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3巻
3-2
◇
翌日。ルーラちゃんたちが教会を建て始めるのと同時に、僕も作業開始。
街の範囲を広げるために、前回作った壁から百メートルほど外側に壁を作っています。
あくまで外壁なので、ミスリルを使うほどじゃないと思って、余っていた鉄を使う。だけど鉄の壁なんていかにも要塞みたいで無粋だから、ミスリル壁を偽装した時みたいに、見た目だけレンガのような感じにしてみた。
普通、鉄だとどうしても錆びてしまう。だけどそこは僕のコネた鉄、清らかな鉄に錆びという概念はないようで、水に浸していても錆びません。もう検証済みなのだ。
「コヒナタ~、お堀はこの深さで大丈夫か?」
「ん、あ~っと。大丈夫そうですね」
遠くから声をかけてきたのは、ダークエルフのニーナさん。ハイミスリルで作ったスコップを担いでいるのが見える。
お堀は僕の作っている外壁のさらに外側に、幅五メートル・深さ三メートルほどの寸法で作られる予定になっていた。
僕は外壁の上にいるのでみんなを見下ろす感じなんだけど、何だか偉そうで居心地が悪い。早く終わらせたいな……。
お堀の工事現場では、ニーナさんをはじめとして街のダークエルフさんたちが働いている。
あと、かつて僕がエリンレイズで牢獄石から救出して以来、僕を追いかけてこの街まで来てくれた女の子、イザベラちゃんもいる。
「どんどん壁に沿って掘っていきましょう。あとは街の水路と繋げれば、立派なお堀の完成です!」
「「「はーい」」」
イザベラちゃんの指揮のもと、着々とお堀の整備が進んでいく。こういう仕事をしていると、見た目よりはるかに大人っぽく見える。
みんなの持っているハイミスリルのスコップには、僕のスキルが付与されているので硬い岩もプリンのようにあっさり掘れています。
しかしまあ、こんなに強固な街にする意味があるのか、と思ってしまうな~。
強力な結界のおかげで悪意のある人は入れないし、雫も大量にあるから、穢れに操られている人を元に戻すのも簡単。門に来ても壁の上からかければ終わりでしょ。
もしエヴルラードたちが実際に攻めてきても、街のみんなや僕の仲間たちには勝てないと思うけどね。
それに、頼りになる人たちは他にもいる。
「お~い、コヒナタ殿」
「あ~、グンターさん」
フルプレートに身を包んだ男の人が歩いてくる。
冒険者の旅団[鋼の鉄槌]のリーダーをやっているグンターさんだ。昨日、また団員を率いて街にやってきたんだけど、ここの冒険者ギルドに登録したいと言われて、びっくりしたよ。
ワルキューレの結界には誰も引っかからなかったので、滞在も難なくOKになった。みんな、いい人なんだろうな。現に団員の人たちは、もうダークエルフさんたちと仲良くなりつつあります。
冒険者ギルドを誘致して初めての冒険者が、グンターさんたちになるわけだね。結構有名な旅団だと聞いていたし、ありがたい。
「何かありましたか?」
「少し相談が」
壁から降りて尋ねると、グンターさんは俯き加減で話してきた。何か言いにくいことなのかな?
「見てわかる通り、私のチームは無骨な者が多いというか……物理攻撃に特化しているだろう?」
「はい」
グンターさんの旅団の人たちは、ほとんどフルプレートの防具を着ている。その上、大きな盾や両手剣、大斧など、武器もまさに無骨なものばっかりだ。
ああいうのっていわゆるロマン武器ってやつだよな~。威力は高いけど扱いが難しい……そんなロマン武器で、これだけ大きな旅団を形成できている辺り、凄く統率が取れているんだろうなと感心するよ。
「それがどうしたんでしょうか? 僕はいいと思いますけど……」
ロマンのある武器や防具、結構じゃないか? 僕は好きだけどな。ドリルとかあったらもっといいね。グンターさんは何か不満でもあるのかな?
