三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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ガリア教会の賢者さま

205 ギューメラ王国の大干ばつ(8)

 夕方にはシャングラ支部に戻り、詳しいことは明日話すとチーフに告げて、宿泊先である町の教会まで戻った。
 待っていた上位神父様に状況説明し、これからの計画を夕飯を食べながらざっくりと話した。
 そして、至急大神官様と大学の学長か副学長を呼んできて欲しいと頼んだ。

 上位神父様は地上にゲートを造るという大事業に驚き、それを私とアレス君がたったの1週間でやる気であると聞いて、土下座する勢いで止めようとした。
 でも私は、とりあえず1日やってみてから答えを出して欲しいと要求し、全ては貧乏な教会のため、大干ばつで苦しむ民のため、歴史と文明を教える教育者と学ぶ学生のためであると、聖人の如き表情で神々しい感じに言った。

 ……うん、決まった。神々しい・・・よね?

『いや、サンタに神々しいはないじゃろう』

『サーク爺、そこは突っ込んっじゃダメ。こういうのは成りきらなきゃいけないんだよ』

 私がむくれて唇を尖らせると、守護霊全員に笑われた。

 次の日から私とアレス君は、ゲート造りの具体的な計画を立てていく。
 もちろん図面も何枚か描いたし、入場するハンターや調査隊が危険じゃないように、ゲートの勾配を緩くするための知恵を守護霊の皆から授かりながら工夫した。
 地上から【サンアンシスロード】に到達する地点を何処にすべきか、神の僕の3人にも意見を訊き、居住区の最初の扉の近くにすると決めた。

 また、大賢者とはいえ私は子供だから、ハンター協会との会議はホームである教会でやった方がいいという警備隊長の助言にも従うことにした。
 会議には大神官様か学長を出席させ、こちらのペースで話を進める。
 シャングラ支部も本部も、まさか地上にゲートを造るなんて思ってないから、会議は紛糾するだろう。

 でも大丈夫。

 全てはギューメラ王国の民を救うために、大賢者が懸命に考えたことであり、流民に仕事を与え、シャングラの町の外にスラムを作らせないための名案なのだと力説する。
 流民を救うにはお金やたくさんの物資が必要だが、それらをギューメラ王国が用意し、自国民を救うことができると言うなら、大賢者が協力する必要もない話だと突き放す。



 2日後の夕方には、教会本部から招集したメンバーが到着した。
 明日到着予定のトレジャーハンター協会の調査隊は、王都ギューメラのトレジャーハンター協会本部のお偉いさんではなく、ギューメラ山支部の調査専門部隊らしい。
 古王国シャングラから3日以上も移動に時間が必要な本部ではなく、ギューメラ山支部に主な鑑定士や調査専門の人員を置いているとのこと。

「えっと、私が呼んだのは大神官様と学長か副学長だったんだけど・・・なんでこの人数なのかな?」

 大神官様と部下の事務官が5人、教会大学の副学長と各学部の学部長か副学部長の8人、我々の分の食料を荷馬車で運んできた食材部の2人と調理人1人の、合計18人が期待で瞳を輝かせながら私の前に並んでいる。

 大学関係者の妙に高いテンションと笑顔を見て、【サンアンシスロード】の説明はアレス君と警備隊長に丸投げすることにした。
 私は大神官様と事務官5人と一緒に、ゲートを開くために必要な準備期間や資材確保、運営方法、調査方法、資金調達、考えられる問題等について、じっくりと話し合った。

「ゲートを開くということは、町をつくるということであり、町ができれば統治する者が必要になります。
 我らガリア教会は、教会のために利益を得る活動を表立ってしていません。
 確かに古王国シャングラの地上はガリア教会の所有ですが、教会がハンター支部を開設したり、宿屋や食堂や商会等を誘致し、役場的なものを設置するのは難しいと思います」

 大神官様は教会の立場を考えると、治安維持や税収や住民の管理を、教会の人員で行うのは不可能だと子供の私を諭すように言った。

 ……う~ん、確かに教会本部に余剰人員なんて居ないかぁ・・・

 まいったなぁ・・・だったら教会に任命された領主みたいな人が必要ってこと? 領主っていう言い方は変かぁ。
 神聖国ガリアは国と言っても、本部がある中央以外は、地方教会の教会長が治めてるもんなぁ。
 神聖国ガリア管理地の代官?的な感じで、誰かお願いできないかなぁ・・・

「・・・がいいと思います」

 いかん、事務官の話を聞いてなかった。つい自分の思考に潜ってた。

「そうですね、それなら間違いないでしょう。他国からの文句も出ないと思います。今更エイバル王国も、文句など言えないでしょうからね。ねえ、大賢者様?」

「はい? すみません大神官様、事務官様の話をきちんと聞いていませんでした」

 私はペコリと頭を下げて正直に謝り、もう一度どういう話だったのか話して貰うことにした。

「ハハハ、大賢者様、私に様付けは必要ありません。
 地上にゲートを開くとして、ゲート名は【サンタゲート】で、町の名前は統治する大賢者様の名で【神聖領ガイアスラー】でいいでしょうという話でした」

「・・・はい? えっ? サンタゲート?・・・神聖領ガイアスラー? えぇーっ!」

 いったい何の話?
 神聖領ガイアスラー?
 財務部の事務官さん、いったい何を言っているの?
 町を統治するなんて、私はまだ8歳だよ? いや、数日後には9歳だけど、それでも無理だよ。右腕のアレス君だって11歳になったばかりだよ?

「なんでみんなニコニコしてるの? 子供の私が統治者? みんな、だ、大丈夫? エイバル王国の国王から嫁として押し付けられそうに……いや、あれは迷惑料としてだっけ・・・褒美としてだっけ? と、とにかく、落ち着いて」

『サンタや、お主が落ち着け』

『だってサーク爺、神聖領ガイアスラーだよ? 無理無理、絶対に無理だって!』

 ……ダメだ、完全に混乱してる。お、お、落ち着かなきゃ。

 スーハ―と何度か深呼吸をして、落ち着こうと頑張ってみるけど、なんだか上手くいかない。
 エイバル王国の伯爵領の半分をくれるって話の時は、絶対に嫌だったし、聞く耳もないって感じだったのに、何故か今回は嫌だとは思わない。
 だからって、できるのかと訊かれたら・・・う~ん、う~ん、どうなの?

「まだ確定ではありません大賢者様」

 そう言って微笑む大神官様が、なんだか怖いんですけど・・・
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