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サンタさん、目標を決める
31 新ロード探索(3)
……やばい、これは絶対にヤバイやつだ! あの唸り声は危険な獣に違いない。
『あの唸り声はブラックウルフじゃないか?』
「ブラックウルフって、絶滅したって言われてるアレ?」
『絶滅? いや、あいつらは森の岩場に住んどったで。トレジャーハンター協会の2階へ上がる正面の壁に掛けてある絵画のアレやで?』
「ん? あの大きな犬?」
『まあ犬の仲間じゃな。奴等は群れで行動するからな、気を付けた方がいいじゃろう』
「みんな下がって! ファーズさん、外の唸り声はブラックウルフだってトキニさんが言ってる。サーク爺は群の可能性もあるって!
もしも大きいのが穴から飛び込んできたら、思いっ切り魔法を使っていいわ」
「わ、分かった」と言って、ファーズさんは光り射す穴に向かって杖を構える。
私もポケットから石礫を取り出し、穴の下に向かって少しずつ移動して行く。
僅か30秒後、金色に輝く小さな何かが、「きゅー」って鳴きながらロードに飛び込んで来た。
その何かは、キツネのような尻尾を持っているけど、色はキツネとは違うし、顔はどちらかというと猫に近く、大きさは幼児の両手に載るくらいだ。
きゅーきゅーと鳴きながら、私の足元でブルブルと震え尻尾を丸めている。
「か、かわいい。あっ、この子ケガしてるかも」
キラキラと輝く金色の毛の一部には、べったりと赤い血が付いていて、丸いつぶらな瞳からは涙が流れている。
「上の唸り声は、この子に向けられていたのか?」とファーズさんが言った直後、地上では獣同士が争うような唸り声とか足音とか、まるでぶつかり合うようなドスッって音まで聞こえてきた。
『上で争っているようじゃな』
『この子、光猫かいな・・・なんとも珍しい。こりゃ縄張り争いか、光猫の巣が襲われとるんやないか?』
サーク爺とトキニさんの話を聞きながら、今直ぐ私たちに危険が迫っている訳ではないと分かり、少しだけ肩の力が抜けた。
でも私は、右手の人差し指を唇に当て、皆に喋らないでと指示を出す。
ゆっくり深呼吸をして、お気に入りのウエストポーチにハンカチを敷く。
そして光猫らしき小さな動物を、怖がらせないよう優しく両手で包みウエストポーチに入れてみる。
私の小さな手で包める程の大きさだったから、全身をすっぽりと入れることができた。
ガタガタと震えていたけど、狭い所に入ったからか少し落ち着いたようで、「きゅーきゅー」と小さく鳴いて、気を失うように眠ってしまった。
「怖かったね。もう大丈夫」って、私は囁くように呟き、穴の向こう側を睨み付けた。
地上ではまだ戦いが続いていたけど、私はどうしても外が見たくなり、音をたてないよう忍び足で穴に近付き、崩れた土砂をゆっくりと上がっていく。
幼児だから滑らないように注意を払って、少しずつ少しずつ上を目指す。
上まで辿り着いた時、偶然にも地上の戦いが終わったのか、気分が悪くなりそうな血の臭いと、ズルズルと何かを引き摺るような音が聞こえてきた。
頭の中で残酷な光景を想像してしまい、思わずぎゅっと目を瞑ってしまう。
ワオーンと雄叫びを上げたブラックウルフの声を聞き、皆もいろいろと察したようで顔色が悪い。
『サンタや、弱肉強食の獣の世界、人間であるお主が下手に干渉するのは良くない。無駄に戦うな。お主は今、最速踏破者のメンバーじゃ。勝手な行動をするでない』
『分かってるよサーク爺。だけど、どうせ地上の様子は見なきゃいけないもん。
やっと、やっとゴールしたんだから・・・それに、もしかしたらこの子の家族が生き残ってるかもしれないし』
『分かった、俺が見てきたる。危険な奴等がおらんかったら、皆で地上に出たらええ』
……私たちは襲われずに済んだ。この子の家族は助けられなかったけど、私は一人じゃない。仲間の命を守るのも私の仕事だ。
ゴールの喜びを満喫するはずだったのに、なんか悲しくて悔しい。
