オーバーゲート

JUN

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リフォーム

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 結局一晩中ホラーアクションを次から次に見てしまい――パート1からパート8まである人気シリーズだったのだ――、翌朝には俺達がホラーアクションに出ていたゾンビみたいな顔色になっていたらしい。
 隣の柏木が、俺達の顔を見て、半歩引いていた。
「ケガしたって聞いたが、よっぽど酷かったんだな」
「これは、オールナイトでホラーアクションを見続けたからかも……」
「大丈夫そうだな!じゃあな!」
 回れ右する柏木を、せっかくだからお茶でもと中へ誘う。
 元店舗部分をリビング兼ダイニングキッチンにしているのだが、今のところ、真ん中にすのこを置いてその上に座布団と布団を外したこたつを置いているのだ。
 しかしその居心地が今ひとつというより今よっつくらいなので、いい機会だからリフォームをしようと、勢いで始めたところだった。
「休憩するところだから、どうぞ」
 冷たい麦茶を3つ用意する。
 しかし柏木は、散らばった板や角材や金づちなどを見て、興味を示した。
「リフォームか」
「ここをフローリングにして、トイレの前も板張りにしたいんだけど」
「何故か坂になっちゃって」
「トイレの前が高いんだよ」
「いや、低いからこっちを切ったんだぜ?ちょっと。そうしたら、今度はこっちが高くなり過ぎちゃって。ははは」
「はははって、采真……」
 俺は呆然としたが、隣で柏木も呆然としていた。
「え?ちゃんと材木に、切る場所に線を引いたんだろ?」
 采真は、
「ええっと、大体?」
と言って笑う。
「お前ら、よくそれで自力でリフォームできると思ったな」
 返す言葉もない。
 柏木はぐぐぐっと麦茶を飲むと、宣言した。
「やり直す!」
「え、でも、柏木さん、今日の予定は?」
「どうせ今日は、迷宮は調査のためにトップチーム以外は立ち入り禁止だ!」

 柏木の指揮の元、リフォームが敢行された。
 ドアの前の2畳分ほどを残し、残り部分はカウンターの内側もトイレと階段の間も全てフローリングになった。店内の目隠しの為にあった壁を利用して、玄関と靴脱ぎ場を独立させるほどだ。
「凄ぇ!玄関の内側にドアができたぜ!」
「玄関ドアを開けてすぐにこたつとテレビって、落ち着くのか?」
 呆れたように柏木が言う。
「カーテンを吊るすくらいしかできないと思ってました」
「本当に、お前らよくそれで……まあ、いい」
 柏木はガックリと肩を落として溜め息をついた。
「どうも、ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
 俺と采真は礼を言い、リビングらしくなった元店舗部分の真ん中にラグを敷いて、こたつを置いた。
「テレビが直置きってのが気になって来たな」
「明日ホームセンターに行こうぜ!」
「霜村、音無。テレビ台を自作しようなんて無謀な事は考えるな。どうしてもなら、俺が作る」
「よろしくお願いいたしまあす!」
 采真に、遠慮はないのか……。
「本当にすみません」
 その分、俺が頭を下げておいた。
「礼というわけではないんですが、良かったら、改築祝いに夕食どうですか。理伊沙さんも」
「たこ焼きパーティーしようと思って!」
 柏木は少し考え、
「じゃあ、理伊沙を呼んで来るか」
と言って出て行った。
 その間に、準備をする。
 店に備え付けられていた業務用冷凍冷蔵庫は大きくてとても便利だし、カウンター下は食器や鍋やフライパンが楽に入るほど大きい物置棚になっていた。たこ焼きプレートや焼肉プレートやお好み焼きプレートやジンギスカンプレートまで付いたホットプレートもそこに入っている。
 それを引っ張り出して、延長コードをつなぐのは采真の役目だ。
 俺は、たこを切ったり、キャベツを切ったりする。
 生地の水加減で四苦八苦して、どんどんと小麦粉、水、小麦粉、水と順に足して行ったら、来た理伊沙さんに大笑いされ、柏木にキレ気味にひったくられて、
「もう座っとけ!」
と追い払われた。
 
 ワイワイと大騒ぎしながらたこ焼きパーティーをし、お腹もいっぱいになったところで、魔人の話になった。柏木は正座して謝ろうとしたが、それはやめてもらう。
 そして、楽しい気分のまま、柏木兄妹は帰って行った。
「ご近所付き合いも上手くいきそうだな、鳴海」
「ああ」
 しかし、柏木はどう思ってるかはわからない。物凄く手のかかるヤツとか思われているかも知れない……。





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