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第2章 教会と王国
第45話 エレメンタル
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「エレメンタルいないな。ゴブリンはいたけど」
クエナさんが退屈そうに頭の後ろで両手を組んで話す。すでに彼女はゴブリンを狩り終えた。ゼクテムに帰ってもいいのに、ついて来てくれる。
彼女は物事に関しては適当な人だと思っていたけど、結構いい人みたいだ。僕を心配してついて来てくれるんだから。
「カ~ズヤ! エレメンタルいないな~」
「あ、うん」
エレメンタルを探しながら歩いているとクエナさんが急に抱き着いてくる。彼女はしょっちゅう抱き着いてくるようになった。僕の事好きなのかな? なんて勘違いしちゃう。男はスキンシップに弱いからな。
「く、クエナさん! ちょっとカズヤさんに近いんじゃない? 勘違いしますよ?」
ネスティアが僕とクエナさんの間に割り込んで声を上げる。ドキドキしていたのがバレていたようだ。もっとポーカーフェイスを磨かなくては。
「え~、勘違いって何のこと? 私はカズヤ好きだよ~」
「「す、好き!?」」
ネスティアの声に答えるクエナさん。棒読みでまったく感情がないように思えたけど、その言葉にネスティアと一緒に驚く。好きってライク? ラブ? どっち!?
「そ、それは友達として?」
「え~、命を助けてくれた人なんだから男性としてに決まっているでしょ~」
ネスティアの疑問に飄々と答えるクエナさん。またもや棒読みの声に僕は少しずつ気づき始める。
ネスティアを揶揄っているんだ。僕は本気にしちゃ行けないやつだな。
僕は何度か少年時代にこういった状況になったことがある。別の好きな男の子にアピールするために山車に使われる。『私、男の子に興味あります』みたいなアピールだ。最終的には僕を落として別の男の子とカップル成立となる。
ん? となると別の男性? いや、男性とは限らない。もしかして、好きな子を揶揄うみたいな‥‥。
「あ~!?」
「び、びっくりした!? どうしたのカズヤさん」
「あ、なんでもないです」
思いがけない真実を導き出して声を上げてしまう。
クエナさんが好きなのはネスティアなんだ。だから僕を出しにして揶揄って楽しんでいるんだ! だからさっきニヤニヤしてネスティアを見ていたんだ。
そうかそうか、女性だけど、女性が好きなんだ。多様性の世の中、いいんじゃないでしょうか? 僕は応援するぞ。
「はっはっは。好き好きは結構結構、いいんじゃないですか?」
「ちょ、なに言ってるのカズヤさん!」
僕の声に驚いた後も言い合いをしているネスティアとクエナさん。その言葉は聞いていないけど、僕は笑って声を上げる。するとネスティアが驚いて体をゆすってくる。
好きになってしまったのなら致し方ないでしょう。僕は喜んで出しに使われてあげよう
「だって、好きになってしまったのなら仕方ないでしょう。その人を見ると胸がドキドキしてしまうんです。それを止めるなんて心臓を止めるより難しいことなんですよ」
ずいっとネスティアに顔を近づけて話す。すると彼女の顔が真っ赤になっていく。なんとなくわかってくれたのか、彼女はそっぽを向いて何度も頷いてくれた。
「さっすがカズヤ~! 聞き分けがいいな~」
「なっはっは。そうですよ。僕は”聞き分け”がいいんです~。察しもいいんですよ~」
クエナさんが再度抱き着いてきて褒めてくれる。その言葉を聞いて確信しました。聞き分けがいいと言っている時点で確定ですね。彼女はネスティアを揶揄っている。
そして、揶揄う程彼女の事が好きということです。
うんうん、異性じゃなくても誰かが誰かを好きになることはいいことだ。心がほっこりする。
「‥‥好きになったら仕方ないっか」
ネスティアは分かってくれたみたいでボソッと独り言を言ってる。
呟くと彼女はクエナさんを見つめる。ニヤッと口角を上げるクエナさん。完全に揶揄ってるな~。
「ふ、ふん! え、エレメンタルを狩るんでしょ。早くしましょ!」
憤りを露わにしてネスティアが先頭を歩く。彼女について川を遡上していくと川の幅が広くなっていく。
「いた!」
川の幅が広くなってしばらく歩くと、ネスティアが声をあげる。指さす方向を見ると水色の球体が川の中央に浮いているのが見える。
「気を付けて。ああ見えてエレメンタルは魔法は凄いわ。あの色と場所からして水の魔法を多用してくる」
ネスティアがそう言ってフルーレを構える。その微かな音にエレメンタルが反応を示す。
ピカッと水に反射した光のような信号を出すと川の水を纏いだす。
「ちぃ、気づかれた。回避に専念して。クエナさんは隠れていて」
「大丈夫だよ。結構離れているんだから」
ネスティアが焦りながら声をあげる。クエナさんは余裕を見せて物陰に歩く。
急に動いたことで彼女がエレメンタルを刺激した。エレメンタルが纏っていた水が光線のように放たれる。
「危ない!」
僕の体が咄嗟に動いてクエナさんを抱き上げる。
水の光線はさっきまでクエナさんがいたところを通過して川にあった岩を貫通する。凄い威力だ。
「『ウォーターカッター』。高圧に圧縮された水を発射する魔法だ。エレメンタルがなぜ脅威なのか。それは周囲の地形を利用してくるところよ。気づかれたら油断しないほうがいい」
「う、うん。わかった」
ネスティアが解説してくれる。クエナさんは素直に答えて頷いた。
クエナさんが退屈そうに頭の後ろで両手を組んで話す。すでに彼女はゴブリンを狩り終えた。ゼクテムに帰ってもいいのに、ついて来てくれる。
彼女は物事に関しては適当な人だと思っていたけど、結構いい人みたいだ。僕を心配してついて来てくれるんだから。
「カ~ズヤ! エレメンタルいないな~」
「あ、うん」
エレメンタルを探しながら歩いているとクエナさんが急に抱き着いてくる。彼女はしょっちゅう抱き着いてくるようになった。僕の事好きなのかな? なんて勘違いしちゃう。男はスキンシップに弱いからな。
「く、クエナさん! ちょっとカズヤさんに近いんじゃない? 勘違いしますよ?」
ネスティアが僕とクエナさんの間に割り込んで声を上げる。ドキドキしていたのがバレていたようだ。もっとポーカーフェイスを磨かなくては。
「え~、勘違いって何のこと? 私はカズヤ好きだよ~」
「「す、好き!?」」
ネスティアの声に答えるクエナさん。棒読みでまったく感情がないように思えたけど、その言葉にネスティアと一緒に驚く。好きってライク? ラブ? どっち!?
