まるで無意味な召喚者~女神特典ってどこに申請すればもらえるんですか?~

廉志

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第十三章 まるでカオスな視察団

CASE104 怪盗テュラン①

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 夜。
 気を失い、入院中のヒューズサブマスと他二人を病院に置いておいて、俺たちは帰路についていた。
 正直な所、今日一日視察で潰れると思っていたのだが、早々に泡を吹いて倒れたヒューズやオッサンとメテオラの一件でバタついた結果、グダグダと無駄に一日が消化されてしまったのである。
 精神的には疲れたが、何一つ仕事が片付いていない所を見ると、明日の自分にすべてを任せるしかない状況だった。

「──で、なんでアンタたちが俺の家にいるんだ?」
「いや、一緒に予告状の謎を考えてくれるのかなと」
「面白そうだったのでついてまいりました」
「あ、ジュリアスさんクーデリアさん、お茶が入りましたよ」

 現在、俺の家には家主の俺と同居人のルーン。そして、呼んでも居ないジュリアスとクーデリアが居座っていた。
 ちなみにパプカも来たがっていたが、彼女は生ける絵画のフィクシィに嫌われており、実質この家を出禁になっているので不在である。

「ところでアヤセは居ないのか? 姿を見ていないんだが」
「あいつは幽霊のくせして寝るのは早いんだよ」

 という訳で、この場には4人の男女がいることになる。
 いや、フィクシィも含めれば5人なのだろうが、彼女を一人としてカウントして良いかは不明だ。先ほどから訝し気表情をしてこの場を見ているなぞの存在と化している。
 一応、俺も男なのだが、夜更けに男の家に女性がやって来るというのは、コンプライアンス的に大丈夫なのだろうか?

「というか、予告状の謎とか言っても、内容的には明日の夜の話だし、オッサンとメテオラの便箋の件についても、郵便の仕様だろ? 話し合う事なんて無いと思うんだが」
「確かにゴルフリート殿だけなら偶然かもしれない。だがメテオラの物も同じなんだ。二つなら偶然、三つなら必然とミナス・ハルバンも言っていた!」
「お前の人生はミナス・ハルバンからしか学びは無かったのか?」
「そうだ!!」

 言い切っちゃったよ。

「そのう、ちょっと気になってたんですが、予告状と言うのは何のことなんですか?」

 おずおずと手を上げルーンが尋ねた。
 そう言えばルーンには予告状の件については何も言っていないのだった。

「いや、なんかテュランとか言う変態が明日の夜ジュリアス攫いに来るんだと」
「テュランと言うと、あの怪盗テュランですか? ジュリアスさんを……なぜ? サトーさん、心当たりでもあるんですか?」
「知らん」
「まあ明日の夜という事だからまだ時間はある。それも踏まえて今日の事件について話し合おう」

 俺はもう寝たいんだが。
 ジュリアスはルーンに出されたお茶を一飲みすると、息を吐き出して言葉をつづけた。

「正直テュランが殺人を犯すとは到底思えないんだ。怪盗とは言っても、義賊の側面が強いキャラクターだからな。第58巻4章ではミナス・ハルバンと協力して巨悪を──」
「待て待て、話がそれてる。そもそも現実と空想をごっちゃにするな。同一名ってだけで別に同じ人物じゃないだろ」
「でも確かに、怪盗テュランに負のイメージはありませんね。私も幼いころによく読んでいましたが、どちらかという正義側と言う感じがしましたし」
「人さらいを表明してるのに?」
「何か理由があるんだろう。テュランが犯罪目的で人を攫ったことなど一度もない」

 と、攫われる本人がなぜか犯人を擁護していた。

「でも、お前の推理だとテュランが殺人の犯人の可能性もあるんだろ?」
「うむむ……動機はともかく、便箋の件もあるし、盗賊系のジョブを持つテュランなら暗殺の手段はいくらでもあるだろうから、現時点での容疑者は……残念だが」
「信じているのか信じていないのか分かんねぇな」
「え、というか怪盗テュランが殺人事件の容疑者になってるんですか?」

 ルーンが驚きの声を上げた。

「現時点ではな。そもそも殺人と断定すること自体なんの証拠も無いんだが」
「そ、そうですよね。テュランがそういうことをするとはとても……」
「いえ、しかし可能性としてある以上、容疑者から外すのはよろしくないかと」
「クーデリアさん!?」
「例えばテュランが便箋に毒を塗っていたとかはどうでしょう? 開けた瞬間に触れるので、いかにお二人が強者でも避けるのは困難でしょう」
「「なるほど」」
「ちょっと!?」

 先ほどからルーンの情緒が不安定だが、どうかしたのだろうか。

「じゃあとりあえずテュランは警察に引き渡す方向で良いな? どっちみち指名手配犯だったはずだし」
「では、ひとまずジュリアス様を囮にトラップでも仕掛けておきますか。ご安心を。致死性トラップの構築には自信があります」

 物騒だなクーデリアさん!

「で、できれば穏便に…………いや違う! やはり私は否定するぞ! 怪盗テュランは正義の怪盗! 殺人を犯す訳がな────へにゃぁ?」

 ガンッ!!
 テーブルに頭を打ち付ける音が部屋の中に響いた。
 音の主はジュリアス。流石に心配になるような勢いで突っ伏したので場の雰囲気が凍り付いた。

「だ、大丈夫か!? すげぇ音したけど、急にどうした!?」
「ちょっと失礼を……」

 クーデリアがジュリアスの元へと駆け寄り、状態を確認する。

「……ふむ、額は無事のようです。ジュリアス様は意外と石頭のようです。あと…………眠っているようですね」
「──なんで急に?」

「────ふっふっふ……」

 唐突に不穏な笑い声をあげたのは、先ほどからどうにも情緒不安定だったルーン。
 ゆらりと席から立ち上がると、普段では考えられないような不敵な笑みを浮かべていた。

「わーっはっはっは!! 諸君、吾輩への対策会議ご苦労である! だがしかし、そのような対策は無意味である! 100の顔を使い分け、ある時は子供ある時は大人。しかしてその正体は──」

 ルーンは顔に手を当てると、勢いよくその面の皮を破り捨てた。
 字面だけ見るとスプラッターだが、どうやら覆面を被っていたようである。

「怪盗テュラン、華麗に参上!! 予告状通り、フロイラインの身柄受け取りに参った!!」

  
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