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第一章 誕生

第3話 生き残る

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 サラマンダーから逃れて何とか階段を見つけることが出来た。最初思ったよりも深くはない階層だったみたいですぐにマグマじゃない階層になった。

「リザードマンだ……」

 上にあがると森の生い茂った階層になった。沼地と森が半分半分の階層。
 トカゲ人と言った感じの魔物、リザードマンが槍を片手に闊歩してる。サラマンダーほどじゃないけど、リザードマンもかなり厄介。
 知能が高いから仲間が近くにいるとすぐに群がってくるらしい。遠くから仕留められるならいいんだけど、仕留めきれないとどんどん群がるとかいってたな~。

「弓か~。矢が少ないからな~」

 白骨死体から手に入れた弓矢、数が10本ほどしかないから仕留められても10体しか倒せない。木陰から見回してざっと見てもリザードマンは20体はいる。遠巻きで全員を仕留めることはできないだろうな。
 ということで仕方なく。

「これで10体目だ」

 ゆっくりと近づいてリザードマンの首を狩る。上手くリザードマン達が離れた時に狩るから時間がかかった。
 後は木に登って残りを矢で。
 そう思って高い木に登る。仕留めたリザードマンはマジックバッグにしまい込んだから倒したのがバレることはないと思う。

「やっ!」

 木の上から素早く矢を射かける。矢は見事にリザードマンの頭に突き刺さってやられたことにも気づかずに絶命していく。自分がやったこととはいえ信じられない程の戦果。

「こんな日が来るなんて……」

 6人の冒険者の死体をマジックバッグにしまっただけでこの強さ……。まだ信じられないな。

「外に出たらこの人達を見つけたことを言わないとダメだよね。ちゃんと供養しないといけないもんな。秘密にしたらじいちゃんに怒られる」

 死体の一部を入れているだけでも効果があるのかな、試してみるか。
 リザードマンの作った藁の家に入って白骨死体を取り出す。
 全部取り出すとステータスの+がすべてなくなった。
 ここまでは想定通り。

「腕の一部、指だけをマジックバッグに入れる」

 これでステータスが増えなかったら、これからは自分のステータスだけで頑張らないといけないな。
 そんな心配をしながら入れると見事にステータスがあがった。

「これならもらってもいいかな。じいちゃんだったら怒りそうだけど」

 死体を回収した報酬としてもらってもいいと思うんだけど、じいちゃんなら死体を玩具にしたとかいって怒りそうなんだよな。

「そんなことを考えるのは無事に帰ってからにしよう」

 白骨死体を再度マジックバッグに入れて階段を探す。矢はなくなっちゃったから静かに進むか。これ以上魔物を仕留めても大変だし。
 あれだけの魔物を仕留めたのにレベルも上がらない。サラマンダーよりも強い魔物を狩らないとそう簡単には上がらないだろうな。

 あとどれくらい階段を上がれば外に出られるのか見当もつかない。あ~早く帰って眠りたい。ダンジョンの中は見張りをつけて休むのが常識なんだけど、仲間がいない今の状況じゃ無理なんだよな。

「階段で休むのもありだけど、魔物が上がってくることもあるから注意が必要なんだよな~」

 魔物は人を襲うように神様に作られてる。人が階段にいると魔物が階段に入れるようになるらしい。一定時間しかいられないようにできてるんだよな~。
 下の階層の魔物が上の階層に来るから迷惑行為として冒険者ギルドで禁止されてる行為だ。
 早く上の階層に行って他の冒険者達と合流しないとな。ハザードさん達はすでに外に行ってるだろうな。見捨てたことをギルドに報告したら彼らはおしまいだ。まあ自業自得だよね。
 休むことも出来ない僕はそうそうに階段を探しあてて元居た階層まで上がることが出来た。

 サラマンダーとリザードマンの死骸でいっぱいのマジックバッグ。換金したらどれほどのお金になるか楽しみだ。あと、サラマンダーのお肉を楽しまないとな。
 ルンルンしながら転移した石造りの通路を歩く。思えば、カイザースケルトンに追われて転移したのは運が良かったな~。呑気に考え事をしながら歩いていると見覚えのある人が倒れてるのが見えた。

「!? ハザードさん!」

「……」

 ハザードさん達が倒れてる。思ってみれば、リザードマンのいた階層まで冒険者に会わなかった。帰ることと休憩したいという気持ちで考えられなかったけどおかしなことだ。
 下の階層に冒険者がこれない理由があったんだ。それは僕が出会った魔物のせいだったわけだ。
 カタカタカタカタ、そんな聞き覚えのある音が背後から聞こえてくる。