「そ、それは友達として?」
「え~、命を助けてくれた人なんだから男性としてに決まっているでしょ~」
ネスティアの疑問に飄々と答えるクエナさん。またもや棒読みの声に僕は少しずつ気づき始める。
ネスティアを揶揄っているんだ。僕は本気にしちゃ行けないやつだな。
僕は何度か少年時代にこういった状況になったことがある。別の好きな男の子にアピールするために山車に使われる。『私、男の子に興味あります』みたいなアピールだ。最終的には僕を落として別の男の子とカップル成立となる。
ん? となると別の男性? いや、男性とは限らない。もしかして、好きな子を揶揄うみたいな‥‥。
「あ~!?」
「び、びっくりした!? どうしたのカズヤさん」
「あ、なんでもないです」
思いがけない真実を導き出して声を上げてしまう。
クエナさんが好きなのはネスティアなんだ。だから僕を出しにして揶揄って楽しんでいるんだ! だからさっきニヤニヤしてネスティアを見ていたんだ。
そうかそうか、女性だけど、女性が好きなんだ。多様性の世の中、いいんじゃないでしょうか? 僕は応援するぞ。
「はっはっは。好き好きは結構結構、いいんじゃないですか?」
「ちょ、なに言ってるのカズヤさん!」
僕の声に驚いた後も言い合いをしているネスティアとクエナさん。その言葉は聞いていないけど、僕は笑って声を上げる。するとネスティアが驚いて体をゆすってくる。
好きになってしまったのなら致し方ないでしょう。僕は喜んで出しに使われてあげよう
「だって、好きになってしまったのなら仕方ないでしょう。その人を見ると胸がドキドキしてしまうんです。それを止めるなんて心臓を止めるより難しいことなんですよ」
ずいっとネスティアに顔を近づけて話す。すると彼女の顔が真っ赤になっていく。なんとなくわかってくれたのか、彼女はそっぽを向いて何度も頷いてくれた。
「さっすがカズヤ~! 聞き分けがいいな~」
「なっはっは。そうですよ。僕は”聞き分け”がいいんです~。察しもいいんですよ~」
クエナさんが再度抱き着いてきて褒めてくれる。その言葉を聞いて確信しました。聞き分けがいいと言っている時点で確定ですね。彼女はネスティアを揶揄っている。
そして、揶揄う程彼女の事が好きということです。
うんうん、異性じゃなくても誰かが誰かを好きになることはいいことだ。心がほっこりする。
「‥‥好きになったら仕方ないっか」
ネスティアは分かってくれたみたいでボソッと独り言を言ってる。
呟くと彼女はクエナさんを見つめる。ニヤッと口角を上げるクエナさん。完全に揶揄ってるな~。
「ふ、ふん! え、エレメンタルを狩るんでしょ。早くしましょ!」
憤りを露わにしてネスティアが先頭を歩く。彼女について川を遡上していくと川の幅が広くなっていく。
「いた!」
川の幅が広くなってしばらく歩くと、ネスティアが声をあげる。指さす方向を見ると水色の球体が川の中央に浮いているのが見える。
「気を付けて。ああ見えてエレメンタルは魔法は凄いわ。あの色と場所からして水の魔法を多用してくる」
ネスティアがそう言ってフルーレを構える。その微かな音にエレメンタルが反応を示す。
ピカッと水に反射した光のような信号を出すと川の水を纏いだす。
「ちぃ、気づかれた。回避に専念して。クエナさんは隠れていて」
「大丈夫だよ。結構離れているんだから」
ネスティアが焦りながら声をあげる。クエナさんは余裕を見せて物陰に歩く。
急に動いたことで彼女がエレメンタルを刺激した。エレメンタルが纏っていた水が光線のように放たれる。
「危ない!」
僕の体が咄嗟に動いてクエナさんを抱き上げる。
水の光線はさっきまでクエナさんがいたところを通過して川にあった岩を貫通する。凄い威力だ。
「『ウォーターカッター』。高圧に圧縮された水を発射する魔法だ。エレメンタルがなぜ脅威なのか。それは周囲の地形を利用してくるところよ。気づかれたら油断しないほうがいい」
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