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第十章 まるで意図せぬ大冒険
CASE72 勇者パーティー(笑) その1
しおりを挟む「ルーン! 今のうちに回復魔法をリリアンへかけろ!!」
「了解ですサン君! リリアンさんこちらへ!」
「わかりました! ジュリアス、少しの間だけ戦線を保たせてください!」
「任せろ! 相手の攻撃を避けるのだけは得意だあああああああ転んだあああああっ!?」
…………
「ええい! ジュリアスは一度下がれ! 俺が出る!」
「後衛職のサンが出てどうするんですか! 素直に罠でも張って置いてください!」
「ジュリアスさん! 攻撃力を上げる魔法をかけました! 一撃でも当てれば相当のダメージになるはずです!」
「ありがとうルーン! 覚悟しろモンスター! 我が聖なる剣の錆となれええええええええすっぽ抜けたあああああああっ!?」
………………
「よっしゃ! とりあえず簡易的な罠が出来たぞ! 専門職ってすげぇ!」
「あっ!? なんで味方陣地に罠を…………わきゃあっ!?」
「ああ!? リリアンさんが宙吊りに! 今降ろします!」
「ちょっと!? いきなり私をひとりぼっちにしないでくれえええええええげぶうっ!? た、体当たり食らった……」
「いやグダグダかよ!! まだ一発も敵に攻撃当たってないんだけど!!」
新冒険者パーティーを紹介しよう。
パーティーの指揮官。元勇者であり現工作員。子供に退化してレベルやスキルは同じ年頃の子供よりも低い有様のサンドリアス。
魔法職から戦士職へジョブチェンジ。ドワーフとしての脳筋パラメーターはピカイチだが、不慣れな接近戦で四苦八苦のリリアン。
魔法と接近戦をこなす魔法剣士というジョブを持つが、レベルが低くスキルがほとんど使えないので器用貧乏と化したルーン。
相も変わらずのポンコツジュリアス。
パーティーのバランスは割と良い方だと思うが、残念ながら何もかもが噛み合わない。
即席パーティーにせよ、ここまでひどい奴らはそう居ないだろう。自分の思った動きが自分の体で出来ないというのは相当な苦労らしい。
しかも敵は下級も下級。ゴブリンよりも遥かに弱い【いっかくウサギ】と言う雑魚モンスターが一匹。どちらかと言うと、モンスターよりも害獣に指定されるレベルの雑魚。
一般人の狩人ですら一人で倒せるモンスター相手に、四人がかりでカスリもしないとはひどい有様だ。
「好き勝手言ってんじゃねぇよサトー! だったらお前も戦いに加わってみろってんだ!」
「何を言うか! 俺はか弱い一般人だぞ! しかもパプカのお守りと言う大任を任され……痛てててててっ!? コラ耳引っ張るんじゃありません!」
「へっ!」
本当に懐いてくれないパプカであった。
冒険者ですら無い俺と、赤ん坊状態のパプカはパーティーに加わらず。遠目に応援という役割を担っているのである。
「いやしかし、サトー君じゃありませんがこれはまずいですよ。私とサン、二人でやってた頃と大差ないじゃないですか」
「レベルが下がってダンジョンで二人きり……心細くありませんでしたか、サン君?」
「お、おおう。まあな……」
ご覧の通り、俺やジュリアスにぶちまけた『自分は勇者サンドリアスでルーンの父親』と言う衝撃的事実は、ルーン本人には教えていない。サンの希望により『リリアンとそのパーティーに着いてきた初心者冒険者』と言う事になっている。
なんでも、
「ルーンの母親にバレたら男として終わる!」
らしい。
「あー……ルーンちゃんのお母様には会ったことがありますが、確かにその可能性はありますね」
「どういうことだ?」
「簡潔に言うと────重度のショタコンです」
「つまりこの姿がバレたら「一生戻らなくて良いよ」って言われるのは想像に難くない!」
サンの表情は真に迫っている。どうやら、常識人ルーンの両親は常識人とは限らないようだった。
という訳で現在。自らの招待を隠した上で、俺達と協力関係を結んでいるわけだ。
俺達とサン達。目的は共通していてダンジョンの脱出。そのためにまずはレベル上げが必要とのことなので、雑魚刈りをしている最中なのだ。
「ぐぞう、あのウサギめ……覚えてろよ────おろろろろろっ」
「────というより雑魚刈りを受けていると言うべきかもな」
腹にうさぎの体当たりを食らったジュリアスがリバース。鋭い角は防具に当たっため、致命的ではないがそれはそれ。衝撃に耐えきれず、割と見慣れた衝撃的光景が広がる結果となった。
根本的に俺達は弱すぎるのだ。探索するにせよ、脱出口を探すにせよ、そのへんの雑魚モンスターに駆られる側のピラミッド最底辺。
そんな理由でレベル上げなんだが、こんな状態ではそれすらおぼつかないのである。
「と言うか! レベル的にはジュリアスの次に高いのがサトーだろうが! お前も戦えよ!」
「さっきも言ったが俺は一般人だ! 元剣士だが、それもギルド職員として必要だったから取った資格なんだよ! パラメーターもスキルも今のお前ら以下だ! どーだ凄いだろうコンチクショー!!」
「サトーさん、分かりましたから泣かないでくださいよ」
これは目から汗をかいているだけである!
