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ほだされて
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イグループの総帥の娘イ・ソユンと、アングループの総帥の息子アン・ドユンは、婚約していたらしい。誰が見ても仲が良く、財閥としてお互いに小さいが、両家が協力し合うと大きくなるのは間違いなかった。
当人同士も家も問題がなかったのに、最近になって、問題が起きた。
アングループの経営が危なくなったというのだ。
その上、アン・ドユンからチェ・ハユンという女性と交際しているから別れて欲しいと言われ、ケンカ騒ぎになったという。
ソユンは父親に泣きついたが、父親は、
「他の相手と一緒になれ」
と言い、ソユンの言い分を却下した。
ソユンは怒り、嫌だと言ったが、
「家の為にもそうしろ。ドユンの事は忘れろ。お前も働けば、結婚相手を選ばなくてはいけないという事がわかる」
と言われ、激怒。
「せめて自分で100万ウォンでも稼いでから言え」
と言われたので、家出して働いてやろうと思い立ったらしい。
そんな説明を執事から受けた。
ソユンは、
「うちが融資でもなんでもすればいいわ。一緒になって建て直してもいいじゃない」
と言うが、それに執事は、
「お嬢様。莫大な資金が必要でございます。それ以上に、共倒れの危険がございます」
と言う。
まあ、経営者の判断としては、妥当なところだろうとは思う。
と、横を見れば采真が鼻をすすっており、俺は愕然とした。
「好きな奴と結婚したいよな」
ソユンは、グッと身を乗り出した。
「そうよね」
「愛があれば、貧乏だっていいよな」
「ドユンとなら楽しんで見せるわ!」
「ま、待て。采真もソユンも待て。落ち着け」
慌てて割り込むが、采真とソユンは手を取り合って見つめていた。
そして好機とばかりに執事が割り込んで来る。
「おお。では、ソユンお嬢様の件、お引き受けくださいますね」
「任せとけ!」
「ああ……」
俺は頭を抱えて俯き、采真とソユンは立ち上がってガッツポーズを取り、執事はコソッと俺に、
「申し訳ございません」
と囁いた。
クソッ!
ソユンのアパートというのは、例のケンカをしていたアパートだった。
ドユンは隣らしい。
「そんな所、気まずくないのか?」
訊くと、ソユンは、
「いいの!」
と言い切った。
「凄えなあ」
采真は部屋の中を見て声を上げた。
確かに凄い。キッチンは広いし、設備は整っている。ダイニングには洒落たテーブルと椅子があるが、アンティークじゃないだろうか。リビングにはこれまた高そうなソファセットと大きなテレビがデンと備え付けられていた。
部屋は3つで、各々にバスルームとトイレとクローゼットが付いていて、広さも、8畳くらいありそうだ。
「落ち着けるかな。掃除とか大変そうだし」
「あら。メイドがやってくれるわよ」
「家を出たんだろ。自分でやろうとか思わないのか」
ソユンは衝撃を受けたような顔をした。
いや、衝撃を受けたのはこっちだ。
「それより、学生時代に揃えた装備品は?」
言うと、ソユンは真面目な顔をして、自分の部屋へ向かった。
「こっちよ」
俺と采真と執事が行き、クローゼットの中から引っ張り出したそれを見る。
防具は上級者でもいける高いやつだった。武器は幅の広い太刀。どちらも、アングループのマークが付いている。
「どの程度なのかは、ゲートを超える前に確認しておきたいな。
それと、防具の手入れもできているのか?」
「やってるわ。メイドが」
「これからは自分でやれ。少なくとも、研ぎや修理以前のメンテはやれ。自分の命を預けるものだぞ」
「……わかったわよ」
「鳴海ちゃん、まあまあ」
「ちゃん言うな。
サイズが合うか、試しておけ。
ほら。采真も出て」
俺と采真と執事は部屋を出た。
采真がニヤニヤとする。
「何?やる気になったか、鳴海」
「仕方がないだろう?やるからには、浅い階で死なれるような事はできないからな。当たり前の、最低限の事はやってもらう」
執事は深々と上体を折った。
「よろしくお願い致します」
「アンの防具は、丁寧で信頼性があると人気ですよね。ドユンさんからのプレゼントとかですか」
