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呪う(3)深夜の訪問者
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急ぎの分だけでもと仕事をするが、何せ1人だ。石崎は1人で残業していた。
「早く皆具合が良くなってくれないと困るよなあ。せめてそれまでは、誰か応援を寄こしてもらわないと、とてもじゃないが、無理だ」
思わずぼやいて、凝り固まった肩を回す。
と、電話が鳴り出した。
「もう10時だぞ?こんな時間に何だ?」
忙しいし面倒臭い。営業時間外だからと、石崎は無視することにした。
電話はしばらくしつこく鳴っていたが、ようやく諦めたのか、10分程度で静かになった。
「やれやれ」
呟いた時、今度は、ドアチャイムが鳴った。外のドアだ。
「はあ?」
こんな時間に客のわけもない。泥棒か?社員か?
防犯カメラで確認してみるが、ドアの前には誰もいない。いないのに、勝手にドアが開いていく。
石崎は、背筋がゾッとした。
そして、慌てて、事務所入り口のカギをかけた。下のドアはテンキーだが、ここのドアは普通の鍵だ。
息を殺してジッとドアを見つめながら、名刺の電話番号に、震える指でかけた。
「もしもし」
言ったところで、ドアノブがガチャガチャと音を立てた。
「ヒッ!」
ドン、ドン、ドン、とドアが叩かれる。
『どうしました』
「いいい今、何か見えないのが、事務所に――」
ドオン!
「ウワッ!」
首を縮めた。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ――。
ドンドンドンドン。
石崎は耳を塞いで体を丸めた。
3係と手分けして調べた結果を報告し合う。
「久世浩美は、ノイローゼで退職した翌日、自室で首を吊って自殺しています。発見者は同居している母親。現在母親は、ショックのために心療内科に入院中です」
「大学は有名女子大ですが、プライドが高くて人付き合いがへた。友人もおらず、孤立していたそうです。成績も、本人のプライドの割には普通で、就職試験も軒並みだめだったと教授が言っていました」
千歳さんと美保さんが言う。
「何とか就職したこの会社でも他の社員と親しくなれず、お見合いも全滅、か」
「もう、決まりだねえ、久世さんで」
「退職前に、絵の裏に仕掛けておいたんだな」
直と僕もそう言って、溜め息をついた。
何でも他人のせいにすると事務員達も言っていたし、一方的に恨んでいたとしても不思議ではない。迷惑ではあるが。
と、電話が鳴り出し、出た途端、泣くような、動揺しきった石崎さんの声がした。
『き、来た!来ました!あああ、ドアが!』
「石崎さん、落ち着いて。ドア、窓を閉めている限り、その部屋には入れません。すぐに向かいますから」
『ひゃああ!』
「石崎さん!?」
返事はない。
「出た。直」
「りょうかーい」
僕と直は、陰陽課を飛び出した。
急いで向かいながら、写真を思い出す。あまりにも怖がらせるかと見せなかったが、写真の表は社員の顔が焼かれており、裏には、血液と思われるもので、『呪』という文字と目の絵が描かれていた。この目を通して事務所とつながり、呪を送り込んでいたのだ。
だから目を取り去って塞いだのだが、そのせいで様子を窺えず、直接事務所に向かったらしい。
「執念深いやつだな」
「友達にはなれないタイプだよねえ」
「全く。面倒臭いやつはごめんだな」
肩を竦めて、僕達はひたすら急いだ。
「早く皆具合が良くなってくれないと困るよなあ。せめてそれまでは、誰か応援を寄こしてもらわないと、とてもじゃないが、無理だ」
思わずぼやいて、凝り固まった肩を回す。
と、電話が鳴り出した。
「もう10時だぞ?こんな時間に何だ?」
忙しいし面倒臭い。営業時間外だからと、石崎は無視することにした。
電話はしばらくしつこく鳴っていたが、ようやく諦めたのか、10分程度で静かになった。
「やれやれ」
呟いた時、今度は、ドアチャイムが鳴った。外のドアだ。
「はあ?」
こんな時間に客のわけもない。泥棒か?社員か?
防犯カメラで確認してみるが、ドアの前には誰もいない。いないのに、勝手にドアが開いていく。
石崎は、背筋がゾッとした。
そして、慌てて、事務所入り口のカギをかけた。下のドアはテンキーだが、ここのドアは普通の鍵だ。
息を殺してジッとドアを見つめながら、名刺の電話番号に、震える指でかけた。
「もしもし」
言ったところで、ドアノブがガチャガチャと音を立てた。
「ヒッ!」
ドン、ドン、ドン、とドアが叩かれる。
『どうしました』
「いいい今、何か見えないのが、事務所に――」
ドオン!
「ウワッ!」
首を縮めた。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ――。
ドンドンドンドン。
石崎は耳を塞いで体を丸めた。
3係と手分けして調べた結果を報告し合う。
「久世浩美は、ノイローゼで退職した翌日、自室で首を吊って自殺しています。発見者は同居している母親。現在母親は、ショックのために心療内科に入院中です」
「大学は有名女子大ですが、プライドが高くて人付き合いがへた。友人もおらず、孤立していたそうです。成績も、本人のプライドの割には普通で、就職試験も軒並みだめだったと教授が言っていました」
千歳さんと美保さんが言う。
「何とか就職したこの会社でも他の社員と親しくなれず、お見合いも全滅、か」
「もう、決まりだねえ、久世さんで」
「退職前に、絵の裏に仕掛けておいたんだな」
直と僕もそう言って、溜め息をついた。
何でも他人のせいにすると事務員達も言っていたし、一方的に恨んでいたとしても不思議ではない。迷惑ではあるが。
と、電話が鳴り出し、出た途端、泣くような、動揺しきった石崎さんの声がした。
『き、来た!来ました!あああ、ドアが!』
「石崎さん、落ち着いて。ドア、窓を閉めている限り、その部屋には入れません。すぐに向かいますから」
『ひゃああ!』
「石崎さん!?」
返事はない。
「出た。直」
「りょうかーい」
僕と直は、陰陽課を飛び出した。
急いで向かいながら、写真を思い出す。あまりにも怖がらせるかと見せなかったが、写真の表は社員の顔が焼かれており、裏には、血液と思われるもので、『呪』という文字と目の絵が描かれていた。この目を通して事務所とつながり、呪を送り込んでいたのだ。
だから目を取り去って塞いだのだが、そのせいで様子を窺えず、直接事務所に向かったらしい。
「執念深いやつだな」
「友達にはなれないタイプだよねえ」
「全く。面倒臭いやつはごめんだな」
肩を竦めて、僕達はひたすら急いだ。
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