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義兄弟対決
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体つきからして、俺とイリシャではかなり差がある。イリシャは逞しく筋肉がついた大柄な体型で、俺はどちらかと言うと中肉中背。剣技や経験でも、俺が勝るとは到底思えない。
クラレスが、ワインを飲みながら観戦しているのが視界に入り、イラッとした。
そうだ。こいつのせいで、いつもいつもいつも――!
気が逸れたのを咎めるように、イリシャが剣を振る。ブンと振り下ろされた剣を避けると、イリシャの振った剣の風で、地面の土に浅く溝が入った。
この剣を受けたら、間違いなくこっちの剣が折れる。俺の剣は支給品の汎用のもので、刃の厚みも違う。
そう思うと、冷や汗が伝った。
「始めようか」
イリシャが獰猛な笑みを浮かべた。
イリシャの攻撃を、俺はひたすら避け続けた。疲れてくれないかな、と思うが、冷静に考えると、先に疲れるのは俺だ。
しかし、間合いも違う。どう攻め込めばいいのかわからない。
「弟よ!かかって来い!1対1なら方法にルールはない!楽しめ!」
それを楽しめるのは戦闘民族だけだ!
避け続ける俺に、ヤジや嘲笑の笑い声がかけられているが、それどころじゃない。かすっただけでもケガをする。
しかし、予備動作というか、タイミングがわかって来た。剣が大きいせいか、技巧のようなものも今の所見られない。力一杯振る。それだけだ。
ならば、手を出すチャンスがないわけではない。
振り切ったと同時に踏み込んで斬り上げる。
浅く胸を切ったが、返って来た大剣の風圧でこちらも頬を浅く切った。痛みはない。
「油断したな」
イリシャはペロリと舌なめずりをした。
「油断したままでいいよ」
「そうはいかん」
言いざま、一気に距離を詰めて来て、剣を振りまくる。
それを、右に左に、かがみ、上体をそらして避けまくる。
「わはははは!大したもんだぞ!ここまで避けるやつは初めてだ!」
それはあれか。これまでの奴は皆ちゃんと攻撃して行ったというだけの事か。
俺は必死で避けまくったが、いつの間にか地面にイリシャの作ったたくさんの溝ができていて、そのわずかな溝に引っかかった。
おっ、と泳いだ俺の目に、剣を振りかぶるイリシャが見えた。
まずい。だめだ。
そう思った時、胸元に手が触れ、指にそれが当たった。ピカピカの鏡のようになっている、通信機の試作品の部品だ。
それを翳すと、日の光を反射して、イリシャの目を射る。
「うおっ」
それで俺は体勢を立て直しつつ前へ突っ込む。
が、片手で覆った目の向こうから、片目が俺を見ていた。
ので、足元の地面を足で蹴り上げた。
「うわっ!?ぷっ!」
顔に砂がかかり、目に入る。それでイリシャは完全に目を閉じ、攻撃が止まる。
その隙に飛び込み、首に剣を突きつける――はずが、足が滑ってスライディングになった。そしてそのまま、イリシャの片足を蹴り倒す形になって、イリシャが転ぶ。
そして俺は、「こうなるように動きました」という顔で、立ち上がって首に剣を当てた。
「俺の、勝ちだ」
訓練場はシンと静まり返っている。
イリシャの側が暴れ出したら取り押さえられるようにと、ルイス達は構えているのだろうと、見なくてもわかる。
イリシャは肩を震わせ、やがて、大声で笑い出した。
「わはははは!さすが、弟よ!見事!」
訓練場が一気に騒がしくなったが、もう知るもんか。俺はその場に座り込んだ。
クラレスが、ワインを飲みながら観戦しているのが視界に入り、イラッとした。
そうだ。こいつのせいで、いつもいつもいつも――!
気が逸れたのを咎めるように、イリシャが剣を振る。ブンと振り下ろされた剣を避けると、イリシャの振った剣の風で、地面の土に浅く溝が入った。
この剣を受けたら、間違いなくこっちの剣が折れる。俺の剣は支給品の汎用のもので、刃の厚みも違う。
そう思うと、冷や汗が伝った。
「始めようか」
イリシャが獰猛な笑みを浮かべた。
イリシャの攻撃を、俺はひたすら避け続けた。疲れてくれないかな、と思うが、冷静に考えると、先に疲れるのは俺だ。
しかし、間合いも違う。どう攻め込めばいいのかわからない。
「弟よ!かかって来い!1対1なら方法にルールはない!楽しめ!」
それを楽しめるのは戦闘民族だけだ!
避け続ける俺に、ヤジや嘲笑の笑い声がかけられているが、それどころじゃない。かすっただけでもケガをする。
しかし、予備動作というか、タイミングがわかって来た。剣が大きいせいか、技巧のようなものも今の所見られない。力一杯振る。それだけだ。
ならば、手を出すチャンスがないわけではない。
振り切ったと同時に踏み込んで斬り上げる。
浅く胸を切ったが、返って来た大剣の風圧でこちらも頬を浅く切った。痛みはない。
「油断したな」
イリシャはペロリと舌なめずりをした。
「油断したままでいいよ」
「そうはいかん」
言いざま、一気に距離を詰めて来て、剣を振りまくる。
それを、右に左に、かがみ、上体をそらして避けまくる。
「わはははは!大したもんだぞ!ここまで避けるやつは初めてだ!」
それはあれか。これまでの奴は皆ちゃんと攻撃して行ったというだけの事か。
俺は必死で避けまくったが、いつの間にか地面にイリシャの作ったたくさんの溝ができていて、そのわずかな溝に引っかかった。
おっ、と泳いだ俺の目に、剣を振りかぶるイリシャが見えた。
まずい。だめだ。
そう思った時、胸元に手が触れ、指にそれが当たった。ピカピカの鏡のようになっている、通信機の試作品の部品だ。
それを翳すと、日の光を反射して、イリシャの目を射る。
「うおっ」
それで俺は体勢を立て直しつつ前へ突っ込む。
が、片手で覆った目の向こうから、片目が俺を見ていた。
ので、足元の地面を足で蹴り上げた。
「うわっ!?ぷっ!」
顔に砂がかかり、目に入る。それでイリシャは完全に目を閉じ、攻撃が止まる。
その隙に飛び込み、首に剣を突きつける――はずが、足が滑ってスライディングになった。そしてそのまま、イリシャの片足を蹴り倒す形になって、イリシャが転ぶ。
そして俺は、「こうなるように動きました」という顔で、立ち上がって首に剣を当てた。
「俺の、勝ちだ」
訓練場はシンと静まり返っている。
イリシャの側が暴れ出したら取り押さえられるようにと、ルイス達は構えているのだろうと、見なくてもわかる。
イリシャは肩を震わせ、やがて、大声で笑い出した。
「わはははは!さすが、弟よ!見事!」
訓練場が一気に騒がしくなったが、もう知るもんか。俺はその場に座り込んだ。
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