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第2話
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「泊まりたいんですけど部屋空いてますか?」
簡素な宿屋、【赤の宿屋】について扉を半開きして受付の男性に声をかける。男の人は微笑んで頷いてくれた。
中に入って受付で記帳すると鍵を渡してくれて部屋へと案内される。
「妻子と共に宿屋を経営しているんだ。夜は私が対応しているから何かあったら声をかけてくれるかい?」
「わかりました」
おっとりとした宿屋の主人、オットーさん。とても優しそうだ。
子供と妻に朝から夕方はお店をまかしているみたい。オットーさんが夕方から合流して夜もやってるのか~、大変だな~。
部屋に入ると一人用のベッドと一組のテーブルセットがある。簡素だけど十分だ。
オットーさんはすぐに仕事に戻っていく。
「ふぁ~。もう眠いや。寝ちゃお」
部屋に入ってすぐに僕は魔法で体を綺麗にして眠りにつく。
水の精霊だった僕は水で体を洗うすべを持ってる。服が濡れても乾かすことも簡単にできるんだよな~。
だって水を操ることが出来るんだから抜いちゃえばいいんだからね。
「おはようございますアクアス様。お食事の準備ができていますのでお越しください」
「ありがとう。すぐにいくね」
朝起きて着替えていると部屋の扉がノックされて声がかけられた。小さな子の声だけどしっかりした言葉遣いだ。オットーさんのお子さんかな彼に似たんだろうな~。
「あなたがアクアスさんね。どうぞこちらに」
受付の横の食堂につくとお姉さんが迎えてくれた。さっきの子は机に料理を運んでる。幼い子だけど7歳くらいだろうか?
他の机にも料理が並んでいるのを見ると結構は人が宿屋に泊まってるのがわかる。すでに食べている人もいるから見なくてもわかるけどね。
「夜に街道を歩くなんて凄いわね。冒険者でしょ? ランクはいくつなの?」
お姉さんはそういって水をコップに注いでくれた。オットーさんの娘さんかな? ルミナさんには劣るけどとても綺麗な人だ。
「まだ登録してないんです」
女性と会話することになれてないもんだから俯きながら話してしまう。精霊だったころはあんまり意識したことはなかった、まあ、精霊って両性だから形状が女性っぽいとか男性っぽいとかなんだよね。それもあって意識はしなかったんだよな。
人間になったら意識するようになっちゃったみたいだな~。男の本能って感じなのかな?
僕の場合は話す相手もルミナさん以外いなかったって言うのもあるかもしれないけどね。
「あら? そうなの。ならよっぽど腕に自信があるのね」
「そ、そんなことはないですよ。ちょっと魔法が得意なだけです」
「魔法? じゃあ、魔法使いなのね。凄いわ! まだまだ若いのに」
お姉さんは自分のことのように喜んでくれた。なんだかこっちも嬉しくなっちゃうな。
「お母様、フリンも褒めてほしいです」
「あらあら、可愛いフリンちゃん。そんなに拗ねないで。あなたもとっても凄いわよ」
食事を机に並べていたオットーさんのお子さんフリンちゃん。僕を褒めるものだから拗ねちゃったみたいだ。
お母さんに頭を撫でられると嬉しそうに仕事に戻っていった。
「私はオットーの妻スリンよ。あのこはフリン。何かあったら言ってね」
「はい」
優しく微笑むスリンさん。
他の食事している人の目を引いているのを見るとみんなから見ても美人なのが伺えるね。
机に並べられた料理はいものスープと白いパン、それに薄切りされた豚肉。塩で味付けされた豚肉はそれだけで美味しいな。ルミナさんと暮らしていた時はオークとか魔物の肉が主食だったからこういう普通の食材もいいな。
食事を終えて早速冒険者ギルドに向かうことにした。
スリンさん達に出かけることを伝えて鍵を渡す。とりあえず、三日分の宿代を渡しておいた。オットーさんには夜だから明日でいいと言われていたんだよね。
商売なんだからそこは取らないとダメだと思うんだけどね。優しいオットーさんだから仕方ないのかもね。
三日分で大銅貨三枚だから一日一枚ってことか。宿としては安い方だ。ルミナさんには宿代としていくらか渡されていたけど、多すぎるくらいだったな~。
冒険者ギルドは僕が入ってきた入口のすぐ傍だった。あの時にすぐに入ってれば間に合ったかも。
両開きの扉を押して入ると受付が三つ並んでいてそれぞれ男性と女性が僕を見据えてた。
誰も並んでないのを見て僕は正面の女性の受付に座ると周りがガヤガヤと騒ぎ出した。
「え? なにかいけなかったですか?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それよりも今日は何の御用で? 依頼ですか?」
褐色の女性は驚いた顔を笑顔に戻して対応してくれた。よく見ると耳が長い。褐色の肌にエルフってことはダークエルフさんかな?
