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王立能力学園・大賢者編
188 呪術と魔法(6)
急に走りだした高位・鑑定士の2人を見てヨカランは、チッと舌打ちし手に持っていた呪符を内ポケットに押し込み眉間に皺を作った。
そしてなかなか現れない部下を探すように周囲を見回し、近付いてくる私と目が合った途端、ん?ってまた眉間に皺を寄せた。
「待ち合わせをしている者とは、どうやら会えなかったようね」
私はにっこり笑いながら、憐れみの視線を向けてヨカランに話し掛ける。
「待ち合わせてる者って、まさか先程警備隊に捕まっていた怪しい2人じゃないだろうな? 若い女と若い男だったが、とんでもない悪事を働いて捕まったらしい」
アレス君は子供らしからぬ物言いで、呪符を貼られないよう距離をとりながら軽く脅しをかける。
「お前たちは受付に居た学生・・・若い男女が捕まった? フン、私が待ち合わせをしていたのは学園の教授だ。残念だが急用でもできて帰ったのだろう」
前後から近付いてくる私たちに探るような鋭い視線を向け、ヨカランは下手な言い訳をする。でも、部下は捕まったのだと察したはずだ。
私とアレス君は先程とは違い敬語も使わないし、完全上から目線に変えている。
「嫌だわぁ、悪人の匂いがプンプンするのに、鑑定士学部の部長教授が、そんな者と約束なんてするはずがないでしょう?」
「そうだよね。自分が殺した者の葬儀に来るような図々しい奴だ。悪人の匂いだけじゃなく、全身からどす黒い呪いのオーラが漏れ出してるし」
「・・・・・」
ヨカランはアレス君の話を聞き、眉をピクリと上げ目を細める。
アレス君は、教授殺しの犯人はお前だと断定して話しているし、呪符とは言わないけど呪いという言葉を使った。
勝利を目前に罪を暴かれたヨカランは、無言ではあるが現状を理解したはずだ。
ヨカランを追い込みながら時間を稼いでいる間に、教会の正門前広場に居るのは私たち3人だけになった。
鐘楼の上をチラリと見上げると、魔術師の皆さんがワクワクした顔で成り行きを見ていて、大聖堂のステンドグラスの後ろには、王子や王宮騎士団のものと思われる影が見える。
……よし、これで心置きなく魔法が使える。
「お前には、父や兄も世話になったから、しっかりお返しさせてもらうよ」
「そうねアレス君。私はバルコニーから魔法陣で落としたから、前の戦争で命を落とした父様の分はお返ししたけど、私と恩師の分のお返しが残ってるわ。
片足を引き摺る程度じゃ、全然3倍返しにはなってないわね」
そう言って私は、ウエストポーチから【聖なる効果】のある白い手袋を取り出し両手に装着する。
「な、なんだと! バルコニーの魔法陣だと!」
本当に驚いたという風に目を見開いたヨカランは、直ぐに怒りと憎しみの表情で私を睨み付け、本当かどうかを探ろうとする。
「ええ、中級魔法の中でも結構難しい魔法陣だったから、作るのに徹夜したわ。古代魔法って、結構難しいのよ。少しは痛い思いをしたようで嬉しいわ」
私はフフフと笑って挑発する。
「貴様かー! 学園の魔術師じゃなくてお前の仕業かー!」
鬼の形相で怒鳴ったヨカランは、もう自分が犯人であることを隠さない。
「そうだよ。あの魔法陣を作った時は、まだ5歳だったよねサンタさんは。5歳の魔法使いにしてやられたんだよ、元ヒバド伯爵家の執事だったヨカラン。
魔法使いと呪術師とでは、格が違うんだよ。もちろん僕も魔法使いさ」
アレス君は腕を前で組み、ニヤリと笑ってみせる。
「き、貴様! その金の髪に青い瞳、ま、まさかお前はアロー公爵家の」
ヨカランは驚きのあまり、思わず後ろに1歩下がった。
「そうだヨカラン。いや、ヨカーラム。私はアロー公爵家の者だ。君が父にくれた毒入りのお茶は、ヒバド伯爵にしっかりお返しさせてもらったよ。
お前の部下2人には、お前が作った呪符でお返しさせてもらう。
僕とサンタさんは、目には目を歯には歯をがモットーだからさ」
日頃温厚なアレス君が怒ると、顔が整っているせいか結構冷たく感じる。
口調だって大人顔負けで皮肉たっぷりだ。ふむふむ。
この場に3人だけの今の状況が、私たちによって作り出されたのだと気付いた様子のヨカランは、奥歯を強く噛み締め憎しみの感情を隠そうともしない。
教会関係者や騎士団の数人が、この広場には誰も入れないよう制限してくれているから、大通りを通る馬車の音や、人々の声が微かに聴こえるだけで、寧ろ私たちの声が教会の建物に響いている。
「フン、たかがガキ2人に何ができる」
屈強な警備隊や騎士団ではなく、子供の私やアレス君と対峙したくらいじゃ、警戒はされても恐怖じゃないってことか。
でもねぇ、魔法がどんなものか知らないから強がれるんだと思うよ。
「フッ、私たちは魔法使いよ。呪符だって視えるし意味だって分かる。
だから正門の呪符だって直ぐに気付いたし、教会内の呪符は全てアレス君が処理したわ。残念ね。誰も呪符の影響なんて受けてないの」
「魔法使い? それは魔術師のように魔術が使えるんじゃなくて、呪符を見る能力持ちのことを言うのか?