「いや、私もいいと思うのだが、サブリーダーがそうでもなくてな」
「何が『いい』だ!」
凛とした声がして、グンターさんの後ろからもう一人フルプレートの戦士が現れる。
顔も防具で隠れていてわからないけど、声からして女性みたいだ。
「五十人のクランになってもこんな編成じゃ、いつか痛い目に遭うに決まってる。私がこの街に来るのに賛成したのは、ダークエルフがいると聞いたからなんだぞ!」
「ああ、わかっている。しかし我々も彼らも、まだ関わり合うのに慣れていないだろう。だから、コヒナタ殿に頼んでいるんじゃないか」
フルフェイスの兜をつけたまま、彼女はグンターさんに詰め寄る。
グンターさんも負けじと言い返していて、何だか仲がいいな。
「お二人は仲がいいんですね」
「「どこが!」」
「ははは~……」
息もピッタリ、ここまでくるともう微笑ましいな。
「用件はわかりました。つまり、みんな物理攻撃ばっかりだから魔法を使える人が欲しいってことですね?」
「おお、話が早い。流石この街の長」
大体の話は読めたので答えると、フルフェイスの女性が腰に手を当てて喜んでいる。無骨な集団のサブリーダーというだけあって豪気な感じだな。
「改めて、私は[鋼の鉄槌]のサブリーダーのシャイナだ、よろしく。グンターとは腐れ縁でな。同じ村でこいつの尻拭いをよくさせられたものだ」
自己紹介をしつつも、兜を取らないシャイナさん。
「はんっ、尻拭いしていたのはこっちのほうだ」
「なにを!」
また口喧嘩を始めちゃったよ。本当に仲がいいな~。
「大体、お前は。人に名乗る時に兜を被ったままでいいと思っているのか!」
「あ、やめ!」
グンターさんがシャイナさんの不意を突いて、兜を取った。
するとそこには、夜空の星のように輝く目が二つ。
「きゃ~!」
まるで裸を見られたかのように、甲高い声を上げるシャイナさん。
街中から離れた場所でよかったよ。みんなの前だったら、驚かれていただろうね。
「こいつ、この目を見られるのが嫌でフルフェイスなんだよ。綺麗なのにもったいない」
「ですね。綺麗なのに」
「……」
煌びやかな金髪にキラキラの目、まるで童話に出てくるお姫様みたいです。
恥ずかしがって女の子座りになってしまっているシャイナさん、顔も赤くして両手で覆っている。
「じゃあ、ダークエルフさんたちにも伝えておきますね」
「ああ、よろしく頼む」
仲介を了承すると、グンターさんはシャイナさんの兜を置いて走り去っていった。
あれだけ重そうなものを着ていて、あれだけダッシュできるのは凄いな。なんて思って見ていると……。
「グンター……」
ゴゴゴゴと威圧的な気配を発しながら、兜を被り直したシャイナさんが追いかけていった。何やら凄く黒いオーラを纏っていたけど、あれなら魔法も使えるんじゃないかな?
ともあれ、外壁を作りながら仲介もすることになってしまった。
まあ、そこはニーナさんに言っておけば大丈夫でしょ。
第二話 ウィンディの本音
「あ~、疲れた~」
外壁を半分ほど作り終わった時、ウィンディがのろのろと壁の上にやってきた。
異様に疲れているけどどうしたんだ?
「大丈夫?」
「[鋼の鉄槌]の人と一緒に狩りに行ったんだけどさ~。遠くから攻撃できる職と組んだことないみたいで、めちゃくちゃ気を遣ったよ……」
どうやら、ウィンディはダークエルフさんたちより先に、団員とパーティーを組んで狩りに行っていたようだ。ウィンディが気疲れするってよっぽどだな。
でも、よかったよ。ウィンディがソロじゃなくなって。
「これでウィンディも冒険者稼業に戻れるね。おめでとう」
「……」
「馬車の御者は僕もできるようになったし、ファラさんもいるし。ウィンディさえよかったら、冒険者に戻っても大丈夫だよ」
「レンレン~……」
「ウィンディとはテリアエリンからの付き合いだから、寂しくなるな~」
「もう! 私はレンレンのパーティーメンバーだから! 今回は頼まれただけで、ずっとっていうわけじゃないからね?」
僕の言葉にウィンディは焦ったように答えた。冗談なのに気付かないのかな。
「私はレンレンのものだから。今回は[鋼の鉄槌]の人たちが困ってただけだから」
「そんなに必死に言わなくてもわかってるよ。おめでとう」
「全然わかってない~」
ウィンディは僕の腕を揺さぶって訴えてきます。からかい甲斐のある子だこと。
「これからは勝手に行かないから捨てないで~」
「はいはい」
「あ! 探しましたよ。ウィンディさん」
ウィンディで遊んでいたら、鉄槌っぽい重装備の人が四人、城壁の階段を上がってきた。
狩りで一緒に組んでいた人たちかな?
「帰ってきたらすぐにいなくなっちゃうんですもん。やっと見つけましたよ」
「わ、悪いけど私はレンレンのものなの! もう一緒には行けないから!」
ウィンディは四人を見ると焦ったようにそう言った。僕のものっていうのはちょっと違うと思うんだけどな。
「えっ、そんな」
「正式にパーティーに入ってもらおうと思ったのに」
残念そうに話す団員たち。どうやらウィンディは相当活躍したみたいだね。ステータス爆上げされているから当たり前か。
「僕らが射線を塞いでしまっていたのに、股下とかから敵を射抜いてくれて凄かったんですよ。ほんとカッコよかったな~」
「そうそう。私の時なんて、木の上から飛びかかってきた魔物を空中で倒しちゃうんだもん。尊敬しちゃいます」
「僕らは見ての通り、叩くか斬るかしかできないから。ウィンディさんが入ってくれればさらに上を目指せると思ったんですけど……コヒナタさんのパーティーメンバーだったんですね」
尊敬の目でウィンディを見て話す青年たち。彼らはクランの中でも新米なほうなのかな?
