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第二章 支配地

第52話 ドラゴン

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「熱い熱い!?」

 ドラゴンの息を、インベントリから鉄の盾を取り出して受け止める。一瞬で熱くなる鉄の盾、それでも逃げる隙をうんでくれた。

「な! 仕留められなかったから今度は空から来るつもりか!」

 炎の息で仕留めきれないと踏んだドラゴンが羽ばたきだす。僕らを吹き飛ばさんとしてくる羽ばたきは容易にドラゴンを空へといざなう。

「ランカ様! 私の背に! しっかりと掴まっていてくださいね~!」

 リトルの提案にみんなが頷く。風の荒れ狂う中、リトルは見事に地から離れて見せる。どんな風でもリトルにとってはゆりかごのようなものみたいだ。
 ドラゴンの羽ばたきを利用して飛んだ影響で奴よりも高度が上がった。みんなと顔を見合うとドラゴンの背へと飛び込む。

「わ! わ~!?」

「アスノ君!」

 ドラゴンの背に乗れずに落ちそうになるアスノ君に手を伸ばす。しっかりと捕まえると引っ張り上げる。ホッと胸をなでおろすのも刹那の時間。ドラゴンが急降下を始める。
 僕らに気が付いたドラゴンが振り落とそうとしてるみたいだ。

「急降下から体を持ち上げるはず。その一瞬で羽を傷つける。みんな衝撃に備えて!」

 降下する中、レッドの声が聞こえる。僕らは捕まっているのがやっとだ。
 風切り音の中、一瞬の静寂が訪れ衝撃が僕らを襲う。レッドは声をあげた通り、やり遂げて地面にドラゴンが横たわる。

「ランカ! 起き上がる前に決めるよ!」

「りょ、了解!」

 衝撃で頭がぐるぐる回る中、レッドの声に答える。剣を引き抜き、ドラゴンの背中に突き立てる。

「ギャオ~~~~~~~~~~~~~~!」

 けたたましい声をあげるドラゴン。耳が押しつぶされそうになる声。思わず耳を抑えてしまうと体を起こしたドラゴンのせいで背中から落ちてしまう。
 流石はドラゴンと言ったところか、アスノ君の武器でも一撃で倒せない。単純に大根剣士のステータスが足りないだけかもしれないけどな。

「どっこいせ!」

「僕も!」

 ルドマンがハンマーを担ぎ上げてドラゴンの足に振り下ろす。アスノ君は短剣を投げつけて胴体に突き刺す。これだけの攻撃を受けて戦利品を残さないとは。強いな。

「レッド!」

「わかってるよランカ!」

 思わず彼女の名前を叫ぶと待ってましたと答えてくれる。左右からドラゴンに駆け寄り大きく跳躍、同じ高さに飛んだレッドと顔を見合う。ともに口角をあげてドラゴンの頭に一緒に着地して剣を突きさす。クリティカルヒットと言ったところだろう。
 再度、けたたましい声をあげるドラゴン。少しするとドドンと音をたてて倒れ込み、戦利品を残して消えていく。

「がはは、今度こそ終わりじゃな!」

「レベル上がりました師匠!」

 ルドマンとアスノ君が嬉しそうに声をあげる。その声を聞いてレッドと再度顔を見合う。僕は驚いた、初めての連携とは思えない攻撃だった。彼女の顔にもそう書いてある。そして、凄い嬉しそうだ。

「流石レッド!」

「ふふ、流石ランカ!」

 手を差し出すとハイタッチに答えてくれるレッド。彼女は最高のサポートキャラだ。

「ししょ~! 卵~!」

「え!? 卵?」

 レッドと顔を見合っているとアスノ君が嬉しそうに声をあげてきた。ドラゴンの戦利品は卵みたいだ。よくみると半透明の戦利品も卵だな。ってことは二個の卵?

「ふむ、リザードマンたちはこうやって手懐けたのかもしれんな」

「ああ!? なるほど刷り込みか!」

 卵から生まれて初めて見るものを親だと思うと言う奴だ。ゲームじゃ従魔なんてなかったからな。出来るか心配だけど、リザードマンが出来たなら出来るはずだ。といってもドラゴンなんて育てられないぞ。

「羽化させられずに腐っちゃいそうだな」

「リトルなら出来るんじゃない?」

 心配で呟くとレッドが空で旋回してるリトルを見上げて話す。ワイバーンもドラゴンも同じようなものだもんな。行けるかもしれない。

「ランカ様皆さん、ドラゴン討伐おめでとうございます」

 着地するリトルがひれ伏す様に頭を下げて話す。早速卵を見せるとなぜか瞳に涙を溜める。

「私とランカ様のお子ですね!? 私嬉しいです!」

「ええ!? リトル何を言って!?」

 二つの卵を抱きしめて泣き出すリトル。レッド達に視線を移すとジト~とした目を向けられる。そんな目をしてないで何か言ってほしいんだけど。

「私が立派なワイバーンに育てます! 任せてください!」

「あ~うん。お願いします……」

 みんながジト目を向けてくる中、リトルが嬉しそうに宣言する。まあ、これでドラゴンも得られたわけだ。教会に目にもの見せられそうだな。
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