29 / 33
交渉ですらない交渉
しおりを挟む
バカ高そうな椅子に座り、これまた高そうなカップで味は今一つな紅茶を振る舞われながら、話に入る。
にこやかに時候の挨拶とかをするとも思わなかったが、いきなり本題とも思わなかった。
「領地へはいつ入ろうか」
ニヤニヤとしている所を見ると、イリシャは無茶を言っているという自覚を持って、滅茶苦茶な事を言っているらしい。
「それよりどういう所なの、ノースエッジって。あんまり知らないわ。どのくらい税が取れそうなの」
クラレスは本心から言っているのがわかる。
「ド貧乏ですよ。泥棒が避けて通るくらいに」
「なによそれ!?」
「あなたが怒る筋合いじゃないでしょう。俺の領地であって、あなたに関係はない」
澄ました顔で紅茶を啜る。ああ。何か紅茶が美味しいぞ。
「それは困ったな。クラレスが楽しみにしていたのに。実家だろ。クラレスのものでいいじゃないか」
「無理を言いますね」
「じゃあ、我が国の流儀にのっとって、力で奪うしかないな」
「易々と奪われるわけにはいきませんよ。そうとなれば、全力で阻止します」
「まず中央から倒して国ごと貰うという方が早いか」
「それは成功しないし、そうしたらロウガンの王がすげ変わっているでしょうねえ」
「弟殿は冗談が好きだなあ。わはははは!」
「冗談じゃないんですけどね。わはははは!」
中身の無い会話だ。
ロウガンはただ、戦争したいだけ。怒ってカップを投げつければ戦争にしかねない。
「聞きなさいよ!あんたのものは私のものなの!だからそんな貧乏領地は冗談じゃないわ!もっとパールメント家に相応しい領地を寄こしなさいよ!」
ダンダンと床を踏み鳴らすクラレスに、今は誰も見向きもしない。
「交渉決裂という事かな」
「何でそんなに戦争がしたいんです?」
イリシャは笑って、背もたれにゆったりともたれた。
「退屈だからだよ!」
マリアのカップを掴む手に力が入って、ミシリ、と音がした。
「それで何人死のうと構わない?」
「嫌なら、わたしを王座から引きずり下ろせばいい!」
「あなたが死ぬかもしれないのに?」
「退屈で死ぬよりずっといい!」
この男はおかしい。
それでも、この男と交渉しなければいけないのか。
「今日は疲れただろう。休むといい。また明日気が変わったなら、ここへ来い」
イリシャはニヤリと笑い、
「俺を失望させないでくれよ、弟よ」
と言い、スタスタと歩いて行った。
「何て……!」
怒りにマリアが震え、
「暗殺しますか、フィー隊長」
と真剣な顔で訊いて来る。
「しない!ダメ!」
「落ち着けマリア、な」
皆で立ち上がって追って行こうとするマリアを必死で止めた。
「とにかく、まともな方法じゃ解決しない。一旦は部屋に行きましょう」
俺達は案内に従い、客室があるという離宮へ向かった。
離宮は、神話の神殿風だった。
そこに入ると、すぐに作戦会議をする。
「まずは情報収集だな。この国の全員がそういう考えなのか、国力はどのくらいか」
「全員バレるなよ」
各々、部屋を出て行った。
「大丈夫でしょうか」
官僚は浮かない顔をしている。
「とにかく、クラレスとか侍女とかこちらの役人が来た時、頼みますよ」
「はい」
俺と彼は、頷き合った。
にこやかに時候の挨拶とかをするとも思わなかったが、いきなり本題とも思わなかった。
「領地へはいつ入ろうか」
ニヤニヤとしている所を見ると、イリシャは無茶を言っているという自覚を持って、滅茶苦茶な事を言っているらしい。
「それよりどういう所なの、ノースエッジって。あんまり知らないわ。どのくらい税が取れそうなの」
クラレスは本心から言っているのがわかる。
「ド貧乏ですよ。泥棒が避けて通るくらいに」
「なによそれ!?」
「あなたが怒る筋合いじゃないでしょう。俺の領地であって、あなたに関係はない」
澄ました顔で紅茶を啜る。ああ。何か紅茶が美味しいぞ。
「それは困ったな。クラレスが楽しみにしていたのに。実家だろ。クラレスのものでいいじゃないか」
「無理を言いますね」