「カイザースケルトン」

 振り返って音の正体を見て魔物の名を呟く。6本の腕に持つ剣が血に染まっているのが見えて緊張が走る。

「ハザードさん……死んでるのか」

 生きてるなら助けてあげようと思った。だけど返事がない。死んでしまったみたいだ。よく見ると胸を一突きされてる。彼の仲間も首をきられたりしていて絶命しているのが分かる。
 カイザースケルトン、サラマンダーと同じBランクの魔物。普通なら僕なんかじゃ絶対に勝てない魔物だ。だけど、

「【ホーリーボルト】」

 聖なる光の塊を放つ魔法、僧侶の魔法だ。カイザースケルトンにぶつけてひるませると近づいて右腕3本を切り伏せる。
 剣士と戦士の白骨死体と一緒に剣と大きな斧は回収してる、武器は潤沢だ。こんな魔物今の僕なら余裕で始末できる。

「左! そして、とどめ!」

 カイザースケルトンの左側も剣で蹴散らして、大きな斧を握りしめて頭をかち割る。何の抵抗も出来ずにカイザースケルトンは動きを止めた。

「はぁ……自業自得とはいえ、元仲間が死ぬのはいたたまれないな」

 ハザードさん達の死体をみてため息をつく。彼らの夢は一流の冒険者になることだった。
 僕に謝って置いていった時のハザードさんの顔が今でも思い出せる。悲痛な顔で申し訳ない様子だった。彼も生き残ることに必死だったんだよな。まあ、それでも許せることじゃないけど。

「皆さんも僕の力になってください。それが償いってやつでしょ?」

 ハザードさん達5人の死体も回収。ステータスが5人分追加で上がるのを確認。本格的に墓守の継承者の力が分かる。

「さて、あと三階層だ。これからは別の冒険者達と会うこともあるだろうな」

 三階層にカイザースケルトンが現れたことで冒険者達が下に行けなかった。そう考えるとこれから上には普通に冒険者がいるはずだ。あ~早く休憩したいな。
 はやる気持ちを抑えながらも覚えている道を進んでいく。ここからは見知った道だ。ハザードさん達と一緒に良く潜っていたからな。そう考えると感慨深い。

「あと二階上がれば外だ……」

 転移した階層から一階上がる。思わず口から声がこぼれる。

「ルテナ! あぶない!」

「きゃ!」

 やっと帰れるなんて思っていたら声が聞こえてくる。やっぱり、冒険者がいるみたいだ。
 結構、危ない声が聞こえてくるけど大丈夫かな?

「ルテナ! 大丈夫?」

「う、うん。たぶん大丈夫。リコとマーヤは?」

 女の子三人のパーティーか珍しいな。ゴブリンを仕留めて話し合ってるのが見える。心配そうな二人に対して大丈夫って言ってるけど顔色が悪いな。

「あたしは大丈夫だよ」

「マーヤも大丈夫」

「そう……よかった」

「「ルテナ!?」」
 
 顔色の悪い子が倒れてしまう。ゴブリンの武器には毒が塗られてることがある。遅効性の毒で魔法や薬を使わないと治せないはずだ。
 彼女達の服装から察するに僧侶はいなさそう。

「治すね。【キュア】」

「「誰!?」」

 すかさず近づいて声をかける。状態異常を治せる僧侶の魔法を唱える。急に現れた僕に驚く二人は目をパチクリさせてる。
 しばらくすると倒れた子が目を覚ました。

「え? 私……」

「「ルテナ!」」

 目を覚ました子を抱きしめる二人。仲がいいんだな。

「それじゃ僕は」

「ま、まって!」

 皮鎧を着た女の子、リコと呼ばれてた子が帰ろうと思った僕を引き止めてきた。

「あ、ありがと。私はリコ。あなたは?」

「どういたしまして、僕はアレア。それじゃ」

「あっ!?」

 早く帰りたくて名を名乗るとすぐに出口へと歩き出す。名残惜しそうな声が聞こえて振り返ろうかと思っただけど、早く帰りたすぎて無視する。
 心配だけど彼女達もこれ以上奥にはいかないだろう。次に潜る時は僧侶さんを仲間にしたほうがいいな。それかアイテムをいっぱい持ち込むとかね。
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