「はい。探索者免許を取った時に、頂きました」
部屋からソユンが出て来た。
「ジャーン!どう?」
「見かけは立派な上級探索者だな」
言ったら、ソユンに睨まれ、采真に笑われた。
当人同士も家も問題がなかったのに、最近になって、問題が起きた。
アングループの経営が危なくなったというのだ。
その上、アン・ドユンからチェ・ハユンという女性と交際しているから別れて欲しいと言われ、ケンカ騒ぎになったという。
ソユンは父親に泣きついたが、父親は、
「他の相手と一緒になれ」
と言い、ソユンの言い分を却下した。
ソユンは怒り、嫌だと言ったが、
「家の為にもそうしろ。ドユンの事は忘れろ。お前も働けば、結婚相手を選ばなくてはいけないという事がわかる」
と言われ、激怒。
「せめて自分で100万ウォンでも稼いでから言え」
と言われたので、家出して働いてやろうと思い立ったらしい。
そんな説明を執事から受けた。
ソユンは、
「うちが融資でもなんでもすればいいわ。一緒になって建て直してもいいじゃない」
と言うが、それに執事は、
「お嬢様。莫大な資金が必要でございます。それ以上に、共倒れの危険がございます」
と言う。
まあ、経営者の判断としては、妥当なところだろうとは思う。
と、横を見れば采真が鼻をすすっており、俺は愕然とした。
「好きな奴と結婚したいよな」
ソユンは、グッと身を乗り出した。
「そうよね」
「愛があれば、貧乏だっていいよな」
「ドユンとなら楽しんで見せるわ!」
「ま、待て。采真もソユンも待て。落ち着け」
慌てて割り込むが、采真とソユンは手を取り合って見つめていた。
そして好機とばかりに執事が割り込んで来る。
「おお。では、ソユンお嬢様の件、お引き受けくださいますね」
「任せとけ!」
「ああ……」
俺は頭を抱えて俯き、采真とソユンは立ち上がってガッツポーズを取り、執事はコソッと俺に、
「申し訳ございません」
と囁いた。
クソッ!
ソユンのアパートというのは、例のケンカをしていたアパートだった。
ドユンは隣らしい。
「そんな所、気まずくないのか?」
訊くと、ソユンは、
「いいの!」
と言い切った。
「凄えなあ」
采真は部屋の中を見て声を上げた。
確かに凄い。キッチンは広いし、設備は整っている。ダイニングには洒落たテーブルと椅子があるが、アンティークじゃないだろうか。リビングにはこれまた高そうなソファセットと大きなテレビがデンと備え付けられていた。
部屋は3つで、各々にバスルームとトイレとクローゼットが付いていて、広さも、8畳くらいありそうだ。
「落ち着けるかな。掃除とか大変そうだし」
「あら。メイドがやってくれるわよ」
「家を出たんだろ。自分でやろうとか思わないのか」
ソユンは衝撃を受けたような顔をした。
いや、衝撃を受けたのはこっちだ。
「それより、学生時代に揃えた装備品は?」
言うと、ソユンは真面目な顔をして、自分の部屋へ向かった。
「こっちよ」
俺と采真と執事が行き、クローゼットの中から引っ張り出したそれを見る。
防具は上級者でもいける高いやつだった。武器は幅の広い太刀。どちらも、アングループのマークが付いている。
「どの程度なのかは、ゲートを超える前に確認しておきたいな。
それと、防具の手入れもできているのか?」
「やってるわ。メイドが」
「これからは自分でやれ。少なくとも、研ぎや修理以前のメンテはやれ。自分の命を預けるものだぞ」
「……わかったわよ」
「鳴海ちゃん、まあまあ」
「ちゃん言うな。
サイズが合うか、試しておけ。
ほら。采真も出て」
俺と采真と執事は部屋を出た。
采真がニヤニヤとする。
「何?やる気になったか、鳴海」
「仕方がないだろう?やるからには、浅い階で死なれるような事はできないからな。当たり前の、最低限の事はやってもらう」
執事は深々と上体を折った。
「よろしくお願い致します」
「アンの防具は、丁寧で信頼性があると人気ですよね。ドユンさんからのプレゼントとかですか」
「はい。探索者免許を取った時に、頂きました」
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「ジャーン!どう?」
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