エルフは綺麗って聞いたことがあったけど、本当に綺麗だな。生きた宝石って言われているだけはある。
依頼を出すほうだと思われてしまったみたいだね。まあ僕って身長も低いから子供扱いされるよね。
「冒険者登録をしようと思って」
「冒険者登録ですか……失礼ですが成人していますか?」
「は、はい……」
「そうですか……では」
ダークエルフさんはそういって一枚の紙を受付に置いた。
「これを書いてください」
「名前と何が出来るかだけでいいんですか?」
「はい」
紙には名前の欄と自分の得意なことという欄があった。なんだか簡単すぎて変な感じだ。
名前と水魔法が得意だと書くとダークエルフさんは驚いてそれを見た。
「魔法が使えるんですね」
「あれ? 気づきませんでしたか?」
エルフって確かマナが見えるはず。僕の周りには濃厚なマナがいつでも使えるように集められてるんだけど、それが見えないってことはエルフじゃないのかな?
「私はその……ハーフエルフなのでマナが見えないんです」
ん? ハーフエルフでもエルフなんだから見えるはずだけどな~。それとも前世の世界とここはやっぱり違うのかな?
「おいおい。エルザが冒険者になってもいないやつにいじめられてるぜ。可哀そうだな~」
首を傾げて困っているダークエルフさんを見ていると僕の肩を掴んでニヤニヤしてる男が現れた。
なんだ? なれなれしいな~。
簡素な宿屋、【赤の宿屋】について扉を半開きして受付の男性に声をかける。男の人は微笑んで頷いてくれた。
中に入って受付で記帳すると鍵を渡してくれて部屋へと案内される。
「妻子と共に宿屋を経営しているんだ。夜は私が対応しているから何かあったら声をかけてくれるかい?」
「わかりました」
おっとりとした宿屋の主人、オットーさん。とても優しそうだ。
子供と妻に朝から夕方はお店をまかしているみたい。オットーさんが夕方から合流して夜もやってるのか~、大変だな~。
部屋に入ると一人用のベッドと一組のテーブルセットがある。簡素だけど十分だ。
オットーさんはすぐに仕事に戻っていく。
「ふぁ~。もう眠いや。寝ちゃお」
部屋に入ってすぐに僕は魔法で体を綺麗にして眠りにつく。
水の精霊だった僕は水で体を洗うすべを持ってる。服が濡れても乾かすことも簡単にできるんだよな~。
だって水を操ることが出来るんだから抜いちゃえばいいんだからね。
「おはようございますアクアス様。お食事の準備ができていますのでお越しください」
「ありがとう。すぐにいくね」
朝起きて着替えていると部屋の扉がノックされて声がかけられた。小さな子の声だけどしっかりした言葉遣いだ。オットーさんのお子さんかな彼に似たんだろうな~。
「あなたがアクアスさんね。どうぞこちらに」
受付の横の食堂につくとお姉さんが迎えてくれた。さっきの子は机に料理を運んでる。幼い子だけど7歳くらいだろうか?
他の机にも料理が並んでいるのを見ると結構は人が宿屋に泊まってるのがわかる。すでに食べている人もいるから見なくてもわかるけどね。
「夜に街道を歩くなんて凄いわね。冒険者でしょ? ランクはいくつなの?」
お姉さんはそういって水をコップに注いでくれた。オットーさんの娘さんかな? ルミナさんには劣るけどとても綺麗な人だ。
「まだ登録してないんです」
女性と会話することになれてないもんだから俯きながら話してしまう。精霊だったころはあんまり意識したことはなかった、まあ、精霊って両性だから形状が女性っぽいとか男性っぽいとかなんだよね。それもあって意識はしなかったんだよな。
人間になったら意識するようになっちゃったみたいだな~。男の本能って感じなのかな?
