【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)

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第2章 王国と魔道

第87話 救い

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「お姉ちゃん!」

「え!? 私達生きてる? どうなってるの?」

 時が動き出し、目の前の二人が驚き戸惑う。僕は胸の痛みを抑えて魔根の球を握っていた掌を見つめる。
 魔根の球は無くなってる。僕の体の中に入ったってことだよな。

「お兄さん? 大丈夫ですか?」

「あ、うん。大丈夫」

 お姉ちゃんと言われた少女が顔を覗いてくる。僕が答えると周りを見て顔を青ざめさせる。

「アイ! 逃げるよ!」

「お姉ちゃん!? 無理だよ! こんなに囲まれてるんだよ!」

 姉妹はそう言って僕の手を握って逃げようとしてくれる。
 ジャイアントゴブリンが周りにまだたくさんいる。人が通れる道はほぼない。僕が作った道に少しあるくらいだ。

「大丈夫。僕が……守るから」

「「お兄さん……」」

 僕はダガーを構えてトネリコの杖も構える。魔法を唱えようと前を見ると異変に気が付く。

「敵意が消えてる?」

 ジャイアントゴブリンは何にも興味を示さずに空を見上げてる。僕らへの興味もまったくなくなってる。何が起こってるんだ?

『魔根の球である私があんたになったんだから魔物も優しくなるに決まってるでしょ。ボケ~っと空なんて見つめちゃって平和ボケしてるわ。あんたと一緒で』

 脳に直接話しかけてくる魔根の球。そうか、僕の魔物になったってわけか。
 でも、困るな……。

「こんなに大量な、大きな魔物は養えないよ……」

 周りを見渡す。ジャイアントゴブリンの群れで周りが一切見えない。元々いたゴブリン達と山で仲間になったゴブリンだけでも大変なのに。
 こんな2000はいる巨人たちを養うのは無理だよ。

『ぶふっ!? 養うってあんた馬鹿ね。消しちゃえばいいのよ。魔石に戻すの』

「ま、魔石に戻す? どうやって?」

『念じて見なさいよ。心で【戻れ】って思うの。そうすれば魔石に変わるわ』

「わ、わかった」

 魔根の球の声に答えて目を閉じる。心で念じる。そうすると周りのジャイアントゴブリンが霧になって消える。魔石が沢山その場に落ちる。
 独り言を言ってる僕を心配して姉妹は手を握ってくれている。

「「だ、大丈夫ですか?」」

「うん。これで安心だ。よかった。助けられたね」

 二人にニッコリと答える。すると姉妹は涙して微笑む。

『赤い夜に勝利しました。報酬が得られます』

「あ、はは」

 大変な思いをして姉妹を助けると嬉しい声が聞こえてくる。僕はすぐにジャネット達を呼び出す。
 
「アユム様!」

「おっと!? あはは、お帰りジャネット」

 真っ先に抱き着いてくるジャネット。ルドラも顔を嘗め回してきて、嬉しそうに尻尾を振る。

「大丈夫ですか! 怪我は?」

「大丈夫、大丈夫だよ。とりあえず勝ったよ」

「戦ったんですか!? ゼターはどこ!」

「あ、そういえば……」

 ジャネットが僕の体をまさぐって心配してくれる。彼女の言葉でゼターを思い出して空を見上げる。
 彼は悠々と空を散歩している。

「ワンワン!」

 そんな彼を見上げてルドラが声を上げる。ドレイクがゆっくりと降りてくる。

「まさか、魔根の球を受け入れるとは。やはり君は……」

 一部始終を見ていたゼターは冷や汗をかきながらドレイクから降りてくる。信じられないものを見た、そう言った様子だ。

「ルナも驚いたが、魔物を魔石に戻す。そんなことが可能なのか。魔根は世界樹の成れの果てという逸話が本当だった? そういうことなのか?」

 信じられないと、手を震わせながら白い紙にメモを書いていくゼター。僕は警戒してダガーを構えた。

「グルルルル」

「ワンワン!」

 ダガーを構えるとエドラがどこからともなく現れる。
 ゼターを守ろうと唸り声をあげると、ルドラが前に出て構える。そんな様子を他所に、彼は紙へとメモをしたためていく。

「世界樹はすべての生き物を作ったと言われている。世界樹から始まり、世界樹で終わる。土に埋められた生き物は世界樹へと戻ってマナとなり、地上に出る。そのマナは生き物の中にもどり新たな命へと芽吹く。凄い! 凄いぞ。君がいれば本当の平和が作れる!」

 ゼターは笑いながら語って近づいてくる。
 ジャネット達が僕の前に立って拒むと、彼は怪訝な表情に変わる。

「魔根の球を受け入れればなれるのか」

「やめた方がいい。魔根の球が言ったんだ。優しくないとダメだって」

「優しくないとダメ? 私は優しいぞ」

「……」

 ゼターが怪訝な表情のままメモを書き始める。
 彼の呟きに答えると、さも当たり前のように答えてきた。僕は思わず無言になってしまう。

「ムラタ! 早く止めろ!」

「え?」

 ルーザーさんが叫ぶ。僕は驚きながらもゼターへと視線を向ける。

「何をそんなに騒いでいる。私は何もしないぞ。しかし、凄いな。まさか、人が魔根の球を受け入れられるとは。だが、これで世界は平和となる。はは、ははははは」

「「あ、ああ」」

 ゼターは何も気づかずに笑いながら未来への希望を語る。
 自分の体が大きくなっていることに気が付かない。姉妹は恐ろしくなってしりもちをつく。

「こ、これは私の研究成果!? 人をやめる研究!?」

「ワンワン!」

 リッテンが呟く。彼のグレーターグールの腕と同じ色に変わっていくゼター。
 ルドラの叫びも聞こえない。エドラとドレイクも声を上げる。それでもゼターは大きくなっていくだけ。
 もう、声は届かない。彼は10メートル級の巨人へと変わってしまった。
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