ビートとドラゴン 殻を破るは人か龍か

カムイイムカ(神威異夢華)

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第22話 龍の怒り

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 龍はまた怒りを見せる。町に止まない雨を降らせる。下水から立ち込める嫌なにおいが町を覆う。
 雷が落ちるとシュラインは声を上げて驚いた。今まではただの雷と捨てていた出来事。しかし、あの日以来雷は彼のトラウマとなった。

「ううう、ビート。ビートめ」

 子悪党が一度懲らしめられただけで改心することはない。それはその取り巻き達も同じだった。
 いつか仕返ししてやろうと企てる。一足先にレッシーの店に行った仲間達が報告すると、嬉しそうに手を叩いて褒めたたえるシュライン。
 自分が出来ないことをした部下を褒める。本来ならば素晴らしいことだが、やっていることは子供のような真似事。レッシーならば『男の腐りかけ』と評するだろう。
 それでも腹の虫がおさまらないシュラインは、雷に恐怖を抱きながら部下達に命令する。

「奴の関係者を懲らしめろ。なんでもいい! とにかく、この町から出ていくように仕向けるんだ」

 シュラインは逃げた。ビートを町から追い出すように仕向けた。
 彼を知っているものを外へ、対象を大きく広げた行為。これは失策だった。
 【大荷物のビート】と評されるほど町の有名人となっていたビートの関係者。それがどれだけの人数に当たるのかを理解していなかった。
 シュラインの部下達は冷や汗を流すこととなる。

「急に何てことしてくれるんだ!」

「あんたらには何も売ってやらないよ!」

 領主の館に抗議の声が上がる。シュラインの命令から四日後の朝だった。
 レッシーの店はもちろんのこと、ビートを知っているものを対象に嫌がらせをした結果。大きな反感を買った。
 店の前の掃除を手伝っていたビート、行商の荷物運びを手伝っていたビート。沢山の善行をしていた彼の関係者は多岐にわたる。
 更にレッシーのお店を襲った男達は夜の店の女性達からも叱咤を受けた。『香水が買えなくなった』と悲鳴を上げて爪を立ててくる女性に舌を巻く日々。シュラインの部下は涙目で謝罪をして彼に報告することとなる。

「ま、まずいぞ。このままでは王に知らせがいくやもしれん」

 シュラインは窓の外の騒々しい抗議の様子に顔を青ざめさせる。
 戦争を未然に防ぐため町を変えたと良いように使っていたシュライン。王が視察に来ないことをいいことにわがままな生活を過ごしてきた。それがバレてしまう。
 5年前はいい町だった。王もそれは知っている。それがこんなことになっているとばれたら首が飛ぶ。シュラインはどうにかしてこれを止めようと考え出す。

「そ、そうだ! すべてあの小僧のせいにすればいいんだ」

 バケモノと罵って提案を口に出すシュライン。部下達はその声に嫌な予感が頭をよぎる。
 バケモノとは言え、見た目は普通の子供に今の町の腐敗を背負わせる? どうやってやるんだと疑問に思った様子。住人もシュラインのせいだと密告するだろう。
 みなが疑問に思っていると大きな雷が館に落ちる。雷は屋根を貫き、シュラインに直撃した。ブスブスと半身が焼け焦げたシュラインはその場に倒れた。幸い命は助かったが半身が動かないからだとなる。
 一生を苦しんで生きろと、龍が言っているようだった。彼の部下達もその声が聞こえたような気がした。悔い改めて謝罪行脚を行うこととなる。
 龍はビートに無意識に止められていた。雷をビートが受け取ることでシュラインは守られていたのだ。それを知るのは龍のみ、シュラインは最後の判断を誤った。

「シュラインはいなくなったよかったけど、新しい領主様は大丈夫なのかね~」

 レッシーはそう言ってビートの肩に手を置く。いつも通り、ポーションと香水を作るビート。
 貴族をあまり知らない彼は首を傾げた。
 『次の領主様は女性の方だって言ってたよ』レナラがそう言って真剣にポーションを作る。彼女のポーションはレッシーを超える効力を発揮するものとなった。努力が実を結んだ結果にレッシーはご満悦。
 しかし、まだまだ満足のいかないレナラはビートを超えようと日々学んでいる。

「女性か~。どんな人かな」

 新たな領主様を想像するビート。赤い髪の人だったりしてと想像して首を横に振る。
 あの人が領主なんて柄じゃない。あの人は外で大きな魔物を倒してる創造しかできないと笑うのだった。
 
 ビートの呑気な考えとは裏腹にレナラは『鼻の下伸ばしてる』とかってに思って頬を膨らませてる。
 ビートはモテる。人に優しくて力持ちで可愛い顔、モテないはずがない。それは気にかけないそぶりも人気なポイントだ。
 レナラは気が気じゃない。オリビアには負けたけど、別の人に負けるつもりはない。日々、女の子としてのレベルも上げている彼女は人の気も知らないでと憤りを露わにする。

「はいビート! 出来たよ! 見て!」

 私を見て! と言わんばかりに胸を張ってポーションを差し出すレナラ。ビートは気をされるままポーションを手に取ると胸が手に触れる。
 彼は気にせずにポーションを調べていく。日々うまくなっていくレナラに唸って褒めるビート。
 嬉しいけれど、女性として見られていないことに気を落とすレナラはうなだれて持ち場に戻った。

「……柔らかかったな~」

 ビートもお年頃、同い年くらいのレナラの胸を触ってしまって喜ばないはずもない。手を見つめて呟くと嬉しそうに微笑む。
 ただただ純粋な彼は、傷つけないように気にしていないよう振舞っていただけだった。そんな二人が気づき合うのはいつのことになるやら。
 ドラゴンの卵もやれやれと体を揺らす。
 
 ツィーダの町にドラゴンあり、そう言わしめるビートは大きくなっていく。龍は嬉しく声を上げて未来に登っていった。

ーーーーー

 これにて終わりです
 強い強いビート、これからもツィーダで龍と共に幸せに暮らしていくでしょう。
 ここまで読んでくれてありがとうございました。
 ではまた次のお話で
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