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第1章 村スキル
第9話 ルーザー
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「ルティ? ルティなのか?」
ルーザーさんがジャンを見て呟く。彼の瞳が光るのが見えて涙を浮かべているのがわかる。
ジャンは訳が分からない様子で首を傾げる。
「僕はジャンです。ルティという名ではありません」
素直に答えるジャン。その言葉を聞いてルーザーさんはハッと我に返って首を横に振った。
「す、すまない。し、知り合いに似ていたんだ。そうだ! こんなことをしている場合じゃねえんだ。すぐに町に」
『ゴアアァァァァ~~~』
ルーザーさんが町を指さして声を上げていると、言葉を遮るように叫び声が聞こえてくる。
思わず耳を塞ぎたくなる声。まるで全ての者を憎んでいるような声だ。
「逃げろ! ここは俺が何とかする」
ルーザーさんはそう言ってナイフを抜いて構える。
でも、彼は顔を青ざめさせている。恐怖で硬直しているように見える。
「マスターは逃げてください。防衛者としての使命を果たします」
「ジャン、大丈夫なの?」
「はい。僕は死んでも戻るだけですから」
ジャンはそう言って町の方角を見つめる。彼は続いてルーザーを見つめる。
「あなたも逃げて大丈夫です」
「は、はは。こんな子供にまで心配されるなんてな……。事情はわからねえが、お前みたいな子供を残して逃げれるわけがねえだろ」
「……あなたは守る対象じゃない。知りませんからね」
ジャンはルーザーさんにも告げる。彼は逃げることをせずにただ叫び声の主を待った。
僕は動けずにいた。ジャンとルーザーを置いて行けるわけがない……。そんな男のような気持ちで動けなかったわけじゃない。恐怖で動けなかったんだ。
どんどん近づいてくる地揺れを発生させる恐怖の存在。木をなぎ倒して現れたそれは恐怖そのものだった。
「トロール」
ルーザーさんがそう呟いて走り出す。木と同じくらいの身長を持つトロール。トロールはルーザーさんに気が付くと持っていた大剣を振り下ろしてくる。
ルーザーさんには当たらずに地面に叩きつけられる大剣。トロールが歩くよりも激しい地揺れを発生させる。
「早く逃げろ! お前達が勝てる相手じゃねえ!」
ルーザーさんが叫ぶとトロールの腰へとナイフを突き刺す。分厚いやつの体にナイフが取られる。武器のなくなったルーザーさんは地面の石を拾い投げ始める。
「こっちだウスノロ!」
「ゴア!」
錆びついた大剣で石を投げるルーザーさんへ切りかかるトロール。紙一重で躱すルーザーさん。僕は恐怖で動けなかった。体を何度もたたいて何とか動くと銅の剣を一本鞘ごと掴む。そして、ルーザーさんへと投げた。
「それを使ってください!」
鞘ごと力いっぱい投げた銅の剣。中空でそれを抜き身にするルーザーさん。その流れごとトロールへと切りかかる。早すぎる剣捌きで風が切り裂かれる音が響く。
「攻撃力がたりねえ。怠けすぎた」
何度も何度もトロールの体を切り裂くルーザーさん。やつの体は切れると同時に回復する。
手間取っている自分に嫌気がさすルーザーさん。そんな彼に無慈悲にトロールの大剣が降り注ぐ。
「ぐ! だから逃げろって言ったんだ!」
青い剣士ジャンがルーザーさんを庇って大剣を盾で受け止める。地面が陥没するほどの衝撃。僕も銅の剣を抜いて駆け寄る。
「マスター! あなたは逃げてください! それが僕の使命です!」
駆け寄る僕にジャンが鋭い目つきで叫ぶ。
……逃げられるわけがない。そんなことできない!
「逃げられるわけないよな! 男だからな!」
「ルーザーさん……」
僕の心の声を察したのか、ルーザーさんが声を上げてくれる。
それと同時に彼の腕が膨れ上がる。血管が浮かび上がり銅の剣を肩に掲げる。
「ここからが本気だ。ウスノロ」
腕から湯気が出るほどの熱を発したルーザーさん。声と同時にトロールの背後にまわると食い込んでいたナイフを掴み銅の剣と交差させると切りあがっていく。
トロールの首まで切りあがると奴の首が地面に落ちた。
「ハァハァ……。やれた」
ルーザーさんはトロールの死骸を見つめて息を切らせて安堵した。膝をついて銅の剣を見つめると大きなため息をつく。
「まだ終わってない」
「な!?」
ジャンが彼を守るように木陰へと盾を構える。
木の影から鋭く飛んでくる錆びた短剣、ジャンは難なく盾でガードすると投げてきた魔物が現れる。
「ギャギャギャ……」
「ちぃ、ゴブリンシーフか。職業持ちということは1匹だけじゃねえな」
短剣を投げてきたのはゴブリンだった。僕が倒したゴブリンよりも一回り大きな個体だ。
そして、ルーザーさんの言葉通り、1匹だけじゃない。ぞくぞくと木陰からゴブリンが現れる。
「知能の高いゴブリンは人間と同じようにパーティーを組む。魔法使いがいないのが救いだな」
ルーザーさんはそう言って銅の剣とナイフの二刀流で構える。
彼は出てきたゴブリンの装備を見て判断したんだろう。大きな斧のゴブリン、短剣、盾と長剣が2匹。4匹のゴブリンパーティ。こっちは3人……やれるか?
