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第十三章 まるでカオスな視察団
CASE105 パプカ①
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村の中心地。冒険者ギルドが佇むその前で、パプカの叫び声を聞きつけたのであろう村人たちの人だかりが出来上がっていた。
まあ夜中に「ぎゃおおおおおおおおおぉんっ!!?」なんて叫びを聞いたのであれば、何事かと集まってくるのも仕方が無いだろう。
「おーい、何があったんだ?」
人だかりの後ろから声をかける。
村人たちは振り返り、怪盗を簀巻きにして連行しているジュリアスと、メイド服姿の見慣れないよそ者。そして俺を一瞥すると、特に何のツッコミを入れようともせず、
「お、サトーだ。おーい皆! サトーが来たぞ! 解散!」
「そうだな。保護者が来たんだし後は任せるか」
と言いながら解散した。
「……皆様、慣れすぎじゃありませんか?」
「簀巻きの怪盗にツッコミぐらいは入れてほしいよな」
彼らの中では「サトーが居るから何とかしてくれるだろう」ぐらいの認識でしか無いのだろうな。
人混みが解散すると、その中央に横たわる小さな影が見えた。
叫び声から察する通り、その小さな影はパプカその人であった。
────ちょっと待て! あいつら俺の事をパプカの保護者って言ったか!? そういう扱いされてるの!?
「…………とりあえず、なんでこいつは倒れてるんだ?」
「外傷は無いようですが、一応診てみましょう────気絶してらっしゃいますね」
クーデリアの診断は気絶。外傷も全く無い事から、危険な状態では無いとみて良いだろう。
「いや……待てサトー。パプカの左手をよく見てみろ……っ」
と、おびえた表情でパプカの左手を指さすジュリアス。
言われた通り視線を移すと、何やら見覚えのある光景が目に映った。
「これは…………手紙?」
「つ、つまりこれは────第三の犯行!!」
これまですでに二件。俺たちは同じ状況を目撃していた。
一件は目の前に横たわるパプカの父親、ゴルフリートの遺体(生存)。
そして二件目はこの世でも最強格、メテオラの遺体(生存)である。
いずれも掌の中に同じ便箋を握りしめた状態であったため、確かに状況的には合致するだろう。
という訳で、この場にいる人間は一人を除いて特定の人物に視線を集めた。
言うまでもないが一応言っておこう。怪盗テュランである。
「いやいやいやいや! 知らないである!! 前述の2人についても濡れ衣である!!」
「えー、ホントに―?」
「クーデリア!! どっちの味方なのだ!!」
まあそれはともかくとして、同じ事件が二件続けば偶然もありうるが、三件続くとそれはもう必然。
何かしらの共通する出来事が発生しているとみて良いだろう。
だが、それを確かめようにもどいつもこいつも便箋を手放そうとしない。
目の前の偽幼女も、非力なくせして握りしめる便箋は力づくで開こうとしてもビクともしない。
「…………とりあえず起こすか」
「パプカの場合気絶しているだけだから、普通に起こせるとは思うが……どうするんだ?」
仮死状態を魔法や薬で復活させた場合、副作用として数時間から一日程度目を覚ますことが出来なくなる。
そのため、オッサンやメテオラは今だ眠りこけている最中である。
一方でパプカは普通の気絶であるため、きっかけさえあれば今すぐにでも目を覚ますだろう。
「頬を叩くとかどうだろう?」
「児童虐待で訴えられないか?」
落ち着けジュリアス。パプカは児童ではない成人女性だ。
「どのみち女性に暴力を働くのは各界隈から顰蹙を買うのではないか?」
テュランの言う事も的を得ている。
昨今こういう事柄には世間が厳しい。圧力団体から抗議文とか正式に送られたら余裕で俺の首は飛ぶだろう。それは不味い。
「じゃあ、何か目を覚ます魔法でもクーデリアさんに……」
「キスですね」
「…………は?」
「古今東西、眠り姫の目を覚まさせるにはキスと相場が決まっております」
何を言い出すんだクーデリアさん。