それにしてもウィンディの弓の腕はまたさらに上がっているみたいだね。少し誇らしいな~。
「えへへ、そんなに褒められると照れる~。ねえ、レンレン」
頭を掻いて照れているウィンディ。
「はいはい。でも一個言っておきたいことがあるんだけど。僕に遠慮せず、他のパーティーに行ってもいいんだよ?」
「レンレン……」
軽口を叩ける仲間ではあるし、恩を感じてついてきてくれるのも嬉しい。でも、彼女をいつまでも縛ることになるなら、ちょっとそれもどうかなと思うのだ。
今のウィンディなら、名のある冒険者になれるだろうしさ。
「じゃあ、僕らのパーティーメンバーになってもらっても大丈夫ですか?」
「まあ、大丈夫だよ」
「やった~、じゃあ早速、ウィンディさん。一緒にギルドに――」
「……」
団員の青年はウィンディの手を取って、降りていこうとした。
でもウィンディは立ち止まったまま、無言で僕を見ている。
目に涙が浮かんでいることに気付き、これはしまったかも……と思ったその時。
「やだやだ! やだよ~」
「ちょっとウィンディさん⁉」
ウィンディが急に叫んで青年の手を振り払い、その場にうずくまってしまった。
「私はレンレンと一緒にいたいの! レンレンに助けられた時から私の命は……レンレンのものなの~~‼」
「「「「…………」」」」
叫び声が辺りに響く。何だか恥ずかしいな。ウィンディはそんな風に受け止めていたのか。
僕はちょっとした親切心で助けたつもりでも、ウィンディにとっては僕が大切な恩人だったみたいだ。流石に悪いことをしたなと気まずくなる。
「そうだったんですね、すいませんでした」
「私たち、軽率でした」
青年たちはそう言って、城壁から降りていった。
うずくまったままのウィンディと僕は、重い空気の中です。
僕もからかい過ぎてしまった。ただ、ウィンディは僕に執着し過ぎなんだよね。僕に恩を返したいっていう意思の表れだとしても、もっと自由でいいんじゃないかな~。
しかし、この空気どうしよう。
「……さて、壁作りの続きをしますかね」
「……」
手持ち無沙汰になってしまうので、僕は作業を再開。
コネコネコネコネ。沈黙の中、着々と壁ができていく。でもすぐに、下からイザベラちゃんの声が聞こえてきた。
「コヒナタ様~、お堀は完成しました~」
「あ~、イザベラちゃんありがとう。みんなもありがとね~」
お堀が完成して、街の水路とも繋げ終わったみたい。
「……よ~し、あとは壁を作れば終わりだな」
「……」
わざとらしく、声を大きめにして話す僕。いつものウィンディなら何か言いそうなものだけど、反応は返ってこない。ずっと顔を膝にうずめているままだ。
「いつまでもうじうじしているなんて、ウィンディらしくないよ」
「……」
コネコネしながらウィンディに声をかけた。
「ウィンディはもっと自由でいいんだよ。いつまでも、僕に執着する必要はないんだ。命を助けられたっていうのも、ファラさんと一緒に助けたんだし、僕に恩を返さないといけないなんて思わなくていい」
淡々と声をかける。だけど、ウィンディから返事はなかった。
少ししてから、鼻をすする音が聞こえてくる。
「私ね、レンレンに助けられた時、レンレンから目が離せなかったの。今思えば、一目惚れってやつだったんだと思う……」
「……」
ようやく口を開いたウィンディは、滔々と自分の気持ちを話し始めた。
「【龍の寝床亭】でレンレンに再会して、再確認した。好きになっちゃったんだなって。でも、迷惑にはなりたくなかったから、いつか恩を返せるように、近くにいたいと思ったの」
僕は壁を作る手を止めて、ウィンディの言葉に耳を傾ける。
そんな風に思ってくれていたんだね。
「まだ、私は恩を返せてないよ。離れたくない」
ウィンディは泣き過ぎて、えずいてしまう。
「でも、でも……レンレンが迷惑って言うなら、私……わたし……」
途切れ途切れになりながら話すウィンディ。何だか僕もつられて泣きそうになってしまう。
本当にからかい過ぎたな、反省しないと。ただ素直にごめんとは言えず、ゴーレムのゴーレを持ち出した。
「ゴーレが泣くからね」
「……えっ?」
「ゴーレが、相棒がいなくなったら悲しむよ。それに、ウィンディみたいな子を野に放ったら、どこに行っちゃうかわからない。何ならそのほうが色んな人たちに迷惑かけそうだ」
「レンレン?」
今さら、大事な仲間だよなんてまっすぐ言えないから、回りくどく言葉を紡ぐ。
「まあ、何ていうか……ウィンディがいないとみんなつまらないだろうし。トラブルメーカーがいないとね」
「レンレン~」
ウィンディはまた泣き顔になる。
「そうじゃないとみんな暇しちゃ、わわ」
「わ~ん、好き~、レンレン好き~!」
頬を掻きながら僕が話していると、ウィンディが後ろから抱きついてきて、耳元で愛を叫んだ。
まったく、うるさいな~。泣き過ぎだし、ムードも何もあったもんじゃないよ。
「はいはい、嬉しいよっと」
「レンレン冷たい~。わ~ん」
後ろに手を回して、ウィンディの頭を撫でる。ウィンディは文句を言いながらも笑顔で泣き続けていた。
こんな美人さんに告白されるなんて、世の中何が起こるかわからないな。
手のかかる妹くらいにしか思っていなかったけど、これから真面目に考えてあげないとかわいそうだ。でも、僕にはファラさんがいるしな~。
って、告白もデートもできてない僕が言えたことじゃないんだけど。
ウィンディを見習って、もうちょっと距離を縮めてみたいな。
◇
ウィンディとの話の後、壁も完成間近となった時、城壁にファラさんがやってきた。
「レン、ちょっといいかな?」
「どうしたんですかファラさん」
少し頬を赤くしてるファラさん。ついさっき考えていたことも相まって、ドキッとしてしまう。
「その……この街にも店が増えてきただろ? よかったら一緒に回らないか?」
「えっ! それって?」
「あ、ああ。まあいわゆるデートというやつだ……」
ウィンディに続いてファラさんまで……なんだろう、これがモテ期というやつか?
