30 / 89
門の外での戦闘
しおりを挟む
魔人のレイと俺達は睨み合った。
「おい、そこの」
レイは俺を真っすぐに見ていた。
そして、眉を顰める。
「ん?何かこの前と違うな」
「成長期だからかな」
俺は軽く返しておいた。
「まあいい。
素直に来なかったせいで遅刻して、怒られたじゃないか」
「知るか」
答えた途端、レイが至近距離にいた。俺の首に手を伸ばしていた。
反射的にそのまま引き金を引いたら、風だった。それはレイの髪の片側をカットして、背後に流れた。
「あぶねえな!」
「そっちこそな!」
言いながら、中途半端に伸びた手に斬りつける。
が、こっちは下がって逃げられた。
なので追撃して行くと、迷宮化した壁に背が当たり、足が止まる。そこに霧を発生させると、その中から采真が剣を突き出し、レイの肩を薙いだ。
「うわっ!」
魔術士相手なら霧の中でも魔力を探っていれば攻撃がわかるが、物理の攻撃は、やはり目視らしい。
「この!」
采真へ攻撃しようとするレイに、横から俺が斬りかかり、それをどうにか防いだレイの頭上から、先に霧と同時に発して隠しておいた氷の攻撃が降り注ぐ。
「うっ!」
俺は采真をひっつかんで離れた。
霧と氷が、レイの天高く上がる火柱で消える。
その後、霧の晴れたところに現れたのは、血塗れになったレイだった。傷を消してニタリと笑う。
「絶対に許さない。死体にして引きずって行ってやる」
そう言って、氷の槍を生み出してこちらに注ぎ込んで来る。まるで集中豪雨の如き勢いだ。
「うわわわ!何だよこの勢いと量!どうするんだ、鳴海!?」
盾の中に入っている采真の声も、すぐ近くだというのに、聞こえにくいくらいだ。
「しゃっくりと同じかな」
「え?」
「びっくりしたら止まるんじゃないかと」
「そうかあ?」
俺達は言いながらも、油断なくレイの隙を窺っていた。
そして盾を維持しながら、片手を下に向けて魔式を紡ぎ、発動させる。
雷の魔術が蛇のようにレイに伸び、絡みつく。どうこうできるほどの威力はないが、一瞬痺れて、槍が止まる。 それと同時に、俺と采真は飛び出してレイに接近し、俺はレイの足を凍らせた。采真は次のレイの攻撃を読んでスッとかわし、レイに斬りつける。
向きを変えようにも、レイは下半身を凍らせ続けられている。攻撃も抵抗も上手くできないでいた。
「あああああ!」
癇癪を起したレイが周囲一帯へ炎を撒き散らそうとするのを、魔式を読んで俺はキャンセルし、驚いた顔のレイの右腕の傷口に魔銃剣の先を突き立て、爆発の魔術を3つ連発させた。
「ギャアアア!!」
これにはたまらなかったらしい。腕が爆発し、続いて肩が、胸が脇腹が爆ぜ飛ぶ。
「おお、おま、え!」
死にかけながらも俺に向かって魔式を綴ろうとするのを、胸の傷口に魔銃剣の先を当てて、
「黙れ」
と言いながら、雷を撃ち込んだ。
プスプスという音を立て、焦げ臭い臭いのする黒い物質が倒れる。
それを見、これ以上の復活が無い事を確認し、俺と采真は座り込んだ。
「死ぬかと思った……」
采真が言って、大きく息をつく。
「何か、気持ち悪……」
俺は、吐き気がしてきた。
周囲の探索者達が恐る恐る動き出し、レイが完全に死んだらしいのを確認して、騒ぎだす。
「鳴海。おじさんとおばさん、取り戻しに行かないとな」
「ああ」
「その前に、腹、減った」
采真と俺は、笑い出した。
あの日はあんなに絶望的だと思っていたのに、今日は何とかなるかも知れないと思えた。
探索者や協会職員達もホッとしていた。
だが、世間ではそうと感じる者ばかりではない。
門の外に魔人を出すなんて何事か。探索者が抑えるべきではないのか。
もっと門の周囲を厳重にするべきだ。
門をどうにかして閉じてしまえないのか。
全てがでっちあげだ。魔人なんていない。
そして、俺達の所には警察が来た。
「は?銃刀法違反?」
「門の外で許可なく武具を使用したので」
「いや、でも、そうしないと魔人が街中に出てましたよ?」
「法律ですので」
俺達は逮捕されかけた。
しかしこれには多くの反対意見、擁護する声があった。その上、その命令を出した警察上層部は、探索者嫌いで有名な野党議員に接待の席で頼まれた事がすっぱ抜かれ、どうにか助かったのだ。
「危なかったな、鳴海」
「不思議な国だよ、昔からこの国は」
俺達は、テレビでそれを報道するのを見ながら、うどんを啜った。
「おい、そこの」
