

 学園長は失格者を睨み付け、無表情で王太子に確認する。

「当然だ。事前に通告したにも関わらず虚偽報告をしたのだ。軍の責任者にも厳罰を与えることになるだろう。それでいいなサンタさん?」

 ……ちょっと、なんで私に振るの? なんで私が最終決定するのよ!

『ここは上手くやらんといかんぞサンタや』って、サーク爺が注意する。
『そうね、軍に貸しを作るのは悪くないわ』って、パトリシアさんが言う。

「そ、そうですね。講師への暴言も虚偽報告も、本来許されるものではありませんが、今回だけは、貸し一つということで軍の受講を許可します」 
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