しかし、これはチャンスかな。僕から距離を縮めようと思っていた矢先にこれだ。
それとなくファラさんの気持ちを知りたかったけど、はっきりデートって言ってくれているし、脈はあるんじゃないだろうか。
「いいかな?」
「あっ! はい! こちらこそ」
「よかった。それと……」
ファラさんは言い淀む。何だろうと思っていると、また驚くことを言われた。
「……そろそろ、敬語は使わなくていい」
「ええ⁉」
今までずっと敬語で話してきたのに、いいんだろうか。
「私はもう随分前からこの口調だろう? レンももっとくだけた話し方をしてほしい」
「そ、そうですか……わかりました。あっいや、うん、わかった」
口癖になっちゃってるから、これはちょっと慣れが必要かもしれないな。
ということで、壁の建設は一時中断して街の中をデートすることに。
商人ギルドもできたから、街の外との交易や商人の出入りも始まって、活気が増している。
ルーラちゃんたちが来なくても、いずれは街の拡張をすることになっていただろうね。
「この服だとどうだ?」
「綺麗です! あ、えっと、綺麗だと思うよ」
「ありがとう……そうだ、私もレンの服を選ぶよ、どういうのがいい?」
「いいの? そうだなあ……」
まず、できたばかりの服屋さんでお互いの服を選んで買って、軽く食事をしてまた買い物をして回った。元の世界でもこんなのしたことがないから、どうしても緊張してしまうな。
ただ自分で作った街に人がいっぱいいて、みんな幸せそうに暮らしているのがわかって嬉しい。
流石に子供はまだ少なくて、クリアクリスとイザベラちゃん、それに含めていいかわからないけどルーラちゃんしかいない。
でもこのまま人々が定着すれば次の世代も増えていくだろうし、とっても良い街だ。
「レン、本当にお金はいいの?」
「ファラさんはもうお金持ちだから、こんなこと言うのもおこがましいかもしれないけど、僕も男だからね。ここは僕持ちにさせて。いやだった?」
「ううん。そんなことない。とっても嬉しい、ありがとうレン」
買い物袋を抱きしめて微笑むファラさん。ん~、やっぱり綺麗だな~。
コリンズ邸でのパーティーの時のドレスもよかったけど、普段着の彼女も綺麗だ。
今回、買い物した服も可愛かったしね。
道路脇のベンチに座って一休みしている間も、ファラさんの横顔に見惚れてしまった。
「ん? どうしたの、レン」
「え⁉ ううん、なんでもないよ。あっ、そうだ。ファラさんって髪型変わってるよね。片方だけ三つ編みなんて」
「……へ、変かな?」
「え? ううん、そういうわけじゃないよ」
表情が一瞬暗くなったファラさん。話題を変えようと髪型の話をしたんだけど、聞いちゃいけないことだったかな?
