5 / 33
我、発見セリ
しおりを挟む
それから2日。
湿地帯の手前でパトロールをしていたスリムラの兵は、湿地帯の向こうで光る物を見付けた。
「あれは、ロスウェル兵!」
彼は急いで、上官に知らせた。
「剣か槍が太陽の光を反射させたものと思われます。敵はこちらに攻撃をかけて来るつもりなのかと」
「数は?」
「は!見えた光は5つほどでした」
「斥候を出したのか。なら、斥候が帰るまでは攻撃には出ないな。
よし、先にこちらが攻める!」
スリムラの前線基地は、俄かに出撃準備に入った。
ゼルは幾つかの鏡を反射させると、急いで森に引き返した。そして、足跡を残しながら戻って行く。
そしてくるぶしほどしか水の無い川を走って渡り、ガサガサと小道沿いの木に結びつけてある細い糸を頼りに森へ入って行った。
そのまましばらく経った頃。スリムラ側から、地響きのような物音が近付いて来た。スリムラ兵の群れだ。
「一気に仕掛ける!反撃の隙を与えるな!」
そう言い、なるべく静かに且つ素早くロスウェル側へ進んでいく。
川とも呼べない川を渡り、更に先へ。
その時、ゴゴゴ、と地鳴りが響いて来て、彼らは足を止めた。
「何だ?敵か?」
音は次第に近付き、なぜか木々までが倒れて来る。
「わあ!何だ!?」
慌てた声にキョロキョロとし、それを見付けた時には、大量の水と大木が山の上から流れて来て、スリムラの兵列に真横からぶつかり、そのまま兵を押し流して行ったのだった。
そして辛うじて難を逃れた先頭集団は、動揺とケガから立ち直れない内に、大剣を振り回す大男や槍を振りかざす男、鎖鎌を振り回す男、斧を振り回して笑う大女、身軽に手当たり次第で兵を撲殺して回る美女の餌食になっていた。
小隊の皆だ。
俺は戦闘の腕では一番普通なので、水を本流からこちらに流す切り替えと、その後で狼煙の合図を送る役だ。
俺が走ってそこに行くと、スリムラ兵は死ぬか捕えられるかしていた。川の向こうに後退して様子を窺っていたスリムラ兵はいたが、こちら側にはちょうど狼煙を見て駆けつけて来たロスウェル兵が到着し、そのまま撤退して行った。
「これは一体!?」
急襲するはずだった部隊の責任者が狼狽える。
そりゃあそうだろう。来たら終わっていて、手柄も上げようがない。しかも、流木がごろごろしている。
「半分近く兵を削りました。崖下に死体とケガ人がいるはずですが」
俺達はドヤ顔で、基地に戻った。
スリムラの前線基地の兵士の半分を殺害、戦闘不能、または脱走という形で奪い、戦闘力トップで軍の高官でもある人物を捕虜にし、膠着状態だった前線を向こう側に押して進んだ功績は、間違いなく我が小隊の手柄である。知らせを受けた国の重鎮や軍高官ら、ロスウェル国民は狂喜した。
が、それをしたメンバーの名前を聞くと、途端に舌打ちや苦い顔になる。
理不尽だ。
そして俺達は、相変わらず基地ではみ出し者扱いされていた。
「待遇、変わらないな」
「そりゃなあ。手柄を俺達に立てられちゃ、面白くもないよ」
俺が言うのに、ルイスがあっけらかんと答えた。
「あわよくば死んでいてくれれば、とか思ってただろうにさ。ヒヒヒヒヒ」
ゼルが言うが、答える。
「いや、俺を殺すのはまずいと思ってたんじゃないかな。
パールメントの払うべき、払金とかそういうの、国が一旦支払って、俺が国に返す事になってるんだよ。だから、まだほとんど返しちゃいない今、俺を殺すのは勿体ないと思ってる筈だ」
「へえ。フィー、その借金っていくらくらいなんだ?」
ガイが訊く。
俺達は連帯感も強まって、他人がいない時は、隊長も敬語もなく、対等だ。
「国家予算数年分」
答えると、全員凍り付いたように黙った。
「それ、返せるの?」
ロタが言うのに、笑顔で答える。
「無理だよね。どうしよう。妻子がいれば何代にも渡って返せとか言うんだろうけど、ハッキリ言って、俺と結婚する奴はいないと思う」
「フィー、そんな……クッ」
ルイスが顔をそむけた。
「あまりにも酷い。上司を恨まないのか」
言うマリアに、俺は肩を竦めて笑い、
「ははは。恨まないよ?恨むのはひとえにパールメント、クラレスだからね。クソッ」
と、握りこぶしで歯ぎしりした。
ああ、クラレスめええ!
