赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)

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第二章 フェイク

第34話 リュウさん

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 暗雲から首だけを見せる龍? 少しすると炎を吐いてきて威嚇してくる。

『少し待っておれ、すぐに後悔させてやる』

 そんな声を落として、少しすると雲から町ほどの大きさの龍が降りてきた。
 ドスンと音を立てて降りてきた龍は双子を睨みつける。

「ヴァンパイア風情が。空へとこようとは……地上の者は調子に乗ってきたようだな」

 ブスンと鼻から火花を出して声をあげる龍さん。空って言うのは5000メートル以上の場所のことなのかな? そうなると、僕のことだけど。

「我と一戦交えたいのだろう? すぐにでもやるか?」

 好戦的に構える龍さん。双子は首を横にブンブン振っている。

「バブ!」

「ん? 赤ん坊を連れているのか。……非常食というやつか!? 下劣なヴァンパイアが! 滅ぼしてくれる!」

「バブバブ!?」

 僕を見た龍さんが勘違いして双子へとブレスを吐こうとしてる。僕はすぐに声をあげて止めると首を傾げた。

「なんじゃ? 違うのか?」

「そ、空の覇者。どうか、我らに発言の許可を」

 色々と察しのいいシャルが首を傾げる龍さんに声をあげる。龍さんは顎を摩りながら頷いた。

「我らはそこにいるジーニ様の従魔。ゴーレムと合わせて三人の従魔なのです」

「……なにを言うかと思えば。赤ん坊が三名の従魔を従えているじゃと? もっとましな嘘を言うんじゃな」

「決して嘘偽りではございません。我らはジーニ様に敗れ、ゴーレムは核を手に入れて得た従魔なのです。天地神明に誓って嘘ではございません」

 シャルの言葉に龍さんは呆れて鼻息をもらす。それでも懸命に弁解するシャル、いい子になったな~。

「バブバブ!」

「!?」

 見ててと言わんばかりに声をあげてから大きく跳躍する僕。龍さんは驚いて目を大きくしてる。しばらくして僕が着地するとまじまじと見つめてきた。

「おかしな赤子じゃ。じゃが、確かに今の跳躍はこの赤子のみの力。しかしあり得んな~。赤子だというのにこの強さ……末恐ろしい」

 龍さんは感慨深く呟いた。目を瞑って再度開くと手をポンと叩いて口を開いた。

「おぬしについていこう」

 そういって尻尾をブンブンと振り始める。尻尾は犬と同じなのかな? 楽しそうに目を輝かせている。

「なんじゃか面白そうじゃからな~」

「バブゥ~?」

「なんじゃダメなのか? 空の覇者ドラゴンじゃぞ? おぬしも男の子ならば一度は見て見たいじゃろ? って見ておるから微妙かの?」

 不満の声をあげると龍さんがアピールしてくる。確かに赤黒い鱗の龍さんはカッコいいけれど、なんかイメージと違う柔らかさが微妙だ。

「空の覇者様。ドラゴンの姿のままではその……」

「おお、そうじゃったな。ではこれでどうじゃ?」

 シャルの声で自分の容姿を見下ろす龍さん。すぐに姿が小さくなって行く。
 なぜか、僕の見たことある姿に変わる。

「どうじゃ? 東方の侍と言われる格好じゃ。カッコいいじゃろ?」

「……」

 思わず見惚れてしまうほどの美女に変わる龍さん。髪を一つに結った長い黒髪の侍、背中に背負ってる長い刀がまたカッコいい。やっぱり刀はいいな~。試練の報酬は剣ばっかりだったから武器に興味なかったけど、刀を見たら欲しくなっちゃったな~。

