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第七章 まるでオタクな獣人街
CASE49 メテオラ④
しおりを挟む初めのおかしなテンション新婦のくだりはともかく、結婚式は滞りなく終了した。
一足飛びに話が進みすぎだと思わなくはないが、友人の濃厚なキスシーンを描写したくないのでこの有様だ。
実際、大した騒動は起こっていない。そもそも、結婚式と言う厳かな行事において、騒動が起きていいはずもない。
新婦がテンパって誓いの挨拶の前にキスしようとしたことや、いよいよ誓いのキスと言う場面で、キスではなく頭突きをかましたこととか。
まあ騒動とはギリギリ言えない程度の出来事しか起きていない。
お互いに愛を誓い合って誓約書にサインしてキスして終わり。意外と結婚式って短いんだなぁ。一時間もしないうちに終わってしまった。
「いい結婚式だったわね。私もいつかあんな風になるのかしら」
「あんな風ってあれか? 新郎に頭突き食らわせて大出血をさせることか?」
「た、確かにあれはアレだったけども……でも良いじゃない? 初々しくって好感が持てたわよ」
確かに、頭突きの後の誓いのキスは、どうにも熟れている様子ではなく、思い切り前歯をぶつけている有様だった。
やはり、貴族らしくお見合い結婚なのだろうか? 貴族世界のことはよく知らないが、リンシュが言うに「自由恋愛による結婚は稀」だそうだ。
ならば見た目通り、キスすら未経験だった可能性もある。
あ、なんだろう? ちょっと安心感。
知らぬ間に友人が大人の階段を駆け上がっていたということはない様子である。
結婚式が終わり、披露宴の時間。
結婚式場の庭園を貸し切って、一般人でも自由に参加できる開かれた物で、招待状を受けた人たちの他にも大勢の人間が集まってきていた。
大きく分けてグループは三つ。
一つは貴族グループ。未だに姿の見えないリンシュも、恐らくこのグループの中に居るのだろう。今はボンズがせっせと挨拶回りに行っている場所である。
二つは友人グループ。ボンズと、奥さんであるフローリアスの友人たちが集まっているグループ。とは言え、奥さん側の友人は知らないのは当たり前だが、ボンズ側も、西部で作った友人が多いらしく、俺とミントは見知らぬ人が多い。
三つは一般グループ。招待状を受けていない一般人枠。エクスカリバーとメテオラはこのグループで遠慮なしに飲み食いしている。面倒事を起こさなければいいけど……
そして、俺とミントはどれかと言われれば友人グループに属するのだろうが、言った通り見知らぬ人が多いため、一般人グループで細々と食事を楽しんでいた。
「あれぇ!? サトーさんじゃないですか!?」
普段食べられないような豪華な食事に舌鼓を打っていると、つい最近聞いたことのある元気な女の子の声が襲いかかってきた。
振り向いてみてみれば、つい先日お世話になった人物である、獣人メイドのルティカがそこに居た。
「ルティカ? なんでこんな所に……平日は学校なんじゃなかったか?」
「ええ、学校の研修でパーティーの管理をしているんですけど……サトーさん、こういう他人のパーティーに参加するタイプだったんですね。意外です」
「いやいや、一応新郎側の友人枠で参加してるんだよ」
「え? なのに一般人に混じって食事を……あっ」
え、何そのいろいろ察してしまった時に発する「あっ」は。
「別に友だちが少ないわけじゃないからな! ボンズとの共通の友達は大体中央にいるから、忙しくて俺ら以外出席できてないんだよ!」
「あ、ああ。なるほどです。てっきり、お兄ちゃんと同類の可哀想なお人かと……」
散々な言われようだぞリュカン。と言うか、俺もある意味馬鹿にされてないかこれ?