いつかブラックウルフに遭遇したら、その時は負けない。
それまでに中級魔法をマスターし、この子と一緒に無双してやる。うん。
眠ってしまった小さな子の頭を撫でながら、しょげてる場合じゃないって自分に活を入れる。
「リーダー、今サーク爺とトキニさんが地上の様子を見に行ったから、獣が居なくなったら地上に出ていいよ。
みんな、新ロード貫通おめでとう。これで私、王都に家を買える。やったー!」
私は振り返って、精一杯の笑顔で皆におめでとうって伝える。
そして自分の望みが一つ叶うって、万歳しながら自分の気持ちを上げていく。
……うん、嬉しい。私はよく頑張った。
……この子は、私が大事に育てればいい。
サーク爺とトキニさんが戻ってきて、あと5分も待てばブラックウルフの群は遠のくと教えてくれた。
「よし、サンタさんはその子の面倒をみていろ。先に俺たちが外の様子を見る。ファーズさん、土の階段って作れるか?」
「ああ、任せてくれリーダー。サンタさんも安全な階段を作ってやろう」
5分後には、ファーズさんが魔法陣で作った階段を上って、皆が地上へと出ていった。
「何じゃここはー!」と、リーダーの叫び声が聞こえる。
「信じられない」と、槍担当のサバンヤさんの声が続く。
「リーダー、ちょっと、これ、埋めといた方が」って、サブリーダーの声も聞こえた。
きっと、散らばっている何かを私に見せないよう、優しいサブリーダーが気を使ってくれたんだ。空気の読める4歳児の私は、それに気付いて嬉しくなった。
10分後、ボンゴライアさんの逞しい腕に抱っこされた私は、明るく眩しい地上に出て、「何ここ・・・」って呟き絶句した。
そこにあったのは、古代の住居跡と思われる建物や、神殿のような大きな柱たち、階段式の巨大な建造物だった。
そして、この場所を守っているかのように凛と立つ1本の巨木。
辺りをぐるりと見回すと、そこは私が予想していた森や荒れ地などとは違う、周囲を絶壁に囲まれた・・・此処だけ天変地異の影響を受けなかったとしか思えない場所だった。
『ここまで火山活動の痕跡がはっきりと残っとる断層は、初めて見たで。なんやここ、なんで埋まってへんのや?』
『あの唸り声はブラックウルフじゃないか?』
「ブラックウルフって、絶滅したって言われてるアレ?」
『絶滅? いや、あいつらは森の岩場に住んどったで。トレジャーハンター協会の2階へ上がる正面の壁に掛けてある絵画のアレやで?』
「ん? あの大きな犬?」
『まあ犬の仲間じゃな。奴等は群れで行動するからな、気を付けた方がいいじゃろう』
「みんな下がって! ファーズさん、外の唸り声はブラックウルフだってトキニさんが言ってる。サーク爺は群の可能性もあるって!
もしも大きいのが穴から飛び込んできたら、思いっ切り魔法を使っていいわ」
「わ、分かった」と言って、ファーズさんは光り射す穴に向かって杖を構える。
私もポケットから石礫を取り出し、穴の下に向かって少しずつ移動して行く。
僅か30秒後、金色に輝く小さな何かが、「きゅー」って鳴きながらロードに飛び込んで来た。
その何かは、キツネのような尻尾を持っているけど、色はキツネとは違うし、顔はどちらかというと猫に近く、大きさは幼児の両手に載るくらいだ。
きゅーきゅーと鳴きながら、私の足元でブルブルと震え尻尾を丸めている。
「か、かわいい。あっ、この子ケガしてるかも」
キラキラと輝く金色の毛の一部には、べったりと赤い血が付いていて、丸いつぶらな瞳からは涙が流れている。
「上の唸り声は、この子に向けられていたのか?」とファーズさんが言った直後、地上では獣同士が争うような唸り声とか足音とか、まるでぶつかり合うようなドスッって音まで聞こえてきた。
『上で争っているようじゃな』
『この子、光猫かいな・・・なんとも珍しい。こりゃ縄張り争いか、光猫の巣が襲われとるんやないか?』
サーク爺とトキニさんの話を聞きながら、今直ぐ私たちに危険が迫っている訳ではないと分かり、少しだけ肩の力が抜けた。
でも私は、右手の人差し指を唇に当て、皆に喋らないでと指示を出す。
