悪役令嬢の弟

ミイ

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76. テリトリー

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「(えっ…えぇ…どうしよう…!)」

僕はサンバックの変化について行けずその状態のまま狼狽える。

すると彼はこう続けた。

「…ちゃんとお前の気持ちも分かっているから安心しろ。今の時点で俺に気がないことは重々分かっている。トルーの言った通り来年の夏まではきちんと返事を待つし答えも急かさない。ただ、たまにはこうやって抱き締めさせてくれ。只でさえ、なかなか家に帰れないのに俺とお前じゃ生活リズムが違う。こうやってトルーが訪ねてきてくれなきゃまともに会うことも出来ない…しかし俺の気持ちを少し汲んでくれるなら時々会いに来てくれないか…。」

「(…?そしたら自分で僕の部屋に来たらいいんじゃないの?)
兄様が僕の部屋に来るのは駄目なの?」

「…ッ!いいのか?俺はお前のことが好きなんだぞ?そんな相手がノコノコ部屋を訪れて中に入れるとなったら俺の理性が何処まで保つか分からん。」

「(それは…どっちでも同じなのでは…?)」

僕が彼の答えに首を傾けると彼は僕の肩を掴み言い聞かせるように口を開く。

「トルー…お前が俺の部屋に来るのは俺のテリトリーにお前が入るということだ、俺はお前が好きだから俺のテリトリーに入るのは何とも思わん…むしろ嬉しいが俺がトルーの部屋に入るということはお前のテリトリーを俺が侵すということだ、それは分かるな?」

僕はコクッと頷く。

「つまり他人を自分のテリトリーに入れるのは相手を受け入れているという証にもなる。もしくは全く警戒心が無いかのどちらかだ。俺はお前の義兄(あに)だ、だからお前に警戒心を持てというのは酷かもしれんが、自分を好きだと言った相手に対しては少なからず警戒心を持て。だから義兄だとしても安易に部屋に招き入れてはいけないんだ。分かったな?」

「うっ…うん。」

半端、彼に押し切られるような形となったが結局、サンバックの言うことを全て理解するのは出来なかった。要は部屋に何でもかんでも入れるんじゃないぞ、ってことだろう。まぁ僕の部屋を訪れる人なんて限られてるし、好意がない人を入れるなんて元々考えてないから大丈夫だと思うけど。それにサンバックは僕の部屋を訪れることはないから会いたかったら自分から会いに来いよ、ってことね。よし、分かった。なんか恋心って難しいなー。
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