三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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サンタさん、目標を決める

29 新ロード探索(1)

 開拓者のトキニさんが仲間に加わって半年、新ロード探索はまだ続いている。
 これまで発見されていたロードと比べ、明らかに距離が長く本道は東へと伸びており、幾筋もの側道を探索する余裕は全くない。
 この新ロード、巨大トカゲだけじゃなく様々な地底生物が湧いて出るのだ。
 だから危険生物が出た側道は、全て封鎖されている。

 他のトレジャーハンターが探索を許可されているのは、侵入口から安全が確保された2キロ地点までだったが、バカというのは何処にでもいる。 
 協会が侵入を禁止していた側道に勝手に入り、巨大トカゲと遭遇しメンバーの半分を失った銀級パーティーは、協会から3か月間の活動停止を言い渡された。

 この解散寸前に追い込まれた銀級パーティーのリーダーは伯爵家の4男で、王宮魔術師団所属の中位・魔術師を1人、金貨を積んで臨時雇用したらしい。
 これで自分たちも、簡単に巨大トカゲを討伐できると勘違いしたようだ。
 地底生物と戦ったこともない王宮魔術師は、攻撃系魔法陣を使ったようだけど、詠唱している間に襲われた。

 協会の掲示板には【新ロードの危険区域に入る許可を得るには、の中位・魔術師を2人以上同行する必要がある】と指示が出されている。
 因みに私は、4歳になった時に協会の中位・魔術師試験を受けて合格している。
 だから私のトレジャーハンター資格証には、【銅級 中位・魔術師(魔法使い)】と書いてある。


 私から魔法を学んでいる協会所属の中位・魔術師のファーズさんは、先月からずっとゲートルの町に滞在し、【最速踏破者】の新ロード探索に同行している。
 覚えた魔法を使いたいけど、協会の魔術師には魔法が使えることを秘密にしているそうで、魔法を使うには新ロードに潜るしかないらしい。

 私は魔法を他者に教えることは嫌じゃないけど、ファーズさん、お爺様、チーフ、ホッパーさん、協会のトップとの協議で、魔法を広めるのは私が魔術師学校か王立能力学園に入学し、学校内で魔法を披露してからにすべきだと決めたらしい。

 チーフが言うには、優秀な魔術師が所属する魔術師協会に、トレジャーハンター協会が、真っ向から喧嘩を売ったと思われるのを避けるためだとか。

 ……よく分からないけど、私が勝手に魔法を教えると大混乱になり、プライドの高い王宮魔術師たちに殺される可能性もあるとか・・・あぁ面倒臭い。



 そうそう、新ロードにハンターたちが潜る時は、発見したパーティーと協会に通行料を払う決まりがあるんだよね。
 この通行料は、新ロードが最終地点まで到達したと認定されてから3年間徴収される。
 それくらい新ロードを発見するのは大変で、発見後も自分たちで最終地点まで到達しなければ、通行料を貰う割合が減ってしまう。

 何回も潜りたい者は、1か月間の通行料として1人金貨1枚(10万エーン)を先に払う。
 凄く高額だけど、この場合どんな地底生物を討伐しても、生活用品を採掘しても、全てが自分の取り分となる。
 ただし、魔術具を採掘した場合は、落札価格の2割を【最速踏破者】に支払う義務がある。

 試しに潜りたい者は、その都度1人中銀貨1枚(5千エーン)を払って潜る。
 この場合、地底生物や生活用品は売値の1割、魔術具だと落札価格の5割を【最速踏破者】に支払う義務がある。
 魔術具は絶対に競売されるから、勝手に売買はできないんだって。

 この半年間、新ロードで採掘された魔術具は6台。
 うちが採掘したのは2台で、その内の1台が音楽を自動で奏でることができる魔術具で、どこかの公爵が白金貨3枚(3百万エーン)で落札した。
 もう1台は、うちのお爺様が金貨3枚で落札した。

 その魔術具は金属を圧縮する機械だと、守護霊のトキニさんが教えてくれたので、お爺様に競売の前に情報を伝えておいた。
 競売では技術者が使う魔術具のようですと説明があり、お爺様の他に欲しがった人は3人しかおらず、本当に役立つかどうか分からない魔術具の場合、最高でも金貨3枚くらいで落札となるそうだ。

 そもそも魔術具は、何のための機械なのか鑑定できるのは4割くらいで、稼働できなければ価値も下がる。
 何か分からない魔術具を買い取って研究しているのがお爺様で、解明するには時間もお金も掛るけど、稀に大当たりの魔術具に出会うんだって。
 因みに魔術具の鑑定をするのは、協会の鑑定士だ。



 さて、この半年間で、私の貯金は着実に増えている。
 驚いたことに、王都の外れなら小さな家が買える程の金額になってしまった。
 だって、生活費はホッパーさんが出してくれるし、服はお爺様が来た時に買ってくれる。だから全額、協会に貯金してあるんだよね。
 おやつは【最速踏破者】メンバーとかサブチーフが貢いで……ゴホン、買ってくれるから。

 何しろ私には、通行料の内3%が入ってくる。
 リーダーが13%、サブリーダーは10%で、他のメンバー4人は1人6%だ。
 残りの50%は協会が徴収し、ロードにランプを設置したり、危険な側道を塞いだりと、維持管理費として使っている。
 新ロード発見後に正式メンバーになった私だけど、貢献度が高いから貰って当然とチーフが決めたらしい。

 
 討伐した巨大トカゲは全ハンター合わせて15体で、5体は私が単独で倒し、6体は仲間と一緒に倒した。
 巨大トカゲの皮は剣や槍を通し難く、金属の鎧や防具に比べて加工しやすい。
 だから、エイバル王国軍の指揮官の防具として、高額で買い取られている。
 肉は煮込めば美味で、王都では珍味として大人気だとか。

 私には、通行料の3%、仲間と採掘した魔術具や日用品、地底生物の売却代等の一部が入ってくる。
 単独で討伐した地底生物の代金は、8割を貰っている。
 高級品の魔核は、魔術具の起動に必要なので、殆どが国に買い取られていく。

 ……わたし、頑張って稼いでるよ母様、兄さま。

 そうそう、私もファーズさんに習って魔法の杖を作ったよ。
 でも、杖が重くて持てなかった。グスン。


「さあ、今日こそ最終地点まで行くわよー!」

 掘削担当のボンゴライアさん22歳の腕に抱っこされて、3キロ地点で自分と皆に気合を入れる。

『やばいでサンタさん。この先のロードには罠が設置されとる』
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