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第10話 カレン
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龍は我が子の帰りを心待ちにして温かい炎の息を吐いた。雪山は雪を降らすことはない。ただ凍り付く森が輝いておかえりと告げる。
ツィーダの町から二日。雪山に帰ってきたビート達。荷物が沢山。ノットンやナユだけじゃない。村のみんなへのお土産。荷物だけじゃない、情報のお土産もある。
シーナは料理の方法を見て覚えてきた。白いパンから肉の下ごしらえの方法。たれに漬け込むとシカ肉でも柔らかくなるなど、色んなことを学んできた。もう、料理じゃない料理を食べなくてもいい。シーナはフンスと鼻息荒く胸を張った。
「「美味しい!」」
日が真上に登ってきた。お昼に料理を作ると気合を入れるシーナ。ノットンとナユは彼女の料理を食べて声を上げる。
目を真ん丸にして料理を二度見する二人。少しするとかぶりつく。
『果物の汁に漬け込むと臭みが取れて柔らかくなるみたいなんです』と、得意げに話すシーナ。学んだことをしっかりと伝える彼女は次々と料理を作る。
大きな荷物のほとんどが食べ物だった。ビートもドラゴンの卵のおかげで力持ち、二人よりも多くの荷物を持つことが出来た。行商でもするのかのような荷物だったが、軽く持ち上げる。
そんな彼の姿を見たラトスは、深くうなずく。ビートは英雄の器だと。
「ビート。剣を学んでみるかい?」
シーナが村長の家で料理教室を開いているのを横目に。ラトスは腰に差していた剣をビートに手渡す。彼は剣を鞘から半身程抜く、キラリと光る刀身に彼は身震いした。
『怖がらなくていいんだよ。これは君の身を守るものだから』、そう言ってラトスはビートに渡した剣よりも短い剣を抜いて見せる。刀身は真上からの光を受け流して地面の雪に熱を伝える。
湯気を見せる光はとても不気味でビートは息をのんだ。
「はは、まだ早かったかな。鞘をつけたままでもいいから素振りをしてみようか」
緊張しているビートにラトスは優しく諭す。
彼はラトスに言われるまま長剣を鞘に入れたまま縦に振る。
ブン! 風を切る音が辺りに響く。とても重い音。まるで丸太でも振っているような音。ラトスは冷や汗をかいてビートの後ろに回る。
「縦だけじゃない。横にも振ってみるんだ。手首だけだと剣の重さで痛めるからしっかりと体重を移動させて」
後ろでビートの手を取って指導を始めるラトス。二人とも青い瞳をキラキラさせる。男の子はいくつになっても体を動かすのが好き。しばらく素振りをしてると、彼らの周りだけ雪が少なくなっていた。
地面が見えて緑の葉が顔を出す。まるで春を伝えに来たように。でも、まだまだ春は遠い。風がヒュンと葉を撫でる。元気だった緑の葉はすぐにお辞儀をした。
「ビート。ドラゴンの卵を下ろして剣を振ってみて」
ふとあることに気が付いたラトスはそう言って背中に背負っている卵を下ろさせる。
ビートは言われるまま剣を振る。さっきよりは重くない音にラトスは驚く。卵を背負ってなくても大人とそん色のない素振りの音。ラトスの敏感な感覚がそれを見抜いた。
ビートはドラゴンの卵が背中にあった方が温かいし、体が軽いから持っていた方がいい。だけどラトスはそれをさせずに素振りをさせ続ける。
一週間程、それを続けたある日。ラトスはドラゴンの卵を背負わせる。
「剣を振ってみて」
一週間前と同じ。ビートは少しため息をついてラトスに言われるまま振る、すると。ブォン! という音が鳴る。とても重い音。家の仲間で聞こえた音で、シーナの料理教室が中断するほどだった。
