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第二章 フェイク

第42話 戦争

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「こっちの方角でいいはずですが」

「ああ、そろそろ見えてくる」

 ぴょんぴょんと跳躍して進んでる僕ら。ソルが首を傾げるとブーバ君が答える。
 オークだったブーバ君も僕の従魔になったことで強くなった。流石にヴァンパイアの二人よりは弱いとは言え、お父さんといい勝負をした子だからついてこれてるな。
 ドワーフの国は【ドワッジブリッジ】そこから【ジュスペンス】までの街道をドワーフの人達は通るはず。大きな橋があるからそこを渡る前にオークが接触するとブーバ君は考えていたみたい。

「我が帰るまで進軍はしないはずだが……」

「何か引っかかるのか?」

「ああ。グリードと言う名に覚えはあるか?」

「バブ!?」

 ぴょんぴょんと跳ねて進みながら心配そうに語るブーバ君。シャルが声をかけると僕らの知ってる名が語られた。

「フェイクの異次元の中から取り出された鎧。強い憤怒の感情で作り出された鎧だ。人、獣、どんなものでも装備出来て一度装備すると死ぬまで張り付く。そして、心をすべて吸い取られて鎧は強さを増す」

「「「……」」」

 ブーバ君は俯きがちに声をもらす。ブレインの怒りも吸収していたってことか。

「フェイクは魔物を強くすると同時にその鎧も育てているのだろう」

「なるほど、オークとドワーフを戦わせて生き残った者に鎧を着せて」

「そういうことだ」

 ブーバ君の声にシャルが憶測を話した。確かにそうすればどちらにしても鎧は育ちそうだ。強くなればいいなんて言っていたブーバ君も仲間思いの一面を持ってるから。復讐で怒りを育ててしまうだろう。

「ジェネラルがやられるようなことになれば、我も」

「帰るまで進軍しないのだろ? ならばいらぬ心配では?」

「……そう思いたいが」

 しんみりするブーバ君にシャルが話す。それでも晴れないブーバ君。そんなしんみりとしているなか、僕の【試練】は空気を読まない。

『試練を達成しました』

「バブバブ~」

 ちゃんと距離の試練を得て移動していたのだ。

 ーーーーーーー

  試練

 一週間以内に50キロ進め

 報酬 経験値 魔力の秘薬

 ーーーーーーー

 まるで僕が欲しいものを感知しているかのような報酬。魔力があればあるほど従魔にできる。魔力の秘薬はあんまりもらっていなかったからありがたいな。早速一本っと。

「ゴキュゴキュ」

「おお~、いい飲みっぷりでございますジーニ様!」

「ささ、お口を拭わせていただきます」

 着地をして一気飲みすると双子が構ってくれる。腰に手を当てると飲むと気持ちよく飲めるんだよな。

「ステータスの底上げをする薬か。ユニークスキルというやつか」

「気づいたか。ジーニ様は神にもなり得る存在だぞ」

 ブーバ君が僕を見つめて呟くとシャルが自慢げに話した。いやいや、大げさだな~。

「そんなことよりも見えてきたぞ。人とドワーフの大陸を繋げる大橋、ジンドブリッジ」

「バブ~!」

 ブーバ君が指さす方向を見ると大きな川に跨る金色の橋が見える。四車線の車が通れるほどの大きな橋が真っすぐ架かってる。川底から支えているタイプで時代を感じるな。

「ドワーフの英知の象徴とも言われているな」

「大きな橋を作り川に捨てただけですがね」

「バブ?」

 なるほど、少しずつパーツを作ってはめて行った感じかな?

「ドワーフの軍が来ているな」

「バブバ!?」

 シャルが指さした。
 よく見るとすでにドワーフさん達が渡り切ってる。僕らの大陸でキャンプを張ってるよ。ブーバ君の予想では渡る前って言っていたけど。

「よかった。ジェネラルは我との約束を守ってくれた」

 ブーバ君はホッと胸を撫でおろす。
 しかし、その時。

「オークの軍がジンドブリッジを渡ってる!」

「なに!?」

 悠長に話してるとジンドブリッジを渡る人影が見えてくる。すぐに人ではないオークの姿が見えてくる。急がないとどちらにも被害が。

「ふふ、おやおや。ブランド様は約束をたがえた? いや、オークの方から情報がもれましたか。仕方ないですね~」

「「「「!?」」」」

 今すぐに二つの軍の間に入ろうと思ったら背後から声が聞こえてきた。そこにはフェイクが仮面を片手に立っていた。

「ブーバ! すぐにジーニ様と!」

「わ、分かった!」

「バブバ!? ダブダブ……【ダブッバブ】」

 シャルが声をあげるとすぐにブーバ君が僕を抱き上げて跳躍。僕はすかさずシャルとソルにブレッシングをかけた。
 シャルとソルがその場に残ってフェイクを抑えてくれるみたいだ。二人はお父さんと同じくらい強くなってる。二人なら大丈夫……

「ドワーフ達を突っ切るぞ!」

「バブバブ! ダブダブ……【ダブッバブ】」

 ブーバ君と自分にもブレッシングをかけてドワーフ軍の陣を走り出す。ドワーフ達がいち早く気づいて手斧や大きめの斧が飛んでくる。華麗に避けるブーバ君と僕、まるでラグビーのボールみたいに僕を投げるブーバ君はカッコよかったな。

「きさま……」

「ジーニ様、こいつらは我が抑える。ジェネラルをお願いします」

「バブバブ!」

 陣を抜けてジンドブリッジにたどり着くとブーバ君が追従してきたドワーフ達を止めてくれる。このまま僕らを追いかけてきたらオーク達とぶつかっちゃうから任せるしかない。でも、現状を説明してくれる人がいないと、従魔にするには倒さないといけなくなっちゃったな。
 そんなことを考えている間にも目の前を覆いつくすほどのオークさん達、仕方ない。

「バ~ブ!」

 橋の床を両手で貫いてちゃぶ台返し! 2メートル程、橋を破壊。これでとりあえずは衝突しないはずだ。それにしてもこの橋は結構丈夫だな。2メートルの橋の塊はそのまま僕の手にある。

「わしらの最高傑作のジンドブリッジをいともたやすく」

「な、なんじゃあの赤子は」

 ガヤガヤと背後から声が聞こえてくる。見るとドワーフさん達が顔を青ざめさせて僕に視線を向けてくる。流石の状況にブーバ君も口が開きっぱなしだ。戦闘どころではない状況。
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