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第7話 ダッツのタグ
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今日はとても静かな日。
龍は眠りに付き、風は天高く舞い上がる。陰鬱な雪山の村を見つめる二人は寂しそうにため息をつく。
「ビート……。君はよくやったよ」
ラトスは慰めの言葉をかける。ビートはそれを聞いても布団から出ることはない。
毎日の日課をサボったビート。彼はダッツを助けられなかった自分を攻めた。
彼は人を助けるのは簡単だと思っていた。家に連れてきて、ラトスに見せれば助けられると思っていたんだ。
お母さんを助けてくれたように簡単に治してくれる。勝手にそう思っていた。
ビートは涙で枕を濡らす。その悲しみはドラゴンの卵に伝染して冷たく一回り小さくなっていく。悲しみがドラゴンの卵を小さくしてしまった。
「ビート。町に行こう。ダッツの家族に知らせてあげないと」
ラトスはそう言ってビートの手を握る。冷たいラトスの手、ビートは涙を拭って顔を見ずに頷いて見せる。
彼の肯定にラトスは笑顔で支度を始める。
シーナはその様子を見て不安そうにしてる。
「シーナ? 君も行くだろ? 支度をしなくて大丈夫かい?」
ラトスは心配して彼女に声を上げる。その言葉を聞いてシーナはキョトンとしている。
彼女は今まで町へは連れていけないと、置いてかれてきた人生だった。
それは足手まといになるからと、夫に言われていたからだ。それなのに、ラトスは連れていく前提で話してる。そのことに驚きつつ、気持ちが高揚していく。
「町なんて初めて。何をもっていけば?」
満面の笑みで問いかけるシーナにラトスは笑顔で答える。
売る物、食べ物、身を守る物。その三つをまとめて彼女に手渡す。
村の特産品の羊の毛皮。それで作った服。シーナはそれを売ってもらって生計を立てていた。
彼女は自分で作った洋服をまとめていく。
「僕は? 僕は何をもっていけばいい?」
嬉しそうに支度をするシーナを見つめて、ビートも声を上げた。
ラトスは一瞬考えて大きなリュックを彼に手渡す。
そして、ドラゴンの卵を指さす。
ビートはドラゴンの卵を売ると思って首を横に振る。ラトスはクスクスと笑って『違う』と言った。
「ドラゴンの卵は危険だよ。見えるような形で持っていたら命を狙われる。リュックに入れて隠すんだ。ビートは町を見に行くことを考えて」
優しく諭すように話すラトス。
ビートは首を傾げつつもドラゴンの卵をリュックに入れていく。少し小さくなった卵、リュックが少し大きく感じる。
三人で支度を終えるとすぐに村を出ることにした。ノットンとナユに少し留守にすると伝えると、快く了承してくれた。
雪山を下る。誰の足跡もない雪原。まるで彼らしかいない大地を歩いているような気分になる。ビートとシーナは心躍らせる。
初めての町、初めての村以外の大地。雪のない大地はどんな色なんだろう。まだ見ぬ風景に心弾ませる。
「わぁ~……。白い雲の下はこんなに綺麗なんだ」
ドラゴンの卵が背中を温めてくれている中、山の白い帽子を抜ける。
白い雲の下は尾根からも見えてはいた。だが、ビートは目の前の緑の大地に感嘆の声を上げる。
こんなに近くで緑を眺めることが出来る。その幸せに自然と言葉が出てくる。
それはシーナも同じ。吐く息が白くない、耳を隠す帽子もいらない大地。香りのある世界が目の前に広がる。『土の香り?』、風の運ぶ香りに驚きの声を上げるシーナ。彼女はそれだけ長い間、雪山から下りていなかった。
そんな彼女達を見てラトスは悲しみを向ける。自由がなかった二人を不憫に思ってしまった。そんな自分にも嫌気がさして首を振った。
「さあ、行こう。町についたら何か美味しいもの食べよう」
ラトスは気を取り直して二人の手を取る。ビートはワクワクが止まらない。初めての土地、初めての外。すべてが初めての刺激で溢れてる。
白くないうさぎ、白くない花や木。赤、青、黄色の花々。そのすべてがビートの心を打つ。
ダッツの死が彼のやる気の炎を消した。そのやる気の炎を色とりどりの世界が灯していく。
まだ見ぬ世界は綺麗、彼は心躍らせて地平線まで視線を向ける。
「この街道の先に【ツィーダ】の町がある。ノットンさんと出会えた町。二人にワインを買っていこうか」
街道の先を指さしてラトスが語る。とても嬉しそうに語る彼の言葉に二人も嬉しくなって抱き着く。
とても温かくなっていく三人は日の落ちていく街道を歩く。ツィーダの町は一日歩いた場所にある。
夜の街道に三人を囲う松明が灯り、寝息が聞こえてくる。ラトスが松明を持ち見張りをしていた。
振り回す松明に狼が集まってくる。飢えている狼にラトスは松明を振り回した。狼達を傷つけることにためらいを見せる彼は必死だった。
「ラトス。大丈夫?」
二人を守る彼に声をかけるビート。ビートはドラゴンの卵のはいったリュックを背負ったまま眠っていたが起きてしまったようだ。
目をこすりながら声をかけるビートを見る狼たち。美味そうな獲物が来た。そう思っていたようだが、すぐに踵を返すことになる。
ドラゴンの卵が揺れてリュックが脈打つ。その気配に狼たちは許しを請うような声を上げて暗闇に消えていった。
それを見たラトスはホッと胸を撫でおろして眠そうなビートを抱きかかえる。