「私の家がなくなったのは、本当に突然のことだったんだ。ギザールの件があった後、何者かに突然家が襲われた。その時、お母様がちょうど私に三つ編みをしてくれていた最中でね……」
「そ、そうなんだ……」
髪型の話はタブーだったな……悪いことを聞いてしまった。
「すっごく似合ってるよ、ファラさん」
「えっ」
「ファラさんってなんていうか、戦っている時は凛々しくてカッコいいんだけど、いつもは可愛いじゃない?」
「か、可愛い……」
僕の言葉に、顔を真っ赤にするファラさん。
「凛々しさと可愛さを兼ね備えてる人だと思うから、その三つ編みを見ているとファラさんそのものだなって感じがした」
「そ、そうかな……」
三つ編みをいじりながら照れるファラさん。
「今までこの髪型を褒めてくれた人はいなかったんだ。レンが初めてだよ、ありがとう」
「ははは」
ファラさんは顔を真っ赤にしながらも喜んでくれた。
僕もこうやってちゃんと褒めるのは、ファラさんが初めてです。やればできるじゃん、僕も。
ベンチで少し休んだ後、日も暮れてきたので僕らはそのまま屋敷に帰った。
告白には至らなかったけど、デートは概ね成功でしょう。次は僕から誘えるようにならないといけないな。
それからは、みんなといつも通り夕食。城壁は結局今日には完成しなかったけど、一刻を争うものではないし、構わない。それよりも、仲間との時間のほうが大事だよね。
翌日。ルーラちゃんたちが教会を建て始めるのと同時に、僕も作業開始。
街の範囲を広げるために、前回作った壁から百メートルほど外側に壁を作っています。
あくまで外壁なので、ミスリルを使うほどじゃないと思って、余っていた鉄を使う。だけど鉄の壁なんていかにも要塞みたいで無粋だから、ミスリル壁を偽装した時みたいに、見た目だけレンガのような感じにしてみた。
普通、鉄だとどうしても錆びてしまう。だけどそこは僕のコネた鉄、清らかな鉄に錆びという概念はないようで、水に浸していても錆びません。もう検証済みなのだ。
「コヒナタ~、お堀はこの深さで大丈夫か?」
「ん、あ~っと。大丈夫そうですね」
遠くから声をかけてきたのは、ダークエルフのニーナさん。ハイミスリルで作ったスコップを担いでいるのが見える。
お堀は僕の作っている外壁のさらに外側に、幅五メートル・深さ三メートルほどの寸法で作られる予定になっていた。
僕は外壁の上にいるのでみんなを見下ろす感じなんだけど、何だか偉そうで居心地が悪い。早く終わらせたいな……。
お堀の工事現場では、ニーナさんをはじめとして街のダークエルフさんたちが働いている。
あと、かつて僕がエリンレイズで牢獄石から救出して以来、僕を追いかけてこの街まで来てくれた女の子、イザベラちゃんもいる。
「どんどん壁に沿って掘っていきましょう。あとは街の水路と繋げれば、立派なお堀の完成です!」
「「「はーい」」」
イザベラちゃんの指揮のもと、着々とお堀の整備が進んでいく。こういう仕事をしていると、見た目よりはるかに大人っぽく見える。
みんなの持っているハイミスリルのスコップには、僕のスキルが付与されているので硬い岩もプリンのようにあっさり掘れています。
しかしまあ、こんなに強固な街にする意味があるのか、と思ってしまうな~。
強力な結界のおかげで悪意のある人は入れないし、雫も大量にあるから、穢れに操られている人を元に戻すのも簡単。門に来ても壁の上からかければ終わりでしょ。
もしエヴルラードたちが実際に攻めてきても、街のみんなや僕の仲間たちには勝てないと思うけどね。
それに、頼りになる人たちは他にもいる。
「お~い、コヒナタ殿」
「あ~、グンターさん」
フルプレートに身を包んだ男の人が歩いてくる。
冒険者の旅団[鋼の鉄槌]のリーダーをやっているグンターさんだ。昨日、また団員を率いて街にやってきたんだけど、ここの冒険者ギルドに登録したいと言われて、びっくりしたよ。
ワルキューレの結界には誰も引っかからなかったので、滞在も難なくOKになった。みんな、いい人なんだろうな。現に団員の人たちは、もうダークエルフさんたちと仲良くなりつつあります。
冒険者ギルドを誘致して初めての冒険者が、グンターさんたちになるわけだね。結構有名な旅団だと聞いていたし、ありがたい。
「何かありましたか?」
「少し相談が」
壁から降りて尋ねると、グンターさんは俯き加減で話してきた。何か言いにくいことなのかな?
「見てわかる通り、私のチームは無骨な者が多いというか……物理攻撃に特化しているだろう?」
「はい」
グンターさんの旅団の人たちは、ほとんどフルプレートの防具を着ている。その上、大きな盾や両手剣、大斧など、武器もまさに無骨なものばっかりだ。
ああいうのっていわゆるロマン武器ってやつだよな~。威力は高いけど扱いが難しい……そんなロマン武器で、これだけ大きな旅団を形成できている辺り、凄く統率が取れているんだろうなと感心するよ。
「それがどうしたんでしょうか? 僕はいいと思いますけど……」
ロマンのある武器や防具、結構じゃないか? 僕は好きだけどな。ドリルとかあったらもっといいね。グンターさんは何か不満でもあるのかな?
