まるで無意味な召喚者~女神特典ってどこに申請すればもらえるんですか?~

廉志

文字の大きさ
178 / 230
第十一章 まるでやらせな接待業

CASE88 シシィ その2

しおりを挟む







 ミナツ・ハルマ。
 かつて魔の国に突如として現れた召喚者は、ありとあらゆる物質を想像できる特殊な能力を備えていた。
 彼の生み出す数々の発明品はマオーの会社を潤し、瞬く間に開発部門のトップへと上り詰める。
 ダンジョンメーカーとしての力も振るい、現在稼働している会社所有のダンジョンは4割が彼が製作したものである。
 残念ながら、寿命は周りの長寿な魔族とは違い一般的な人間のままであったため、その活動期間は非常に短く、現代から数えて200年前にはその生涯を終えている。
 彼が遺したアイテムやダンジョンは神の遺物アーティファクトと呼ばれ、下手に触るととんでもないことになってしまうため、封印指定されている物も多いとかなんとか。

「数々の元凶はそいつかぁーーっ!!」

 俺はシシィから説明を受けて直後叫んだ。
 聞くと、あのふざけ倒したダンジョンと、これまたふざけ倒した解除方法を持つ【クーリングオフの判子】はミナツが遺したアーティファクトと呼ばれるものなのだそうだ。
 これまで振り回されていた諸問題の元凶の正体が発覚したのだ。怒り狂うのも察してもらいたいものである。

「元同僚として何とも言えないですわね……」
『悪ふざけのために生まれてきたかのようなお方でしたからネ。亡くなってから100年ほどは社長があっちこっちに出張しては封印をして回っていましたかラ』

 あのマオーを振り回すなんて逆に凄いことなのではあるまいか。

『しかし、人間界にまで渡っていたとはさすがに驚きでしタ。どうやって手に入れたのですカ?』
「たしか……前の職場で埃かぶってた箱から出したやつだったはず──「札を破るべからず」って書いてあったなぁ」
「なんで破ったんですの……」
「違うんだよ! 札を破った後に、その下から出てきた文字であって……そんなの流石に避けれないだろう!?」
『まあ、製作者マスターは人間界には何度も遊びに行っていますかラ、どこかで落っことして来たのかもしれませン』

 そんな財布みたいな感覚でアーティファクトを落とすなよ……

「あのう……ちなみに、クーリングオフの魔法を使用するための呪文なんですが、それもミシマさんが?」
『「呪文?」』

 俺は判子のケースに入っている説明書を取り出して、シシィとディーヴァに見せた。

『こ、これを……』
「やったんですの?」
「止めろよぉ!! だってそれをやれって書いてあるんだから、職務上やるしかなかったんだよぉ!!」
「あの……恥ずかしい黒歴史なので……本当に止めてくださいお願いします……」

 涙を流して懇願するギルド職員二人の図であった。

『ふむ、おそらくと言うかまず間違いなく悪ふざけの産物でしょうガ、製作の経緯を本人に聞いてみますカ?』
「え? でも、そのミナツってやつは200年前の人間なんだろ? 亡くなったって言ってたじゃん」
『本人は確かに亡くなっていますガ、本人に近い人工知能のデータが残っていまス。アーティファクトの情報などは、検索すれば出てくると思いますヨ』

 そう言うと、シシィの頭部であるTVモニターが電源を切った時のように突如として真っ暗になった。
 シシィはモニターについている摘みを回すと、再び電源が入ったように明るくなり、画面の中心に白いひげを蓄えた老人の姿が出てきた。
 とぼけた顔で鼻くそをほじっていた。

『なんじゃいキサマ、無個性主人公のようなすっとぼけたツラをしよってからに』
「…………これ、テレビ電話とかではないんだよな?」
『これぇ、テレビ電話とかではないんだよなぁwwwww?』
「は? 何だこいつ……」
『はぁ? なんだぁこいつwwwww?』

 俺は右の拳を大きく振りかぶった。

「待ってくださいサトーさん! 画面本体はシシィさんですから! 落ち着いてください!」
「止めるなルーン! このすっとぼけたツラのクソ爺を殴らせろ!!」
「たぶん殴ったら砕けるのはサトーの拳ですわよ。シシィの防御力的に」

 煽るように俺の言葉を反復するミナツに対し、俺の怒りは一瞬で沸騰。ルーンとディーヴァの静止が無ければ俺の拳が火を噴いたであろう。

「ふぅ……ふぅ……エクスカリバーを相手にしてるみたいだ」
「アレが二人になったとしたら世界の終わりですわ」

 想像しただけでおぞけが走る世界である。

『サトー様、これはあくまで事前に保存されたデータから作られた映像ですのデ、あまり難しい会話はできませン。自動的に同じ台詞を反復するようになっていまス』

 シシィが丁寧な説明をしてくれた。なるほど、ゲームにおけるNPCみたいなものと思えば良いんだな。

「分かった。もっと端的に話そう」
『分かったぁw。もっとぉ、端的に話そぉwwww』

「ふんぅーー!!!!」

「サトーさん! 話が進みませんから落ち着いてください!」

 本当にエクスカリバーと話しているような気持ちであった。






しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない

戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」 辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――! 現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、 中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。 怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として 荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。 だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、 貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。 『良領主様』――いや、『天才王子』と。 領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、 引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい! 「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」 社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく! ――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚! こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています 是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

処理中です...