「つまり、サトー様がパプカ様にキスをすればよいという事です」
「いやそんなことしなくても魔法で……」
「私は全知全能のスーパーメイドですが、便箋を握りしめた幼女の目を覚まさせる魔法のみ習得できていないのです」
全知全能も凄いが、なぜそんなピンポイントな魔法が存在するんだ。
「なっ!? ま、まさかサトー! 本気でキスをする気じゃないよな!? ダメだぞ! そう言うのは互いの合意があった時でないとだな!」
「そうだぞ青年! 眠る少女の唇を奪うなど紳士の風上にも────」
テュランの言葉が途中で停止した。
「いや? ここで青年と少女が結ばれたのなら、娘との交際も取りやめ。娘は自分の元に戻ってきて万々歳なのでは?」
などと考えたような表情をしたテュランは行動を開始した。
「秘儀! 簀巻き返し!!」
「何ぃ!? それは怪盗テュランの【怪盗秘儀48手】の内の一つじゃないか!? この身に味わえるとは何たる至福!!」
と、簀巻きから脱出したテュランに簀巻きにされたジュリアスが感動にむせび泣いていた。
何をやってるんだこいつらは。
「──いや違う!! サトー! 友達だからと言ってやって良い事と悪いことがあるんだぞ! キスなんてしたらそれはもうセ〇レじゃないかぁ!!」
「人聞きが悪すぎるわ。つーかやらねーよ? 何だそのテンション」
「まあまあそう言わずに。さあググいっと行きましょう」
「そんな酒を進めるみたいに!?」
クーデリアに文字通り背中を押され、俺はパプカの目の前へと躍り出た。
冷たい地面に寝そべる彼女の姿は、気絶している割には綺麗に整っており、元から綺麗なその顔は寝顔になってもその美しさを損なっていなかった。
確かに、こんな美少女を目の前にして何も感じない男はいまい。
唇は薄いが柔らかそうで、化粧もしていないのに赤く紅潮し、少しばかりの色気も放っているようだ。
ゴクリ。
俺は思わず生唾を呑み込み、俺の意思とは関係なく両腕がパプカの顔へと伸びていく。
「────にく……っと」
なぜか手に持っていたペンをパプカの額へと走らせた。
「────はっ!? お、俺は一体何を!?」
「だあああああああっ!?」
ペン先の感触が原因なのか、パプカがその瞬間飛び起きた。
「──あれ? なぜサトーがわたしの部屋に……?」
「いや、ここお前の部屋じゃねぇし」
「ふぅ……、何か悪夢を見ていた気がします。なぜかサトーがわたしの額に落書きをするという、訳の分からない夢でした」
「いや、それは現実だぞパプカ」
「額に大きく『肉』と書かれております」
ジュリアスとクーデリアの指摘を受けて、パプカはギルドの窓を覗き込む。
そこに映るのは我ながら惚れ惚れするバランスで描かれた肉の一文字。
「だあああああああっ!? また!? またですかサトー!? 何で肉なんですか!! もうっ!!」
ゴシゴシと袖で額をぬぐう。だが残念なことに、俺のペンは油性である。
「なぜあの絵が肉と読めるんだ?」
「と言うか、なぜ額に肉と書く必要が……」
まあパプカも起きたことだし結果オーライという事で。
まあ夜中に「ぎゃおおおおおおおおおぉんっ!!?」なんて叫びを聞いたのであれば、何事かと集まってくるのも仕方が無いだろう。
「おーい、何があったんだ?」
人だかりの後ろから声をかける。
村人たちは振り返り、怪盗を簀巻きにして連行しているジュリアスと、メイド服姿の見慣れないよそ者。そして俺を一瞥すると、特に何のツッコミを入れようともせず、
「お、サトーだ。おーい皆! サトーが来たぞ! 解散!」
「そうだな。保護者が来たんだし後は任せるか」
と言いながら解散した。
「……皆様、慣れすぎじゃありませんか?」
「簀巻きの怪盗にツッコミぐらいは入れてほしいよな」
彼らの中では「サトーが居るから何とかしてくれるだろう」ぐらいの認識でしか無いのだろうな。
人混みが解散すると、その中央に横たわる小さな影が見えた。
叫び声から察する通り、その小さな影はパプカその人であった。
────ちょっと待て! あいつら俺の事をパプカの保護者って言ったか!? そういう扱いされてるの!?