「いや、私もいいと思うのだが、サブリーダーがそうでもなくてな」
「何が『いい』だ!」
凛とした声がして、グンターさんの後ろからもう一人フルプレートの戦士が現れる。
顔も防具で隠れていてわからないけど、声からして女性みたいだ。
「五十人のクランになってもこんな編成じゃ、いつか痛い目に遭うに決まってる。私がこの街に来るのに賛成したのは、ダークエルフがいると聞いたからなんだぞ!」
「ああ、わかっている。しかし我々も彼らも、まだ関わり合うのに慣れていないだろう。だから、コヒナタ殿に頼んでいるんじゃないか」
フルフェイスの兜をつけたまま、彼女はグンターさんに詰め寄る。
グンターさんも負けじと言い返していて、何だか仲がいいな。
「お二人は仲がいいんですね」
「「どこが!」」
「ははは~……」
息もピッタリ、ここまでくるともう微笑ましいな。
「用件はわかりました。つまり、みんな物理攻撃ばっかりだから魔法を使える人が欲しいってことですね?」
「おお、話が早い。流石この街の長」
大体の話は読めたので答えると、フルフェイスの女性が腰に手を当てて喜んでいる。無骨な集団のサブリーダーというだけあって豪気な感じだな。
「改めて、私は[鋼の鉄槌]のサブリーダーのシャイナだ、よろしく。グンターとは腐れ縁でな。同じ村でこいつの尻拭いをよくさせられたものだ」
自己紹介をしつつも、兜を取らないシャイナさん。
「はんっ、尻拭いしていたのはこっちのほうだ」
「なにを!」
また口喧嘩を始めちゃったよ。本当に仲がいいな~。
「大体、お前は。人に名乗る時に兜を被ったままでいいと思っているのか!」
「あ、やめ!」
グンターさんがシャイナさんの不意を突いて、兜を取った。
するとそこには、夜空の星のように輝く目が二つ。
「きゃ~!」
まるで裸を見られたかのように、甲高い声を上げるシャイナさん。
街中から離れた場所でよかったよ。みんなの前だったら、驚かれていただろうね。
「こいつ、この目を見られるのが嫌でフルフェイスなんだよ。綺麗なのにもったいない」
「ですね。綺麗なのに」
「……」
煌びやかな金髪にキラキラの目、まるで童話に出てくるお姫様みたいです。
恥ずかしがって女の子座りになってしまっているシャイナさん、顔も赤くして両手で覆っている。
「じゃあ、ダークエルフさんたちにも伝えておきますね」
「ああ、よろしく頼む」
仲介を了承すると、グンターさんはシャイナさんの兜を置いて走り去っていった。
あれだけ重そうなものを着ていて、あれだけダッシュできるのは凄いな。なんて思って見ていると……。
「グンター……」
ゴゴゴゴと威圧的な気配を発しながら、兜を被り直したシャイナさんが追いかけていった。何やら凄く黒いオーラを纏っていたけど、あれなら魔法も使えるんじゃないかな?
ともあれ、外壁を作りながら仲介もすることになってしまった。
まあ、そこはニーナさんに言っておけば大丈夫でしょ。
第二話 ウィンディの本音
「あ~、疲れた~」
外壁を半分ほど作り終わった時、ウィンディがのろのろと壁の上にやってきた。
異様に疲れているけどどうしたんだ?
「大丈夫?」
「[鋼の鉄槌]の人と一緒に狩りに行ったんだけどさ~。遠くから攻撃できる職と組んだことないみたいで、めちゃくちゃ気を遣ったよ……」
どうやら、ウィンディはダークエルフさんたちより先に、団員とパーティーを組んで狩りに行っていたようだ。ウィンディが気疲れするってよっぽどだな。
でも、よかったよ。ウィンディがソロじゃなくなって。
「これでウィンディも冒険者稼業に戻れるね。おめでとう」
「……」
「馬車の御者は僕もできるようになったし、ファラさんもいるし。ウィンディさえよかったら、冒険者に戻っても大丈夫だよ」
「レンレン~……」
「ウィンディとはテリアエリンからの付き合いだから、寂しくなるな~」
「もう! 私はレンレンのパーティーメンバーだから! 今回は頼まれただけで、ずっとっていうわけじゃないからね?」
僕の言葉にウィンディは焦ったように答えた。冗談なのに気付かないのかな。
「私はレンレンのものだから。今回は[鋼の鉄槌]の人たちが困ってただけだから」
「そんなに必死に言わなくてもわかってるよ。おめでとう」
「全然わかってない~」
ウィンディは僕の腕を揺さぶって訴えてきます。からかい甲斐のある子だこと。
「これからは勝手に行かないから捨てないで~」
「はいはい」
「あ! 探しましたよ。ウィンディさん」
ウィンディで遊んでいたら、鉄槌っぽい重装備の人が四人、城壁の階段を上がってきた。
狩りで一緒に組んでいた人たちかな?
「帰ってきたらすぐにいなくなっちゃうんですもん。やっと見つけましたよ」
「わ、悪いけど私はレンレンのものなの! もう一緒には行けないから!」
ウィンディは四人を見ると焦ったようにそう言った。僕のものっていうのはちょっと違うと思うんだけどな。
「えっ、そんな」
「正式にパーティーに入ってもらおうと思ったのに」
残念そうに話す団員たち。どうやらウィンディは相当活躍したみたいだね。ステータス爆上げされているから当たり前か。
「僕らが射線を塞いでしまっていたのに、股下とかから敵を射抜いてくれて凄かったんですよ。ほんとカッコよかったな~」
「そうそう。私の時なんて、木の上から飛びかかってきた魔物を空中で倒しちゃうんだもん。尊敬しちゃいます」
「僕らは見ての通り、叩くか斬るかしかできないから。ウィンディさんが入ってくれればさらに上を目指せると思ったんですけど……コヒナタさんのパーティーメンバーだったんですね」
尊敬の目でウィンディを見て話す青年たち。彼らはクランの中でも新米なほうなのかな?