「シーフに気をつけろ。投げ物がやっかいだ」
ルーザーさんは僕も戦力として考えてくれてるみたいだ。僕は頷いて答える。ジャンは不服そうに前に立つと盾と長剣を構える。
対峙しあうと音が森のせせらぎだけになる。そして、その静寂が激しい鉄と鉄のぶつかり合いへと変わる。
ルーザーさんがジャンを見て呟く。彼の瞳が光るのが見えて涙を浮かべているのがわかる。
ジャンは訳が分からない様子で首を傾げる。
「僕はジャンです。ルティという名ではありません」
素直に答えるジャン。その言葉を聞いてルーザーさんはハッと我に返って首を横に振った。
「す、すまない。し、知り合いに似ていたんだ。そうだ! こんなことをしている場合じゃねえんだ。すぐに町に」
『ゴアアァァァァ~~~』
ルーザーさんが町を指さして声を上げていると、言葉を遮るように叫び声が聞こえてくる。
思わず耳を塞ぎたくなる声。まるで全ての者を憎んでいるような声だ。
「逃げろ! ここは俺が何とかする」
ルーザーさんはそう言ってナイフを抜いて構える。
でも、彼は顔を青ざめさせている。恐怖で硬直しているように見える。
「マスターは逃げてください。防衛者としての使命を果たします」
「ジャン、大丈夫なの?」
「はい。僕は死んでも戻るだけですから」
ジャンはそう言って町の方角を見つめる。彼は続いてルーザーを見つめる。
「あなたも逃げて大丈夫です」
「は、はは。こんな子供にまで心配されるなんてな……。事情はわからねえが、お前みたいな子供を残して逃げれるわけがねえだろ」
「……あなたは守る対象じゃない。知りませんからね」
ジャンはルーザーさんにも告げる。彼は逃げることをせずにただ叫び声の主を待った。
僕は動けずにいた。ジャンとルーザーを置いて行けるわけがない……。そんな男のような気持ちで動けなかったわけじゃない。恐怖で動けなかったんだ。
どんどん近づいてくる地揺れを発生させる恐怖の存在。木をなぎ倒して現れたそれは恐怖そのものだった。
「トロール」
ルーザーさんがそう呟いて走り出す。木と同じくらいの身長を持つトロール。トロールはルーザーさんに気が付くと持っていた大剣を振り下ろしてくる。
ルーザーさんには当たらずに地面に叩きつけられる大剣。トロールが歩くよりも激しい地揺れを発生させる。
「早く逃げろ! お前達が勝てる相手じゃねえ!」
ルーザーさんが叫ぶとトロールの腰へとナイフを突き刺す。分厚いやつの体にナイフが取られる。武器のなくなったルーザーさんは地面の石を拾い投げ始める。
「こっちだウスノロ!」
「ゴア!」
錆びついた大剣で石を投げるルーザーさんへ切りかかるトロール。紙一重で躱すルーザーさん。僕は恐怖で動けなかった。体を何度もたたいて何とか動くと銅の剣を一本鞘ごと掴む。そして、ルーザーさんへと投げた。
「それを使ってください!」
鞘ごと力いっぱい投げた銅の剣。中空でそれを抜き身にするルーザーさん。その流れごとトロールへと切りかかる。早すぎる剣捌きで風が切り裂かれる音が響く。
「攻撃力がたりねえ。怠けすぎた」
何度も何度もトロールの体を切り裂くルーザーさん。やつの体は切れると同時に回復する。
手間取っている自分に嫌気がさすルーザーさん。そんな彼に無慈悲にトロールの大剣が降り注ぐ。
「ぐ! だから逃げろって言ったんだ!」
青い剣士ジャンがルーザーさんを庇って大剣を盾で受け止める。地面が陥没するほどの衝撃。僕も銅の剣を抜いて駆け寄る。
「マスター! あなたは逃げてください! それが僕の使命です!」
駆け寄る僕にジャンが鋭い目つきで叫ぶ。
……逃げられるわけがない。そんなことできない!
「逃げられるわけないよな! 男だからな!」
「ルーザーさん……」
僕の心の声を察したのか、ルーザーさんが声を上げてくれる。
それと同時に彼の腕が膨れ上がる。血管が浮かび上がり銅の剣を肩に掲げる。
「ここからが本気だ。ウスノロ」
腕から湯気が出るほどの熱を発したルーザーさん。声と同時にトロールの背後にまわると食い込んでいたナイフを掴み銅の剣と交差させると切りあがっていく。
トロールの首まで切りあがると奴の首が地面に落ちた。
「ハァハァ……。やれた」
ルーザーさんはトロールの死骸を見つめて息を切らせて安堵した。膝をついて銅の剣を見つめると大きなため息をつく。
「まだ終わってない」
「な!?」
ジャンが彼を守るように木陰へと盾を構える。
木の影から鋭く飛んでくる錆びた短剣、ジャンは難なく盾でガードすると投げてきた魔物が現れる。
「ギャギャギャ……」
「ちぃ、ゴブリンシーフか。職業持ちということは1匹だけじゃねえな」
短剣を投げてきたのはゴブリンだった。僕が倒したゴブリンよりも一回り大きな個体だ。
そして、ルーザーさんの言葉通り、1匹だけじゃない。ぞくぞくと木陰からゴブリンが現れる。
「知能の高いゴブリンは人間と同じようにパーティーを組む。魔法使いがいないのが救いだな」
ルーザーさんはそう言って銅の剣とナイフの二刀流で構える。
彼は出てきたゴブリンの装備を見て判断したんだろう。大きな斧のゴブリン、短剣、盾と長剣が2匹。4匹のゴブリンパーティ。こっちは3人……やれるか?
「シーフに気をつけろ。投げ物がやっかいだ」
ルーザーさんは僕も戦力として考えてくれてるみたいだ。僕は頷いて答える。ジャンは不服そうに前に立つと盾と長剣を構える。
対峙しあうと音が森のせせらぎだけになる。そして、その静寂が激しい鉄と鉄のぶつかり合いへと変わる。
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