まるで無意味な召喚者~女神特典ってどこに申請すればもらえるんですか?~

廉志

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第十章 まるで意図せぬ大冒険

CASE76 パプカ・マクダウェル その1

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「いやぁ、チビッたぁ」
「あれ程の修羅場、もとのステータスの状態でも中々遭遇しませんしね」

 隠し通路から元いた洞窟まで戻り、扉を締めたところでみんなの意識が戻った。
 気絶していた割にはあっけらかんと先程の状況を話すサンとリリアンは、やはりオリハルコン級の冒険者らしい、太ましい精神力を持っているらしい。

「中々ってことは、何回かはああいった状況に陥ったことがあるんですか?」
「そりゃあ冒険者やってりゃあれくらいは何回かな」
「それってあれと同レベルの驚異に勝ったってことか、あんたら?」
「無理に決まってんだろ。人類で勝てるレベルじゃねぇし、毎回テレポートで逃げ帰ってるよ」

 聞いた限り、あのドラゴンのレベルは自己申告で20レベル。
 レベルだけ見るとジュリアスと大差なく見えるが、多分ドラゴンのレベルと人間のものとでは数え方が違うんだろうなぁ。大体10倍くらいは最低でも見積もっておいたほうが良さそうだ。

「しかしアレだなリリアン」
「ええ、アレですね。おかしなダンジョンだと思っていましたが、まさかアレだとは」
『アレってなんでござるか?』

 サンとリリアンが目線を合わせ、何やら二人にしかわからないことを【アレ】と表現しているようだ。
 先程のドラゴンとのやり取りを説明したことで何かを納得したらしいが、こちらからすると何を言っているのかさっぱりわからん。これ以上モヤモヤさせないでほしい。

「けどこちら側は違うっぽいんですよねぇ。新規ダンジョンのボスって言ってたらしいですし、こっちはやっぱり天然物なんですかね?」
「にしては恣意的な悪意を感じるが……まあアレだったとしても、こっち側では保証も何も無いっぽいよな」
「だからアレってなんなんだよ」

 こちらを構わず、不思議言語で話す奴らである。

「ああ? いや、悪いがお前とルーンの給料レベルでは教えられん」
「ジュリアスやパプカちゃんの冒険者ランクでも無理です」
「なんなんだよ……」

 ドラゴンに続き、二人までわけのわからないことを言い出して何も理解できない。こんだけもったいぶって、ちゃんと後で伏線回収してくれるんだろうなこいつら。

「さて、ところで直近の問題は振り出しに戻ったことだ。ジュリアス、他の隠し扉はしばらくは開かないんだったよな?」
「ん? ああ。連動式だから、次はいつ開くかはわからないな」
「というよりアレの関係もありますからね。多分私達ではもう開けれないんじゃないですか?」
「となると…………そろそろやっぱりレベルが厳しいよなぁ。頭打ちの今の状態で、ティスカに挑むのは流石に自殺行為だし」

 ちなみに、途中で出会ったサラマンダーはこのダンジョンにおいてはレアモンスターだったらしく、あの個体を最後にどこを探しても見つかることはなかった。
 つまり、レベル上げのための敵モンスターが居ないという状況だ。もう少し強いレベルの敵が居れば良いんだが、そう都合良くは見つからないのが現実なのである。


「そこでわたちの出番でちよ。みな、恐れおののいてくださいでち」


 …………ん?
 何やら舌っ足らずな丁稚言葉が羅列されたようだが、今の俺達の中にこのような喋り方をする人間は居ないはずだ。
 というか、その台詞は俺の背中。すなわち背負っているパプカから放たれたように思う。