レイは俺を真っすぐに見ていた。
そして、眉を顰める。
「ん?何かこの前と違うな」
「成長期だからかな」
俺は軽く返しておいた。
「まあいい。
素直に来なかったせいで遅刻して、怒られたじゃないか」
「知るか」
答えた途端、レイが至近距離にいた。俺の首に手を伸ばしていた。
反射的にそのまま引き金を引いたら、風だった。それはレイの髪の片側をカットして、背後に流れた。
「あぶねえな!」
「そっちこそな!」
言いながら、中途半端に伸びた手に斬りつける。
が、こっちは下がって逃げられた。
なので追撃して行くと、迷宮化した壁に背が当たり、足が止まる。そこに霧を発生させると、その中から采真が剣を突き出し、レイの肩を薙いだ。
「うわっ!」
魔術士相手なら霧の中でも魔力を探っていれば攻撃がわかるが、物理の攻撃は、やはり目視らしい。
「この!」
采真へ攻撃しようとするレイに、横から俺が斬りかかり、それをどうにか防いだレイの頭上から、先に霧と同時に発して隠しておいた氷の攻撃が降り注ぐ。
「うっ!」
俺は采真をひっつかんで離れた。
霧と氷が、レイの天高く上がる火柱で消える。
その後、霧の晴れたところに現れたのは、血塗れになったレイだった。傷を消してニタリと笑う。
「絶対に許さない。死体にして引きずって行ってやる」
そう言って、氷の槍を生み出してこちらに注ぎ込んで来る。まるで集中豪雨の如き勢いだ。
「うわわわ!何だよこの勢いと量!どうするんだ、鳴海!?」
盾の中に入っている采真の声も、すぐ近くだというのに、聞こえにくいくらいだ。
「しゃっくりと同じかな」
「え?」
「びっくりしたら止まるんじゃないかと」
「そうかあ?」
俺達は言いながらも、油断なくレイの隙を窺っていた。
そして盾を維持しながら、片手を下に向けて魔式を紡ぎ、発動させる。
雷の魔術が蛇のようにレイに伸び、絡みつく。どうこうできるほどの威力はないが、一瞬痺れて、槍が止まる。 それと同時に、俺と采真は飛び出してレイに接近し、俺はレイの足を凍らせた。采真は次のレイの攻撃を読んでスッとかわし、レイに斬りつける。
向きを変えようにも、レイは下半身を凍らせ続けられている。攻撃も抵抗も上手くできないでいた。
「あああああ!」
癇癪を起したレイが周囲一帯へ炎を撒き散らそうとするのを、魔式を読んで俺はキャンセルし、驚いた顔のレイの右腕の傷口に魔銃剣の先を突き立て、爆発の魔術を3つ連発させた。
「ギャアアア!!」
これにはたまらなかったらしい。腕が爆発し、続いて肩が、胸が脇腹が爆ぜ飛ぶ。
「おお、おま、え!」
死にかけながらも俺に向かって魔式を綴ろうとするのを、胸の傷口に魔銃剣の先を当てて、
「黙れ」
と言いながら、雷を撃ち込んだ。
プスプスという音を立て、焦げ臭い臭いのする黒い物質が倒れる。
それを見、これ以上の復活が無い事を確認し、俺と采真は座り込んだ。
「死ぬかと思った……」
采真が言って、大きく息をつく。
「何か、気持ち悪……」
俺は、吐き気がしてきた。
周囲の探索者達が恐る恐る動き出し、レイが完全に死んだらしいのを確認して、騒ぎだす。
「鳴海。おじさんとおばさん、取り戻しに行かないとな」
「ああ」
「その前に、腹、減った」
采真と俺は、笑い出した。
あの日はあんなに絶望的だと思っていたのに、今日は何とかなるかも知れないと思えた。
探索者や協会職員達もホッとしていた。
だが、世間ではそうと感じる者ばかりではない。
門の外に魔人を出すなんて何事か。探索者が抑えるべきではないのか。
もっと門の周囲を厳重にするべきだ。
門をどうにかして閉じてしまえないのか。
全てがでっちあげだ。魔人なんていない。
そして、俺達の所には警察が来た。
「は?銃刀法違反?」
「門の外で許可なく武具を使用したので」
「いや、でも、そうしないと魔人が街中に出てましたよ?」
「法律ですので」
俺達は逮捕されかけた。
しかしこれには多くの反対意見、擁護する声があった。その上、その命令を出した警察上層部は、探索者嫌いで有名な野党議員に接待の席で頼まれた事がすっぱ抜かれ、どうにか助かったのだ。
「危なかったな、鳴海」
「不思議な国だよ、昔からこの国は」
俺達は、テレビでそれを報道するのを見ながら、うどんを啜った。
0
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる