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河を挟んだ義兄弟
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クラレスは物珍しそうに見ていたが、イリシャは辺りをザッと見て見当が付いたらしい。
「へ、陛下がお越しになるとは――」
「現状を報告しろ」
「は、はっ!つい今しがた、河岸が崩落いたしまして、物置小屋が流されてしまいました!」
「物置小屋だけか」
「は!あ、いえ、その、拘束しておりましたロスウェル人を監禁しておりました」
それを聞いて、クラレスが声を張り上げた。
「なんですって!?それで慰謝料を取れるの!?」
「そ、それは、その……」
兵が冷や汗を拭うそぶりが見える。
「拘束していたロスウェル人が事故で行方不明となれば、戦争にはなるかも知れんな。ロスウェルがこちらを非難して、攻め込んで来れば。
これはお前のした事か?」
ロウガンの交渉係が、オドオドとして、首を振っている。
「不幸な事故、ありふれたカワモグラの事故だぞ。そう信じろって」
小声で祈るように言っていると、イリシャがこちらへ目を向けて来た。
「こっち見てるぞ、フィー」
「知らん顔だ、知らん顔」
「そんな事言っても、軍服だし怪しいわ」
「慌てるな、平静だ、平静」
「うおっ、フィーとルイスの膝と肘に土が!」
「やばっ!」
小声で、平静を取り繕った顔でオタオタしていた俺達を見ていたが、イリシャはニヤリと笑って声を張り上げて来た。
「ロスウェルの軍人か。少ないな。精鋭部隊というわけか?」
好戦的な笑みを浮かべる。
ガイとマリアが、俺の前に立った。
「貴様がそちらの指揮官か!」
全ての視線が俺に向く。
「名前を聞こうか!」
「名乗るほどの者じゃないんで!」
しかし、誰かが向こうを指さして余計な事を言った。
「クラレスだ!」
「姉弟対決か!?」
またしても、皆の目が俺に集まる。
それでクラレスが思い出してしまったらしい。
「ああっ!?あなた、前日にうちに来た子ね!?どこかの貧乏子爵の三男で、地味な顔だけど、成績だけはいいとかいう!」
泣きそうになった。
ルイスは、肩を落とす俺の背中を軽く叩いた。
イリシャは楽しそうに笑った。
「そうか。そうなのか。ははははは!弟よ!」
「ええー?」
「ロウガンに来ないか!兄弟でじっくりと語らおうじゃないか!」
「すみません、遠慮させて下さい!」
「俺達が組んだら、面白い事ができるぞ!」
「来いっていってるのよ、来なさいよ!」
「行かないって言ってんだろ!?パールメントが払う慰謝料やら何やら、俺の借金になってるんだぞ!?兄弟の語らいなんてできるわけないだろうが!」
「ならば、その借金、ロウガンが変わって出してやるぞ」
思わず考えてしまった俺は、悪くないはずだ。
「フィー、落ち着け。深呼吸しろ、な?」
ルイスに言われ、俺は我に返った。
「あ、すまん。
俺は行きません!たった一晩だけの姉弟なんで、忘れて下さい!」
クラレスは何かヒステリックに喚いていたが、イリシャは笑い、
「また会おう!」
と言って、踵を返した。
「会いたくないわ!」
俺は溜め息をついて、しゃがみ込んだ。
劇団員達を無事に奪還し、橋の警護を強め、俺達は馬車に乗り込んだ。首都フルデルにある本部に報告するためだ。
「はああ。借金は、クラレスが代わってくれないかな。ロウガン王妃なら、払えるだろう?」
クッションの悪い馬車に揺られながら何度目かわからない溜め息をついた。
「土地は農業に向いてない代わりに、鉄鉱石とかが豊富で、武器の材料の輸出で儲けてるからなあ。
でも、クラレスが払うわけないよ」
ルイスの無情なコメントに、溜め息がまたも出た。
「でも、あれだな。フィー、ロウガンの王と義兄弟なんだな」
ガイが感慨深げに言う。
「全然嬉しくないし、クラレスとだってたった一晩の事なんだから、姉弟とも言いたくない」
「元気出せよ!な!着いたらお代わり自由のサービスバイキング行こうぜ、な!」
ルイスがバンバンと肩を叩いて来る。
「そうとも!何ならワシが、大人の遊びを教えてやるぜ。上手く行けば一攫千金!」
「ゼルはそう言うけど、儲けたためしがないわね」
ロタがゼルをニッコリと笑顔で切り、マリアがフンフンと頷いた。
まあ、項垂れていても仕方がない。もう二度と会う事はないし、俺はせいぜい、安全と自由の身を目指そう。
「そうだな。ああ、美味いもん食いたいな!」
俺達は空を見上げ、イノシシは焼きか煮込みかの論争を始めたのだった。
「へ、陛下がお越しになるとは――」
「現状を報告しろ」
「は、はっ!つい今しがた、河岸が崩落いたしまして、物置小屋が流されてしまいました!」
「物置小屋だけか」
「は!あ、いえ、その、拘束しておりましたロスウェル人を監禁しておりました」
それを聞いて、クラレスが声を張り上げた。
「なんですって!?それで慰謝料を取れるの!?」
「そ、それは、その……」
兵が冷や汗を拭うそぶりが見える。
「拘束していたロスウェル人が事故で行方不明となれば、戦争にはなるかも知れんな。ロスウェルがこちらを非難して、攻め込んで来れば。
これはお前のした事か?」
ロウガンの交渉係が、オドオドとして、首を振っている。
「不幸な事故、ありふれたカワモグラの事故だぞ。そう信じろって」
小声で祈るように言っていると、イリシャがこちらへ目を向けて来た。
「こっち見てるぞ、フィー」
「知らん顔だ、知らん顔」
「そんな事言っても、軍服だし怪しいわ」
「慌てるな、平静だ、平静」
「うおっ、フィーとルイスの膝と肘に土が!」
「やばっ!」
小声で、平静を取り繕った顔でオタオタしていた俺達を見ていたが、イリシャはニヤリと笑って声を張り上げて来た。
「ロスウェルの軍人か。少ないな。精鋭部隊というわけか?」
好戦的な笑みを浮かべる。
ガイとマリアが、俺の前に立った。
「貴様がそちらの指揮官か!」
全ての視線が俺に向く。
「名前を聞こうか!」
「名乗るほどの者じゃないんで!」
しかし、誰かが向こうを指さして余計な事を言った。
「クラレスだ!」
「姉弟対決か!?」
またしても、皆の目が俺に集まる。
それでクラレスが思い出してしまったらしい。
「ああっ!?あなた、前日にうちに来た子ね!?どこかの貧乏子爵の三男で、地味な顔だけど、成績だけはいいとかいう!」
泣きそうになった。
ルイスは、肩を落とす俺の背中を軽く叩いた。
イリシャは楽しそうに笑った。
「そうか。そうなのか。ははははは!弟よ!」
「ええー?」
「ロウガンに来ないか!兄弟でじっくりと語らおうじゃないか!」
「すみません、遠慮させて下さい!」
「俺達が組んだら、面白い事ができるぞ!」
「来いっていってるのよ、来なさいよ!」
「行かないって言ってんだろ!?パールメントが払う慰謝料やら何やら、俺の借金になってるんだぞ!?兄弟の語らいなんてできるわけないだろうが!」
「ならば、その借金、ロウガンが変わって出してやるぞ」
思わず考えてしまった俺は、悪くないはずだ。
「フィー、落ち着け。深呼吸しろ、な?」
ルイスに言われ、俺は我に返った。
「あ、すまん。
俺は行きません!たった一晩だけの姉弟なんで、忘れて下さい!」
クラレスは何かヒステリックに喚いていたが、イリシャは笑い、
「また会おう!」
と言って、踵を返した。
「会いたくないわ!」
俺は溜め息をついて、しゃがみ込んだ。
劇団員達を無事に奪還し、橋の警護を強め、俺達は馬車に乗り込んだ。首都フルデルにある本部に報告するためだ。
「はああ。借金は、クラレスが代わってくれないかな。ロウガン王妃なら、払えるだろう?」
クッションの悪い馬車に揺られながら何度目かわからない溜め息をついた。
「土地は農業に向いてない代わりに、鉄鉱石とかが豊富で、武器の材料の輸出で儲けてるからなあ。
でも、クラレスが払うわけないよ」
ルイスの無情なコメントに、溜め息がまたも出た。
「でも、あれだな。フィー、ロウガンの王と義兄弟なんだな」
ガイが感慨深げに言う。
「全然嬉しくないし、クラレスとだってたった一晩の事なんだから、姉弟とも言いたくない」
「元気出せよ!な!着いたらお代わり自由のサービスバイキング行こうぜ、な!」
ルイスがバンバンと肩を叩いて来る。
「そうとも!何ならワシが、大人の遊びを教えてやるぜ。上手く行けば一攫千金!」
「ゼルはそう言うけど、儲けたためしがないわね」
ロタがゼルをニッコリと笑顔で切り、マリアがフンフンと頷いた。
まあ、項垂れていても仕方がない。もう二度と会う事はないし、俺はせいぜい、安全と自由の身を目指そう。
「そうだな。ああ、美味いもん食いたいな!」
俺達は空を見上げ、イノシシは焼きか煮込みかの論争を始めたのだった。
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