まあ時間をかければ魔法陣も作れるようだが、直ぐには作れまい。
とっくに滅びた能力のはずだ。まだ生きていたとは到底信じられない。
どうせ教会本部あたりで呪符を学んだんだろう。忌々しい教会め!」
強がってはいるけど、逃げ道を探すようにチラリと正門を見るヨカランに、私は1歩1歩距離を縮めていく。
「まさか、子供相手に逃げたりしないわよね?」
「サンタさん、いくら何でもそれはないよ。仮にもザルツ帝国の王族だよ?
戦争にも負け、奪った領地も古代都市のゲートも奪い返された負け犬だ。
いくら負け犬でも、子供2人に喧嘩を売られて逃げるなんて、貴族のプライドが許さないし、今更逃げるなんて恥でしかないからね」
アレス君も逃がさないよう、男のプライドを折りにいく。
「生意気な、そんなに死を望むのであれば殺してやろう」
ヨカランは開き直ったのか、油断させようとしているのか、私たちを見てニヤリと笑った。
「その体で? 剣も無いのに?」とアレス君は余裕で笑い返す。
その途端、男は不自由な足とは思えない速さで、正門の方へと走りだした。
「前方に降り注げ炎の槍! そして炎よ取り囲め!」
そしてなかなか現れない部下を探すように周囲を見回し、近付いてくる私と目が合った途端、ん?ってまた眉間に皺を寄せた。
「待ち合わせをしている者とは、どうやら会えなかったようね」
私はにっこり笑いながら、憐れみの視線を向けてヨカランに話し掛ける。
「待ち合わせてる者って、まさか先程警備隊に捕まっていた怪しい2人じゃないだろうな? 若い女と若い男だったが、とんでもない悪事を働いて捕まったらしい」
アレス君は子供らしからぬ物言いで、呪符を貼られないよう距離をとりながら軽く脅しをかける。
「お前たちは受付に居た学生・・・若い男女が捕まった? フン、私が待ち合わせをしていたのは学園の教授だ。残念だが急用でもできて帰ったのだろう」
前後から近付いてくる私たちに探るような鋭い視線を向け、ヨカランは下手な言い訳をする。でも、部下は捕まったのだと察したはずだ。
私とアレス君は先程とは違い敬語も使わないし、完全上から目線に変えている。
「嫌だわぁ、悪人の匂いがプンプンするのに、鑑定士学部の部長教授が、そんな者と約束なんてするはずがないでしょう?」
「そうだよね。自分が殺した者の葬儀に来るような図々しい奴だ。悪人の匂いだけじゃなく、全身からどす黒い呪いのオーラが漏れ出してるし」
「・・・・・」
ヨカランはアレス君の話を聞き、眉をピクリと上げ目を細める。
アレス君は、教授殺しの犯人はお前だと断定して話しているし、呪符とは言わないけど呪いという言葉を使った。
勝利を目前に罪を暴かれたヨカランは、無言ではあるが現状を理解したはずだ。
ヨカランを追い込みながら時間を稼いでいる間に、教会の正門前広場に居るのは私たち3人だけになった。
鐘楼の上をチラリと見上げると、魔術師の皆さんがワクワクした顔で成り行きを見ていて、大聖堂のステンドグラスの後ろには、王子や王宮騎士団のものと思われる影が見える。
……よし、これで心置きなく魔法が使える。
「お前には、父や兄も世話になったから、しっかりお返しさせてもらうよ」
「そうねアレス君。私はバルコニーから魔法陣で落としたから、前の戦争で命を落とした父様の分はお返ししたけど、私と恩師の分のお返しが残ってるわ。
片足を引き摺る程度じゃ、全然3倍返しにはなってないわね」
そう言って私は、ウエストポーチから【聖なる効果】のある白い手袋を取り出し両手に装着する。
「な、なんだと! バルコニーの魔法陣だと!」