「幻聴が聞こえるくらい疲れてるやつって俺以外に何人居る?」
「多分……幻聴じゃないと思いますよ、サトーさん」

 指差すルーンの指先は、やはり俺の背中へと向けられていた。

「まさかパプ……いだだだっ!? こら! 無理やり背中から移動するな!!」

 背中から移動しようとするパプカは、その道中俺の髪を掴んで頬を足蹴にし、最後に何故か鼻に指を突っ込んでから鼻で笑って俺の腕の中へと到着した。
 その姿は先程までの赤ん坊ではなく、もう少し成長した姿。おおよそ2・3歳程度? そのぐらいまで一気に大きくなっていた。通りで背中が重いわけである。

「れべる的にはわたちが一番でちゅち、|てぃちゅか(ティスカ)という人も問題なく倒ちぇまちゅよ」

 と言いながら胸を張るパプカ(成長した姿)に俺は、

「お前……そんなに口調が被るのが嫌だったのか? まあ、パーティーに三人も敬語キャラが居れば嫌にもなるか」
「ツッコミどころはそこでちか!? もっと騒ぐべき部分があるでちょう!?」
「ああ、ひたすらに内容が聞き取りづらい。舌っ足らずも適度にやらないと、キャラ立てとしては逆効果だぞ」
「ぐぬぬ……それもまたツッコミどころが違いますが、たしかに正論でち。語尾以外は省略することにちまちゅ」
「本当にキャラ立てだったのかよ!?」

 甘いなサン。こいつもそうだが、コースケハーレムのネロリアスなんかも実践している通り、特殊な喋り方をするやつは大体キャラ作りの一環としてそれをしているのだ。

「────って、お前めっちゃ成長してるじゃねぇか!? どうしたんだ急に!?」
「あ、良かった。サトーさんが少し正気に戻りました」
『実は結構混乱していたでござろうサトー氏』

 ようやく本題に入るが、パプカが成長した。異常事態である。

「そもそも私達がこんな姿になった原因もよくわかっていませんし、成長速度も普通とは違うのかも知れません」
「なん……だと? じゃあルーンもそのうち男の娘に戻っちゃうってことか!? まあそれでも良いけど!!」
「何やら文字にツッコミどころがあるように感じますが……」

 それはともかく、

「すべてがわたちと同じようになるとは限りまちぇんけどね。そもそもかかったトラップが同じものじゃないでちから」
「ちなみに、赤ちゃん姿だった頃の記憶ってどうなってんだ? サトーに抱っこされてた時とか……」
「あんまり覚えてないでち。ぼんやりとサトーを蹴りまくった記憶ならあるんでちが」
「しっかり覚えてるじゃねぇか」

 おかげで俺の顔は痣だらけである。

「──ところで、先程からあそこで顔を隠してうずくまってる女の子は誰でちか?」

 パプカの視線の先には、たしかにうずくまってガタガタと震えているリリアンの姿があった。パプカに発見されたと同時に肩をビクリと跳ね上げたリリアンは、恐る恐るこちらを覗く。

「こ、こんにちはパプカちゃん……」
「あっ! リリアンじゃないでちか! 久しぶりでちね!」

 赤ん坊の時の記憶が薄いパプカのために、サンとリリアンのあらましとこれまでについて説明した。 

「お願いします! 師匠には黙っていてください! 何でもしますから! 私まだ死にたくない!!」
『えっ、今何でもするって……』
「お前じゃねぇよ座ってろ」

 しかしアレだな、美少女が土下座で懇願する姿というのは、精神的に来るものがあるな。

「大丈夫でちよリリアン。流石にあのお母さんに告げ口をするほど、わたちも腐ってはいまちぇん。姉妹弟子の間柄じゃないでちか」
「パ、パプカちゃん……」
「まあ、お母さんに聞かれたらノータイムで自白すると思うので、そこは勘弁してほしいでち」
「ぐああああっ!!」

 確かにあのヒュリアンさん相手に隠し事ができる勇者なんてこの世には居ないだろうからなぁ。

「と言っても、それもここを無事に生きて出られたらの話でち。ですがそれも心配ありまちぇん、このわたちに秘策アリでち!」

 実にらしいドヤ顔で、頼もしい台詞を吐くパプカであった。


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