「後は名前じゃな。うむ、東方では龍と言われておったからリュウと名乗ろうかの」

 人差し指で唇を抑えるリュウさん。名前を考え終わると僕を抱き上げる。

「ふむ、感触も普通の赤子じゃな。しかし、空の覇者の領域まで到達するほどの強者。これからが面白くなるぞ」

「ば、バブ……」

 ただただ試練をやっていただけなのにリュウさんが楽しそうにしてる。そんなつもりはなかったんだけどな~。

「ん? スンスン」

 楽しそうにしていたリュウさんが僕の匂いを嗅いでくる。こんな美人さんに匂いを嗅がれると臭くないか気になるな。

「不死者の匂いがするの~。今生き残っておる不死者はフェイクか?」

「!?」

 リュウさんからフェイクの名がかたられた。僕はすぐにリュウさんから離れる。

「おお! 素早い! 強いな。じゃが誤解するでない。不死者とは敵対しておるわ」

「バブ……」

 リュウさんの声に警戒を解かずに声をもらす。するとリュウさんは地面に無造作に座って語りだした。

「わしら空の覇者ドラゴンは太古の昔から生きておる。その太古の時代に不死者も存在していてな争い合っていた。その中の一人にフェイクが存在していたというわけじゃ。あやつはおかしなやつじゃった」

 ふふふと笑いながらリュウさんは語ってくれる。不死者とドラゴンの住む世界かあまりいたくない世界だな。

「おかしいとは?」

「ふむ、弱いものを強くしようとしていた」

 シャルの疑問に答えるリュウさん。弱いものを強くするのはいいことだと思うけどな。僕も密かにやっているしね。

「わしらドラゴンと不死者の二強の世界じゃったがしっかりと人間、獣人、ドワーフ、エルフも存在していた。そんな時代にフェイクは人間達を鍛え始めたんじゃ」

 感慨深く天を仰いで語りだすリュウさん。懐かしいといった様子で楽しそうにも見える。

「不死者の連中もドラゴンもみなフェイクがおかしくなったと笑って居ったが。ある日やつは一つの実験をした」

「実験?」

「ふむ、自分を人間に殺させたんじゃ」

 シャルの疑問の声に答えるリュウさんはそういって背中の刀を抜いて刀身を見定める。刃にゆらゆらと紫の影が波打っていて、カッコイイ。
 フェイクは不死者だから殺されても生き返る? ってことはそれで経験値を他者に取らせてたってことか。

「察しの通り、フェイクを倒した人間はレベルが上がった。不死者の中では弱い方だったからそんなにレベルは上がらなかったがな。しかし、不死者であるフェイクはすぐに生き返る。再度、フェイクは倒される。それを繰り返すことで人間に強者が生まれた。と言ってもドラゴンの足元にも及ばなかったから儂らは感心がなかったがな」

 リュウさんはそういって刀をしまって再度僕を抱き上げる。

「フェイクはそれで弱いものを強くすることにはまっていった。エルフやドワーフ、それに獣人にも同じ強者を作ったが、それは大きい炎になって行った」

「……対立ですね」

 リュウさんの言葉にソルが呟く。彼女は大きく頷いて話だす。

「元々仲が悪かったから全てフェイクのせいとは言えないが強者となった長達が原因なのは確か。不死者も呆れていたものだったがやつは悲しんでいたようじゃった」

「バブ?」

「ふむ、暮らしを豊かにしてやろうとフェイクは強者を作っていたようだったからな。それが共に命を削り合うことになってしまった。不本意な状況になってしまったということだな」

 話を聞いて声をもらすとリュウさんは頬をつついてきて答えてくれた。フェイクは最初みんなの為に動いていたいい人ってこと? 信じられないな。

「今は魔物を育てていますよ」

「ああ、僕達のところにも来てたからな。だがヤゾの兄貴は魔物を倒してレベルあげさせられてたぞ」

「バブ」

 ヤゾは自力でレベルを上げてたってことか。シャルとソルの話を聞いて感心してしまった。

「変わらないな。あやつも」

「ん? おかしな話だな」

「なんじゃ?」

「いや、不死者がフェイクだけになっているのがですよ」

 シャルが首を傾げて疑問を口にする。確かにおかしい。不死者なら死なないんだから他の人達もいきているはず?

「……まあ、昔の話はこのくらいにしておこう。おぬし達の町へ帰ろうじゃないか。ここら辺だと王都ジュスペンスか?」

 リュウさんは大きくため息を一つつくと街道を王都の方へと歩き出す。まるで話したくないといった様子に僕らは口を紡いだ。
 気になるけど無理に聞くのは無粋だもんな。
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