テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 神様からの贈り物

第十七話 ドラゴン?

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「よ~し、出発だ」

「お~」

 ソルトさんのお店で装備を揃えて次の日、僕らは町の南口から出て気合を入れる。入った時に挨拶したハンスさんに手を振って僕らは森に向かう。ハンスさんには長くて一週間離れると言っておいた。それでも帰ってこないという事になると捜索隊がくまれるらしい。

「あの見えてる森だよね?」

「そうそう、町の東側だからあれだと思うよ」

 草原が広がっている町周辺から少し離れた所に山から続いてる森が見える。山の反対側まで続いていそうな深い森、山の山頂付近が色が濃くなっていて何だか怖い感じ。

「山の向こうに行かなければ大丈夫そうだね」

「頂上が怖い感じするね」

 シーナも同じように感じていたようで僕の言葉に頷いてる。なんか変な感じなんだよね。

 僕らの不安を他所に目に見える距離の為、すぐに森に到着。

「ゴブリン三匹とウルフ五匹」

「楽勝だったね」

 森についてすぐに町の方向を眺めていたゴブリン達を退治、ゴブリンの依頼は討伐数で報酬も変わるから見つけたら討伐しておいた方がいいんだよね。

「戦士の手袋とシーフの靴下のおかげかな」

 僕は予め色々な職業を付与した手袋や靴下を作っておいてある。僕の知っている職業だけだけど十分威力を発揮してるよ。ソルトさんの武器も切れ味抜群で振り心地も最高。

「アレクの作った手袋はほんとに凄いね。魔法が一発で三発でたよ~」

 シーナは両手に魔法使いの手袋で靴下はシーフ。シーフの職業を付与した靴下は素早さを上げてくれるので簡単に魔物から遠ざかる事が出来るんだ。
二か所つける事で更に凄いことになってる。フェイブルファイア様に贔屓してもらっているようで何だか引け目を感じます。
 魔法使いの手袋は使った魔法をコピーして撃ってくれるみたい。どれもこれも反則級の性能で僕困惑だよ。

「洞窟に入る時にはこれをつけて」

「これは?」

「皮で作った指当てだよ。格闘士の職業を付与しておいたから路地裏でチンピラを倒したように素手でもゴブリンと戦えるはずだよ」

 これは前々から考えていたんだ。手袋が出来るのならこういった装備にもつけられるんじゃないかってね。試しにシーフの職業を付与した皮の指当てを作って付けたら普通に早くなってたよ。

「アレクってほんとにすごいな~。なんだか巫女って平凡な気がしてきた」

「そんなことないよ。欠損を治したんだからすごいに決まってる」

「そうかな~・・・。アレクが巫女の職業を付与出来たらいらなさそう・・」

「・・・」

 シーナの指摘に僕は考え込む。今は初級の職業で有名なものしかできないけれど、成長していけば有名な上位職を付与できるかもしれないんだよね。僕もいつか勇者の職業をつけた物を作れるようになるかも・・・あんまり目立ちたくないけれど、やっぱり僕も男の子なんだな~。

「私も頑張らないといけなさそうだね・・」

「えっ」

 僕が無言で考え込んでいるとシーナが頬を膨らませて気合を入れていた。
 どうやら、僕にライバル意識を持っているみたい。そんなに気張らないでいいと思うけどな。

「(アレクから見放されたくないもんね)」

「ん? 何か言った?」

「ううん! なんでもないよ~。早くゴブリンの巣を探そ!」
 
 シーナの小声が気になったけど、シーナは話を逸らしてきた。なんて言っていたんだろうか?