鞘にしまったままの剣は間違いなく風を切った。気楽に打ち合いはできないな。そういってラトスはため息をつく。
ブォンブォン。大好きな頂上にやってきたビートは元気に剣を振るう。やまびことなって遠くからも聞こえてくる音。とても気持ちいい。町では何をしても音がなっていた。だから自分の放つ音はそんなに気にならなかった。
でも、雪山では違う。自分の放った音しか聞こえない程の静けさ。それが気持ちよくて何度も振るう。
遠くで雪崩が起きる。ビートの放つ音が雪崩を起こしてる。幸い、魔物だけを倒していく雪崩。彼は天災となりつつあるのかもしれない。
「あれ? 人かな?」
頂上から目を凝らすビート。尾根の先に杖を突いて歩いてくる人が見える。居ても立っても居られない彼は走り出す。
ダッツのように助けるのが遅れたらクレパスに落ちて死んでしまう。二度とあんな思いはさせたくない。彼は必死に走った。
「ハァハァ……。子供?」
耳を隠す帽子をかぶった人は女の人だった。ビートに気が付いた彼女は息を切らせながらも彼を見つめる。赤い瞳でビートの青い瞳を見つめる。
『こんにちは』と言って挨拶をし合う二人。ともに自己紹介をする。ビートと名乗ると、彼女は【カレン】と名乗る。
彼女は強い魔物を探し回るバウンティハンター。懸賞金のかかった龍を狩りに来たらしい。
「龍はいるかな?」
頂上からやってきたビートに問いかける。
彼は龍なんて見たことがないから首を横に振る。カレンは残念そうに頷くと、ビートの背中のカバンに視線が行った。
『大きなカバンね。何が入ってるの?』、その質問にビートは『僕の友達』と答える。友達……おかしな答えにカレンは首を傾げる。
何度も聞くのもおかしな話。子供を詮索するなんて変よね。カレンはそう思って話題を変える。
どこか休める場所はないかしら? 彼女のそんな問いかけにビートは『僕の家で休めるよ』と警戒心なく答えた。カレンは無邪気なビートの答えにクスッと笑って案内をお願いした。
ツィーダの町から二日。雪山に帰ってきたビート達。荷物が沢山。ノットンやナユだけじゃない。村のみんなへのお土産。荷物だけじゃない、情報のお土産もある。
シーナは料理の方法を見て覚えてきた。白いパンから肉の下ごしらえの方法。たれに漬け込むとシカ肉でも柔らかくなるなど、色んなことを学んできた。もう、料理じゃない料理を食べなくてもいい。シーナはフンスと鼻息荒く胸を張った。
「「美味しい!」」
日が真上に登ってきた。お昼に料理を作ると気合を入れるシーナ。ノットンとナユは彼女の料理を食べて声を上げる。
目を真ん丸にして料理を二度見する二人。少しするとかぶりつく。
『果物の汁に漬け込むと臭みが取れて柔らかくなるみたいなんです』と、得意げに話すシーナ。学んだことをしっかりと伝える彼女は次々と料理を作る。
大きな荷物のほとんどが食べ物だった。ビートもドラゴンの卵のおかげで力持ち、二人よりも多くの荷物を持つことが出来た。行商でもするのかのような荷物だったが、軽く持ち上げる。
そんな彼の姿を見たラトスは、深くうなずく。ビートは英雄の器だと。
「ビート。剣を学んでみるかい?」
シーナが村長の家で料理教室を開いているのを横目に。ラトスは腰に差していた剣をビートに手渡す。彼は剣を鞘から半身程抜く、キラリと光る刀身に彼は身震いした。
『怖がらなくていいんだよ。これは君の身を守るものだから』、そう言ってラトスはビートに渡した剣よりも短い剣を抜いて見せる。刀身は真上からの光を受け流して地面の雪に熱を伝える。
湯気を見せる光はとても不気味でビートは息をのんだ。
「はは、まだ早かったかな。鞘をつけたままでもいいから素振りをしてみようか」
