テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 神様からの贈り物

第四十三話 懲りない男

『それは無理だ!』

『何故だ!』

 マスターの部屋からそんな声が聞こえてくる。ドランさんとクードが話し合っているのが伺える。ドランさんはなんとか僕を出さないように説得している最中みたいだ。

「アレクさん・・・、何をしたんですか」

 ザクロが小声で聞いてきた。僕は何もしてないよ、攻撃してきたから返しただけだ、僕らは悪くない。

「なるほど、そんな事が・・・、俺がそこにいたらそいつの首、飛んでるぜ」

 シーナが説明するとザクロがギリギリと鎌を持っている手に力を入れて話した。明らかに苛立っているね。

『ではお前を殺して、あぶりだしてやろう』

『なっ!』

 不穏な声が聞こえてくると同時に鉄と鉄のぶつかる音が聞こえてきた。あれ、これってまさか?

「ドラン!」

「おっと! ここは通すなと言われてるんだ」

「通すわけにはいかないぜ」

 ウーナさんが焦って、マスターの部屋に続く扉に駆けこむと傭兵ギルドの人達が扉の前に立ちふさがった。

「傭兵ギルドは最初からこれが狙いだったってわけか?」

「冒険者ギルドと仕事はほぼほぼ一緒だからな」

 傭兵ギルドは護衛を主に受け持つ、冒険者ギルドは護衛と共に納品や掃除なんかの雑用も受け持つんだ。どうしても傭兵ギルドの仕事を取ってしまうんだよね。だから、傭兵ギルドとは何度かいざこざがあったらしい。クードみたいな人の依頼を受けたのは冒険者ギルドに嫌がらせをする為だったとザクロとグゼーノは憶測を話してる。

「ここを通りたければ俺達を倒して・・・、な!?」

「ぐはっ」

「いきなり何を」

「倒していけって言っただろうが!」

 全身鎧の男をザクロがなぎ倒す、言い終わる前に倒してしまってるよ。

「このままで済むと」

「まだ足りなかったか?」

「・・・私は気絶しています」

「分かったようだな」

 突き飛ばされた全身鎧の男の、下敷きになった男が起き上がろうとしてきたんだけど、グゼーノの言葉で再度、寝込んでいった。

「こいつらは時間稼ぎだろう。見張っておくからお前達で中に」

 パリン! グゼーノがマスターの部屋への扉を指さして入るように告げると窓の割れる音が聞こえた。かなり激しく戦っているようだ。

「急ごう!」

 グゼーノにその場を任せて僕らはマスターの部屋へ。







「ちぃ! 三体一とは卑怯な」

「元Sランクの冒険者に一対一はありえないだろ。それに傭兵ランクAの俺達が雇われたってわけよ」

「元Sランクのドランを倒したなんて、明日から俺達への依頼が殺到するな~」

 僕らが中に入ると下品な笑いを浮かべた白銀の鎧をつけた二人の男がドランさんに剣を突き付けながら迫っていた。

「ドランさん!」

「アレク君!」

「敵を前に視線を外すか!」

 ドランの背が壁に当たると同時に僕らに気付いたドランさん。その一瞬の隙を見逃す相手じゃなかったみたい、クードが鋭い突きをドランさんの腕に突き立てた。

「ぐあっ」

「ははは、冒険者の小僧! 見ていろ! 次はお前だ。油断さえしなければお前などには負けないのだ!」

 ドランさんが傷ついて両ひざをついた。クードの剣が抜かれると血が大量に流れ、床を濡らす。

「おいおい、クードさん。こりゃやりすぎだぜ」

「ってか、アレクってのはあんな小僧かよ」

 その様子を見た、傭兵たちは明らかにやる気を無くしていった。別に傭兵達は傷つけたいと思って来ていないんだよね。

「お前達も暴れろ、その為に雇っているんだぞ」

「「・・・」」

 クードの言葉で見合った二人は首を横に振った。

「俺達はおりるぜ」

「ああ、殺し合いをしにきたわけじゃねえ。俺達は冒険者ギルドよりも強いって事を示すために受けただけだ」

「この! 契約不履行だぞ! いいのか」

「ああ、前金だけで十分さ」

「あんたらも見てないでドランの怪我を治してやれよ。あの傷は一つ間違えると命に係わる」

 傭兵の二人はそう言って部屋から出ていった。シーナはすぐにドランさんを回復していく、その様子にクードは拳を握って僕らを睨みつけてきた。

「私をコケにしよって! 傭兵、冒険者の分際で!」

『黙れ、クズ!』

「うががががっ」

 カクルがクードの顔に張り付いて猫ひっかきをかました。クードが苦痛の声をもらす。

「私にこのような事をしてただですむと!」

「ただですまないのはあなただ! この事はすぐに王族の方々に知らせるからな!」

「なっ! お前、傷はどうした?」

 さっきまで横たわっていたドランさんがクードに詰め寄って声を荒らげた。クードは驚き戸惑って、壁際まで追い込まれる。
 すぐにシーナが治したんだ、今の僕らに治せない傷はないかもね。

「そんな事はどうでもいい、お前はこれで終わりだ!」

「ぐはっ」

 ドランさんの右ストレートがクードの顔に命中、クードは意識を手放していった。

「はんっ、ドランは甘いな」

「そう言ってくれるな。それよりもすぐに衛兵を呼んでくれ」

「はい」

 ザクロは首をヤレヤレと横に振って甘いといった、ザクロの指摘はもっともだね。ここが町じゃなくて、外だったら野盗とかと一緒、討伐してしまっていいと思うけど。
 ドランさんがウーナさんに衛兵を呼ぶように伝えた。

「傭兵ギルドには?」

「傭兵ギルドへは何もなかったと伝える」

「えっ?」

「何かあったと伝えるとそれはあの者達の達成につながる。何も言わなければ証明にならないだろ」

「なるほど」

 傭兵ギルドには何も伝えない。そうする事であの人達の話は夢物語になる、何だか、大人な対応だな~。

「しかし、あの二人は見事な立ち回りだった。傭兵ギルドにしておくのは勿体ない」

 ドランさんは顎に手を当ててそう言った。Aランクの傭兵の二人は身長も高かったし、強そうだったね。

「アレク君、この事は私が責任をもって終わらせる。心配しないでいつも通り、依頼をこなしてくれ」

「えっ? あ、はい」

 ドランさんはそう言って僕への気遣いの言葉をかけてくれた。僕の心配なんてしていないで自分の心配をして欲しいな。

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