転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
6 / 23

第6話 カイツ親子

しおりを挟む
 カイツさんにご飯を食べさせてもらうとすぐに掃除を再開して、すぐに終わらせた。依頼は終わったけど、夜も深くなってきたので外に出るのをカイツさんに止められた。

「女子供だけじゃ危ないだろ」

 そういって止められたんだけど、なんだか頬が赤い。ムフフ、お母さんにほの字なのかしら。

「その言い方は嫌いだけど、恩人の言うことは聞いておくわ」

 お母さんは大人しく言うことを聞くみたい。僕はにゅふふと顔を緩めて二人を見つめる。おかしな顔をしているとお母さんが頬をプニプニしてきて『何を期待しているの』と言って来たけどお母さんが思っていることだよと『ダアダア』と言って笑った。
 お母さんは呆れるような顔を僕にすると抱き上げて用意してもらった部屋に入って就寝。
 ふふ、なんだか青春アニメを見ているようだ。

「「おはよう」」

「おはよう二人とも」

 朝起きてくると二人がご飯を用意してくれた。僕はお母さんの母乳をいただいたので満腹。

「朝ももらっていいの?」

「ああ、ラックが用意したいって言うもんだからな」

「うん。みんなで食べたいんだ。いいでしょ?」

 まあもやラック君は上目遣いでお願いしてきた。お母さんは『ありがとう』と言ってラック君の頭を撫でた。ラック君はそのあと僕の頭を撫でてる。いい子だ。

 雑談をしながら食事を済ませる。その時に奴隷商が奴隷に逃げられたという話があった。とりあえず、みんなは無事に逃げられたみたいだ。よかったよかった。

「食事ありがとう。本当に宿代はいいの?」

「ああ、金は出来た時でいい」

 冒険者ギルドに行こうと席を立って話すとカイツさんがお金は後でいいって言ってくれた。

「余裕がないから甘えちゃうけど、必ず払うからね」

「ああ、待ってるよ」

「いってらっしゃ~い」

 僕を抱き上げて冒険者ギルドに向かう。本当にカイツさんは良い人だな。まあ、お母さんにほの字だからっていうのもあるだろうけどね。
 お母さんの男勝りな性格がいいのかもしれない。かわいい顔で男勝りはギャップ萌えってやつなのかな。

 僕を抱きながら冒険者ギルドへ向かう。
 道路には左右に露店が建っている。値札を見る限りは言語は大丈夫。そういえば、お母さん達の会話も日本語になっているけど、元々なのかな。転生者に優しい世界。まあ、奴隷スタートだけどね。それも赤ん坊……お母さんがいなかったら死んでるね。
 
 そうこうしているうちに冒険者ギルドに到着。中に入るとアネットさんがお母さんに気づいて手を振ってきた。

「おはようございますお姉さま。カイツさんはどうでしたか」

「おはよう……どうって普通よ」

「むふふ、そうですか?」

「そうよ」

 アネットさんはカイツさんと会わせるために依頼をチョイスしたのかな? いたずらが成功した子供のような笑みを浮かべている。お母さんは頬を赤く染めてそっぽ向いているよ。お母さんもまんざらでもないみたいだね。
 カイツさんもラック君もいい人だから、僕的には大歓迎だな~。奴隷から解放されたんだから、お母さんには幸せになってほしい。お母さんの過去を僕は知らないからな~。早く話せるようになって聞いてみたいな。

「ラック君は元気でした?」

「元気よ。ってあなたが自分で見に行けばいいじゃないの」

「私は仕事場が家なので。旅の冒険者さんに案内するのが私に与えられた使命です」

 ドヤと胸を張るアネットさん。控えめなお胸を張っているけど、なんでドヤっているのかな。

「なんでそんなにあの親子に?」

「お母さんを早くに無くして頑張っているんですよ。二人で宿屋と鍛冶屋ですよ。守ってあげたいじゃないですか!」

 アネットさんが凄い圧でお母さんに迫った。お胸が僕に当たっているんだけど……うむ、いいものだ。
 お母さんは迫られて『そ、そう』って答えてる。アネットさんは満足そうです。

 掃除の依頼を完了報告をする、カードをアネットさんい手渡すと彼女の持っていたカードに合わせてる。少しすると、

「はい、確かに完了していますね。ではこちらが報酬の銅貨十枚です」

「ありがとう」

 この世界の通貨は銅貨、銀貨、金貨、白銀貨。百枚で次の位の通貨に換えられる。外の値札を見る限りだとリンゴが銅貨一枚だったから千円くらいになるのかな? 日本だともっと高いリンゴもあるけど、百円くらいのはずだから、そんな感じだよね。
 そう考えると掃除はお金にならないな~。まあ、宿代と朝食を無料にしてもらってるからかなり得しているけどね。

「宿代は銅貨20よね。それに朝食が10枚……。何かいい依頼はないかしら?」

 お母さんは悩まし気にアネットさんに相談してる。カイツさんに借りを返さないといけないからね。でも、もっとゆっくりでもいいんじゃないのかな?

「宿代と朝食がタダだったんですね。カイツさんも脈ありかな。これなら……むふふ」

 お母さんの悩みにアネットさんが色々と察して笑みを浮かべてる。思っている通りだから、女性のそういう勘は凄いっていうのがわかる。僕も気をつけよう。

「アネット、依頼は?」

「ああ、ごめんなさいお姉さま。そうですね~」

 ムフフと惚けているアネットさんにお母さんが呆れて声をかけるとすぐに依頼書を確認しに行った。受付に座るように言って来たのでお母さんは僕を受付に座らせて椅子に座った。

「これなんてどうでしょう? 薬草と魔法の草の採取です。同じ森の依頼なので一緒に出来るし、合わせて銀貨一枚の依頼なので一気に払えて、そのままお泊りできますよ」

 アネットさんはそういってニヤついている。お母さんはその顔を見て呆れていたけど、確かに全額返済できるので受けることにした見たい。カードをアネットさんに手渡してるよ。

「それではいってらっしゃいお姉さま」

 満面の笑みのアネットさんに見送られながら冒険者ギルドを後にした。

「まったく、カイツと私に結ばれてほしいなんて、そんなことあるわけないのにねマイト」

「ダブ?」

 冒険者ギルドを出て街を歩いているとお母さんが僕に話しかけてきた。僕は首を傾げる。そういえば、お母さんはなんで拒んでいるのかな?

「……だって、私は汚れているのよ。それに子持ちだし」

「ダブダブ」

「えっ? 違うって言っているの?」

「あい!」

 お母さんに言葉に身振り手振りで答える。ちゃんと伝わって喜ぶとお母さんが悩みだした。

「あんないい人に私が言い寄るなんて……出来るわけないでしょ」

「バ~ブ!」

「痛っ。マイト……」

 悲観的になっていたお母さんの頬を弱く平手打ち。お母さんはアネットさんや冒険者の女性達があこがれたように強いカリスマを持っているんだ。もっと自信を持ってほしい。

「バブバブ!」

「……悲観的になるなっていうの? でも、私たちは元……。そうね。そうよね。あれは過去の事、新しく生まれ変わったと思って自分の思うままに暮らせばいいのよね」

 力強く励ますとお母さんは少しずつ上向いてくれた。何とか僕がお母さんを幸せに導くぞ~。

「さて、森はどっちからいけばいいのかしら?」

「やめて! 赤ん坊がいないならあなた達に用はない」

「おいおい、つれないな嬢ちゃん」

 お母さんが依頼の場所をカードで見ているとそんな声が路地から聞こえてきた。この声はどこかで聞いたことがあるような?
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛

タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。 しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。 前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。 魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

処理中です...