それにしてもウィンディの弓の腕はまたさらに上がっているみたいだね。少し誇らしいな~。
「えへへ、そんなに褒められると照れる~。ねえ、レンレン」
頭を掻いて照れているウィンディ。
「はいはい。でも一個言っておきたいことがあるんだけど。僕に遠慮せず、他のパーティーに行ってもいいんだよ?」
「レンレン……」
軽口を叩ける仲間ではあるし、恩を感じてついてきてくれるのも嬉しい。でも、彼女をいつまでも縛ることになるなら、ちょっとそれもどうかなと思うのだ。
今のウィンディなら、名のある冒険者になれるだろうしさ。
「じゃあ、僕らのパーティーメンバーになってもらっても大丈夫ですか?」
「まあ、大丈夫だよ」
「やった~、じゃあ早速、ウィンディさん。一緒にギルドに――」
「……」
団員の青年はウィンディの手を取って、降りていこうとした。
でもウィンディは立ち止まったまま、無言で僕を見ている。
目に涙が浮かんでいることに気付き、これはしまったかも……と思ったその時。
「やだやだ! やだよ~」
「ちょっとウィンディさん⁉」
ウィンディが急に叫んで青年の手を振り払い、その場にうずくまってしまった。
「私はレンレンと一緒にいたいの! レンレンに助けられた時から私の命は……レンレンのものなの~~‼」
「「「「…………」」」」
叫び声が辺りに響く。何だか恥ずかしいな。ウィンディはそんな風に受け止めていたのか。
僕はちょっとした親切心で助けたつもりでも、ウィンディにとっては僕が大切な恩人だったみたいだ。流石に悪いことをしたなと気まずくなる。
「そうだったんですね、すいませんでした」
「私たち、軽率でした」
青年たちはそう言って、城壁から降りていった。
うずくまったままのウィンディと僕は、重い空気の中です。
僕もからかい過ぎてしまった。ただ、ウィンディは僕に執着し過ぎなんだよね。僕に恩を返したいっていう意思の表れだとしても、もっと自由でいいんじゃないかな~。
しかし、この空気どうしよう。
「……さて、壁作りの続きをしますかね」
「……」
手持ち無沙汰になってしまうので、僕は作業を再開。
コネコネコネコネ。沈黙の中、着々と壁ができていく。でもすぐに、下からイザベラちゃんの声が聞こえてきた。
「コヒナタ様~、お堀は完成しました~」
「あ~、イザベラちゃんありがとう。みんなもありがとね~」
お堀が完成して、街の水路とも繋げ終わったみたい。
「……よ~し、あとは壁を作れば終わりだな」
「……」
わざとらしく、声を大きめにして話す僕。いつものウィンディなら何か言いそうなものだけど、反応は返ってこない。ずっと顔を膝にうずめているままだ。
「いつまでもうじうじしているなんて、ウィンディらしくないよ」
「……」
コネコネしながらウィンディに声をかけた。
「ウィンディはもっと自由でいいんだよ。いつまでも、僕に執着する必要はないんだ。命を助けられたっていうのも、ファラさんと一緒に助けたんだし、僕に恩を返さないといけないなんて思わなくていい」
淡々と声をかける。だけど、ウィンディから返事はなかった。
少ししてから、鼻をすする音が聞こえてくる。
「私ね、レンレンに助けられた時、レンレンから目が離せなかったの。今思えば、一目惚れってやつだったんだと思う……」
「……」
ようやく口を開いたウィンディは、滔々と自分の気持ちを話し始めた。
「【龍の寝床亭】でレンレンに再会して、再確認した。好きになっちゃったんだなって。でも、迷惑にはなりたくなかったから、いつか恩を返せるように、近くにいたいと思ったの」
僕は壁を作る手を止めて、ウィンディの言葉に耳を傾ける。
そんな風に思ってくれていたんだね。
「まだ、私は恩を返せてないよ。離れたくない」
ウィンディは泣き過ぎて、えずいてしまう。
「でも、でも……レンレンが迷惑って言うなら、私……わたし……」
途切れ途切れになりながら話すウィンディ。何だか僕もつられて泣きそうになってしまう。
本当にからかい過ぎたな、反省しないと。ただ素直にごめんとは言えず、ゴーレムのゴーレを持ち出した。
「ゴーレが泣くからね」
「……えっ?」
「ゴーレが、相棒がいなくなったら悲しむよ。それに、ウィンディみたいな子を野に放ったら、どこに行っちゃうかわからない。何ならそのほうが色んな人たちに迷惑かけそうだ」
「レンレン?」
今さら、大事な仲間だよなんてまっすぐ言えないから、回りくどく言葉を紡ぐ。
「まあ、何ていうか……ウィンディがいないとみんなつまらないだろうし。トラブルメーカーがいないとね」
「レンレン~」
ウィンディはまた泣き顔になる。
「そうじゃないとみんな暇しちゃ、わわ」
「わ~ん、好き~、レンレン好き~!」
頬を掻きながら僕が話していると、ウィンディが後ろから抱きついてきて、耳元で愛を叫んだ。
まったく、うるさいな~。泣き過ぎだし、ムードも何もあったもんじゃないよ。
「はいはい、嬉しいよっと」
「レンレン冷たい~。わ~ん」
後ろに手を回して、ウィンディの頭を撫でる。ウィンディは文句を言いながらも笑顔で泣き続けていた。
こんな美人さんに告白されるなんて、世の中何が起こるかわからないな。
手のかかる妹くらいにしか思っていなかったけど、これから真面目に考えてあげないとかわいそうだ。でも、僕にはファラさんがいるしな~。
って、告白もデートもできてない僕が言えたことじゃないんだけど。
ウィンディを見習って、もうちょっと距離を縮めてみたいな。
◇
ウィンディとの話の後、壁も完成間近となった時、城壁にファラさんがやってきた。
「レン、ちょっといいかな?」
「どうしたんですかファラさん」
少し頬を赤くしてるファラさん。ついさっき考えていたことも相まって、ドキッとしてしまう。
「その……この街にも店が増えてきただろ? よかったら一緒に回らないか?」
「えっ! それって?」
「あ、ああ。まあいわゆるデートというやつだ……」
ウィンディに続いてファラさんまで……なんだろう、これがモテ期というやつか?
