三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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王立能力学園・金級ハンター編

162 ゴールド会員のサンタさん(3)

 私が指名したのは【ロードの悪魔】の2人なのかと、サブチーフが驚いた顔で確認する。

 ……へぇ~、ロードの悪魔って名前のパーティーなんだ。天使を守るのが悪魔・・・フフッ、なんだか笑える。

「昨夜レストランで見掛けて、今日は新ロードを北に向かうって言ってたんだよね。顔は怖いけど強そうだったから、護衛にいいかなって思ったんだけど」

 昨夜の2人を思い浮かべながら、サブチーフに説明する。

「その人相なら間違いなく【ロードの悪魔】だろう。元は4人だったが2人は引退して今は2人だけになっている。2人とも銀級ハンターだからそれなりに強いが、う~ん、護衛を受けるだろうか?」

 チーフは腕を組んで、護衛の仕事はしたがらないだろうと困った顔をする。

「名目上は護衛だけど、私、この前アースドラゴンを討伐したから金級ハンターに昇格したんだよね。ゲートル支部に寄ってこなかったから、今持っているのは銀級ハンター証だけど。
 きっと私の方が強いから、護衛というより道案内役かな。
 どんなに強くても、1人でロードに潜ることは禁止されてるでしょう?」

 ロードに潜る時は、1人では絶対に許可が出ない。それは長い歴史の中で決められたハンターの掟みたいなものだ。
 ハンターは4人以上でパーティーを組むことが多く、各自の特技を活かして地底生物を倒したり、役割分担をして活動する。

「噂では、巨大トカゲを3分で倒し、大蛇は一撃で瞬殺するって聞いています。
 アースドラゴンを討伐できる最強の魔法使いでありハンターだって、ゲートル支部のチーフが自慢してましたから、確かに護衛は必要ないでしょう。
 分かりました。チーフ権限で依頼を受けさせましょう。あの2人にもいい経験になるはずですから」

 チーフはそう言って、あの2人は間もなく支部に顔を出す時間だから、急いで足止めしてきますと告げ部屋を出ていった。

「それなら俺も、俺も同行させてください。あの岩盤の先が本当に南ゲートに繋がっていて、敵がその情報を掴んでいたら大変なことになる。
 それと不確かな情報で申し訳ないのですが、あの新ロードには未探索の側道が幾つかあります。その中のどれかから、地上の動物が入ってきているようです」

 サブチーフは自分も同行したいと願い出て、新しい情報を出してきた。

「それは本当ですかサブチーフ? もしも地上に出れるなら、南ゲートの様子を探ることが可能かもしれません。
 危険な獣が居る可能性もありますが、私は南ゲートのハンターを助けたい。
 軍は南ゲートにまで手が回らないのが現状。いずれは奪還する必要があります」

 サブチーフの話を聞いた私は、地上からハッシュ辺境伯領の南ゲートがあるアルバの町に潜入するルートを探ることを目標に加えた。


 受付の前まで戻ると、不貞腐れている2人のハンターに睨まれた。
 あれは子供の護衛任務と聞いて、やりたくないとごねた感じだ。

「なんで俺たちが、こんなガキの子守りなんかしなきゃいけないんですかチーフ」

「まあそう言うなドットル。きっといい経験になる。しかも依頼料は支部が出すし、素材採取をしても構わない」

 頬に傷のある男が大きな声で文句を言い、チーフがまあまあと宥めている。
 どうやら【ロードの悪魔】のリーダーは、ドットルって名前みたい。

「ドットル、俺も同行する。だからお前たちはいつも通りに新ロードを最終地点まで進んでくれたらいい。
 どうせ泊まり覚悟の用意もしてあるんだろう? 俺も直ぐに準備するから15分待ってくれ。あっ、子爵、泊まりの準備は・・・?」

 サブチーフが割って入り、自分も同行するから普段通りでいいと説明する。

「勿論できてるわ。3日くらい大丈夫よ」

「はあ? お嬢ちゃん、ロード探索を舐めてんのか! そんな軽装備じゃ昼飯だって持ってねえだろう」

 今度はスキンヘッドのおじさんが、頭から湯気を出す勢いで文句を言う。

「あら、私これでもゴールド会員なのよ。これまで何回もゲートル支部のイオナロードを潜っているわ。ほら、お泊り用の簡易ベッドだって持ってるし」

 私はそう言って、空間拡張ウエストポーチからベッドを取り出してみせる。

「はあ?!」と、その場に居た他のハンターも含む全員が驚きの声を上げた。

「ルーデン、この子は、いや、こちらのゴールド会員であり子爵様は、噂のイオナロードのサンタさんだ。まあいろいろ驚くことが多いと思うが、アースドラゴンを討伐できる金級ハンターだ。口には気を付けろ」

 目の前に現れたベッドをガン見しながら、サブチーフは私の追加情報を出して、口には気を付けろと注意する。
 スキンヘッドのおじさんは、ルーデンって名前なんだ。ドットル、ルーデンってしりとりみたいで覚えやすいかも。

「な、なんだと、イオナロードのサンタさんだと!」

 掲示板の所に居た若いハンターが、驚いて大きな声を出した。
 視線を向けると、見たことがあるような顔をしている。そして、仲間らしき3人と一緒に私の前にやってきた。

「本当だ。イオナロードの天使様だ」と、一番若い少年が嬉しそうに破顔する。

「サンタさん、昨年は俺たちを助けてくれてありがとう。討伐した大蛇で新しい防具を買うことができたよ。ちゃんと孤児院にパンも持って行ったよ」

 大声を上げていたリーダーらしき若いハンターが、お礼を言いながら頭を下げ、カバンの中からお菓子の袋を取り出して渡してくれた。
 今朝焼き上がったばかりの焼き菓子みたいで、甘くて美味しそうな匂いがする。
 彼等の登場で支部の雰囲気が柔らかくなり、【ロードの悪魔】の2人から向けられていたも嫌悪感もなくなった。


 さあ出発よって支部を出ると、他のハンターたちが何故だかぞろぞろと付いてくる。
 ベテラン風なハンターから先程の若手ハンターまで、4つくらいのパーティーが「本当に少女だ」とか「可愛い女の子だな」とか「あんなに小さいのに金級ハンターなんだ」とか言いながら、わいわいがやがや楽しそうに付いてくる。

「どうやら噂の天使様の腕前を見たいようだ。少々煩いが、我慢してやってくれ」

 サブチーフがすまんなと困った顔で謝る。

 まあいいかと笑っていたのは、見たこともない地上生物に遭遇するまでだった。 
感想 3

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