「大体、レベルのことを言うなら一番はジュリアスじゃないだろ?」
俺の言葉に、皆の視線は下へと移る。
「あう?」
パプカ・マクダウェル。現在の俺達の中で、最もレベルが高い赤ん坊である。
と言うか、見た目は一番変わってるくせにレベルダウンが起きていない。スキルもそのままで、その気になれば魔法をポンポン撃つことが出来るだろう。
「あのヒュリアンさんとおっさんの娘だからな。化物の子は化物ということか……」
「いやいやサトー君。私はパプカちゃんの幼少期を師匠から発狂するレベルで繰り返し聞かされていますが、基本は普通の女の子だったみたいですよ?」
「え、ならこの状態は?」
今度は視線が上へ。そこには魔法で浮かび上がるパプカの姿があった。
「ちなみに、誰かこんなタイプのトラップを聞いたことは?」
「ねぇよ」
「あるわけないでしょ」
「すみません、聞いたことないです」
「私が知っていると思うか? サトー、本気か?」
役立たず共め────というのは流石に暴言だろう。実際俺も知らないし、世界最強の冒険者であるサンが知らないのなら、普通は存在しないものとなる。これ以上トラップについて考えても答えは出ないだろうな。
それにしても、パーティーの最大戦力が赤ちゃんというのもおかしな話である。ちょっと情けなくなってしまうじゃないか。
「パプカの魔法を使えば、レベル上げは簡単なんじゃないか? いっかくウサギなんて消し炭だろう」
「いやジュリアス。それは俺も考えたが、こいつは今赤ちゃんなんだよ。こっちの指示を聞くと思うか? ────赤ちゃんになって無くても言うことは聞かないがな」
「やっぱり師匠のお子さんなんですねぇ……」
謎の信頼感のあるパプカである。
「とにかく、パプカの魔法は最後の手段──と言うかパプカの気分次第という事だ。しばらくはやっぱり探索とレベル上げがメインになりそうだな」
「すみませんね、私達の都合に付き合ってもらっちゃって」
と言うリリアンの言葉には理由がある。
実はこのダンジョン、10階層からなる巨大ダンジョンであり、現在地は最下層となっているらしい。
サン達は他称勇者パーティーと言う強力な面子で挑み、見事攻略して今に至るらしい。
さて、ここで不思議なのは、なぜ最下層で雑魚モンスターしか出ないのか。そして攻略しているにもかかわらず、なぜ彼らは不思議なトラップにかかってしまったのかだが、そもそもダンジョンの構造がおかしいのだ。
一階から十階まで降りる構造。普通ならば深く進むほど強力なモンスターが出てくるものだが、このダンジョンはその逆。深く進むほど敵が弱くなるらしい。
それと同時に、階層を経るほどレベルドレイン系のトラップが発動するらしく、最下層まで降りてきたサンとリリアンがレベル1まで下がったのはこれが原因らしい。ちなみにサンの年齢退化は別のトラップにかかったとか。
最下層と言うことで、恐らく出口はここにある。探索はこのためだが、ならばレベル上げなどせずに敵から隠れてやり過ごすというのも一つの手なのだが、レベル上げを同時並行して行っているのがサンとリリアンの『理由』と言うやつだ。
【勇者パーティー】と言ったが、それは今の二人だけで組まれているわけではない。その他に三人、パーティーメンバーが居るというのだ。そして彼らは、最下層ではない別の階層ではぐれたらしい。
つまり、サン達の目的の一つに彼らの捜索が含まれているのである。そのためには、階層を上げてより強いモンスターと戦う必要があるのだ。そのためのレベル上げなのである。
「気にしないでくれサン殿。私達も元に戻れるかどうかわからないんだ。レベル上げはやっておいて損じゃない」
「サン【殿】?」
「ああっと、ジュリアス【お姉ちゃん】!! 殿はやめてほしいなぁ君付けが良いなぁ!!」
「なんでだ? 尊敬する相手にはきちんとした敬称をつけるのは当たりま──モガッ?」
「はーいジュリアス、こっち来ようなー」
ジュリアスの口を抑えて連行。説明は一緒に聞いたはずなんだが、全然理解できていない。
とにかく、俺達の現在の目的。
ダンジョンの脱出。ダンジョンの探索。レベル上げ。パプカのお守り。サンの秘密の厳守……である。
────前途多難だなオイ!!
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