三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

文字の大きさ
64 / 230
サンタさん、魔術師になる

64 用意された罠(1)

 大至急ゲートルの町に帰れって、何かあったのかな?

「今から帰る予定なので問題ありませんが、何があったか書いてありましたか?」

 ホッパーさんがそう問うと、家令のコーシヒクさんは他には何も書いてなかったと答え、もしもの事態を考慮し、ホロル様の専用馬車で戻って欲しいと頼まれた。
 まあ毒殺を企む者が居るんだから、万が一って考えたら居ても立っても居られないかぁ・・・

 私は直ぐに仕返しの魔法陣を仕掛け、内容は教えられないけど、呪符が仕掛けられていた部屋には、絶対に誰も立ち入らないようお願いしておいた。
 ホロル様は、正式なお礼は母様を屋敷に呼んで改めてするけど、とりあえず受け取って欲しいと言って、上流地区に入るための許可証と、アロー公爵家の刻印入り黒革のファイルをくれた。


【 爵位授与証明書 及び 確約書 】

 アロー公爵家に対し、多大な貢献をした褒賞として以下の者を叙爵する。

 サンタナリア・ハーシルン・ファイト 5歳。
 準男爵位を与え、サンタナリア・ヒーピテ・ファイトアロ と名乗ることを許可する。
 アロー公爵家に帰属する貴族ではあるが、一切の義務を負う必要はない。

 また、7歳の誕生日に、治める領地なし役職無しの、男爵に叙爵することを確約する。
 この確約は、公爵家当主が途中で変わっても、変更されることはない。

 アロー公爵家 嫡男 ホロル・ダグラン・アロー


 ……う~ん、何故か爵位を貰っちゃったよ。

 ファイトって、完全にアロー公爵家の紐付きってことよね・・・
 上流地区に入る許可証には、既に新しい名前が書かれてるから、朝一番で王宮に行って作らせたんだろうな・・・筆頭公爵家のゴリ押し恐るべし。
 貰った爵位授与証明書及び確約書の他にも、王宮発行の爵位証明書と、後見人証明書も黒革のファイルに挟んであった。

「まあ、当然といえば当然の褒賞だと思いますが、5歳で準男爵ですか・・・
 法律では確かに5歳から準男爵になれると定められていますし、7歳になったら男爵位だって叙爵や継承可能ですが、ファイト子爵様の困惑したお顔が目に浮かびますね」

 ホッパー商会の2頭立ての立派な馬車じゃなく、4頭立てキラキラの豪華馬車の中で、頂いた証明書をしげしげと見たホッパーさんが呟く。

「そうだね。私の夢は他の貴族に帰属するんじゃなくて、自分で新しい家名を興すことだったんだけどなぁ・・・
 でもシロクマッテ先生が、王命による叙爵なら新しい家名を名乗れるって言ってたし、女性は2つまで爵位を持てるとも言ってた。
 自分で男爵以上の働きをして子爵にならなきゃ、アロー公爵家の臣下のままになっちゃう」

 7歳で魔術師学校に入学する時、私って男爵として入学するの?
 う~ん、アレス君を守るためには子爵家の孫じゃあ、確かに舐められるよね。
 ああ、それも考慮しての男爵位かぁ・・・私、トレジャーハンターなんだけど。

「ものは考えようですよサンタさん。7歳で魔術師協会発行の下位資格を取ったら、多方面から強引に勧誘されるのは確実ですが、男爵本人であれば撥ね退けても大丈夫です」

「ああ、嫌いな金級パーティー選ばれし勇者とかだよね。マジで関わりたくない」

 なんて会話をしながら、キラキラの馬車をすっ飛ばしてゲートルの町に1日早く帰ったら、本当に奴等がやらかしていた。



 調査団は3日間【聖なる地】で調査する。4日目は報告書を作成し、5日目は休日という、5日間の日程を5回繰り返すと決めている。
 私が王都に旅立ったのは4日目で、ヒバド伯爵は5日目の休日にゲートルの町に到着したようだ。

 用心のためホッパーさんは、町の情報屋にヒバド伯爵の次男ナックルの動きを探らせており、もしもヒバド伯爵が来たら、一緒に動向を探るよう依頼していた。
 それとは別に、アロー公爵も私兵に動きを探らせていたらしい。


「その事件は、6日目の朝に起こった」と、アロー公爵が話し始めた。

 いつものようにうちのリーダーは、行きつけの食料品店にリヤカー担当のカンパーニさんと一緒に買い物に寄った。
 そこで何故か、いつもは出会わない金級パーティー選ばれし勇者と遭遇し、罠に嵌められてしまったのだと言う。
 
 選ばれし勇者はその日、新しくパトロンに名乗りを上げたヒバド伯爵の息子ナックルと一緒だった。
 買った食料をリヤカーに積もうとしていたリーダーは、後ろから誰かに突き飛ばされ、側に居たナックルにぶつかってしまった。

「伯爵家の子息である私を害するとは何事だ! 不敬罪で訴えてやる!」

 ナックルは大袈裟に転倒し、うちのリーダーに向かって叫んだらしい。
 用意周到に懇意の役人まで待機させていた選ばれし勇者のリーダーボイルは、「何をする無礼者め!」と大声でうちのリーダーを叱咤し、役人に向かって「伯爵家の子息を害そうとした罪人を捕らえろ」と、指示を出したそうだ。

 リーダーは誰かに突き飛ばされ、わざとぶつかった訳ではないし、ケガをさせる気は全くなかったと弁明したが、聞き入れてもらえなかった。
 リーダーは警備隊に連れていかれ、ナックルが被害届を出したので、最低でも2日間は取り調べを受ける必要があり、警備隊詰め所に拘留されることになった。

 でもまあリーダーは善人として名を売っており、店の人も通行人も情報屋の人も事件を目撃していて、警備隊で事実を証言してくれた。
 リーダーを突き飛ばしたのは、選ばれし勇者のメンバー銅級のモグバスで、大けがをしたと騒いでいた貴族は、わざとらしく大袈裟に転び、打ってもいない頭を痛がっていたのだと。

 それでも相手は貴族だから、2日間は拘留しておいた方が無難だと警備隊の責任者は判断した。
 リーダーの拘留を知ったゲートル支部のチーフは、戦力不足なので【聖なる地】に出発するのは難しいと、支部前に集合していた調査団に渋々報告した。

 そこに、偉そうにほくそ笑む選ばれし勇者のリーダーが現れて「それなら、我々が護衛を代わってやろう」と言ったらしい。

 ……ちょうど顔を合わせなくて済むと思っていたけど、選ばれし勇者と手を組むとは、バカそうな息子と違い、父親のヒバド伯爵は頭がきれるみたいね。
感想 3

あなたにおすすめの小説

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。 2020/9/19 第一章終了 続きが書け次第また連載再開します。 2021/2/14 第二章開幕 2021/2/28 完結

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

『教育係など誰でもできる』と私を捨てた婚約者だけが、誰にも教わらなかった

歩人
ファンタジー
頭上に才能値が見える加護を持つ伯爵令嬢セシリアは、貴族子弟の家庭教師として十年を捧げた。 「教育係など誰でもできる」——婚約者の侯爵嫡男に捨てられた翌年、異変が起きる。 宰相の息子が「セシリア先生のおかげです」と宣言し、騎士団長の娘が「戦術は先生から」と語り、 第三王子が即位演説で頭を下げた。王国の未来を作った女性が名もなき家庭教師として捨てられていたと 知ったとき——教えを拒んだたった一人の男だけが、取り残された。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。