まるで無意味な召喚者~女神特典ってどこに申請すればもらえるんですか?~

廉志

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第七章 まるでオタクな獣人街

CASE42 ルティカ・ヴォルフ・シュトリッヒ その3

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メイド喫茶と言うのは、実はヴォルフの街だけの専売特許と言うわけではない。
それは王国各地に支店が点在し、西部まで足を運べない全国のオタクたちに娯楽を提供している。
もちろん、俺がもともと居た王都にももちろんあったし、働いていた東部の街にも存在する、割とポピュラーな存在だと言っていいだろう。
と言っても、俺は一度も行ったことがない。そもそもエクスカリバーにラノベを紹介されるまで、たいしてそちら方面に興味がなかったのである。
日本人として多少の知識はあったのだが、知ったかぶりと批判されていない程度の知識量だったのだ。
だから、今回メイド喫茶のリサーチをするというのは、不安半分期待半分な状態だ。

しかしなぜだろうか。
今俺たちは、ルティカが店長を務めるメイド喫茶から外へ出て、ヴォルフの街を闊歩していた。

「あの……ルティカさん? 私たちはどこに向かっているんでしょうか?」
『おや? サトー氏、ルティカ氏にも敬語を使うのでござるか? 先ほどまではため口だったと思うのでござるが』
「仕事に協力してもらう外部の人間だから、一応な」

『なるほど』と言うエクスカリバーをよそに、ルティカはスキップをしながら俺の疑問に答えてくれた。

「メイド喫茶と言っても、うちはチェーン店ですから。支店を紹介しても代り映えしないと思うので、この街にしか無い施設をご案内しようと思うのです」
「へぇ、ありがたい話ですけど、施設ってどう言う……」
「…………っ! ま、まさか!?」
「ふっふっふ、そのまさかですよお兄ちゃん! さあ刮目せよ!(中二病) 我がゴトー財閥が誇る最上級のアトラクション! メイド育成施設『白百合学園』です!」

ルティカが手を伸ばして示す先。街のど真ん中に突如現れた開けた空間。
見上げるほどに積み上げられたレンガの上に、刺さると痛いでは済まないほどの鋭さを上部に持った鉄柵。
それが遥か彼方、かすんで見えなくなるほど向こうまで続いていた。
腕と同じ太さの鉄柵の門を目の前に、俺たちはあまりのスケールの大きさに、口をあんぐりと開けてしまっていた。

「カリバー氏、サトー…………さらば!」

リュカンは青ざめた表情のまま、片手チョップを振りかざしてエクスカリバーを投棄。この場から戦線離脱した。
なんだ急に。腹でも下したのか?

「あっはっは。相変わらずですね、お兄ちゃん――――――逃がすかぁ!!」

ピーーーーッ!!

どこからか取り出したホイッスルを大音量で鳴らすルティカ。
普段の駄目っぷりを払しょくするかの如く、軽快な身のこなしで逃走劇を繰り広げているリュカンの上に、何やら複数の影が落ちた。

「「「「どうなさいましたかご主人様ぁーーーーー!!」」」」

ドドドドンッ!!

突如として聞こえた四つの声。
直後に響いた地響きの音により、それが上空からの落下物であることが分かった。
尚且つそれらは、某やられやくの代名詞なZ戦士のようになったリュカンの周りを取り囲むように着弾し、クレーターを作ったうえで土ぼこりをまき散らした。

「――――何事?」
「サトーさん、あれこそがメイドの極みなのです。紹介しましょう! 白百合学園教員四天王の方々です!!」

土ぼこりが晴れると、そこにはリュカンを取り囲むように三人の可愛らしい女性と、一人の大男(?)が仁王立ちしていた。
なぜかっこの中にクエスチョンマークを入れたかと言うと、それは彼(?)の容姿に起因していた。

「め、メイド服姿の……おっさ、お姉さ……ゴリラ?」
『サトー氏、拙者目が腐ったかもしれないでござる。目の前に類人猿がいる幻覚が見える』
「残念ながら幻覚じゃない。俺も見える」
「先生方、今日は冒険者ギルドの方に学園をご案内いたしますので、各々ご挨拶をお願いします」