「そう言えば、この間パーティーの準備があるとか手紙に書いてあったな。もしかしてこれのことか?」
「はい。周りにいるメイドさん達も、みんなルティカの同級生なんですよ。ちなみに引率の先生はあちらです」
ルティカが指差す方向には、客の群れから頭一つ抜けた巨体が一つ。
筋骨隆々なマッスルボディをメイド服で包み込み、劇画調の堀の深い顔つきが目立つお方。ゴリ美先生である。
「ご、ゴリ美先生!!」
「む? おお、サトーではないか! こんなところで奇遇だな。先日のマラソンはナイスガッツだったぞ。まだ筋肉痛は治っていないだろう? どれ、後でマッサージで筋肉を解してやろう」
「お願いします、ゴリ美先生!!」
こんな所で尊敬する恩師に出会うことが出来るとは思っていなかった。我ながら、興奮して変なテンションになっているように思う。
「あの、ルティカちゃん……だっけ? 私サトー君の友達のミント。で、あのゴツい先生とサトー君の関係って一体……?」
「何でしょうね。多分、師弟関係とかじゃないでしょうか」
「ああ、良かった。男同士の禁断な関係かと。サトー君の目、やたらキラキラしてるから……」
「ゴリ美先生は女性ですよ? 見ての通り」
「え?」
「はい? どうかしましたか、サトーさん?」
…………いや、どうもしてないよ。確かに、見た目通り女性だよな。男がメイド服を着るわけがないしな。あのたくましい胸筋……もといお胸も、女性特有のものだよな。
「あれ? サトーさん、ちょっとがっかりしてません?」
「してたまるか!! ホモネタをぶっこむんじゃねぇ!!」
「あ、やっと元に戻った。おかえりなさい、サトー君」
別に正気を失っていたわけじゃないんだがなぁ。
「所でサトー。あそこに居る着物を着た男は、貴様の知り合いか?」
「? 確かにアレは俺の知り合いですけど…………はっ!?」
眼の前の御仁、ゴリ美先生は恐らく、オリハルコンクラスの実力者。かつて、運動会でメテオラの実力を見抜いたヒュリアンと同程度の力を持っているだろう。
強者から見た強者はどう映るのか。和やかに握手をして挨拶……なんてことにはならないだろう。
そんな未来を予見した俺は、なんとかゴリ美先生とメテオラを合わせまいと心に決めて、どちらかの足止めをしようと行動を開始した。
「えーっと、ゴリ美先生! あちらの薔薇園が凄く綺麗なんです! 是非一緒に見に行きませんか!?」
「ゴリ美先生なら、もうあっちに行ってしまいましたよ?」
時すでに遅し。
それなりにあった距離は何処に行ったのかと思わんばかりの早業で、ゴリ美先生は口いっぱいにマンガ肉を頬張っているメテオラの元へワープした。
「ちょっ、待っ……!!」
全力疾走でも十数秒を要する距離を、客をかき分けて走り抜ける。
ようやくたどり着いたその場所で、ゴリ美先生とメテオラは鋭い目つきでにらみ合いをしていた。
あ、もうダメだ。ゴジラ対キングコングみたいな、大怪獣バトルが勃発してしまうのだ。
「貴様――――久しぶりじゃないか。なんでメテオラともあろう者が、人間界に来ているんだ?」
「ん? お前ゴリ美か? お前こそ、なんでメイド服なんぞを着ているんだ」
ドンガラガッシャン!
俺は全力疾走の勢いそのままに、まるでコメディの如く料理が満載されたテーブルへと激突した。
頻繁に起きかかるハルマゲドンを止めようとの俺の行動は、和やかに握手をするゴリ美とメテオラを見た瞬間に無に帰した。
宙を舞った料理達は、二人によって救出されて、その場に残った被害は、テーブルを破壊して地面に突っ伏す俺だけであった。
「って、知り合いかよ!?」
妥当なツッコミである。
「何だ、サトーはゴリ美と知り合いなのか? 世界とは存外狭いものだな」
「私も驚いたぞ。縁というものは不思議なものだ」
「ええと、俺と二人が知り合いなのはともかく……二人はどういう間柄なんだ? 少なくとも、敵対的ではないんだよな?」
二人はお互いの顔を見合って、軽く笑った。
「そうだな。かつては敵同士だったが、今では和解している間柄と言ったところか」
「うむ。冒険者をやっていた頃、何度やり合ったか知れないからな。魔界までたどり着いていなければ、どちらかが死んでいたことだろう」
「あ、やっぱりゴリ美先生、元冒険者なんですね」
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