ゆっくり深呼吸をして、お気に入りのウエストポーチにハンカチを敷く。
そして光猫らしき小さな動物を、怖がらせないよう優しく両手で包みウエストポーチに入れてみる。
私の小さな手で包める程の大きさだったから、全身をすっぽりと入れることができた。
ガタガタと震えていたけど、狭い所に入ったからか少し落ち着いたようで、「きゅーきゅー」と小さく鳴いて、気を失うように眠ってしまった。
「怖かったね。もう大丈夫」って、私は囁くように呟き、穴の向こう側を睨み付けた。
地上ではまだ戦いが続いていたけど、私はどうしても外が見たくなり、音をたてないよう忍び足で穴に近付き、崩れた土砂をゆっくりと上がっていく。
幼児だから滑らないように注意を払って、少しずつ少しずつ上を目指す。
上まで辿り着いた時、偶然にも地上の戦いが終わったのか、気分が悪くなりそうな血の臭いと、ズルズルと何かを引き摺るような音が聞こえてきた。
頭の中で残酷な光景を想像してしまい、思わずぎゅっと目を瞑ってしまう。
ワオーンと雄叫びを上げたブラックウルフの声を聞き、皆もいろいろと察したようで顔色が悪い。
『サンタや、弱肉強食の獣の世界、人間であるお主が下手に干渉するのは良くない。無駄に戦うな。お主は今、最速踏破者のメンバーじゃ。勝手な行動をするでない』
『分かってるよサーク爺。だけど、どうせ地上の様子は見なきゃいけないもん。
やっと、やっとゴールしたんだから・・・それに、もしかしたらこの子の家族が生き残ってるかもしれないし』
『分かった、俺が見てきたる。危険な奴等がおらんかったら、皆で地上に出たらええ』
……私たちは襲われずに済んだ。この子の家族は助けられなかったけど、私は一人じゃない。仲間の命を守るのも私の仕事だ。
ゴールの喜びを満喫するはずだったのに、なんか悲しくて悔しい。
いつかブラックウルフに遭遇したら、その時は負けない。
それまでに中級魔法をマスターし、この子と一緒に無双してやる。うん。
眠ってしまった小さな子の頭を撫でながら、しょげてる場合じゃないって自分に活を入れる。
「リーダー、今サーク爺とトキニさんが地上の様子を見に行ったから、獣が居なくなったら地上に出ていいよ。
みんな、新ロード貫通おめでとう。これで私、王都に家を買える。やったー!」
私は振り返って、精一杯の笑顔で皆におめでとうって伝える。
そして自分の望みが一つ叶うって、万歳しながら自分の気持ちを上げていく。
……うん、嬉しい。私はよく頑張った。
……この子は、私が大事に育てればいい。
サーク爺とトキニさんが戻ってきて、あと5分も待てばブラックウルフの群は遠のくと教えてくれた。
「よし、サンタさんはその子の面倒をみていろ。先に俺たちが外の様子を見る。ファーズさん、土の階段って作れるか?」
「ああ、任せてくれリーダー。サンタさんも安全な階段を作ってやろう」
5分後には、ファーズさんが魔法陣で作った階段を上って、皆が地上へと出ていった。
「何じゃここはー!」と、リーダーの叫び声が聞こえる。
「信じられない」と、槍担当のサバンヤさんの声が続く。
「リーダー、ちょっと、これ、埋めといた方が」って、サブリーダーの声も聞こえた。
きっと、散らばっている何かを私に見せないよう、優しいサブリーダーが気を使ってくれたんだ。空気の読める4歳児の私は、それに気付いて嬉しくなった。
10分後、ボンゴライアさんの逞しい腕に抱っこされた私は、明るく眩しい地上に出て、「何ここ・・・」って呟き絶句した。
そこにあったのは、古代の住居跡と思われる建物や、神殿のような大きな柱たち、階段式の巨大な建造物だった。
そして、この場所を守っているかのように凛と立つ1本の巨木。
辺りをぐるりと見回すと、そこは私が予想していた森や荒れ地などとは違う、周囲を絶壁に囲まれた・・・此処だけ天変地異の影響を受けなかったとしか思えない場所だった。
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