しかし、これはチャンスかな。僕から距離を縮めようと思っていた矢先にこれだ。
それとなくファラさんの気持ちを知りたかったけど、はっきりデートって言ってくれているし、脈はあるんじゃないだろうか。
「いいかな?」
「あっ! はい! こちらこそ」
「よかった。それと……」
ファラさんは言い淀む。何だろうと思っていると、また驚くことを言われた。
「……そろそろ、敬語は使わなくていい」
「ええ⁉」
今までずっと敬語で話してきたのに、いいんだろうか。
「私はもう随分前からこの口調だろう? レンももっとくだけた話し方をしてほしい」
「そ、そうですか……わかりました。あっいや、うん、わかった」
口癖になっちゃってるから、これはちょっと慣れが必要かもしれないな。
ということで、壁の建設は一時中断して街の中をデートすることに。
商人ギルドもできたから、街の外との交易や商人の出入りも始まって、活気が増している。
ルーラちゃんたちが来なくても、いずれは街の拡張をすることになっていただろうね。
「この服だとどうだ?」
「綺麗です! あ、えっと、綺麗だと思うよ」
「ありがとう……そうだ、私もレンの服を選ぶよ、どういうのがいい?」
「いいの? そうだなあ……」
まず、できたばかりの服屋さんでお互いの服を選んで買って、軽く食事をしてまた買い物をして回った。元の世界でもこんなのしたことがないから、どうしても緊張してしまうな。
ただ自分で作った街に人がいっぱいいて、みんな幸せそうに暮らしているのがわかって嬉しい。
流石に子供はまだ少なくて、クリアクリスとイザベラちゃん、それに含めていいかわからないけどルーラちゃんしかいない。
でもこのまま人々が定着すれば次の世代も増えていくだろうし、とっても良い街だ。
「レン、本当にお金はいいの?」
「ファラさんはもうお金持ちだから、こんなこと言うのもおこがましいかもしれないけど、僕も男だからね。ここは僕持ちにさせて。いやだった?」
「ううん。そんなことない。とっても嬉しい、ありがとうレン」
買い物袋を抱きしめて微笑むファラさん。ん~、やっぱり綺麗だな~。
コリンズ邸でのパーティーの時のドレスもよかったけど、普段着の彼女も綺麗だ。
今回、買い物した服も可愛かったしね。
道路脇のベンチに座って一休みしている間も、ファラさんの横顔に見惚れてしまった。
「ん? どうしたの、レン」
「え⁉ ううん、なんでもないよ。あっ、そうだ。ファラさんって髪型変わってるよね。片方だけ三つ編みなんて」
「……へ、変かな?」
「え? ううん、そういうわけじゃないよ」
表情が一瞬暗くなったファラさん。話題を変えようと髪型の話をしたんだけど、聞いちゃいけないことだったかな?
「私の家がなくなったのは、本当に突然のことだったんだ。ギザールの件があった後、何者かに突然家が襲われた。その時、お母様がちょうど私に三つ編みをしてくれていた最中でね……」
「そ、そうなんだ……」
髪型の話はタブーだったな……悪いことを聞いてしまった。
「すっごく似合ってるよ、ファラさん」
「えっ」
「ファラさんってなんていうか、戦っている時は凛々しくてカッコいいんだけど、いつもは可愛いじゃない?」
「か、可愛い……」
僕の言葉に、顔を真っ赤にするファラさん。
「凛々しさと可愛さを兼ね備えてる人だと思うから、その三つ編みを見ているとファラさんそのものだなって感じがした」
「そ、そうかな……」
三つ編みをいじりながら照れるファラさん。
「今までこの髪型を褒めてくれた人はいなかったんだ。レンが初めてだよ、ありがとう」
「ははは」
ファラさんは顔を真っ赤にしながらも喜んでくれた。
僕もこうやってちゃんと褒めるのは、ファラさんが初めてです。やればできるじゃん、僕も。
ベンチで少し休んだ後、日も暮れてきたので僕らはそのまま屋敷に帰った。
告白には至らなかったけど、デートは概ね成功でしょう。次は僕から誘えるようにならないといけないな。
それからは、みんなといつも通り夕食。城壁は結局今日には完成しなかったけど、一刻を争うものではないし、構わない。それよりも、仲間との時間のほうが大事だよね。
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