大変な夜は終わった。さあ、僕も眠ろう。ラトスは残り少ない夜の時間、寝息を立てた。
龍は眠りに付き、風は天高く舞い上がる。陰鬱な雪山の村を見つめる二人は寂しそうにため息をつく。
「ビート……。君はよくやったよ」
ラトスは慰めの言葉をかける。ビートはそれを聞いても布団から出ることはない。
毎日の日課をサボったビート。彼はダッツを助けられなかった自分を攻めた。
彼は人を助けるのは簡単だと思っていた。家に連れてきて、ラトスに見せれば助けられると思っていたんだ。
お母さんを助けてくれたように簡単に治してくれる。勝手にそう思っていた。
ビートは涙で枕を濡らす。その悲しみはドラゴンの卵に伝染して冷たく一回り小さくなっていく。悲しみがドラゴンの卵を小さくしてしまった。
「ビート。町に行こう。ダッツの家族に知らせてあげないと」
ラトスはそう言ってビートの手を握る。冷たいラトスの手、ビートは涙を拭って顔を見ずに頷いて見せる。
彼の肯定にラトスは笑顔で支度を始める。
シーナはその様子を見て不安そうにしてる。
「シーナ? 君も行くだろ? 支度をしなくて大丈夫かい?」
ラトスは心配して彼女に声を上げる。その言葉を聞いてシーナはキョトンとしている。
彼女は今まで町へは連れていけないと、置いてかれてきた人生だった。
それは足手まといになるからと、夫に言われていたからだ。それなのに、ラトスは連れていく前提で話してる。そのことに驚きつつ、気持ちが高揚していく。
「町なんて初めて。何をもっていけば?」
満面の笑みで問いかけるシーナにラトスは笑顔で答える。
売る物、食べ物、身を守る物。その三つをまとめて彼女に手渡す。
村の特産品の羊の毛皮。それで作った服。シーナはそれを売ってもらって生計を立てていた。
彼女は自分で作った洋服をまとめていく。
「僕は? 僕は何をもっていけばいい?」
嬉しそうに支度をするシーナを見つめて、ビートも声を上げた。
ラトスは一瞬考えて大きなリュックを彼に手渡す。
そして、ドラゴンの卵を指さす。
ビートはドラゴンの卵を売ると思って首を横に振る。ラトスはクスクスと笑って『違う』と言った。
「ドラゴンの卵は危険だよ。見えるような形で持っていたら命を狙われる。リュックに入れて隠すんだ。ビートは町を見に行くことを考えて」
優しく諭すように話すラトス。
ビートは首を傾げつつもドラゴンの卵をリュックに入れていく。少し小さくなった卵、リュックが少し大きく感じる。
三人で支度を終えるとすぐに村を出ることにした。ノットンとナユに少し留守にすると伝えると、快く了承してくれた。
雪山を下る。誰の足跡もない雪原。まるで彼らしかいない大地を歩いているような気分になる。ビートとシーナは心躍らせる。
初めての町、初めての村以外の大地。雪のない大地はどんな色なんだろう。まだ見ぬ風景に心弾ませる。
「わぁ~……。白い雲の下はこんなに綺麗なんだ」
ドラゴンの卵が背中を温めてくれている中、山の白い帽子を抜ける。
白い雲の下は尾根からも見えてはいた。だが、ビートは目の前の緑の大地に感嘆の声を上げる。
こんなに近くで緑を眺めることが出来る。その幸せに自然と言葉が出てくる。
それはシーナも同じ。吐く息が白くない、耳を隠す帽子もいらない大地。香りのある世界が目の前に広がる。『土の香り?』、風の運ぶ香りに驚きの声を上げるシーナ。彼女はそれだけ長い間、雪山から下りていなかった。
そんな彼女達を見てラトスは悲しみを向ける。自由がなかった二人を不憫に思ってしまった。そんな自分にも嫌気がさして首を振った。
「さあ、行こう。町についたら何か美味しいもの食べよう」
ラトスは気を取り直して二人の手を取る。ビートはワクワクが止まらない。初めての土地、初めての外。すべてが初めての刺激で溢れてる。
白くないうさぎ、白くない花や木。赤、青、黄色の花々。そのすべてがビートの心を打つ。
ダッツの死が彼のやる気の炎を消した。そのやる気の炎を色とりどりの世界が灯していく。
まだ見ぬ世界は綺麗、彼は心躍らせて地平線まで視線を向ける。
「この街道の先に【ツィーダ】の町がある。ノットンさんと出会えた町。二人にワインを買っていこうか」
街道の先を指さしてラトスが語る。とても嬉しそうに語る彼の言葉に二人も嬉しくなって抱き着く。
とても温かくなっていく三人は日の落ちていく街道を歩く。ツィーダの町は一日歩いた場所にある。
夜の街道に三人を囲う松明が灯り、寝息が聞こえてくる。ラトスが松明を持ち見張りをしていた。
振り回す松明に狼が集まってくる。飢えている狼にラトスは松明を振り回した。狼達を傷つけることにためらいを見せる彼は必死だった。
「ラトス。大丈夫?」
二人を守る彼に声をかけるビート。ビートはドラゴンの卵のはいったリュックを背負ったまま眠っていたが起きてしまったようだ。
目をこすりながら声をかけるビートを見る狼たち。美味そうな獲物が来た。そう思っていたようだが、すぐに踵を返すことになる。
ドラゴンの卵が揺れてリュックが脈打つ。その気配に狼たちは許しを請うような声を上げて暗闇に消えていった。
それを見たラトスはホッと胸を撫でおろして眠そうなビートを抱きかかえる。
大変な夜は終わった。さあ、僕も眠ろう。ラトスは残り少ない夜の時間、寝息を立てた。
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