悪役令嬢の弟

ミイ

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98. 誰を想う

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「えっ⁉︎いや、違う違う!」

慌てて否定する。
するとセイロンはホッとしたように「良かった。」と告げた。

「もしトルー様に誰か好きな人が出来たら友達としても応援したいし協力したいんです!でも相手がバイオレット様だと正直…どうかなっと思って。確かに可愛い容姿はしてますし、愛想も悪くないと思います。でもやっぱり事件のことがあるので、僕はおススメ出来ません…。」

セイロンは僕の顔を窺うように自分の意見を述べてくる。

僕は彼の優しさに微笑むと「いや、大丈夫!僕、好きな人はいないから!」と返した。




その時、そういえば…と昨晩のサンバックを思い出す。

昨日、ルート様の指示で部屋を出て行ったサンバックは僕が眠ろうとしていた頃に帰宅し、衣服もそのままに部屋を訪れた。

「トルー…体調は大丈夫か?さっきは声を掛けれなくてすまなかったな。」

僕は横たわっていた体勢から身を起こす。

「ううん、大丈夫だよ。ルート様、ピリピリしてたもんね、兄様もお仕事中だったんでしょう?気にしないで。」

僕がそう微笑むとサンバックも微笑みながらベッドサイドに腰掛け僕の頰に手を添える。僕は自分とは違う逞しい手に自分の手を重ね、その温かさを感じていた。

「ああ…。既にルート様が説明していたがトルーが倒れたと聞いた時、直ぐに帰宅したかったのだが、それが出来なくて歯痒い思いをした。でもトルーがこうやって無事に目覚めてくれて嬉しい…。」

「フフッ…皆、大袈裟だなぁ。ちょっと疲れてただけだよ?だから安心して?」

「…分かった。トルー、今回のことは目を瞑るが次に無茶なことをしたら暫く家から出さないからな、覚えておけよ。」

そう言って笑うサンバックの言葉を僕は本気かどうか確認できないまま僕は額に口付けられたのだった。





「…ま!トルー様!」

セイロンの言葉にハッとする。

「トルー様、どうかしたんですか?顔が赤いですよ?あっ!まだ体調が優れないとか⁉︎」

彼の心配する声に慌てて否定する。

すると途端に華やか表情に変わり「そうですか!無理はしないで下さいね!あと、気になる人とか好きな人が出来たら教えて下さい!僕、出来る限りお手伝いしますので!」と彼は笑って答えてくれた。

そして僕は自分が休む前から疑問に思っていたことを彼に窺う。

「ねぇセイロン。この前の試験はバイオレット様のことがあって途中で終わっちゃったよね?僕が休んでる間にもう続きはしたの?」

「はい。解決の糸口が見つかった、とかで続きが行われました。なので、ブルーマリー様も無事終わりましたよ。」

「そっか、良かった…。」
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