悪役令嬢の流れ弾をくらって貧乏クジを引く――俺達愉快なはみ出し者小隊

JUN

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我、発見セリ

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 それから2日。
 湿地帯の手前でパトロールをしていたスリムラの兵は、湿地帯の向こうで光る物を見付けた。
「あれは、ロスウェル兵!」
 彼は急いで、上官に知らせた。
「剣か槍が太陽の光を反射させたものと思われます。敵はこちらに攻撃をかけて来るつもりなのかと」
「数は?」
「は!見えた光は5つほどでした」
「斥候を出したのか。なら、斥候が帰るまでは攻撃には出ないな。
 よし、先にこちらが攻める!」
 スリムラの前線基地は、俄かに出撃準備に入った。

 ゼルは幾つかの鏡を反射させると、急いで森に引き返した。そして、足跡を残しながら戻って行く。
 そしてくるぶしほどしか水の無い川を走って渡り、ガサガサと小道沿いの木に結びつけてある細い糸を頼りに森へ入って行った。
 そのまましばらく経った頃。スリムラ側から、地響きのような物音が近付いて来た。スリムラ兵の群れだ。
「一気に仕掛ける!反撃の隙を与えるな!」
 そう言い、なるべく静かに且つ素早くロスウェル側へ進んでいく。
 川とも呼べない川を渡り、更に先へ。
 その時、ゴゴゴ、と地鳴りが響いて来て、彼らは足を止めた。
「何だ?敵か?」
 音は次第に近付き、なぜか木々までが倒れて来る。
「わあ!何だ!?」
 慌てた声にキョロキョロとし、それを見付けた時には、大量の水と大木が山の上から流れて来て、スリムラの兵列に真横からぶつかり、そのまま兵を押し流して行ったのだった。
 そして辛うじて難を逃れた先頭集団は、動揺とケガから立ち直れない内に、大剣を振り回す大男や槍を振りかざす男、鎖鎌を振り回す男、斧を振り回して笑う大女、身軽に手当たり次第で兵を撲殺して回る美女の餌食になっていた。
 小隊の皆だ。
 俺は戦闘の腕では一番普通なので、水を本流からこちらに流す切り替えと、その後で狼煙の合図を送る役だ。
 俺が走ってそこに行くと、スリムラ兵は死ぬか捕えられるかしていた。川の向こうに後退して様子を窺っていたスリムラ兵はいたが、こちら側にはちょうど狼煙を見て駆けつけて来たロスウェル兵が到着し、そのまま撤退して行った。
「これは一体!?」
 急襲するはずだった部隊の責任者が狼狽える。
 そりゃあそうだろう。来たら終わっていて、手柄も上げようがない。しかも、流木がごろごろしている。
「半分近く兵を削りました。崖下に死体とケガ人がいるはずですが」
 俺達はドヤ顔で、基地に戻った。

 スリムラの前線基地の兵士の半分を殺害、戦闘不能、または脱走という形で奪い、戦闘力トップで軍の高官でもある人物を捕虜にし、膠着状態だった前線を向こう側に押して進んだ功績は、間違いなく我が小隊の手柄である。知らせを受けた国の重鎮や軍高官ら、ロスウェル国民は狂喜した。
 が、それをしたメンバーの名前を聞くと、途端に舌打ちや苦い顔になる。
 理不尽だ。
 そして俺達は、相変わらず基地ではみ出し者扱いされていた。
「待遇、変わらないな」
「そりゃなあ。手柄を俺達に立てられちゃ、面白くもないよ」
 俺が言うのに、ルイスがあっけらかんと答えた。
「あわよくば死んでいてくれれば、とか思ってただろうにさ。ヒヒヒヒヒ」
 ゼルが言うが、答える。
「いや、俺を殺すのはまずいと思ってたんじゃないかな。
 パールメントの払うべき、払金とかそういうの、国が一旦支払って、俺が国に返す事になってるんだよ。だから、まだほとんど返しちゃいない今、俺を殺すのは勿体ないと思ってる筈だ」
「へえ。フィー、その借金っていくらくらいなんだ?」
 ガイが訊く。
 俺達は連帯感も強まって、他人がいない時は、隊長も敬語もなく、対等だ。
「国家予算数年分」
 答えると、全員凍り付いたように黙った。
「それ、返せるの?」
 ロタが言うのに、笑顔で答える。
「無理だよね。どうしよう。妻子がいれば何代にも渡って返せとか言うんだろうけど、ハッキリ言って、俺と結婚する奴はいないと思う」
「フィー、そんな……クッ」
 ルイスが顔をそむけた。
「あまりにも酷い。上司を恨まないのか」
 言うマリアに、俺は肩を竦めて笑い、
「ははは。恨まないよ?恨むのはひとえにパールメント、クラレスだからね。クソッ」
と、握りこぶしで歯ぎしりした。
 ああ、クラレスめええ!





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