僕の場合は話す相手もルミナさん以外いなかったって言うのもあるかもしれないけどね。
「あら? そうなの。ならよっぽど腕に自信があるのね」
「そ、そんなことはないですよ。ちょっと魔法が得意なだけです」
「魔法? じゃあ、魔法使いなのね。凄いわ! まだまだ若いのに」
お姉さんは自分のことのように喜んでくれた。なんだかこっちも嬉しくなっちゃうな。
「お母様、フリンも褒めてほしいです」
「あらあら、可愛いフリンちゃん。そんなに拗ねないで。あなたもとっても凄いわよ」
食事を机に並べていたオットーさんのお子さんフリンちゃん。僕を褒めるものだから拗ねちゃったみたいだ。
お母さんに頭を撫でられると嬉しそうに仕事に戻っていった。
「私はオットーの妻スリンよ。あのこはフリン。何かあったら言ってね」
「はい」
優しく微笑むスリンさん。
他の食事している人の目を引いているのを見るとみんなから見ても美人なのが伺えるね。
机に並べられた料理はいものスープと白いパン、それに薄切りされた豚肉。塩で味付けされた豚肉はそれだけで美味しいな。ルミナさんと暮らしていた時はオークとか魔物の肉が主食だったからこういう普通の食材もいいな。
食事を終えて早速冒険者ギルドに向かうことにした。
スリンさん達に出かけることを伝えて鍵を渡す。とりあえず、三日分の宿代を渡しておいた。オットーさんには夜だから明日でいいと言われていたんだよね。
商売なんだからそこは取らないとダメだと思うんだけどね。優しいオットーさんだから仕方ないのかもね。
三日分で大銅貨三枚だから一日一枚ってことか。宿としては安い方だ。ルミナさんには宿代としていくらか渡されていたけど、多すぎるくらいだったな~。
冒険者ギルドは僕が入ってきた入口のすぐ傍だった。あの時にすぐに入ってれば間に合ったかも。
両開きの扉を押して入ると受付が三つ並んでいてそれぞれ男性と女性が僕を見据えてた。
誰も並んでないのを見て僕は正面の女性の受付に座ると周りがガヤガヤと騒ぎ出した。
「え? なにかいけなかったですか?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それよりも今日は何の御用で? 依頼ですか?」
褐色の女性は驚いた顔を笑顔に戻して対応してくれた。よく見ると耳が長い。褐色の肌にエルフってことはダークエルフさんかな?
エルフは綺麗って聞いたことがあったけど、本当に綺麗だな。生きた宝石って言われているだけはある。
依頼を出すほうだと思われてしまったみたいだね。まあ僕って身長も低いから子供扱いされるよね。
「冒険者登録をしようと思って」
「冒険者登録ですか……失礼ですが成人していますか?」
「は、はい……」
「そうですか……では」
ダークエルフさんはそういって一枚の紙を受付に置いた。
「これを書いてください」
「名前と何が出来るかだけでいいんですか?」
「はい」
紙には名前の欄と自分の得意なことという欄があった。なんだか簡単すぎて変な感じだ。
名前と水魔法が得意だと書くとダークエルフさんは驚いてそれを見た。
「魔法が使えるんですね」
「あれ? 気づきませんでしたか?」
エルフって確かマナが見えるはず。僕の周りには濃厚なマナがいつでも使えるように集められてるんだけど、それが見えないってことはエルフじゃないのかな?
「私はその……ハーフエルフなのでマナが見えないんです」
ん? ハーフエルフでもエルフなんだから見えるはずだけどな~。それとも前世の世界とここはやっぱり違うのかな?
「おいおい。エルザが冒険者になってもいないやつにいじめられてるぜ。可哀そうだな~」
首を傾げて困っているダークエルフさんを見ていると僕の肩を掴んでニヤニヤしてる男が現れた。
なんだ? なれなれしいな~。
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