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家へ帰ると、たくさんの靴が玄関に並んでいた。親父の客ならこんな運動靴みたいなものは履いてないだろう。そう思ったのは間違いではなく、リビングからわいわいと声が聞こえた。
「宝くじが当たったでござるー」
「わあ、またもうけたのかよお前」
俺はその声に軽く眉を寄せた。
「え、何で?」
遥さんがにこにこしながら出迎えてくれ、
「お友達が来て、帰りを待ってたんだよ」
「へえ」
聞いて、リビングへ行く。
春弥、前川、勇実、西村、一谷、黒川、叶の7人で、人生ゲームをして盛り上がっていた。
「あ、柊弥、お帰り」
春弥が気づいて言うと、どうも負けていたらしい叶が、素早く自分の約束手形を皆のものと混ぜ、札を集め出した。それに気づいた黒川はどうも勝っていたようだが、何か言いかけ、諦めたように口を閉じた。
「ただいま」
「こいつらが柊弥に頼みがあるって家の前をウロウロしてたから、ピンポン押したら春弥が出てきて」
「うん。それで一緒に待つことにしてゲームしてたんだよね」
勇実と春弥が言い、それでほかの皆がこくこくと頷いた。
「ふうん。で、頼みって」
言いながら空いたところに座ると、西村たちは目を見交わし、一列に並んで正座した。
「ゴールデンウィークに館駒祭があるだろ」
市民グラウンドに舞台を作り、申し込みをした市民がダンスや音楽を披露し、それをグラウンドに置かれたテーブルとイスに座って楽しむという催しだ。食べ物の屋台やソフトドリンクやアルコールの販売もあり、年間行事のひとつとして楽しみにしている市民は多い。
子供のストリートダンス、地区の老人会の大正琴の合奏、中高生のバンド、マジックサークルの手品など、舞台に申し込まれるものも種類は様々で、一日中楽しめるお祭りだ。
「俺たち、バンドで申し込んだんだけど。何か足りなくて」
一谷が切り出す。
「この前の遠足でピンと来たでござるよ。柊弥にエレキバイオリンを弾いてもらえばいいでござる!」
「頼む。県立に行ったやつとバンド対決することになってしまって、負けるわけにはいかないんだよ」
一谷が悲壮な顔つきで言うのに、叶が付け加える。
「中学の時クラブの皆へってもらったアイドルたゆたんのサイン色紙と生写真を、音楽の部の審査点が高い方がもらうことになってるんだ。あいつら隠して持ってやがったんだよ。汚ねえやつらだ」
それに、勇実が激しく反応した。
「たゆたん!?それはまじか!」
それで、たゆたんがわからなくてもわかった。かわいくて巨乳なアイドルだろう。
「まじでござる」
「み、見たいぜ!」
「勝ったら、見せてやれるんだけど。写真はコピーだってできるし」
叶が言うと、勇実がこちらを見た。
「柊弥、友達じゃねえか。協力してやろうぜ」
力が抜けた。
「いや、急すぎるだろ。俺、バンドなんてしたことないし、ロックは弾いたこともないぞ。それに、エレキバイオリン、あるのか?」
それには、いつの間にかいた親父が答えた。
「あるぞ」
「親父ぃ」
「練習はうちですりゃあいい。
皆のものをこっそりがめるようなやつに負けるなよ」
一谷たちが、親父を尊敬のまなざしで見ている。
「楽しみだね!」
春弥も乗り気で、前川も
「できることがあれば手伝うよ」
となぜか前向きだ。
ああ……。
そうして俺は、急遽彼らとバンドを組むことになったのだった。
まあそのおかげで、さっきの小田先輩のショックはすっかりどこかへ行ってしまった。
「宝くじが当たったでござるー」
「わあ、またもうけたのかよお前」
俺はその声に軽く眉を寄せた。
「え、何で?」
遥さんがにこにこしながら出迎えてくれ、
「お友達が来て、帰りを待ってたんだよ」
「へえ」
聞いて、リビングへ行く。
春弥、前川、勇実、西村、一谷、黒川、叶の7人で、人生ゲームをして盛り上がっていた。
「あ、柊弥、お帰り」
春弥が気づいて言うと、どうも負けていたらしい叶が、素早く自分の約束手形を皆のものと混ぜ、札を集め出した。それに気づいた黒川はどうも勝っていたようだが、何か言いかけ、諦めたように口を閉じた。
「ただいま」
「こいつらが柊弥に頼みがあるって家の前をウロウロしてたから、ピンポン押したら春弥が出てきて」
「うん。それで一緒に待つことにしてゲームしてたんだよね」
勇実と春弥が言い、それでほかの皆がこくこくと頷いた。
「ふうん。で、頼みって」
言いながら空いたところに座ると、西村たちは目を見交わし、一列に並んで正座した。
「ゴールデンウィークに館駒祭があるだろ」
市民グラウンドに舞台を作り、申し込みをした市民がダンスや音楽を披露し、それをグラウンドに置かれたテーブルとイスに座って楽しむという催しだ。食べ物の屋台やソフトドリンクやアルコールの販売もあり、年間行事のひとつとして楽しみにしている市民は多い。
子供のストリートダンス、地区の老人会の大正琴の合奏、中高生のバンド、マジックサークルの手品など、舞台に申し込まれるものも種類は様々で、一日中楽しめるお祭りだ。
「俺たち、バンドで申し込んだんだけど。何か足りなくて」
一谷が切り出す。
「この前の遠足でピンと来たでござるよ。柊弥にエレキバイオリンを弾いてもらえばいいでござる!」
「頼む。県立に行ったやつとバンド対決することになってしまって、負けるわけにはいかないんだよ」
一谷が悲壮な顔つきで言うのに、叶が付け加える。
「中学の時クラブの皆へってもらったアイドルたゆたんのサイン色紙と生写真を、音楽の部の審査点が高い方がもらうことになってるんだ。あいつら隠して持ってやがったんだよ。汚ねえやつらだ」
それに、勇実が激しく反応した。
「たゆたん!?それはまじか!」
それで、たゆたんがわからなくてもわかった。かわいくて巨乳なアイドルだろう。
「まじでござる」
「み、見たいぜ!」
「勝ったら、見せてやれるんだけど。写真はコピーだってできるし」
叶が言うと、勇実がこちらを見た。
「柊弥、友達じゃねえか。協力してやろうぜ」
力が抜けた。
「いや、急すぎるだろ。俺、バンドなんてしたことないし、ロックは弾いたこともないぞ。それに、エレキバイオリン、あるのか?」
それには、いつの間にかいた親父が答えた。
「あるぞ」
「親父ぃ」
「練習はうちですりゃあいい。
皆のものをこっそりがめるようなやつに負けるなよ」
一谷たちが、親父を尊敬のまなざしで見ている。
「楽しみだね!」
春弥も乗り気で、前川も
「できることがあれば手伝うよ」
となぜか前向きだ。
ああ……。
そうして俺は、急遽彼らとバンドを組むことになったのだった。
まあそのおかげで、さっきの小田先輩のショックはすっかりどこかへ行ってしまった。
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