湿地帯の手前でパトロールをしていたスリムラの兵は、湿地帯の向こうで光る物を見付けた。
「あれは、ロスウェル兵!」
彼は急いで、上官に知らせた。
「剣か槍が太陽の光を反射させたものと思われます。敵はこちらに攻撃をかけて来るつもりなのかと」
「数は?」
「は!見えた光は5つほどでした」
「斥候を出したのか。なら、斥候が帰るまでは攻撃には出ないな。
よし、先にこちらが攻める!」
スリムラの前線基地は、俄かに出撃準備に入った。
ゼルは幾つかの鏡を反射させると、急いで森に引き返した。そして、足跡を残しながら戻って行く。
そしてくるぶしほどしか水の無い川を走って渡り、ガサガサと小道沿いの木に結びつけてある細い糸を頼りに森へ入って行った。
そのまましばらく経った頃。スリムラ側から、地響きのような物音が近付いて来た。スリムラ兵の群れだ。
「一気に仕掛ける!反撃の隙を与えるな!」
そう言い、なるべく静かに且つ素早くロスウェル側へ進んでいく。
川とも呼べない川を渡り、更に先へ。
その時、ゴゴゴ、と地鳴りが響いて来て、彼らは足を止めた。
「何だ?敵か?」
音は次第に近付き、なぜか木々までが倒れて来る。
「わあ!何だ!?」
慌てた声にキョロキョロとし、それを見付けた時には、大量の水と大木が山の上から流れて来て、スリムラの兵列に真横からぶつかり、そのまま兵を押し流して行ったのだった。
そして辛うじて難を逃れた先頭集団は、動揺とケガから立ち直れない内に、大剣を振り回す大男や槍を振りかざす男、鎖鎌を振り回す男、斧を振り回して笑う大女、身軽に手当たり次第で兵を撲殺して回る美女の餌食になっていた。
小隊の皆だ。
俺は戦闘の腕では一番普通なので、水を本流からこちらに流す切り替えと、その後で狼煙の合図を送る役だ。
俺が走ってそこに行くと、スリムラ兵は死ぬか捕えられるかしていた。川の向こうに後退して様子を窺っていたスリムラ兵はいたが、こちら側にはちょうど狼煙を見て駆けつけて来たロスウェル兵が到着し、そのまま撤退して行った。
「これは一体!?」
急襲するはずだった部隊の責任者が狼狽える。
そりゃあそうだろう。来たら終わっていて、手柄も上げようがない。しかも、流木がごろごろしている。
「半分近く兵を削りました。崖下に死体とケガ人がいるはずですが」
俺達はドヤ顔で、基地に戻った。
スリムラの前線基地の兵士の半分を殺害、戦闘不能、または脱走という形で奪い、戦闘力トップで軍の高官でもある人物を捕虜にし、膠着状態だった前線を向こう側に押して進んだ功績は、間違いなく我が小隊の手柄である。知らせを受けた国の重鎮や軍高官ら、ロスウェル国民は狂喜した。
が、それをしたメンバーの名前を聞くと、途端に舌打ちや苦い顔になる。
理不尽だ。
そして俺達は、相変わらず基地ではみ出し者扱いされていた。
「待遇、変わらないな」
「そりゃなあ。手柄を俺達に立てられちゃ、面白くもないよ」
俺が言うのに、ルイスがあっけらかんと答えた。
「あわよくば死んでいてくれれば、とか思ってただろうにさ。ヒヒヒヒヒ」
ゼルが言うが、答える。
「いや、俺を殺すのはまずいと思ってたんじゃないかな。
パールメントの払うべき、払金とかそういうの、国が一旦支払って、俺が国に返す事になってるんだよ。だから、まだほとんど返しちゃいない今、俺を殺すのは勿体ないと思ってる筈だ」
「へえ。フィー、その借金っていくらくらいなんだ?」
ガイが訊く。
俺達は連帯感も強まって、他人がいない時は、隊長も敬語もなく、対等だ。
「国家予算数年分」
答えると、全員凍り付いたように黙った。
「それ、返せるの?」
ロタが言うのに、笑顔で答える。
「無理だよね。どうしよう。妻子がいれば何代にも渡って返せとか言うんだろうけど、ハッキリ言って、俺と結婚する奴はいないと思う」
「フィー、そんな……クッ」
ルイスが顔をそむけた。
「あまりにも酷い。上司を恨まないのか」
言うマリアに、俺は肩を竦めて笑い、
「ははは。恨まないよ?恨むのはひとえにパールメント、クラレスだからね。クソッ」
と、握りこぶしで歯ぎしりした。
ああ、クラレスめええ!
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ベテラン精霊王、虐げられ皇子の子育てに励みます
はんね
ファンタジー
大陸で最も広大な領土と栄華を誇るアストラニア帝国。
その歴史は、初代皇帝ニコラスと精霊王バーティミアスが“疫病王ヴォラク”を討ち倒したことから始まった。ニコラスとバーティミアスは深い友情を結び、その魂を受け継ぐ皇子たちを永遠に見守り、守護する盟約を交わした。
バーティミアスは幾代もの皇帝を支え、帝国は長き繁栄を享受してきた。しかし、150年の眠りから目覚めた彼の前に現れた“次の皇帝候補”は、生まれたばかりの赤ん坊。しかもよりにもよって、十三番目の“虐げられ皇子”だった!
皮肉屋で老獪なベテラン精霊王と、世話焼きで過保護な月の精霊による、皇帝育成(?)奮闘記が、いま始まる——!
人物紹介
◼︎バーティミアス
疫病王ヴォラクを倒し初代皇帝ニコラスと建国初期からアストラニア帝国に使える精霊。牡鹿の角をもつ。初代皇帝ニコラスの魂を受け継ぐ皇子を守護する契約をしている。
◼︎ユミル
月の精霊。苦労人。バーティミアスとの勝負に負け、1000年間従属する契約を結びこき使われている。普段は使用人の姿に化けている。
◼︎アルテミス
アストラニア帝国の第13皇子。北方の辺境男爵家の娘と皇帝の息子。離宮に幽閉されている。
◼︎ウィリアム・グレイ
第3皇子直属の白鷲騎士団で問題をおこし左遷されてきた騎士。堅物で真面目な性格。代々騎士を輩出するグレイ家の次男。
◼︎アリス
平民出身の侍女。控えめで心優しいが、アルテミスのためなら大胆な行動に出る一面も持つ。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる