悪役令嬢の弟

ミイ

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122. 時計の行方

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その後、僕とイモーテルはサンバックに促され自分の家に戻って来た。

「兄様、頭痛はもう大丈夫…?」

記憶を戻す為とはいえ、さっきの状態を知っている僕からすればかなり心配だ。

「ああ、今はもう何ともない。さっきはトルーのことを初対面…はぁ…今思い出しても自分に腹が立つが…そうだと思い込んでたから急に頭痛がした時、魔法で何か操作されたんだと思ったんだ。トルーと別れた後、それが治ったことで余計に疑っていた…。しかし自室に戻った後、何故か最後のお前の顔と声が頭から離れなくなり、あんな態度をとってしまった自分に後悔していた。…自分でも訳がわからくて呆然としていると急に胸ポケットが熱くなり、この懐中時計を見つけたんだ。」

その言葉に僕が教会に行った時と同様、時計を中心に不思議なことが起きていることに驚く。

もしかしたら自分の持っているものと共通点があるかもしれない…。

そう思い、2人に声を掛け懐中時計を受け取った。しかし、いくら確かめても彼らのものと自分のものとが全く同じものとしか思えない。

「(一緒に見えるけど…。)」

僕がジッと見つめているとサンバックも覗き込んできた。

「何かわかったか…?」

「ううん、同じものだとは思うけど…。あっ!もう一つ時計があるんだ…!それと何か関係が…あれ?ポケットに入れてたのが無い!」

腕時計を入れてた筈のポケットや反対側、それ以外のポケットも確認したが、腕時計は見つからない。

「あれ?なんで?イモーテルは…知らないよね?」

「先程の時計ですか…。はい、万が一落としていたら気付いていたと思いますが…。」

「そっか…。」

僕の落ち込んだ反応にサンバックから心配する声が上がる。しかし、よく考えると大して大事ではないのだ。彼らの記憶を戻した要因の一つではあるが、元々この世界には無かったもの…役割りを終えて消えたと考える方が賢明かも知れない…。そんな物が消えるなんて非現実的だが、僕がこうやって現代とこの世界を渡ってきたことだって非現実的なんだから、それくらい有り得るだろう。

僕はそうこじつけ、気にしないことにした。

「ううん…戻って探す程のものじゃないし大丈夫だよ。」

「そうか…ならいいが…。」

何となくわだかまりの残る雰囲気に空気が悪くなる。

しかしそれ以上に僕はサンバックに聞かなければならないことがある。

それはヒロインのことだ。

僕が居なくなってから彼女がどういう経緯で亡くなったのかが知りたい。

「…兄様、バイオレット様の亡くなるまでの経緯を聞いてもいい?」
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