【マジックバッグ】は重さがない? そんなの迷信だよ

カムイイムカ(神威異夢華)

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第7話

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「アズ君がいなくなるのは心細いな」

「ははは、そんなに頼られても何もなりませんよ」

 船が目的の港について船長のラフさんに見送られる。シーウォーカーとクラーケンを倒してからも何度か魔物に襲われた。
 海の上を飛んで襲ってくるフライフィッシュとかフーセンオクトパスとかね。
 それほど強力な魔物じゃないけど、美味しいからみんなで狩りをしたんだよな。
 マジ・苦バッグがかなり重くなってしまったから経験値がいっぱい入ってきて281レベルになってしまった。経験値が何倍になっているのか気になるところだけど、とりあえず一レベルでどれだけ数値が上がるのかがわかってよかった。

 レベル 281

 HP 78000
 MP 78000
 
 STR 8900
 DEF 8900
 DEX 8900
 AGI 11000
 INT 8900
 MND 8800

 う~ん、百のけたが動いてるのは異常としか言いようがないな。
 マジ・苦バッグの封印は僕のステータスも変えていた。一桁削れて百単位だったからおかしいと思っていなかったけど、魔物を一発で倒してたのを考えるとだいぶ前から強くなってたんだな。
 黒い刃のみんなと一緒に魔物を狩ってたからレベルアップも早かったんだな。
 そう思うと脱退したのは間違いだったのかな……いやいや、あんな嫌みを言われたりのろまなんて言われて我慢する必要ないよね。
 エデンさんとガオさんに挨拶できなかったのは残念だったけど……あの時は二人で瞑想していたから中断させるのも悪かったし、仕方なかったんだよな~。

「師匠! 美味しそうな屋台が出てます! 食べましょう」

「ポピン。毎回こんなだったのかい? 通りで借金が増えるわけだよ」

「美味しいものを見極めるには食べることが大事です」

 ポピンが屋台を指さして指を咥えて言ってくるとクレハさんが呆れて彼女の頭に手をのせる。
 二人は姉妹でもないのにすっごい仲良しだな。

「小腹も空いたし食べようか」

「やった~」

「あんまり甘やかさないほうがいいと思うけどね~」

 お母さんみたいなクレハさんには同感だけど、食べれるときに食べておけって師匠にも言われたからね。
 美味しいものをゆっくり食べていられる。冒険者みたいな命をいつ無くすかわからない僕らは、美味しいものを食べておかないと未練が残ってゴーストみたいな魔物になっちゃう、と師匠に言われたんだよね。
 その考えには僕も同感ということで休憩中にはデザートをよく食べたっけな~。いい思い出だ。

「美味しかったね~」

「うん。ああいうお店もいいね」

 みんなで仲良く手をつないで歩きながら会話を交わす。着いた時にお昼だったからそろそろ日が落ちてくる。

「屋台のおじさんも失礼だよね。ポピン達のこと家族何ていうんだもん」

「いや、いい親父だったじゃないか。私とアズが親ってことだろ」

「ええ!? そういうことだったの? 僕はてっきり兄弟とかそういうことだと思ったんだけど」

 う~む、僕の身長が低いからポピンと釣り合いがあったのかもしれないな。それで両親だと思われた可能性が高い。クレハさんみたいな美人と僕じゃ釣り合いが取れないしね。

「宿屋は、ここがいいかな?」

 今日の宿屋も決まった。
 すぐに眠ることにして次の日。
 ギルドによって海で得た獲物を全部卸す。ここでも受付の男の人に驚かれたけど、そんなの気にせずにお金に変える。
 大白金貨とまではいかないけど、金貨30枚になった。通貨は百枚で次の単位の通貨に変わる。
 銅貨から始まって大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、そして大白金貨と変わる。
 大白金貨はあの時初めて見たのは内緒だ。当たり前のように振舞えば怪しまれないって師匠に言われたからね。ポーカーフェイスは得意なのだ。

「あんたらも乗るかい?」

「はい」

 乗合馬車があるのでそれに乗って帰路につく。僕一人なら走って帰るんだけど、二人もいるからね。
 一人を抱いて走れば早いけど、もう一人は流石に……マジ・苦バッグに入れられれば簡単なんだけど、生き物は入れられないから致し方ない。

 乗合馬車には僕ら以外にも4組入ってた。二人の子連れの夫婦と冒険者三組。冒険者はみんな二人のチームみたいでそれぞれひそひそと話してる。

「では出発いたしますよ」

 御者のおじさんがそういうと馬車はのらりくらりと走り出す。
 懐かしいな、黒い刃のみんなと旅した時もこういったものに乗ったんだよな~。
 あの時は大変だったよ。一緒に乗った冒険者と御者が盗賊で血を見ることになったりしたっけ、本当に懐かしい……。少し寂しくなっちゃったな。

「師匠、どうしました?」

「アズ? 寒いの?」

 元気なく俯いてると二人が心配してくれた。なんだかそれも懐かしい。
 グナンとロエタに嫌みを言われて、今みたいに元気なく俯いてるとエデンさんが励ましてくれたんだ。
 『君がいるから私は生きてる。それを忘れないで』って言われて何のことかなって思っていたんだけど、すっごい元気になったんだよな~。
 僕はチームに居ていいんだって思えたんだ。まあ、結局出てきちゃったけどね。

「皆さま着きましたよ」

 御者のおじさんの声に僕らは驚いた。
 まだ一山越えた先のもう一つの山の山道。洞窟の前で馬車が止まってる。

「親父、もうろくしたか?」

「こんなところ目的地じゃねえぞ」

「フォッフォッフォ、目的地じゃよ。それも最終地点じゃて」

 御者のおじいさんは冒険者達に詰め寄られても怖気ずに飄々と語る。
 たまらず冒険者が剣を構えた。

「みんな! 気をつけて、死者の匂いがするよ」

 魔法使いのローブを着たお姉さんが声をあげる。
 すると御者のおじいさんが地面に溶け込んで行って、それと同時に次々とゾンビが湧き出てきた。
 海もそうだったけど、ここら辺も物騒だな。はぁ~いつ僕は帰れるのかな?
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