柳内警備保障秘書課別室

JUN

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危険なゲーム(2)潜入調査

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 錦織は皆に、依頼された仕事について説明していた。
「依頼者はこの学校の理事長で、学校に潜入して調査、ガードしてもらいたいという事ですが、何せ、警護課の連中は何に扮しても目立ってしまって」
「だからって、これはないでしょう」
 涼真は、とある私立高校の制服を広げて言った。
 その高校付近でチンピラ達が出没し、ここの男子生徒だけを狙って、声をかけたりジロジロ見たりしているそうだ。どうも、誰かを探しているらしい。
 なので、生徒を守るために、調査とガードをお願いしたい、というのが依頼だ。
 最初に受けた課では、アンケートを生徒からとったり校門前に立ってみたりしたらしいが、チンピラには効かず、生徒には変に好奇心を持たれただけだった。
 そこで別室に投げ出されたのだ。
 そこで、まずは原因の調査からと、潜入することになった。
 悠花は事務員で、同じ事務員達に聞き込む。雅美は養護教諭、湊は図書室の司書教諭で、教師や職員、生徒から。涼真は編入生として、大人には流れて来ないような噂を聞き込む。そういう受け持ちである。
「まずは原因の調査です。お願いしますよ」
 錦織はにこにこしながら、そう皆に言った。

 翌日から、各々はその『緑山高校』に入った。
 悠花は、かわいいが少々オッチョコチョイな新人事務員として、職員達から可愛がられている。雅美は美しすぎる養護教諭として、保健室に来る男子生徒の数を激増させた。湊は臨時の図書館司書として、怖がられたり、遠くから遠巻きに見られたり。
 涼真は、すっかり馴染んでいた。
 クラスメイトは親切で、クラブに誘われ、放課後の遊びにも誘われ、ラインのグループにもすぐに入った。
 内部調査で一番有望と思われる。
「保脇、保健室行かない?」
「え、具合悪いの?」
「先生見るだけだよ」
 涼真としては、複雑だ。
「男子ってばかよね。相手にされるわけないのに」
「ねえ。その点、大人の男っていいわぁ」
「あ、図書室の篠杜先生よ。雰囲気が違うわよねえ、ほかの先生達とも」
「だって、これまでの一番若い先生でも、46歳だもん」
「ケッ。お前らだって同じじゃねえか」
 涼真は一言も発せずに、苦笑ともつかない曖昧な笑みを浮かべていた……。
「ところで、何かこの学校の生徒だけ、チンピラにジロジロ見られてない?」
 そう切り出す。
「ああ、そうなんだ。保脇が来る前にはそれで警備員が門の前に立ったり、駅まで集団で歩くように推奨されたり、何か問題となるような事に心当たりはないかとかいうアンケートもあったぞ」
 涼真は初耳という風を装いながら、へえ、と声を上げた。
「それで、原因って何?」
「わからなかったんじゃない?」
 皆、何となく頷く。
「でも、誰か探してるじゃない?それも男子」
 女子の1人が、気軽に言った。
「チンピラの誰かの彼女の浮気相手とか?」
「ケンカ?」
「その割に、真面目そうで弱そうな子も声かけられてるじゃない。先輩とか」
 涼真は訊き返した。
「え、声かけられたの?何て?」
「『てめえ、今月2日の夜、自転車で花園神社の裏を通らなかったか』って」
 涼真は、興奮を出さないように努めた。
「そこで何かあったんだな」
 男子が言い、首を捻る。
「何があったんだろう?ケンカにしては変だし。あおり?」
 涼真はまたも、訊き返した。
「あおり?」
「あおり自転車。知らない?」
「ああ、聞いた事はあるけど」
「流行ってるのよ、一部で。車に仕掛けて、生卵とかぶつけて逃げるの」
「え、それは酷い」
 涼真は思わず言ってから、ヒヤリとした。が、そこにいる皆は、それを悪い事と捉えられる生徒達だった。
「やりすぎだよな」
「あれ、うちの学校でもやってるやついるもんな」
「そう言えば、吉村達、ピタッとやめたらしいぜ」
「何で?ばれなきゃいいって言ってたのに」
「自転車のあおりも処罰される事に決まったからじゃない?もし捕まったら、受験に響くし」
「フードとフェイスマスクでバレないようにしてたんだろ?その上、自転車しか入れない横道のある道路でしかやらなくて、ほかのやつらはバカばっかりだ、頭使えとか何とか言ってたじゃん」
 彼らは一様に首を傾げたが、どうでもいいのか、話題は修学旅行の事に変わった。



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