「じゃあ、我が国の流儀にのっとって、力で奪うしかないな」
「易々と奪われるわけにはいきませんよ。そうとなれば、全力で阻止します」
「まず中央から倒して国ごと貰うという方が早いか」
「それは成功しないし、そうしたらロウガンの王がすげ変わっているでしょうねえ」
「弟殿は冗談が好きだなあ。わはははは!」
「冗談じゃないんですけどね。わはははは!」
中身の無い会話だ。
ロウガンはただ、戦争したいだけ。怒ってカップを投げつければ戦争にしかねない。
「聞きなさいよ!あんたのものは私のものなの!だからそんな貧乏領地は冗談じゃないわ!もっとパールメント家に相応しい領地を寄こしなさいよ!」
ダンダンと床を踏み鳴らすクラレスに、今は誰も見向きもしない。
「交渉決裂という事かな」
「何でそんなに戦争がしたいんです?」
イリシャは笑って、背もたれにゆったりともたれた。
「退屈だからだよ!」
マリアのカップを掴む手に力が入って、ミシリ、と音がした。
「それで何人死のうと構わない?」
「嫌なら、わたしを王座から引きずり下ろせばいい!」
「あなたが死ぬかもしれないのに?」
「退屈で死ぬよりずっといい!」
この男はおかしい。
それでも、この男と交渉しなければいけないのか。
「今日は疲れただろう。休むといい。また明日気が変わったなら、ここへ来い」
イリシャはニヤリと笑い、
「俺を失望させないでくれよ、弟よ」
と言い、スタスタと歩いて行った。
「何て……!」
怒りにマリアが震え、
「暗殺しますか、フィー隊長」
と真剣な顔で訊いて来る。
「しない!ダメ!」
「落ち着けマリア、な」
皆で立ち上がって追って行こうとするマリアを必死で止めた。
「とにかく、まともな方法じゃ解決しない。一旦は部屋に行きましょう」
俺達は案内に従い、客室があるという離宮へ向かった。
離宮は、神話の神殿風だった。
そこに入ると、すぐに作戦会議をする。
「まずは情報収集だな。この国の全員がそういう考えなのか、国力はどのくらいか」
「全員バレるなよ」
各々、部屋を出て行った。
「大丈夫でしょうか」
官僚は浮かない顔をしている。
「とにかく、クラレスとか侍女とかこちらの役人が来た時、頼みますよ」
「はい」
俺と彼は、頷き合った。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ベテラン精霊王、虐げられ皇子の子育てに励みます
はんね
ファンタジー
大陸で最も広大な領土と栄華を誇るアストラニア帝国。
その歴史は、初代皇帝ニコラスと精霊王バーティミアスが“疫病王ヴォラク”を討ち倒したことから始まった。ニコラスとバーティミアスは深い友情を結び、その魂を受け継ぐ皇子たちを永遠に見守り、守護する盟約を交わした。
バーティミアスは幾代もの皇帝を支え、帝国は長き繁栄を享受してきた。しかし、150年の眠りから目覚めた彼の前に現れた“次の皇帝候補”は、生まれたばかりの赤ん坊。しかもよりにもよって、十三番目の“虐げられ皇子”だった!
皮肉屋で老獪なベテラン精霊王と、世話焼きで過保護な月の精霊による、皇帝育成(?)奮闘記が、いま始まる——!
人物紹介
◼︎バーティミアス
疫病王ヴォラクを倒し初代皇帝ニコラスと建国初期からアストラニア帝国に使える精霊。牡鹿の角をもつ。初代皇帝ニコラスの魂を受け継ぐ皇子を守護する契約をしている。
◼︎ユミル
月の精霊。苦労人。バーティミアスとの勝負に負け、1000年間従属する契約を結びこき使われている。普段は使用人の姿に化けている。
◼︎アルテミス
アストラニア帝国の第13皇子。北方の辺境男爵家の娘と皇帝の息子。離宮に幽閉されている。
◼︎ウィリアム・グレイ
第3皇子直属の白鷲騎士団で問題をおこし左遷されてきた騎士。堅物で真面目な性格。代々騎士を輩出するグレイ家の次男。
◼︎アリス
平民出身の侍女。控えめで心優しいが、アルテミスのためなら大胆な行動に出る一面も持つ。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる