まるで無意味な召喚者~女神特典ってどこに申請すればもらえるんですか?~

廉志

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第十二章 まるで終わらぬ年の暮れ

CASE94 リール村③

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 俺の空しく響く抗議は無視され、【第一回冬の大雪合戦大会】が開催された。
 4チームあるので競技は3回行われるトーナメント方式。そして栄えある一回戦は、パプカ率いるAチームVSジュリアス率いる(?)Bチームである。
 しょっぱなから飛ばしすぎではなかろうか。

「サトー、質問」
「何でしょうパプカさん?」
「さっきから気になっていたんですが、【えーチーム】とか【びーチーム】って、なんの記号ですか?」
「ただの古代文字です、お気になさらず」
「なぜ現代の大会で古代文字を……」

 まあパプカの疑問はもっともである。この世界において、当然ながらアルファベットなどと言う物は普及していない。
 召喚者は漏れなく日本人の癖に、日本語すら文字として残っていない世界観。異世界のさらに外国の文字など普及しようが無いだろう。
 時々召喚者が「Sランク冒険者に俺はなる!!」と某海賊団船長みたいな意気込みでこの世界にやって来るが、この世界独自の文字があるのに何でそこだけアルファベットが通じると思っているのだろうか。
 とはいえ、俺としては分かり易い区分になるので使用してみたのだ。文字ではなく区分の記号として普及させても良いかもしれないな。

「まあそんな本筋に関わりの無い事は置いておいて…………パプカさん、分かってますね?」
「何がですか?」
「ゴルフリートさんが居らず、エクスカリバーも不在の今──爆発オチに最も近いのはあなたです」
「本当に失礼な人ですね」

 むろん、ジュリアスがやらかす可能性も考慮して、事前に同じようなことを忠告しておいた。怒りの鉄拳によって頬が腫れているのはそのためだ。
 いやしかし、ジュリアスと比べても格段に危険度が高いのはパプカで間違いない。
 何しろ素の能力が違う。
 方やシルバーランクのポンコツ冒険者。方やプラチナランクの超一流冒険者。
 ルールでキチンと縛っているものの、ふとした拍子に辺り一面を焼け野原にするくらいのことはやってのけるだろう。

「くれぐれもルールを逸脱しないようにお願いします。攻撃魔法は絶対に禁止。スキルも同様。補助魔法で相手を意図的に攻撃するのもダメです」
「うるさい人ですねぇ。このわたしが! ルールを破るような小さな女だとお思いですか!?」

 うん思うよ。

「…………念のため、今のルールを復唱してもらえますか?」
「やれやれ……攻撃魔法禁止。攻撃系スキル禁止。補助魔法で相手を意図的に攻撃するのも禁止。これで良いですか?」
「……まあ良いでしょう。これらを破った場合、パプカさんだけでなくチーム全体を失格とします。後日白い目で見られても知りませんからね」
「そんな事にはなりませんのであしからず。ルールは守ってなんぼです。社会人としてごくごく当たり前の話じゃないですか」

 おや? パプカが何やら常識的な事を言っているが、ちっとも心に響かないぞ? 普段の言動を顧みての発言かこれ?

「それじゃあそろそろ出番なのでこれにて。全く、心配のし過ぎなんですよサトーは」
「そ、そうですよね。パプカさんも、もう良い大人ですもんね」
「そうですよ────ルールの抜け道を探るのが面白いんじゃないですか」

 最後に意味深な台詞を残し、パプカは戦場へと旅立った。




*    *    *


『さあやってきました一回戦。血沸き肉躍る、雪を真っ赤な血で染める雪合戦の始まりッス』
『そんな事にはなりませんので皆さんご安心ください』
『実況は悔しくも参加権を逃したアヤセとルーンさんがお送りしまッス』

 悔しいなら代わってくれないかなぁ。
 たき火を備えた暖かな天幕から、拡声魔法で増幅されたアヤセとルーンの声が俺の耳へと届く。
 一方の俺はと言うと、参加チーム専用の待機場所にて体育座りをしていた。もちろんここにもたき火はあるが、屈強な冒険者によってはじき出された次第である。

「いや、それよりもパプカだ。あの最後の台詞、絶対何かやらかすつもりだろう」

 パプカを信じた俺がバカだったと言うべきところだろうが、パプカが何かをやらかすことを信じていたので俺は馬鹿じゃない。
 ルールの抜け道……と彼女は言っていたが、設定したルールの中でに抜け道などあるのか? 攻撃能力を殆ど排除した物だと思うのだが……

『さて、いつまでも実況をやっていても仕方がありません。皆さん配置についたようですし、さっそく始めちゃいましょう』
『皆さん、怪我だけはしないように気を付けてくださいね』

 ルーンの天使のような慈悲深さに、会場の男どもが沸き上がる。
 このテンションだと、わざと怪我をしてルーンに手当てをしてもらおうとする輩が出てくるのではあるまいか。ふむ、俺も一考しておこう。
 
 雪を盛って会場を見下ろせるようにした観客席で、俺はパプカとジュリアスのチームを見る。
 ジュリアスのBチームは無難な陣形。雪だるまを囲むように人員を配置し、壁を作って雪玉に備えている。
 一方のパプカだが、なぜか中央のパプカを除き、他の冒険者たちは会場の端っこに固まっているようだ。

「ふっふっふ……ダンジョンと魔の国での大冒険で成長した姿、そのお披露目がよもや雪合戦とは思っていませんでしたが、存分に暴れさせてもらいましょう!」
『なんか物騒な事言ってる人が居るッスけど、ルールは守ってくださいねー』

 おかしなテンションになっているパプカだったが、このままツッコミを続けてもらちが明かないと見たのか、ルーンが指を空へと向けてスタートの合図をする。

『それでは皆さん、ルールを守って楽しくやりましょう────スタート!!』

 指先から火花が飛びあがり、空中で花火がさく裂してスタートの合図となった。

「空から来たりし純白よ、我がもとに集いその身を表せ!」

 久々に聞いたパプカの中二詠唱。実は全く必要のない物なのだが、カッコいいので言っているだけらしい。 
 しかしパプカの魔法は本物である。魔力に乏しい俺にも分かるぐらいに、パプカの周りに魔力が集まってきていた。

「鼓動せよ! 踊り狂え! 伝説の大雪だるまエンシェントスノーゴーレム!!」

 正直どこがカッコいいのかよくわからないとっ散らかった詠唱を経て、パプカの魔法は放たれた。

「え……ちょっ……!?」

 周囲にある雪がパプカの足元へと集まり、魔力を織り交ぜられたそれは瞬く間に大きく育つ。
 頭の上にパプカを載せて出来上がったそれは、手足を得た雪だるま・・・・。ただしその大きさは────会場の3分の1を占める大きさだった。

「デケェッ!!!?」

 高さは約15メートル。村にこれよりも大きな建造物は無く、この姿は村中の人間に周知されたことだろう。

「わーっはっはっは!! 蹂躙せよ!!」
「ちょっと待てぇ!! ルール違反すんなっつったろうが!!」
「おやサトー。お仕事モードは解除ですか? いやそれより、ルール違反とは何のことです?」
「すっとぼけるの無理あるだろ! 「蹂躙せよ!!」って言ってたじゃん!」
「言いましたが何か? テンションが上がると、過激な言葉が出るのは仕方の無い事ですよ」
「いやそうじゃなくて……」
「わたしは相手チームに攻撃を加えてはいませんし、加えるつもりもありません。ただこれから、ゴーレムに乗って相手の雪だるまを踏みつぶしに行くだけです」
「……えっ?」
「攻撃魔法でも攻撃スキルでも補助魔法での意図的な攻撃でもありません。まあ、進路を塞ごうとする人は轢かれてしまうかもしれませんが、それは事故ですし」

 た……確かに? 俺が提示したルールには抵触していない。
 ゴーレムを作り出すのは、他の魔法使いたちもやっていることだし、それ自体は召喚系の魔法。攻撃を指示したならまだしも、ただ歩くだけの行為にルール違反も何もない。
 
「ええ、体を張って食い止めてくれて結構ですよ? 出来ればの話ですがねぇ!!」

 ゴーレムの上から見下ろしつつ高笑いをするパプカの姿は、それはそれは小悪党であった。
 目線をアヤセとルーンに送って見ても、苦笑いをして首を横に振るだけ。どうやら運営側から見てもルール違反には当たらないようだ。

「さあ往くのです雪又権三郎(命名)!! 金一封はいらないですが、優勝と言う冠だけはわが手の中に!!」

 ホント負けず嫌いだよなぁ。


『『あっ』』


 実況席からの唐突な『『あっ』』という言葉と共に、終了の合図である花火が打ちあがった。

「…………えっ?」
「え……何? 終わり?」

 会場にどよめきが起こる。
 どう見てもジュリアスBチームの雪だるまは破壊されていない。パプカのゴーレムもまだ一歩として歩いてはいないのだ。
 そんな状況での終了の合図…………どういうことなのだろうか。

『あーっと!! 開始早々終了です! 会場の皆さんは何が起こったのかわかっていない様子! と言うか、ウチらもよくわかってないんスけど、Aチーム側の雪だるまをご覧ください!!』

 観客席にいた人たちの視線が移る。そこには本来、完全な状態の小さな雪だるまが置かれているはずだった。
 だが、

「あ……ええと、壊して良いん……だよな?」

 申し訳なさそうな表情を浮かべるジュリアスと、彼女によって崩された雪だるまの姿があった。

「ええええええええええっ!?」

 驚愕するパプカ。どうやらこの一回戦────出オチである!!


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