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放課後のピンチ
授業は進んで行く。
向こうの世界での高校の授業と同じ程度の教科は勿論のこと、こちらでは、滅力を持つ者としての訓練もあり、これがなかなかハードだ。
「グラウンド3周!とっとと立ち上がって走れ!もう1周増やすぞ!」
鬼のような教師が言い、ぜいぜいと息を切らせてへばっていた悠理達だったが、悠理は恨めしそうに体育教師を見て呟いた。
「敬老精神はないのか」
それで、悠理の周囲の数名と、教師が悠理を見た。
「敷島。俺より若い奴が何言ってるんだ?」
「あ、間違えた。何でもないです。
さあ、仕方ないな。行くか。よっこらしょっと」
「……悠理って時々、何歳か迷う時があるんだよなあ」
均が笑う。
それで皆もつられて笑い、立ち上がる。
「何歳って、何歳だよ。ピチピチの高校生を捕まえて」
「そういうとこがおっさん臭いっていうか」
「な、なにをー」
「ほらほら、行くよ、悠理おじいちゃん」
均が言いながら走り出し、また、皆も走り出す。
教師はそれを見て、苦笑した。
(なんだかんだで、仲はいいし、連携もとりやすいかもな、こいつら。意外とまとめるのが上手いのが鈴木か)
それを横目に黙々と走っているのは、黒岩だ。そして、最初から元気いっぱいに走っていたのは鬼束だ。
(鬼束は体力がありあまっているだけで、ちゃんと合わせられる。問題は黒岩だな)
そう考え、報告事項に書き加えた。
テストなどが多いが、それ以外にもありとあらゆるところで、生徒達は見られている。
この学校の校区では、まだ眷属と言われる、通常攻撃でどうにかできる悪魔の手下のようなものしか出ていないので、実戦に出た生徒はいない。もうすぐ2年生が、この眷属相手に実習として戦場に出る事になっている。
そうしたら、中には精神的に追い詰められる生徒も出て来るかも知れない。島で、脱柵――脱走の事だが――するのは無理だとしても、自殺はあり得る。周囲を攻撃する事もあり得る。
そうならないために、おかしな様子がないか、大人達は目を配っているのだ。
しかし、いくら気を付けていても、カメラを取り付けていても、万全ではない。
悠理は放課後、いつもの通りに図書室の個室で調べものをしていた。
「悪魔に眷属、ねえ。ま、名前はともかくとして、どういう生物なんだろうな」
悠理は考え込んだ。
これでめぼしい関連資料は全て目を通した事になるが、答えは出ていない。夢の中で忌々しい腐女神が「生物」だと言っていたが、これらが生物だとすら、人類には解明できていない。
死体が消えるため、解剖や組織検査ができないのがいたい。発生の瞬間も不明だ。
「空気の中から現れて空気の中に消えるのか?どういう生物だ。
待てよ。という事は、ここにも薄くでも、あいつらの構成物質が漂ってるのか!?嫌だな、それは」
ブツブツ言いながら考え込む悠理は、背後でドアがそっと開けられるのに、まったく気付かなかった。
忍び寄って来た彼は、手にしていたスタンガンを悠理の首筋に押し当てる。
「物質がそこに存在する以上――ギャッ!?」
バチッと音がして、強い力で弾かれたような衝撃があり、悠理は椅子から転がり落ちた。
すぐに廊下から、別の人物が台車にダンボール箱を乗せて入って来ると、2人で悠理をその箱に入れた。
悠理は意識はあるものの体が動かず、台車の上のダンボール箱に体を丸めるようにして入れられ、蓋を閉められた。そしてすぐに、移動するような、振動が伝わって来るのを感じた。
(人を、荷物みたいに扱うな!)
悠理はそう言いたかったが、声も出ない。
彼らは無言のまま、そうしてどこかへと、悠理は運ばれて行った。
向こうの世界での高校の授業と同じ程度の教科は勿論のこと、こちらでは、滅力を持つ者としての訓練もあり、これがなかなかハードだ。
「グラウンド3周!とっとと立ち上がって走れ!もう1周増やすぞ!」
鬼のような教師が言い、ぜいぜいと息を切らせてへばっていた悠理達だったが、悠理は恨めしそうに体育教師を見て呟いた。
「敬老精神はないのか」
それで、悠理の周囲の数名と、教師が悠理を見た。
「敷島。俺より若い奴が何言ってるんだ?」
「あ、間違えた。何でもないです。
さあ、仕方ないな。行くか。よっこらしょっと」
「……悠理って時々、何歳か迷う時があるんだよなあ」
均が笑う。
それで皆もつられて笑い、立ち上がる。
「何歳って、何歳だよ。ピチピチの高校生を捕まえて」
「そういうとこがおっさん臭いっていうか」
「な、なにをー」
「ほらほら、行くよ、悠理おじいちゃん」
均が言いながら走り出し、また、皆も走り出す。
教師はそれを見て、苦笑した。
(なんだかんだで、仲はいいし、連携もとりやすいかもな、こいつら。意外とまとめるのが上手いのが鈴木か)
それを横目に黙々と走っているのは、黒岩だ。そして、最初から元気いっぱいに走っていたのは鬼束だ。
(鬼束は体力がありあまっているだけで、ちゃんと合わせられる。問題は黒岩だな)
そう考え、報告事項に書き加えた。
テストなどが多いが、それ以外にもありとあらゆるところで、生徒達は見られている。
この学校の校区では、まだ眷属と言われる、通常攻撃でどうにかできる悪魔の手下のようなものしか出ていないので、実戦に出た生徒はいない。もうすぐ2年生が、この眷属相手に実習として戦場に出る事になっている。
そうしたら、中には精神的に追い詰められる生徒も出て来るかも知れない。島で、脱柵――脱走の事だが――するのは無理だとしても、自殺はあり得る。周囲を攻撃する事もあり得る。
そうならないために、おかしな様子がないか、大人達は目を配っているのだ。
しかし、いくら気を付けていても、カメラを取り付けていても、万全ではない。
悠理は放課後、いつもの通りに図書室の個室で調べものをしていた。
「悪魔に眷属、ねえ。ま、名前はともかくとして、どういう生物なんだろうな」
悠理は考え込んだ。
これでめぼしい関連資料は全て目を通した事になるが、答えは出ていない。夢の中で忌々しい腐女神が「生物」だと言っていたが、これらが生物だとすら、人類には解明できていない。
死体が消えるため、解剖や組織検査ができないのがいたい。発生の瞬間も不明だ。
「空気の中から現れて空気の中に消えるのか?どういう生物だ。
待てよ。という事は、ここにも薄くでも、あいつらの構成物質が漂ってるのか!?嫌だな、それは」
ブツブツ言いながら考え込む悠理は、背後でドアがそっと開けられるのに、まったく気付かなかった。
忍び寄って来た彼は、手にしていたスタンガンを悠理の首筋に押し当てる。
「物質がそこに存在する以上――ギャッ!?」
バチッと音がして、強い力で弾かれたような衝撃があり、悠理は椅子から転がり落ちた。
すぐに廊下から、別の人物が台車にダンボール箱を乗せて入って来ると、2人で悠理をその箱に入れた。
悠理は意識はあるものの体が動かず、台車の上のダンボール箱に体を丸めるようにして入れられ、蓋を閉められた。そしてすぐに、移動するような、振動が伝わって来るのを感じた。
(人を、荷物みたいに扱うな!)
悠理はそう言いたかったが、声も出ない。
彼らは無言のまま、そうしてどこかへと、悠理は運ばれて行った。
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