オーバーゲート

JUN

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誤解です!

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 ハリー達は皆一様に、落ち着かない様子で、目を合わさず、気遣うような顔をして、周囲を警戒している。そしてハリーが、視線を外し、言葉を探しながら口を開いた。
「その、あれだ」
 何だ?
「気にするな」
 え、何を?
「死ななかっただけでも、というのは、まあ、他人事だからと聞こえるかもしれんが」
 俺と采真は顔を見合わせた。
「その、忘れろ」
「誤解だ!」
「俺達は逃げ切ったぜ!」
 それで彼らは、ちら、とこっちを見た。
「いや、本当に!水を浴びて、必死で片付けて!」
「完全に流そうと思って、頭から洗って着替えてたんだよ!そうじゃないんだよ!」
 ハリーのチームの1人が、代わって口を開く。
「うん、そうだね。うん。
 でも、魔獣相手だと寄生虫もいるかも知れないし、食道や腸に卵を産みつけられている場合もあるから、薬を飲んでおく事と、戻ったらすぐに専門家に診てもらう方がいいよ。一応俺も衛生兵として訓練は受けたけど、検査とかはここではできないし」
「いや、違うから。違うんです」
「気にするな。
 あ、そうか。ヒト相手でも油断はできないぞ。性交渉は安全に留意しなければ――」
「お願いなのできいて下さい」
 誤解を何が何でも解いておきたい。そんな気がした。

 その後何とか誤解も解け、安心したのか、笑われたり方々をばんばんと叩かれたりした後、俺達は真面目な顔に戻って状況を説明し、記録していたやり取りを見せた。
「マイクめ。噂はデマじゃなかったんだな。クソが」
 1人が吐き捨てる。
「こんな違法薬物、よく手に入ったな」
「閲覧許可は出てないだろうが、調査の過程で、誘引剤の制作はわかっているだろうからな」
 ハリーが言い、それで皆は、無言のうちに考えた。
 そんな閲覧禁止のデータを見られるのは、誰だ、と。
「信じたくはないが、徹底的な調査が必要だな。幸い、マイク達のした事の証拠はある」
 ハリー達はあの後あそこに着いたらしいが、僅かに誘引剤の臭いが残り、岩に付着しているのも見つかったし、下に交戦した痕がまだ残っていたので、大まかな所がわかったらしい。
 そして先にトンネルがあるので、てっきりそこに引きずり込まれたのかと思って、助けに来てくれたらしい。
 まあ、入ってみたら、俺達が水を浴びて着替えていたので、誤解されたが。
「岩にロープを結び付けて来た。上に戻ろう」
 そう言われて落下地点に戻ったところで、俺達は言葉を失った。
 岩に結んだロープが外され、地面で丸まっていたからだ。
「あいつらか」
 ハリーが、溜め息と怒りをないまぜにしたような息を吐いた。
 俺は大きく深呼吸して、言った。
「仕方がない。この先に進んでみますか」
 それに采真がニカッと笑う。
「おう!ドキドキするなあ!」
 それでハリー達は顔を見合わせ、小さな笑いが起こった。
「いや。楽しんで向かって行けるというのが、君達の強さの秘密なのかもしれないな」
「若い子の好奇心ほど、大きなエネルギーは無いですからね、隊長」
「ああ。でも、探索者の本質を、俺達は忘れていたのかも知れないな」
 ハリーは微かに笑うと、顔を引き締め、皆に言った。
「さあ、この進路を行く。楽しみつつ、警戒を怠るな!」
「はい!」
 俺達は日米合同チームを結成して、進む事になった。



 
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