緊張しているビートにラトスは優しく諭す。
彼はラトスに言われるまま長剣を鞘に入れたまま縦に振る。
ブン! 風を切る音が辺りに響く。とても重い音。まるで丸太でも振っているような音。ラトスは冷や汗をかいてビートの後ろに回る。
「縦だけじゃない。横にも振ってみるんだ。手首だけだと剣の重さで痛めるからしっかりと体重を移動させて」
後ろでビートの手を取って指導を始めるラトス。二人とも青い瞳をキラキラさせる。男の子はいくつになっても体を動かすのが好き。しばらく素振りをしてると、彼らの周りだけ雪が少なくなっていた。
地面が見えて緑の葉が顔を出す。まるで春を伝えに来たように。でも、まだまだ春は遠い。風がヒュンと葉を撫でる。元気だった緑の葉はすぐにお辞儀をした。
「ビート。ドラゴンの卵を下ろして剣を振ってみて」
ふとあることに気が付いたラトスはそう言って背中に背負っている卵を下ろさせる。
ビートは言われるまま剣を振る。さっきよりは重くない音にラトスは驚く。卵を背負ってなくても大人とそん色のない素振りの音。ラトスの敏感な感覚がそれを見抜いた。
ビートはドラゴンの卵が背中にあった方が温かいし、体が軽いから持っていた方がいい。だけどラトスはそれをさせずに素振りをさせ続ける。
一週間程、それを続けたある日。ラトスはドラゴンの卵を背負わせる。
「剣を振ってみて」
一週間前と同じ。ビートは少しため息をついてラトスに言われるまま振る、すると。ブォン! という音が鳴る。とても重い音。家の仲間で聞こえた音で、シーナの料理教室が中断するほどだった。
鞘にしまったままの剣は間違いなく風を切った。気楽に打ち合いはできないな。そういってラトスはため息をつく。
ブォンブォン。大好きな頂上にやってきたビートは元気に剣を振るう。やまびことなって遠くからも聞こえてくる音。とても気持ちいい。町では何をしても音がなっていた。だから自分の放つ音はそんなに気にならなかった。
でも、雪山では違う。自分の放った音しか聞こえない程の静けさ。それが気持ちよくて何度も振るう。
遠くで雪崩が起きる。ビートの放つ音が雪崩を起こしてる。幸い、魔物だけを倒していく雪崩。彼は天災となりつつあるのかもしれない。
「あれ? 人かな?」
頂上から目を凝らすビート。尾根の先に杖を突いて歩いてくる人が見える。居ても立っても居られない彼は走り出す。
ダッツのように助けるのが遅れたらクレパスに落ちて死んでしまう。二度とあんな思いはさせたくない。彼は必死に走った。
「ハァハァ……。子供?」
耳を隠す帽子をかぶった人は女の人だった。ビートに気が付いた彼女は息を切らせながらも彼を見つめる。赤い瞳でビートの青い瞳を見つめる。
『こんにちは』と言って挨拶をし合う二人。ともに自己紹介をする。ビートと名乗ると、彼女は【カレン】と名乗る。
彼女は強い魔物を探し回るバウンティハンター。懸賞金のかかった龍を狩りに来たらしい。
「龍はいるかな?」
頂上からやってきたビートに問いかける。
彼は龍なんて見たことがないから首を横に振る。カレンは残念そうに頷くと、ビートの背中のカバンに視線が行った。
『大きなカバンね。何が入ってるの?』、その質問にビートは『僕の友達』と答える。友達……おかしな答えにカレンは首を傾げる。
何度も聞くのもおかしな話。子供を詮索するなんて変よね。カレンはそう思って話題を変える。
どこか休める場所はないかしら? 彼女のそんな問いかけにビートは『僕の家で休めるよ』と警戒心なく答えた。カレンは無邪気なビートの答えにクスッと笑って案内をお願いした。
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