「ね~アレク」

「どうしたのシーナ?」

「可笑しくない?」

「何が?」

「巣が近いのは分かるんだけど、魔物と遭遇しすぎじゃない?」

 僕らはゴブリンとウルフを倒して森を進んでた。シーフの靴下を装備していると斥候っていうスキルが使えるから使って進んでいたんだ、斥候のスキルは隠密行動が強化されて魔物から見つかりにくくなって、更に魔物の気配を感じやすくなるって言うスキル。これだけでも反則級のスキルだね。
 
 森を進んでいると、ゴブリンとウルフ、それとオークを良く見つける事が出来て大量に狩っているんだ、既に三桁の魔物を狩っている。アイテムバッグは無限に入るみたいだからいくらでも狩れるんだよね。
 確かに可笑しな量の魔物だけど、巣が近いんだったらしょうがないんじゃないのかな?

「う~んそうなのかな?」

「私も初めてだからわからないけど、Dランクの依頼ってこんなに魔物を狩るものなのかな?」

 確かにDランクの冒険者さん達はこんなことを毎日やっているのかと思うと凄いと思う。

「アイテムバッグも貴重な物らしいし、やっぱりなんかおかしいよ。一度町に帰ろ、オークは討伐数いったしオークの依頼完了報告してこの事も話に行こ」

「う~ん、シーナがそんなに言うなら帰ろうか。一日もしないうちに帰るのもなんか恥ずかしいけど」

 意気揚々とハンスさんに挨拶してこの森にやってきたから何だか恥ずかしいな。

「ありがとアレク」

「何が?」

「私の意見聞いてくれて」

「シーナの勘って結構当たるからね。信頼しているからね」

 シーナの勘は信用してる。村では彼女が雨が降るって言ってしばらくすると降って来たりしてたんだ。村の人達の中にもシーナに雨が降るか聞いてくる人がいるくらい信用されていた。そういう事もあって巫女になれたのかな?

「何だか、嫌な感じが強くなってきた。早く帰ろ!」

「そんなに?」

 シーナの顔色が悪くなってきた。僕の腕を強く引っ張って元来た道を歩く。シーナの胸が僕の腕に当たって、彼女の成長を感じながら引っ張られていく。

 ギャオォォォ~~~!

 頬を緩ませながら帰路に立っていると森の奥からそんな声が聞こえてきた。上から降り注ぐような声に僕らは空を見上げた。木々の間から空が見えてそこに大きな影が、

「ドラゴン?」

「いや、あれはワイバーンじゃないかな?」

 シーナが頬を引きつらせてドラゴンじゃないかと首を傾げた。僕は冷静にここら辺にいるであろう魔物の名前を告げる。ドラゴンだったらもっと大きい、ドラゴンではないはず・・たぶん。

「アレク、背に誰か乗ってるよ?」

「ホントだ。って事はやっぱりドラゴンじゃないね。ドラゴンは頭が良くて自分よりも弱いものを背に乗せないらしいから」

 シーナのお父さんが話してくれた物語で言っていたんだ。ドラゴンは自分よりも強いものしか乗せないって、って事は思った通りドラゴンじゃないって事だよね、よかった。

「あれ? こっち向いてる?」

「見られてるね」

 バサバサとその場を飛びながらこちらを見据えている。ワイバーンは僕らを睨み、背にいる者もこちらを見てきている。

「背に乗ってるのってリザードマン?」

「それにしては小さいような?」

 僕らは田舎育ちだから目がいいんだ、更にシーフの職業が付与されている為、視力が良くなってる。斥候としても活躍するシーフはやっぱり便利、作っておいてよかったよ。

「あれ・・・」

「増えたね・・」

 色違いのワイバーンとその乗りてがバッサバッサと複数現れた。僕とシーナは顔を見合わせて後退する。

「逃げよ~」

 僕らは町の方角へと走り出す。尋常じゃない速度で逃げているけど、空からは丸見えみたい。急降下してきたワイバーンが木々をなぎ倒して突進してきた。

「仕方ない勝てなくても足掻こう」

「大丈夫! 私がアレクを守るから」

「はは、それは僕のセリフだよシーナ」

 木々をなぎ倒してくるワイバーンを前にしてシーナが心強い事を言ってくれた。僕は緊張がほぐれてシーナに微笑みながら剣を構えた。
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