「…………とりあえず、なんでこいつは倒れてるんだ?」
「外傷は無いようですが、一応診てみましょう────気絶してらっしゃいますね」
クーデリアの診断は気絶。外傷も全く無い事から、危険な状態では無いとみて良いだろう。
「いや……待てサトー。パプカの左手をよく見てみろ……っ」
と、おびえた表情でパプカの左手を指さすジュリアス。
言われた通り視線を移すと、何やら見覚えのある光景が目に映った。
「これは…………手紙?」
「つ、つまりこれは────第三の犯行!!」
これまですでに二件。俺たちは同じ状況を目撃していた。
一件は目の前に横たわるパプカの父親、ゴルフリートの遺体(生存)。
そして二件目はこの世でも最強格、メテオラの遺体(生存)である。
いずれも掌の中に同じ便箋を握りしめた状態であったため、確かに状況的には合致するだろう。
という訳で、この場にいる人間は一人を除いて特定の人物に視線を集めた。
言うまでもないが一応言っておこう。怪盗テュランである。
「いやいやいやいや! 知らないである!! 前述の2人についても濡れ衣である!!」
「えー、ホントに―?」
「クーデリア!! どっちの味方なのだ!!」
まあそれはともかくとして、同じ事件が二件続けば偶然もありうるが、三件続くとそれはもう必然。
何かしらの共通する出来事が発生しているとみて良いだろう。
だが、それを確かめようにもどいつもこいつも便箋を手放そうとしない。
目の前の偽幼女も、非力なくせして握りしめる便箋は力づくで開こうとしてもビクともしない。
「…………とりあえず起こすか」
「パプカの場合気絶しているだけだから、普通に起こせるとは思うが……どうするんだ?」
仮死状態を魔法や薬で復活させた場合、副作用として数時間から一日程度目を覚ますことが出来なくなる。
そのため、オッサンやメテオラは今だ眠りこけている最中である。
一方でパプカは普通の気絶であるため、きっかけさえあれば今すぐにでも目を覚ますだろう。
「頬を叩くとかどうだろう?」
「児童虐待で訴えられないか?」
落ち着けジュリアス。パプカは児童ではない成人女性だ。
「どのみち女性に暴力を働くのは各界隈から顰蹙を買うのではないか?」
テュランの言う事も的を得ている。
昨今こういう事柄には世間が厳しい。圧力団体から抗議文とか正式に送られたら余裕で俺の首は飛ぶだろう。それは不味い。
「じゃあ、何か目を覚ます魔法でもクーデリアさんに……」
「キスですね」
「…………は?」
「古今東西、眠り姫の目を覚まさせるにはキスと相場が決まっております」
何を言い出すんだクーデリアさん。
「つまり、サトー様がパプカ様にキスをすればよいという事です」
「いやそんなことしなくても魔法で……」
「私は全知全能のスーパーメイドですが、便箋を握りしめた幼女の目を覚まさせる魔法のみ習得できていないのです」
全知全能も凄いが、なぜそんなピンポイントな魔法が存在するんだ。
「なっ!? ま、まさかサトー! 本気でキスをする気じゃないよな!? ダメだぞ! そう言うのは互いの合意があった時でないとだな!」
「そうだぞ青年! 眠る少女の唇を奪うなど紳士の風上にも────」
テュランの言葉が途中で停止した。
「いや? ここで青年と少女が結ばれたのなら、娘との交際も取りやめ。娘は自分の元に戻ってきて万々歳なのでは?」
などと考えたような表情をしたテュランは行動を開始した。
「秘儀! 簀巻き返し!!」
「何ぃ!? それは怪盗テュランの【怪盗秘儀48手】の内の一つじゃないか!? この身に味わえるとは何たる至福!!」
と、簀巻きから脱出したテュランに簀巻きにされたジュリアスが感動にむせび泣いていた。
何をやってるんだこいつらは。
「──いや違う!! サトー! 友達だからと言ってやって良い事と悪いことがあるんだぞ! キスなんてしたらそれはもうセ〇レじゃないかぁ!!」
「人聞きが悪すぎるわ。つーかやらねーよ? 何だそのテンション」
「まあまあそう言わずに。さあググいっと行きましょう」
「そんな酒を進めるみたいに!?」
クーデリアに文字通り背中を押され、俺はパプカの目の前へと躍り出た。
冷たい地面に寝そべる彼女の姿は、気絶している割には綺麗に整っており、元から綺麗なその顔は寝顔になってもその美しさを損なっていなかった。
確かに、こんな美少女を目の前にして何も感じない男はいまい。
唇は薄いが柔らかそうで、化粧もしていないのに赤く紅潮し、少しばかりの色気も放っているようだ。
ゴクリ。
俺は思わず生唾を呑み込み、俺の意思とは関係なく両腕がパプカの顔へと伸びていく。
「────にく……っと」
なぜか手に持っていたペンをパプカの額へと走らせた。
「────はっ!? お、俺は一体何を!?」
「だあああああああっ!?」
ペン先の感触が原因なのか、パプカがその瞬間飛び起きた。
「──あれ? なぜサトーがわたしの部屋に……?」
「いや、ここお前の部屋じゃねぇし」
「ふぅ……、何か悪夢を見ていた気がします。なぜかサトーがわたしの額に落書きをするという、訳の分からない夢でした」
「いや、それは現実だぞパプカ」
「額に大きく『肉』と書かれております」
ジュリアスとクーデリアの指摘を受けて、パプカはギルドの窓を覗き込む。
そこに映るのは我ながら惚れ惚れするバランスで描かれた肉の一文字。
「だあああああああっ!? また!? またですかサトー!? 何で肉なんですか!! もうっ!!」
ゴシゴシと袖で額をぬぐう。だが残念なことに、俺のペンは油性である。
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