俺はノーマルだ！！

彼を守る

ー冬馬sideー



だるい。

痛い。

きつい。


そんな感情の中、俺は体育館裏にいた。


昨日の放課後、ストレス発散で街へ向かった。
だが不意打ちでの大人数。

一瞬の隙をつかれ、そこからは一方的だ。
俺は隙を見計らい逃走。

そして辿り着いたのが体育館裏というわけだ。

その時にはもう体力は尽きていた。朝早く誰も居ないのが救いだな。



俺はだるさに身を任せ、瞼を閉じる。


何時間経っただろう。

胸に体温を感じ、心地よさを覚える。
人の体温を感じたのはいつぶりだろうか。

そして、俺の上に何かが優しく被せられる。

意識が戻り出し、瞼を上げる。



そこには『女』がいた。


いや、正確には男だ。
俺が女と見間違えたのはその容姿だ。


　ミルクティー色の柔らかい髪にアウナイトのように青く澄み切っている瞳。
肌はきめ細かく雪のように白い。
形の良い唇は桜色に色付いている。
瞬きをするたびに揺れる長い睫毛が色気を醸し出し男の欲を掻き立たせる。
　だが骨格は角ついていて相手は男だと認識させる。


男の俺から見ても綺麗だと思った。


だが油断は命取りとなる。
俺は直ぐに距離を取り、相手の行動を観察する。

今、俺は怪我をしている状態だ。万全では無い限り何が起こるかは分からない。


どうやら相手は俺を心配して様子を確認しに来たようだ。
……心配、か。

ふと足元を見る。ブレザーが落ちている。
寝ている間に被せられていたのはこのブレザーだったのか。

きっと彼が自分のものを俺に掛けてくれたのだろう。
赤の他人だ。
こんな事をする義理はない。

優しいんだ、彼は。


俺は立ち去ろうとしていた彼の腕を掴んだ。

名前を名乗り、今までの態度を謝罪をした。
そして汚してしまったブレザーを拾い、洗って返すと言った。
だが彼は入学式で必要だと言うので、俺は自分のブレザーを彼に貸すことにした。

俺は彼の手をひき、教室へと向かった。



同性愛が当たり前のこの学園では彼は格好の的だろう。
俺は心の中でそっと彼を守ろうと決めた。