ルティカがそう言うと、先生と呼ばれた女性(?)達は、おびえる俺とエクスカリバーの元へリュカンを引きずりながらやってきた。

「「「「ご指名ありがとうございまーす!」」」」
「いつもニコニコ、まぶしい笑顔であなたをお迎え! 接客担当教師、あゆあゆです!」
「お歌の星からやってきた、魅惑の歌声聞かせるよ! 音楽担当教師、みぽりんです!」
「ご主人様、お腹がグーグーなってるゾ? おいしい料理をお届け参上! 調理担当教師、くーあんです!」
「うなれ筋肉! 弾けよ汗! ブートキャンプの始まりだ!! 体育担当教師、ゴリ美です!!」

「『おかしいおかしいおかしいおかしい』」

違和感と言う言葉を、これほど違和感なく使うべき状況がこれまでにあっただろうか? いや無い。断言する。
なぜ美少女先生の中にゴリラが混ざっており、尚且つメイド服を着こんでヒンズースクワットをしているのか?
自己紹介の時点でメイドと言うカテゴリーから逸脱した存在に、俺はツッコむべきかツッコまないべきか悩み――――あきらめた。

「東部リール村の冒険者ギルドから視察に来ました、支部長のサトーと申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
『サトー氏、ツッコミ役の義務を放棄しないでほしいでござる』

そんな役を演じた覚えはない。

「もぅルティ☆ルティ! こう見えて私達忙しいんだゾ! プンプン!」
「まあまあ、あゆあゆ。ルティカ様たってのご依頼なのですから、我ら一同が断る理由なんて無いでしょう?」
「もぅ、みぽりんはルティ☆ルティに甘すぎるんだゾ」
「僕達はルティカちゃんのためならなんでもするよ? ねぇ、ゴリ美さん?」
「貴様ら! それでもメイド志望か! 筋肉が足らんぞ筋肉が!!」

やっぱりおかしい奴が一人いる。

「あ、そうだ! じゃあルティ☆ルティ、ご案内よりも体験入学の方が良いんじゃないかナ? この学園を知ってもらうには凄くいい方法だと思うゾ?」
「わぁ! 良いですねそれ! サトーさん、カリバーさん。良ければ今日一日、体験入学という形でメイドの研修をしていきませんか?」

なるほど、確かにメイド喫茶という仕事を知るのに加え、異世界最大のメイド養成学校をこの身で体験できるならば、これほどの視察はないだろう。
この世界には大別して三つのギルドが存在する。
いわゆる三大ギルドと呼ばれ、俺が所属する『冒険者ギルド』。
ルティカが働くメイド喫茶は『商業ギルド』に属し、残る一つは『農業ギルド』と言う物がある。
細かなギルドは他にもあるが、基本的にはこの三つのギルドに属する派生ギルドに近い。

各々仕事を兼用している場合もあり、冒険者ギルドが商業に関わったり、商業ギルドが農業に関わったりもする。
ただし、他のギルドの仕事に関わるための正式な手続きを踏むとなると、それなりの時間がかかったりするのだ。
今回の場合だと、商業ギルドの管轄であるメイド養成学校に、冒険者ギルドの関係者が体験入学。
正式な書面で提出し、然るべき段取りを取ると最低一週間はかかる。

だが、各ギルド間の交流は推奨されており、その場の監督者が許可した場合に限り、手続きを省略することが出来る。
すなわち、ルティカが許可してくれているので、思う存分学校の視察が出来るというわけである。

「それは助かります。むしろこちらからお願いしたいくらい……」


「死んでたまるかーーーー!!」


…………と言う声をあげ、失神から復活したリュカンが再び駆け出した。

「確保」
「「「かしこまりましたご主人様!!!」」」

ルティカの一声でメイド四天王が再び出動。あっという間にリュカンは取り押さえられた。

メイド喫茶の養成学校で、一体何をそこまで怯えているのだろうか?
…………と言う鈍感さは、俺は持ち合わせていない。
なるほど、リュカンのあの怯えよう。この学校には何かある。
少なくとも、死を回避するために大急ぎで逃げ出す程度の何かがある。
……いかんな、早まった気がする。

「やっぱり、学校の見学だけに…………はっ!?」

俺は殺気を背後に感じ取った。
そう言えば、リュカンに向かったメイド四天王の声は三つだった。すなわち、残る一人がいつの間にか俺の背後に回ったのだ。
そして、その残る一人が最も怖い――――例のゴリラさんである。

「どうかなさいましたか、ご主人様?」

野太い声とともに肩をガッチリと掴まれて、体は一ミリも動かない。
そんな状態で、俺は涙をためつつ叫んだ。

「誰か助けてーーーー!?」

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