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第十一章 まるでやらせな接待業
CASE81 ジュリアス・フロイライン その1
しおりを挟む『冬季休暇に入っても連絡が来ないと思ったら、なんでそんなとこに居るのよあんた』
「いや、これには浅いわけがあってですね……」
『浅いわけを言い訳に使うんじゃないわよ』
正論である。
俺はマオーから借りた念話機を使い、王都に居るリンシュへと連絡を取っている。球体の魔石を使用している人間界の念話機と比べ、見た目が完全に電話機であるところを見ると、やはり文明格差あるのだと実感させられる。
それはともかくとして、受話器越しに感じるリンシュの圧力にたじろぐ俺は、事のあらましをきちんと一から順に説明した。
『アホか』
「おっしゃるとおりです」
『けど、あの絵が魔物だったとはね。首刈りゴーストはあの札で抑えられてると思ってたけど、さすがに生ける絵画は駄目だったわけか……』
「おいちょっと待て、今さらっと恐ろしいこと言わなかったか? 首刈りゴーストが居るのかあの家!?」
『あっはっは──とりあえずあの家の業者にはこっちから厳重注意しておくわね』
ゴーストについての情報をしゃべるつもりは無いようだった。
『まあマオーに保護されたなら大丈夫でしょ。来季の仕事までには帰ってきなさいよ』
「…………聞きたいんだけど、リンシュとマオーさんってどういう関係なんだ?」
『──────友達よ』
そう言い残して唐突に念話は切られた。
絶対なにかあるじゃん! 人には言えない間柄ってことじゃん!! 怖くて聞けないけれども!!
「あー…………そういうわけで、お世話になります」
「おう」
短い返事とひらひらと振る手のひらにより、俺はマオーの社長室から追い出されてしまった。
* * *
さて、色々気になる点はあったが、とりあえず落ち着いたと言える状況になった。
マオーの紹介で、なかなかのランクのホテルに滞在することになった俺は、シャワールームで何日かぶりの熱いお湯を浴びて汚れを落とし、ふかふかのベットへと飛び込んだ。
疲れ切った体が沈み込み、この瞬間にも夢の世界へと落ちてしまいそうだ。
「ああ……文明社会バンザイ。外に出るとどんな厄介事に巻き込まれるかわからないし、村に帰れるまで寝て過ごすのも悪くな……」
「サトー! 大変だ!!」
急に開け放たれた部屋の扉から厄介事が飛び込んできた。
「ノックぐらいしろ、ジュリアス! このえっち!」
「えっちって、サトー……」
「とりあえずやり直し! 出てけ出てけ!」
ジュリアスには一般常識というものを学んでもらいたいので、俺は心を鬼にしてやり直しを要求した。
入ってきた時のテンションを下げ、ジュリアスは一次退出。言われた通り扉をノックしてくれたので、俺は居留守を敢行した。
「…………よし、寝るか」
「いくらなんでもこの状況で居留守を使うな!! 無理があるだろうが!!」
涙目で再度の入室を果たすジュリアス。ノックはきちんとしているので進歩と言えなくもないだろう。
俺は枕で顔全体を覆い、いやいやながらもジュリアスの要件について質問した。我ながらお人好しである。
「何の用だジュリアス。頭の検査は問題なかったのか?」
「言い方! 呪いがかかってるかどうかの検査だし、語弊があるだろう!!」
「何にせよ、俺はもう寝る。要件なら明日……いや、明後日…………いつの日か改めて来てくれ」
「要件を聞く気がなさすぎるだろ」
「そもそもなんでお前そんなに元気なんだよ。せめて一日ぐらいおとなしくしてろよ」
「無論、私だってヘトヘトだ。だがそんな弱音を吐いている暇など無いんだ! とにかくついてきてくれ!」
だったらこんなところで俺と話してないで、一人で出かけてこいよと言いたい。
だがジュリアスはなぜか俺を連れ出そうと躍起になっている。毛布を引っ剥がし、ベットの足を掴んで嫌がる俺を無理やり引っ張る。学校に行きたくない子供を起こす母親のようだ。どうにも俺を巻き込みたいらしい。
「せめてまず要件を言え! どこに連れ出すつもりなんだ!」
「ああ、それもそうだな。サトー、このホテルの入り口に広告が貼られていたのを見たか?」
「見てないよ。疲れ果てて死にかけてたし」
「いいか、そこにはこう書かれていた。【ミナス・ハルバンの大冒険・待望の第365巻本日発売!】とな!」
俺はすべてを察した。この情報だけで状況を理解できる俺の考察力はなかなかのものではなかろうか。
「つまり、ミナス・ハルバンの大冒険の新刊が出てるから買いに行きたいということだな。購入部数制限が出てるから俺にもついてきて欲しいと」
「サトー……読心術でも使えるのか?」
「嫌だーーーー!!」
俺は再びベットの足にしがみつく。すべてを察し、理解したからこそジュリアスと出かけるなんてことはしたくないのである。
「天丼だ! 天丼だよこれ! ネタの使い回し反対!!」
「何の話だ! 良いから付いて来い! そして私とともに新刊を買う喜びを感じようじゃないか!」
「俺にはそんな趣味はねぇ! お前の場合一冊買って終わりじゃないだろ! 何度並び直す羽目になると思ってやがる! 一日中本屋に並ぶのは嫌だ!!」
「心配するなサトー、観賞用や布教用など諸々合わせて40冊くらいだ。長くとも日をまたぐことはない!」
「そんな時間まで本屋はやってねぇ!!」
と言う俺の訴えはまるきり無視され、ベットから手が離れて俺は引きずられていった。
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