79 / 89
緊張の邂逅
しおりを挟む
翌日、ルイスに安心できる不動産屋へ連れて行ってもらい、首尾よく俺達は、マンションの1室を借りる事ができた。
そこに転移石を設置する。
今回は、グレイというタイプの宇宙人の人形だ。25センチほどの高さのプラスチックでできたもので、100円均一で買って来た。
それから、探索に赴いた。
出て来る魔獣は、最初のうちは他と一緒だ。それに内部も、長い洞窟という感じで、まだ今のところはそう目新しさはない。
なので、変化の出始める辺りまではさっさと進む事にして、狩って来た。
「明日はどんな奴が出るかな、鳴海ちゃん」
「美味しい奴がいいな。けど鳴海ちゃんはやめろ」
言いながらエレベーターで1階入り口に戻ると、隣のエレベーターでグループが戻って来たので何となくお互いを見た。
ガタイのいい探索者6人組で、剣や杖や盾などの違いはあるし、ウェアの色も違うが、皆同じメーカーの装備品を身に着けていた。そして中の1人は、防水の大きなリュックを背負っていた。討伐証明部位や魔石なんかを入れているんだろう。
そして一様に、疲れた顔をしていた。
「あ。霜村鳴海と音無采真」
中の1人がポツンと呟くと、リーダーらしい男が、足を止めて俺達をジロジロと見た。
「本当に子供なんだな」
失礼なやつだ。まあ、確かに未成年だけどな。
「あ、ハリー・ポーリング!元アメリカ陸軍の人で、同じ陸軍出身者とチームを組んでる!」
有名な、アメリカトップ探索者グループの1つだ。人気も高い。
特にリーダーの彼は、どんな時も冷静で冷酷な笑わない男と言われ、整った顔と共に、ファンが多い。
「采真、さんを付けろ。
失礼しました。つい、テレビや雑誌で見る憧れの探索者と偶然会えたので」
采真が改めて頭を下げ、自己紹介しかけた時、背後のエレベーターで新たなグループが戻って来た。
こちらは5人組で、やはり疲れ切った顔をしているが、俺達とハリーのチームを見ると、威嚇して来た。
「おうおう。ファンのガキにサインでもしてやってんのか?余裕だなあ、おい。
って、お前らか。チッ」
俺達を知っているのか、リーダーが舌打ちをした。
マイク・ヒューイット。彼も仲間達も、ピアスやタトゥーをし、赤や青や緑や紫に髪を染め、一見するとチンピラかファッションで探索をしている人に見える。
しかしこちらも、アメリカトップ探索者グループだ。こちらもまた、ファンが多い。
言わばアメリカの探索者ファンの多くは、端正なハリーかワイルドなマイクかのどちらかのファンだ。
「おお!鳴海、アメリカの二大カリスマが睨み合っている緊張の瞬間だぞ」
「写真撮ったら、欲しがる人、多そうだな」
俺達はワクワクしながら、次はどっちがどう言うのか、どうやって別れるのか、それとも一緒に協会へ行く流れか、と考えていた。
すると、2人が同時に俺達を見た。
「何、通りすがりの無関係なやつみたいな顔してんだよ。ああ?」
「え。無関係ですよね?」
俺は驚いて言った。
「君達を今のトップ探索者に、誰でも名前を上げるだろうな。その若さで、踏破1つではなく3つだからな。運や偶然と思う奴はいない。
君達は自分達の事をわかっていないようだな。くれぐれも、周囲に気を配る事だ」
マイクに続いてハリーまでもが、眉間に縦じわを刻み込みながら言うので、俺と采真は顔を見合わせた。
「その割に彼女ができないのは何でだ鳴海」
「俺に訊くな」
マイクはチッと舌打ちし、グループを引き連れて歩き出した。
それに続いて、ハリー達も歩き出す。
それを見ていたゲートの外のファンやその辺の探索者達が、こそこそと、
「緊張!」
「一発触発だな」
「トップ3グループが顔を突き合わせるとは……」
「分かり易くマイクは威嚇してたけど、ハリーも内心では焦ってるだろう?」
「さあ、日本のコンビはどう出る?」
俺と采真は、こそこそと言い合った。
「俺達も協会へ行きたいのに、タイミングに困るな」
「このまま付いて行っていいのか?ロビーに入った途端、注目を浴びそうだぜ」
「知らん顔してよう。それで、遅れて30分後くらいに行こう。
ああ、でも、どんなのを狩って来たか見たいしなあ」
それで俺達も、なるべく目立たないように付いて行ったのだ。
が、翌日の新聞には、3グループが入り口で睨み合うような写真が掲載されていたのだった。