本当に驚いたという風に目を見開いたヨカランは、直ぐに怒りと憎しみの表情で私を睨み付け、本当かどうかを探ろうとする。
「ええ、中級魔法の中でも結構難しい魔法陣だったから、作るのに徹夜したわ。古代魔法って、結構難しいのよ。少しは痛い思いをしたようで嬉しいわ」
私はフフフと笑って挑発する。
「貴様かー! 学園の魔術師じゃなくてお前の仕業かー!」
鬼の形相で怒鳴ったヨカランは、もう自分が犯人であることを隠さない。
「そうだよ。あの魔法陣を作った時は、まだ5歳だったよねサンタさんは。5歳の魔法使いにしてやられたんだよ、元ヒバド伯爵家の執事だったヨカラン。
魔法使いと呪術師とでは、格が違うんだよ。もちろん僕も魔法使いさ」
アレス君は腕を前で組み、ニヤリと笑ってみせる。
「き、貴様! その金の髪に青い瞳、ま、まさかお前はアロー公爵家の」
ヨカランは驚きのあまり、思わず後ろに1歩下がった。
「そうだヨカラン。いや、ヨカーラム。私はアロー公爵家の者だ。君が父にくれた毒入りのお茶は、ヒバド伯爵にしっかりお返しさせてもらったよ。
お前の部下2人には、お前が作った呪符でお返しさせてもらう。
僕とサンタさんは、目には目を歯には歯をがモットーだからさ」
日頃温厚なアレス君が怒ると、顔が整っているせいか結構冷たく感じる。
口調だって大人顔負けで皮肉たっぷりだ。ふむふむ。
この場に3人だけの今の状況が、私たちによって作り出されたのだと気付いた様子のヨカランは、奥歯を強く噛み締め憎しみの感情を隠そうともしない。
教会関係者や騎士団の数人が、この広場には誰も入れないよう制限してくれているから、大通りを通る馬車の音や、人々の声が微かに聴こえるだけで、寧ろ私たちの声が教会の建物に響いている。
「フン、たかがガキ2人に何ができる」
屈強な警備隊や騎士団ではなく、子供の私やアレス君と対峙したくらいじゃ、警戒はされても恐怖じゃないってことか。
でもねぇ、魔法がどんなものか知らないから強がれるんだと思うよ。
「フッ、私たちは魔法使いよ。呪符だって視えるし意味だって分かる。
だから正門の呪符だって直ぐに気付いたし、教会内の呪符は全てアレス君が処理したわ。残念ね。誰も呪符の影響なんて受けてないの」
「魔法使い? それは魔術師のように魔術が使えるんじゃなくて、呪符を見る能力持ちのことを言うのか?
まあ時間をかければ魔法陣も作れるようだが、直ぐには作れまい。
とっくに滅びた能力のはずだ。まだ生きていたとは到底信じられない。
どうせ教会本部あたりで呪符を学んだんだろう。忌々しい教会め!」
強がってはいるけど、逃げ道を探すようにチラリと正門を見るヨカランに、私は1歩1歩距離を縮めていく。
「まさか、子供相手に逃げたりしないわよね?」
「サンタさん、いくら何でもそれはないよ。仮にもザルツ帝国の王族だよ?
戦争にも負け、奪った領地も古代都市のゲートも奪い返された負け犬だ。
いくら負け犬でも、子供2人に喧嘩を売られて逃げるなんて、貴族のプライドが許さないし、今更逃げるなんて恥でしかないからね」
アレス君も逃がさないよう、男のプライドを折りにいく。
「生意気な、そんなに死を望むのであれば殺してやろう」
ヨカランは開き直ったのか、油断させようとしているのか、私たちを見てニヤリと笑った。
「その体で? 剣も無いのに?」とアレス君は余裕で笑い返す。
その途端、男は不自由な足とは思えない速さで、正門の方へと走りだした。
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