そこに転移石を設置する。
今回は、グレイというタイプの宇宙人の人形だ。25センチほどの高さのプラスチックでできたもので、100円均一で買って来た。
それから、探索に赴いた。
出て来る魔獣は、最初のうちは他と一緒だ。それに内部も、長い洞窟という感じで、まだ今のところはそう目新しさはない。
なので、変化の出始める辺りまではさっさと進む事にして、狩って来た。
「明日はどんな奴が出るかな、鳴海ちゃん」
「美味しい奴がいいな。けど鳴海ちゃんはやめろ」
言いながらエレベーターで1階入り口に戻ると、隣のエレベーターでグループが戻って来たので何となくお互いを見た。
ガタイのいい探索者6人組で、剣や杖や盾などの違いはあるし、ウェアの色も違うが、皆同じメーカーの装備品を身に着けていた。そして中の1人は、防水の大きなリュックを背負っていた。討伐証明部位や魔石なんかを入れているんだろう。
そして一様に、疲れた顔をしていた。
「あ。霜村鳴海と音無采真」
中の1人がポツンと呟くと、リーダーらしい男が、足を止めて俺達をジロジロと見た。
「本当に子供なんだな」
失礼なやつだ。まあ、確かに未成年だけどな。
「あ、ハリー・ポーリング!元アメリカ陸軍の人で、同じ陸軍出身者とチームを組んでる!」
有名な、アメリカトップ探索者グループの1つだ。人気も高い。
特にリーダーの彼は、どんな時も冷静で冷酷な笑わない男と言われ、整った顔と共に、ファンが多い。
「采真、さんを付けろ。
失礼しました。つい、テレビや雑誌で見る憧れの探索者と偶然会えたので」
采真が改めて頭を下げ、自己紹介しかけた時、背後のエレベーターで新たなグループが戻って来た。
こちらは5人組で、やはり疲れ切った顔をしているが、俺達とハリーのチームを見ると、威嚇して来た。
「おうおう。ファンのガキにサインでもしてやってんのか?余裕だなあ、おい。
って、お前らか。チッ」
俺達を知っているのか、リーダーが舌打ちをした。
マイク・ヒューイット。彼も仲間達も、ピアスやタトゥーをし、赤や青や緑や紫に髪を染め、一見するとチンピラかファッションで探索をしている人に見える。
しかしこちらも、アメリカトップ探索者グループだ。こちらもまた、ファンが多い。
言わばアメリカの探索者ファンの多くは、端正なハリーかワイルドなマイクかのどちらかのファンだ。
「おお!鳴海、アメリカの二大カリスマが睨み合っている緊張の瞬間だぞ」
「写真撮ったら、欲しがる人、多そうだな」
俺達はワクワクしながら、次はどっちがどう言うのか、どうやって別れるのか、それとも一緒に協会へ行く流れか、と考えていた。
すると、2人が同時に俺達を見た。
「何、通りすがりの無関係なやつみたいな顔してんだよ。ああ?」
「え。無関係ですよね?」
俺は驚いて言った。
「君達を今のトップ探索者に、誰でも名前を上げるだろうな。その若さで、踏破1つではなく3つだからな。運や偶然と思う奴はいない。
君達は自分達の事をわかっていないようだな。くれぐれも、周囲に気を配る事だ」
マイクに続いてハリーまでもが、眉間に縦じわを刻み込みながら言うので、俺と采真は顔を見合わせた。
「その割に彼女ができないのは何でだ鳴海」
「俺に訊くな」
マイクはチッと舌打ちし、グループを引き連れて歩き出した。
それに続いて、ハリー達も歩き出す。
それを見ていたゲートの外のファンやその辺の探索者達が、こそこそと、
「緊張!」
「一発触発だな」
「トップ3グループが顔を突き合わせるとは……」
「分かり易くマイクは威嚇してたけど、ハリーも内心では焦ってるだろう?」
「さあ、日本のコンビはどう出る?」
俺と采真は、こそこそと言い合った。
「俺達も協会へ行きたいのに、タイミングに困るな」
「このまま付いて行っていいのか?ロビーに入った途端、注目を浴びそうだぜ」
「知らん顔してよう。それで、遅れて30分後くらいに行こう。
ああ、でも、どんなのを狩って来たか見たいしなあ」
それで俺達も、なるべく目立たないように付いて行ったのだ。
が、翌日の新聞には、3グループが入り口で睨み合うような写真が掲載されていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる